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■夏の日の想い出・アルバムの続き(27)

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中村が簡単に事件の状況を聞く。
 
「すると二十面相が用意した偽物のフルートがその展示ケースの隠しスペースに入っているんですか」
と中村。
「あ、そういえばそうでしたね。出してみましょう」
と言って明智はドライバーを借りて展示ケース下部の“照明ユニット”を取り外した。中を開けてみると2本のフルートが入っている。細川洋介氏に確認する。
「これは偽物ですよね?」
 
「何かそれまるで本物みたいに見えるんですが」
と言って細川氏は中村警部から渡された手袋をしてフルートを取り上げた。
 
本当は鑑識に先に調べさせるべきだが、ここは早く事実を確認する必要がある。
 
「物凄く良くできてますが偽物です。ロマノフの小枝の本物には微細な傷があるんですが、これにはそれがありません。それと火の鳥のキィの位置が違います。これは普通のフルートと同じ位置にキィがあります」
と言ってロマノフの小枝と並べて見せる。
 
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小林が言った。
「そうでした。聖知さんが言ってたんです。火の鳥は宝石が埋め込まれているため普通のフルートの位置に穴を開けても正しい音にならない。正しい音にするため、普通のフルートとは微妙にずらした位置に穴を開けてあるって」
 
「まさにそうなんですよ」
と洋介氏も言う。
 
「なるほど」
 
「でも重さは本物とほとんど変わりませんね。これどちらも本当のプラチナ・金で作ったものだと思います。宝石は本物かどうか私には鑑定する力がありませんが」
 
「本当にプラチナや金で作るって凄いですね。作るのに1千万円くらい掛かってませんか?」
と店長。
「1500万円くらいかも。そこまで凝るのが二十面相ですよ」
と明智。
 
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そこに小林にまたメールが入る。小林が内容を見て言った。
 
「少年探偵団の山口からの連絡です。彼女は電気工事業者の車にGPS発振器を付けていたのですが」
 
「車に発振器!?」
と中村係長が驚く。
 
映像はデパートの女子店員の制服を着た山口(今井葉月)がワゴン車の下部に発振器を取り付けるところ。
 
「フルートに発振器を付けても二十面相ならすぐ気付いて捨てるだろうから。だいたいこんな時期に工事なんて怪しすぎます。二十面相の常套手段ですよ」
と小林。
 
「え?そうなんですか?」
と店長は焦っている。
 
「店長さんの責任は問われませんよ。こんな凄い発想するのは二十面相くらいで普通の犯罪者なら思いつきませんから」
と明智が言ってあげる。
 
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「でもよく二十面相の車が分かりましたね」
「今日、臨時駐車許可証で社員駐車場に入ってきた車には全てに発振器を付けさせていただきました」
「あははは」
 
小林は続ける。
「まあそれで、ちょっと時間は掛かったけど場所を見付けたそうです。邸内に確かにGPS発信するワゴン車が駐まっているそうです」
 
「ということだよ。中村君。二十面相を捕まえてフルートを回収しに行こう」
と明智は明るく中村係長に言った。
 
二十面相のアジトが判明したと聞いて細川洋介・洋造兄弟も喜んでいる。
 

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唐突にパーティーの映像が映る。
 
細川聖知(羽鳥セシル)・北里ナナ(アクアF)・花田小梢(安原祥子)と少年探偵団の沢田恭子団員(月城たみよ)・河野令子団員(内野涼美)がパーティーをしている。料理もフライドチキンとかローストビーフとか、フランクフルト・ソーセージとかビスケットの上にキャビアやフルーツとか載せたものなど、たくさん並んで美味しそうである。
 
「北里ナナ!アクアちゃんのものまねをします!」
と言ってナナは立ち上がってマイクを持ち、アクアの『アテネの知恵』を歌う(『少年探偵団VI』の主題歌!1番を完全に歌う)。小梢が透明なクリスタル・グランドピアノで伴奏した。
 
「すごーい!凄くアクアちゃんっぽかった」
「まるで本人が歌ってるみたい」
 
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「うん。私アクアのものまね大得意。アクアはね、女8割に男の娘2割を混ぜるとそれっぽくなるんだよ」
「なるほどー」
「男ではなく男の娘を混ぜるのがミソ」
「あ、なんとなく分かる」
 

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郊外の広い邸宅。玄関そばの茂みに山口あゆか団員(演:今井葉月)が隠れて見守っている。そこに朝倉紗希団員(演:栗原リア)が来る。
 
「お疲れ様。ひとりじゃトイレにも行けないだろうからって溝口君に言われてヘルプに来た」
「さんきゅさんきゅ」
 
それで山口はトイレに行って来た。
 
「これ私が握ったおにぎりだけど」
「もらう。ありがとう」
と言って暖かいおにぎりを美味しそうに食べている。
 
「あっ」と2人は声を出すと身をかがめた。
 
一台の車が門を通って邸内に入っていく。そこから降りてきたのはスーツ姿の二十面相(演:大林亮平)である。パトカーは目立ち過ぎるので、途中で車を換えたのだろう。
 
すぐ山口たちは小林団長にメールした。
 
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二十面相が邸内に入ると黒いレオタード姿の部下(山崎恵光)が迎える。彼女の艶やかなボディラインに一瞬「うっ」と思う。
 
