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■夏の日の想い出・アルバムの続き(31)

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新会社の社長には、σσプロモーションの中堅バンド、バインディング・スクリューのプロデューサーである、宝珠美玲氏(1979旧姓田船)が就任する。§§ミュージック関連会社♪♪ハウスの社長・高岡亀浩(1960“白河夜船”)が会長となる。このほかコスモスは副会長となる。
 
σσプロは元々副社長を務めていた山下氏が主宰するバンド“コンゴザイル”の独立により設立された事務所である。日隈氏はその時のマネージャーである。最盛期には60を越えるロックバンドを抱えていて業界でもかなり大手の事務所に分類されていた。
 
しかしバンドブーム自体が下火になり売上は落ちていき、所属バンド数も減った。そこにコロナ禍が起きてライブができない状態になり、特にこの事務所が足場にしていた都内のライブハウスが軒並み営業停止や廃業に追い込まれた。
 
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生ライブの代替として急速に普及した有料ネットライブにしても、名前の通ってないバンドには集客的にも費用的にも厳しかった。
 
それで今年の6月には事実上活動していないバンドとの契約を解除するとともに社員を半分に減らすリストラを行った。しかし債務があまりにも巨大でどうにもならなくなった。
 
今回の話は∞∞プロの鈴木一郎社長から持ち込まれた。
 
「これは人間関係的にコスモスちゃんとこで助けてやるしかないよ」
「仕方無いですね」
 
実は現在σσプロの屋台骨を支えているバンドであるバインディング・スクリューのリーダー田船智史は、コスモスの姉・秋風メロディーの夫なのである。
 
以前にも掲載したが、このような“人間関係のデイジーチェーン”がある。名前はコスモス姉妹以外、出生名。
 
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槇村博司1981(同級生)近藤嶺児1981(夫妻)宝珠七星1984(妹兄)宝珠北斗1980(夫妻)田船美玲1979(姉弟)田船智史1981(夫妻)秋風メロディー1988(姉妹)秋風コスモス1991(妻夫)木取道雄1990
 

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銀行団が詐欺罪でσσプロモーションの全社員・全ミュージシャン・会計士を告発したので、全員が検察庁で取り調べを受けた!取り調べされるというので、若い女性社員などかなりびびっていたが、女性社員は概ね女性の検察官が対応しみんな「優しい人で良かったぁ」とホッとしていた。
 
結局、役員全員とごく一部のマネージャーそして会計士が起訴されたが、それ以外は不起訴・起訴猶予になった。コスモス(新会社では副会長)と白河夜船はこの全員と話しあって社員契約・ミュージシャン契約を結んだ。ただし経理部門に居た人は全員経理以外の部門に配属した。社員にはこの機会に郷里に帰るという人もあり、再雇用したのは約7割である。辞める人には規定の退職金を支払った。
 
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田船姉弟も東京地検の取り調べを受けたがむしろ“被害者”と認定され不起訴になった。他のミュージシャンも概ね被害者とみなされた。しかし彼らが債権放棄してくれたので債務は半減した。更にアーティストの移籍金によって更に半分になって残りは2億円程度になり、特別精算できる見込みが立った。それでも特別精算するまでに実際は5年掛かった。
 
日隈社長と経理部長、山下副社長と会計士、2人のマネージャー(いづれもコンゴザイルのマネージャー)が有罪とされた。社長と経理部長は実刑判決を受けて収監された。会計士は執行猶予付き有罪判決になり会計士の資格喪失は免れたが廃業を表明した。副社長の山下氏(コンゴザイルのリーダー)は執行猶予になったが、ヤクザから銃撃されて重傷を負った。他の役員は無罪になった
 
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コスモスは新会社に移行するミュージシャンのために川崎市にマンションを建てた。そこに全員住んでもらおうというのである。これはとても歓迎された。あまり売れてないと家賃負担がとても苦しかったし、深夜帰宅することや楽器の音を立てることで周囲からクレームを多数受けていた。
 
