広告:オトコの娘コミックアンソロジー-~小悪魔編~ (ミリオンコミックス88)
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■夏の日の想い出・アルバムの続き(9)

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『因幡の白兎』が放送された翌日の10月16日、羽田小牧はその日の朝渡された台本を読んで叫んだ。
 
「欺されたぁ!!!!」
 
シアター春吉社長は言った。
 
「君の意思は尊重する。君がどうしてもこのチップの役をやりたくないというのであれば、無理にさせることはない。万一の場合は浦野俊徳君にチップの役をやってもらうことで内諾を取っている」
 
小牧は言った。
「でもここでチップ役が交替したら大幅な撮り直しですよね」
「それは仕方無い」
「それに浦野俊徳君とぼくでは取れる視聴率が違いますよね」
「うん。君が出るというだけで凄い視聴率が取れる。それにこの役はまだ性別未分化な中学生にしかできない(小牧は中学3年生)。弘田ルキア君とかじゃ年齢が高すぎるんだよ。それにルキア君は普通に女役してるし。君は女役は基本的に拒否してるからね」
 
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その割りには結構やらされてるぞ、と小牧は思う。
 

「この役は女役もやる人にはできない、男役しかしないはずの人が女役することでサプライズとなる。しかも女役した時に、いかにも女装してますという感じになる人でも困る。自然に女性にしか見えない人でないとできないんだよ。今日本国内でこの役ができるのは小牧ちゃんを置いて他には居ないと思う」
と春吉社長は説得する。
 
「分かりました。やりますけどギャラを約束の額の倍ください」
と小牧は(腹いせで)言った。
「払うよ」
と鳥山プロデューサーは言った。
「チップ役の分と正体を現してからの分2キャラだからね。アクアちゃんもその方式だし」
「へー!」
 
それで小牧は『オズの不思議な国』の最終日の撮影に参加することに同意したのである。
 
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(小牧は来年のことを考えていない!)
 

9月下旬、§§ホールディングの緊急株主総会を開いた。出席者はコスモス、ケイ、千里、2人のアクアである。
 
コスモスが状況を説明する。
 
「申し訳無いけど、どうもそういうことになりそうなのよ」
 
「救済することに異論は無い」
と千里は言った。
 
ケイも頷く。アクアはよく分かっていない!
 
「負債額はいくらくらい?」
「向こうの会計士さんは8月末の時点で1億4346万5210円と言ってる。資本金は500万しか無いのに」
「この業界そのくらいの小さな資本金の会社が多いね。でも借金は実際その倍あるだろうね」
「まあそのくらいはいいでしょ。彼には奴隷になってもらおう」
「既に誰かさんの奴隷ではないかという説もあるが」
「あはは」
 
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「もうひとつの案件は、今あそこの資本金が小さいという話も出たのだけど、SN監査法人から言われたのだけど、§§ホールディングの資本金が小さすぎるのではないかという件」
 
「それは昨年春に10億円から100億円に増資した時も言ってたね」
「会計士さんの意見では適正資本金は?」
「今の売上なら最低でも250億、できたら500億」
「なんか大企業だね」
「8月末時点での従業員が2000人を越えている。これは充分大企業」
「ああ。バイトさん入れたら2000人いくだろね」
「正社員だけでも700-800人いると思う」
 
「7年前にコスモスちゃんが社長になった時はわずか7人の会社だったのに嘘みたいだ」
 
「会計士さんの意見では資本金が小さい場合、大きなプロジェクトに万一失敗した時に一気に倒産する危険がある。すると共同作業する相手企業が怖がるというんですよ」
 
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「確かにね。今年のアクア映画2本とかほとんどバクチと思えるような予算だった」
「まあ万一の場合は若葉にリカバーしてもらえば共同作業者に迷惑かけることはないけどね」
「実際今年映画のプロジェクトに加わった企業はムーランがバックにいるから(*33)取りっぱぐれは無いだろうと思ってたと思うよ」
 

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(*33) §§ミュージック・グループとムーランが親密な関係にあるのは誰の目にも明らかだが、若葉は§§ミュージックに資本参加していない。これは両者の思惑が一致しているからである。
 
・§§ミュージックとしてはあまりにも巨大すぎるムーランにたとえ1%でも出資してもらうと「軒先を貸して母屋を取られる」ことになりかねないという警戒感がある。
 
・若葉としては§§ミュージックに資本参加するとたくさんもうかりそうで、お金がますます増えて困る!!
 