「お帰りなさい。今回はわりと上手くいきましたね」
「そうだな。ただ谷口が捕まった。何とかして助けてやらないと」
「ありゃー。お宝は取り敢えずこちらに」
と言ってスーツケースを渡す。
 
「ありがとう。しかし疲れた。少し眠る。君は香取市の隠れ家に行ってみてくれないか。もしかしたら警察に拘束されるまでに救出できるかもしれん」
「すぐ行きます」
「ただ警察か明智が待ち構えてる可能性がある。気を付けて。違和感を覚えたら逃げて」
「警戒します。取り敢えず掃除のおばちゃんの振りして行ってみます」
と言って、部下は出て行った。
 
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「掃除のおばちゃんか・・・・・こういう所は女は便利だな」
と呟いてから
「あいつ女なんだっけ?」
と一瞬疑問を感じたが、
 
「まあいいや。性別は外見でいいことにする」
と呟いた。
「しかし、その基準では小林は女になるな」
 
(「賛成」という視聴者の声多数!)
 

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それで二十面相はスーツケースを持って、トイレに寄ったあと自室に行く。そしてケースを開けて2本のフルート、“ロマノフの小枝”と“火の鳥”を眺めた。
 
「美しい。取り敢えずお宝はゲットしたぞ」
と言うと、スーツケースを閉じてベッドの中に潜り込んだ。
 
1時間ほどして目が覚める。調理室に電話してコックに適当な食事を作ってくれるよう頼んだ。取り敢えずコーヒーを入れてから再度スーツケースを開けてお宝を眺める。ふと気付く。
 
「あれ!?」
 
二十面相は白い手袋をするとロマノフの小枝を手に取った。じっと見る。顔がみるみる青くなる。
 
「こいつは偽物だ!」
 
青くなっていた顔が今度は真っ赤になる。
 
「小林の野郎、俺に偽物を掴ませたな!フルートの行方は知らないけどなんて、大嘘つきやがって!!くそー。二十面相ともあろうものが、あんな小僧にまんまと欺されるとは」
 
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と二十面相はかなり怒っている。
 

トントンとノックがある。
「お食事ができました」
という声。
「ああ」
と言って二十面相は立っていき、ドアを開けた。
 
「うっ」
 
そこに立っていたのは中村係長と数人の警官および明智だった。
 
「怪人二十面相こと遠藤平吉。刑法235条窃盗罪の疑いで緊急逮捕する」
「ふん。あんなガラクタ盗んでも窃盗罪が成立するのかい?いい弁護士が付いたら無罪になるぞ(*74)」
 

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(*74) 窃盗罪が成立するためには、他人が“占有”する物体を盗むことが必要である。占有とは「支配の事実」と「支配の意思」が無ければ成り立たない。二十面相は「ガラクタ(偽物)に“支配の意思”があったかは疑わしい」と主張している。つまり偽物は盗まれるために作られたものだから支配の意思があったとは思えないというのである。確かに腕の良い弁護士が付けば判決は分からない。
 
“窃盗未遂罪”なら有罪にできると思う(実際二十面相はことごとく小林と明智に盗みを阻止されている気がする)。
 

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「ガラクタ?」
「そこにある偽物だよ。小林の野郎、俺に偽物掴ませやがって」
 
明智と中村が顔を見合わせる。
 
中村係長は一緒に居る警官と共に二十面相を連行してリビングに移動する。1人の警官はサポートのためこの場に留まる。明智は車で待機していた細川兄弟を呼んだ。
 
「細川さん、そこのテーブルに載っているフルートが本物かどうか確認してください」
「はい」
 
それで細川洋介が中に入りフルートをチェックする。
 
かなり長時間見ている。
 
「これはさっきのものより更によくできていますが偽物だと思います。これは100年前のものではありません。もっと新しいものです」
と細川氏。
 

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明智が中村に電話して細川氏の鑑定結果を伝える。
 
中村が二十面相に訊く。
「本物はどこにやった?」
 
「知らん。小林に訊け」
 
中村からの連絡で明智は玄関口で(二十面相の逃走に備えて)数名の警官と一緒に待機していた小林を呼ぶ。小林が来る。
 
「君は本物の行方は知らない?」
と明智が訊く。
「え?そこにあるのが本物じゃないんですか?」
と小林。
 
「これは本物にある微細な傷までそっくりの物凄く精巧なレプリカなんだよ。ほとんど実物のコピーだと思う。火の鳥もキィの位置が普通のフルートとは違う。ただ制作年代が新しい。これはどちらもここ1〜2年以内に作られたもの。これが偽物と気付くのはかなりの鑑定眼を持っている人だけだと思う」
 