結局新会社への移籍に同意したバンドは18+10で、人数的には102人であった(同意できなかったバンドも数件あるが仕方無い +10は今夏に契約解除になっていたバンドの復活)。その内の入居希望した80人ほどを、3-9Fの7つのフロア(約120室)に収納する。
 
最上階の9階には田船美玲・宝珠北斗一家、田船智史・秋風メロディー一家まで入居した。この2世帯は役員特別待遇・実質家賃無料とする。オーナーハウスに近いが、これまでどちらも賃貸に住んでいたのが信じられない。7-8Fは女性専用になっている。男性機能喪失済みなら男の娘も女性フロア入居可とする(*86).
 
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(*86) 「去勢手術受けますから女性フロアに入れてください」と言って本当に手術を受け手術証明書を提出してめでたく女性フロアに入った人もいた。
 

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B1,2Fには多数のスタジオを設置してここで思う存分練習してもらう。1階は事務エリアである。またここにはネット中継設備を導入したのでネットライブを行うことが可能である。
 
彼らのために“あけぼのテレビEチャンネル”を創設し、ここは当面接着音楽専用チャンネルとする。ここに接続するといつも接着音楽の誰かのライブが流れている。結構深夜の無料放送枠:ノーギャラ!が人気となる。
 
A:本放送
B:信濃町ガールズ(24h自動放送)
C:(内部使用:帯域固定)
D:§§ミュージック音楽教室
E:接着音楽
 
深夜や平日午後(14:00-16:00) にある無料放送枠はノーギャラだがフィードバックシステムに接続してくれた観客の“まばらな拍手”が励みである。
 
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「ライブハウスと似た感覚。いつも観客4〜5人だったし」
とこの枠の常連さんたちは言っていた。
 
“接着マンション”はマスコミに公開されたので多数の取材陣が訪れた。ビルを見上げるとビル自体は四角いのに、最上階(10F)だけ円形なので
「あれは展望レストランか何かですか」
とマスコミが訊く。
「行けば分かりますよ」
とコスモスが言うので記者達は首を傾げた。
 
1階には事務関係の部屋や調理室・食堂や喫茶室・売店(五線紙やギターの弦などが売られている。“破壊用ギター”まで売られている)、2階のスタジオなど見学し、5階の居室のひとつ(現時点では空き室)の2DKも取材させてもらう。
 
このマンションは2DKが基本だが下の階には1DK, 上の階には3LDK,4LDKなどもある。実はバンドメンバー4人が4LDKに一緒に暮らしているケースもある。
 
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そして最後に10階に行ったが記者たちは呆気に取られた。
 

このフロアだけ丸かったのだが、その丸いビルのいちばん外側に円形のレールが敷かれ、遊園地にあるような猿が運転する電車が走っている。ただし猿は実際にはロボットである。そして電車に乗っていたのは・・・
 
ナイルローブのメンバーたちである。
 
旧事務所を設立して運営の中心に居たコンゴザイルが会社を離脱したので代わって最高齢バンドになったのが彼らである・平均年齢は50代のはずである。その“男の子”たちが楽しそうに電車に乗っている。
 
「ああ、記者さんたちもどうですか?乗りません?お代は要りませんよ」
とメンバーは言っている。
 
誘われて何人かの記者が電車に乗った。
 
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「楽しいでしょ?」
「童心に戻ったようです」
 
「いやあ、何か欲しいものありませんか?と訊かれたから『電車が欲しい』と言ったらコスモスちゃんが作ってくれたんだよ」
「いいオーナーさんですね」
「うん。コスモスちゃんはとてもいい子」
 
線路にはトンネル・鉄橋などもあり本当に楽しそうである。
 

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このフロアには砂場があって砂遊びしているバンドメンバーもいるし、ボールプールではしゃいでいる子たちもいる。滑り台を楽しそうにすべっている子たちもいれば楽しそうにジャングルジムをしている子たちもいる。
 