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「取り敢えず200億に増資しようか」
とケイが言う。
 
「千里、出資比率を上げてもらっていい?」
「どのくらい?」
「4分の1より少し少ないくらい」
「なるほど」
と千里は言う。
 
「基本的にコスモスちゃんとケイで物事を決められるように2人の出資額を合わせると過半数になるようにする。アクアも同じ比率にする。そうすると万が一コスモスちゃんが過労で倒れて意識が無いとか、ケイが麻薬で逮捕されて株主総会に出席できないような状況でも、残った1人とアクアとで物事を決められる」
と千里は言った。
 
「そういうことなんだけど、そのたとえは何なのさ」
とケイ。
 
コスモスは笑っている。
 
まあこんなジョークを言えるのは千里くらいだろう。
 
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「それなら200億円にするとして、出資比率を26:26:26:22 にすればいいよね?」
と千里。
「うん。私もその数字を考えた」
とケイ。
「51:51:51:47にする手もあるけど偶数にしておいたほうが計算が簡単な気がする」
と千里。
「私も思った。奇数は計算が面倒」
とコスモス。
 
「だったら千里、現在の株式を私・コスモス・アクアから14000株・7億円ずつ買い取ってくれない?」
「いいよー」
 
なんか「7000円ずつ買って。いいよー」みたいなノリだなとアクアは思った。
 
「その上で剰余金繰り込み方式で100億円から200億円に増資する」(*34)
「OK」
 
つまり各々の出資額はこうなる。
 
ケイ 33->26->52
コスモス 33->26->52
アクア 33->26->52
千里 1->22->44
 
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「じゃぼくは千里さんから7億円もらって会社に26億円振り込めばいいんですか」
とアクアは質問した。
「違う違う。単に7億円もらうだけ。あとの増資は書類上だけの処理」
 
「お金払わないのに出資金が26億円から52億円に増えるんですか〜?」
「うん」
「なんか詐欺にでもあってる気分」
 
「まあ剰余金繰り込みで増資できるのはアクアが何百億も稼いでくれているおかげだけどね」
 
(*34) 増資について詳しく説明しようかとも思ったが、話の筋には関係無いし元々株式会社についての基礎知識も必要なので省略する!
 

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10月初旬、ネットに
「ついに“蜂矢仁美”の正体が分かった」
という書き込みがあった。
 
蜂矢仁美というのは今年になって突然出て来た作詞者で、そのほとんどが、薬王みなみと立山煌の曲に使用されている。今年3月に未来居住の正体が実は常滑舞音本人であったことが判明したこともあり、蜂矢仁美というのは薬王みなみと立山煌のどちらかのペンネームあるいは共同ペンネームなのではという噂があった。直撃インタビューを試みた記者もあったが
「まだ明かしてはいけないと言われてるので」
と薬王みなみも立山煌も答えていた。
 
ただ歌詞がわりと女性的なので、どちらかというと薬王みなみの方ではという意見は強かった。
 

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今回のネットの書き込みはこうである(結構複雑)。
 
本名:四宮七菜
下の名前は仮名書きに→四宮なな
四×なな=28
宮はかな書きにして:みや
並べ直して、みや28→8や2み
漢字に直して、蜂矢仁美
 
だから「蜂矢仁美」の本来の読み方は「はちや・にみ」。
 

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このツイートはたくさんリツイートされ、あっという間に拡散した。
 