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と細川洋介。
 

しかしそれで小林は本物の行方が分かった。そんな精巧な偽物を作れる人は1人しか居ない。
 
「他の人に聞かれたくないのでちょっと席を外します」
と言って小林はいったん邸の外まで出ると、ある人物に電話した。深夜2時だけどあの子ならきっと出るはず。実際すぐ電話は取られた。
 
「は〜い、芳恵ちゃん、そろそろ完全な女の子になる気になった?」
「ナナちゃん、本物のフルートの行方を知らないよね?」
「芳恵ちゃん、やっと気付いたんだ?時間掛かったね」
 
この場面、画面が真ん中で左右に分割され、左側には暖かそうな場所でふかふかのソファでお餅を食べていたふうの北里ナナ(アクアF)と聖知(羽鳥セシル)、右側には、寒そうな場所で、しゃがみ込んだ小林少年(アクアM)が出て、ナナと小林が各々のスマホを持ち電話をしている。
 
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小林は明智・細川兄弟のところに戻って報告した。
「本物のフルートの行方が分かりました。うちの団員が確保していました」
「おお!素晴らしい!」
 
フルートの所在が分かったという連絡で中村は2人の警官と共にリビングから二十面相をパトカーに連行した。二十面相が持って来た偽物は明智がこちらに居た警官に渡した。中村のパトカーが出発する。
 
その後で明智が小林に確認する。
「本物のフルートはどこ?」
「微細な傷まで再現するって、そんな精巧なレプリカを作れるのは唯1人しか居ません」
と小林は答える。
 
「聖知ちゃんか!」
と洋造氏が気がついた。
 
「はい。聖知さんは、現在友人の北里ナナの自宅に滞在しています」
「ナナちゃんか!だったら安心だ」
「あの家はほとんど要塞ですからね。うちの団員も3名一緒です。そこに行きましょう」
 
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洋介に電話が掛かってくる。
「あ、島子(洋高の妻)さんか。フルートを取り戻したよ。君達も帰っていいよ」
「帰るってどこに?」
「え?だってデパートでフルートの番をしてくれたじゃん」
「そんなの知りませんけど」
「え〜〜!?」
 
小林が代わって少し話してみると洋高夫妻は今夜四山デパートには来ていないことが判明する。
 
「どうもデパートに来て番をしてくれた洋高夫妻は偽物だったようですね」
「その洋高から不寝番を提案されたのに」
「二十面相がその不寝番に加わりたかったからそういう提案をしたんでしょうね」(*75)
「二十面相には女の仲間もいるのか」
「それっぽいです」
 
なお島子さんの用事は聖知がまだ帰宅せず連絡も無いので洋介と一緒かと心配して電話してきたということだった。ある場所に隠れていて今そちらに行く所と答えたら安心していた。
 
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(*75) つまり二十面相は仲間の山崎と2人で洋高夫妻に変装してデパートに現れ、展示ケースのスイッチを押して偽物とホログラムを入れ換えた。そして20時から23時までフルートの番をした、番の交替で山崎は帰ったが、二十面相は今度は明智に変装して再度デパートに来て0時の瞬間に立ち会った。夫婦だから仮眠の部屋を他の人と別途用意されたのを利用した。
 

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後で北里ナナが説明してくれたのは、こういうことである。
 
聖知は2年前の事件で二十面相に拉致された時、二十面相が“火の鳥”も欲しがっていることを本人から聞いていた(直接聞いたのは聖知に変装していた小林だが、小林がその後“火の鳥”に関して聖知に確認した)。
 
それで二十面相は絶対それをまた奪いに来ると思った。それで本物の精巧なイミテーションを作らせることにしたのである。
 
管楽器メーカーの技術者に本物を見せて2つのフルートの精密な写真を撮影して各部位の寸法も測定してもらった。技術者は頭部管・主管・足部管各々の重さを測り、内部の直径も精密に測定した。火の鳥は特殊な機械を持ち込んで精密な色の測定もした。
 
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だからこれはレプリカというよりコピーである。
 
宝石は全く同じ色合いの天然宝石は用意できないので、色を測定してもらいほぼ同じ色合いの合成サファイア・合成ルビーを作ってもらって填め込んだ。フルートの制作中は同じ密度の色違いの合成コランダムを使用した。
 
製作には2年を要した。制作費はフルート部分だけでロマノフの小枝が1500万円、火の鳥が2500万円掛かった。また宝石の合成費用が5つのルビーとサファイアで合計3000万円かかった。製作中にフルートに填めておく仮の石でも500万円掛かっている。だから全ての費用が合計7500万円にも昇る。
 
これを自分のポケットマネーから払えるのは聖知のようなお金持ちのお嬢様しかあり得なかった。また本物のロマノフの小枝と火の鳥を技術者に見せることが出来たのも立場上聖知しか居なかった。
 
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だから小林にはこの精巧なレプリカを作らせた人が誰か分かったのである。
 
洋造氏にも作れたハズだが、彼ならきっと200-300万円で1ヶ月で出来るようなもっと安いレプリカを作らせている!
 

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