他に雲底、鉄棒、シーソー、飛び箱、体操用マット、などもある。これらは全て子供サイズの1.5倍スケールで作られている。“大きなお兄さん・お姉さんたち”のために作られたものである。鉄棒は1.3m-2.5mの高さで並んでいる。身長180cmの人が腕を伸ばして220cm程度になるので長身の人でも一番高い鉄棒にはぶら下がることができる。低身長の人でも一番低い鉄棒には飛び付くことが出来る。身長155cmの人の肩の高さは126cmくらいである。
 
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記者たちが取材していた時はストラトプールStratpool (*87) の女声ボーカル・アルザが懸垂をしていた。記者たちから「すげー」という声があがっていた。
 
「懸垂気持ちいよ。君たちもしない?」
と彼女に声を掛けられ
「よし」
と言ってひとりの女性記者が別の鉄棒に飛び付き、2回だけ懸垂して
「だめだー。ここまで」
と言って降りたが、それでも拍手が起きていた。
 

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この他に腹筋運動用の高さ15cm程度の鉄棒もある。
 
また長〜い滑り台などもあって、これも列が出来ていた。
 
一方で、パンダ、象、きりん、鹿、馬、牛、羊、うさぎ、などの形をしたプラスチックの椅子に座り詩を書いているふうの人たちも居る。
 
また中央にある丸いビニール製のお城の形をしたハウスは遊技用の温水プール(深さ50cm) で、ここだけ気温が常時28℃以上に保たれている。
 
プールの注意書き
・水着で使用のこと。着衣・裸体での使用禁止。
・飲酒しての利用禁止。
・遊ぐの禁止。
・写真撮影禁止
・セックス・オナニー禁止!
・暴行・殺人禁止!?
 
アヒル隊長やクジラさん・お魚さん、ビニール製の5cmサイズのボートやお船、などが大量に持ち込まれている。魚釣りゲームをしている子たちもいる。
 
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幼稚園のスモックみたいなのを着た監視員のお姉さんたちが必ずプールに1人とその他に2人以上居るようにしている。夜間はプール使用禁止で施錠され、外側に監視員1人のみになる。つまりここ自体は24時間使える。
 
この部屋は“お遊戯室”と呼ばれている。
 
なお本格的に泳ぎたい人のためにB2に10レーンの25mプール(つまり25m×25m)もあるということで、そちらは完全予約制ということだった。あとで記者たちも案内してもらったが本気で泳いでいる人たちがいたし、プールサイドのジョギングコース(1周約120m)を走っている人もいた。
 

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また1階には理容室・美容室がある。住人は8割が男性だが、美容室の利用者が圧倒的に多く面積も2倍である。美容室の隣には“ビジュアル系研究室”などという妖しげな?所もある。講習室・女装室!・サロンに別れている。サロンには美しく装った“お姉様たち”が紅茶など飲みながら野太い声で歓談していたりする。結構突っ込んだ音楽論などもしているようである。
 
でも女装は結構ストレス解消になるとみんな言っていた。
 
服は下着は買ってもらうがアウターはレンタルもできる。サロンにはオナニー用個室(フィッティングルームサイズ)もあるがセックスは禁止にしている。セックスしたい人は自室に帰ってからにしてとしている。女装のままこの部屋の外に出てもいい。講習室では女性の服やアクセサリーなどの講義、お化粧講座、女声ボイトレなども行っている。
 
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(きっと男の子バンドがビジュアル系や男の娘バンドに変化するところが出そう)
 

(*87) ストラトプール Stratpool は、きっとフランスのストラスブール Strasbourg あるいはイギリスの ストラトフォード=アポン=エイヴォン Stratford-upon-Avon (シェイクスピアの出身地)のもじりかと思われる。(ファンの間ではその2つの説が大きい)
 
バンドの公式では「ストラディバリウス (Stradivarius) のヴァイオリンが都プール (to-pool?) に浮かんでいる」という夢を見たから。
 
でもベースのタキトは「ほんとにそんな夢見たんならきっとクスリやってる」という発言をしたことがある。
 

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新会社の会長に就任した白河夜船に雑誌社がインタビューしていた。
 
「いやー、うちの会社よりずっと大所帯の会社を引き受けることになってまだ戸惑ってますよ」
と白河夜船は言う。
 
「でも営業成績では♪♪ハウスの1割くらいですよね?」
「まあうちは羽鳥セシル・坂出モナ・松梨詩恩の3人が稼いでくれているからね」
「元々バンドはCDセールスよりライブで稼いでいるところが多かったでしょうしね」
「そうそう。バンドはやはり生で参加して楽しむものだもん。指定された譜面通りに演奏するのでは詰まらないし、ライブビデオとかも今一。だってプロ野球の試合を録画したDVDなんて誰が買う?」
「ああ、そうですよね」
 
「そのあたりの感覚が自分では分からないからというのでコスモスちゃんに頼まれたんだよ」
「そのあたりが女性アイドルとは方向性がまるで逆でしょうね」
「そうそう。コスモスちゃんはあまりライブやらない子だったし」
 
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「コスモスさんの“ライブ”ってほとんどトークショーだったらしいですね」
「うん。2時間のライブで2〜3曲しか歌わない。一度全く歌わなかったこともある」
「そんなのもあったんですか!」
「うっかり忘れてたと言ってた」
「あの人ならありそう!」
 
「そういえば白河夜船さんは、以前ワンティスも出演していたライブハウスをやっておられたんでしょう」
「僕が経営していた訳ではない」
「あ、そうなんでしたっけ」
「僕の妻の父がライブハウス・ムーのオーナーだったんですよ。その頃ワンティスの母体となったワンバンというバンドがよく出演していたんです」
「あぁ」
「その頃、ムーの会計係をしていたのが羽鳥セシルのお母さんですね」
「へー!じゃ羽鳥セシルちゃんはその縁でそちらからデビューしたんですか」
「いーや。全くの偶然。契約しようという話になって会ってみてびっくり」
「それもまた凄いですね」
 
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「でも“白河夜船”というお名前はそのライブハウス時代にできたお名前とか」
「あれはややこしいんだよ」
「はい」
「僕の本名は亀浩なんだけどそこから略して“亀氏(かめし)”になって音読みして“きし”になってそれを漢字で“騎士”と書かれて英語にして“Knight”になって、それがいつの間にかナイトはナイトでも夜の方の“night”になって、人名っぽくして"Night Cruising" にして日本語に翻訳して“夜船”になって、それに苗字を付けて“白河夜船”になった」
と彼はホワイトボードに書きながら説明した。
 
「複雑ですね!」
と記者は感心した。
 

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「ところで白河夜船の謎というのがあってね」
と新会長は言った。
 
「ええ」
 
「白河夜船を辞書で引くとだいたいこんなことが書いてある。京都の白河のことが話題になった時、知ったかぶりをする人が川の名前だと思って『あそこは船で通ったけど夜中だったからよく分からなかった』と言った。それでみんなに笑われた。それから知ったかぶりをする人のことを白河夜船と言うようになった」
 
「あ、それは聞いてましたけど何かおかしいんですか?」
 
「一番の問題点は京都には白河という川がちゃんとあるってことだね」
「え〜〜!?そうなんですか?」
 
「その内その白河の流れてる付近のことも白河と言うようになった。白河上皇の院が置かれた場所としても有名だね。しかし元々川の名前だから“白河を夜に船で通った”というのは充分あり得ることなんだよ」
 
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「ひょっとして笑った人のほうが物を知らなかったとか」
「まあよくあることだね。物事を中途半端にしか知らない人はしばしばよく知っている人の話を笑ったり批判したりするもんだよ」
「考えてみると液体ヘリウムの超流動とか普通の常識からはあり得ないことですもんね。知らない人はそんな馬鹿な話があるか、お前は科学が分かってないとかって笑うかも」
 
「だから“白河夜船”の話はよく調べてから笑えということなのかもね」
「自戒します」
 

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