「多分正解」
「しかし何つう複雑な」
「よく解読したなあ」
と称賛する声があがっていた。
 
薬王みなみは最初のツイートがあってから24時間ほどたったところで
「凄いね。よく見付けたね」
と事実上認めるツイートをした。
 
「実は姉が考えてくれたペンネームなんです。この名前で過去に“得島”ってローカル雑誌に何度か詩を投稿したことあるんですよ」
と本人は後であけぼのテレビで言っていたが、この該当雑誌は誰も見付け出すことができなかった。本人も当該号は持ってないと言っていた。
 

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花咲ロンドが##放送のインタビュー(聞き手:平林アナウンサー)で述べた
 
「正直、§§ミュージックはデビュー候補生がたくさん居て、どんどんデビューさせたいんだけど、デビューさせるにもマネージャーが足りないし、プロデューサーが足りないし、作詞家・作曲家が足りない状況なんですよね。薬王みなみとかは本来2022年はデビュー予定では無かったんですが「私も早くデビューしたいです」と熱心に言うので『あんたは実力は充分だから自分で曲作ってきたらデビューさせてあげるよ』と言ったんです。すると一週間後には本当に曲を作って持って来たんですよ」
 
「偉いですね」
 
「才能の高い子ですね。親友の夕波もえこちゃんにピアノ伴奏してもらって歌ったみたいです。これがデビュー曲の『音楽室の想い出』なんですが、歌詞はよくできてるけど(実際は多少添削した)、曲が良くないんです。それでこれは松本花子さんに作曲依頼に出しました。それで取り敢えずこの曲だけでも吹き込もうかと言っていた時に清原空帆が来て「ロンドちゃーん、何か仕事無い〜?」とか言うから、『ちょうどよかった。あんたこの子の伴奏して』と頼んで。それで清原空帆率いるホロウズが伴奏した『音楽室の思い出』が完成したんですよ」
 
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「そういう経緯だったんですか。いや私も2022年は美崎ジョナちゃんと立山煌君がデビュー予定です、と聞いていたのが、もうひとり薬王みなみちゃんもデビューしますと聞いて、あれ〜3人なんだと思ったんですよね」
 

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「それで音源制作したんだけど、空帆ちゃんがみなみを凄く気に入って『あんたうちのバンドが歌ったこの曲あげる』と言って『ブーゲンビリアの伝説』を頂いたんです。この曲はホロウズ自身で出した音源は100件もダウンロードされなかったらしいんですよ。でもあんたみたいな可愛い子が歌えばきっと売れると言って」
 
「確かに歌い手が変わると売れる歌はある」
 
「それで見てみたんですが、これ楽曲はいいけど歌詞があまりにも酷いんです。主語と述語が対応してないし、文法が変だし。そもそも日本語が間違ってるんですよね。『東から吹く“はえ”に』とか。“はえ”は南風で東から吹いたら“こち”だよって」
 
「いや元の歌詞が公開されていましたが、確かに清原さんは国語がお苦手のようですね」
 
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「内容も大人向けだったから、それでみなみ本人に『このタイトルで、自分の年代にふさわしい歌詞を新たに書いて』と言って、詩を完全に書き直させることにしました。ちょうど舞音が沖縄に行く用事があったので、彼女のHonda-Jetorangeに薬王みなみを同乗させて沖縄に連れて行き,ブーゲンビリアが咲いてるのを見せて詩を書かせたんです。ちなみに作曲者の本田慈媛(ファンタージェン)というのはホロウズの後援者の1人で、大宮万葉先生のことです。清原空帆とは高校で同じバンドを組んでいたんですよ」
 
「へー」
 
「この大宮万葉人脈はうちの会社では大きいですね」
「ほほお」
 

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「それでデビュー曲のカップリング曲“『ブーゲンビリアの伝説』蜂矢仁美作詞・本田慈媛作曲”も完成してデビューへ進むことになったんです」
 
「だったら薬王みなみちゃんって実はシンガーソングライターなんですね」
「作曲はしてませんけどね」(*35)
 
「ところでオリジナルの薬王みなみちゃん作曲の『音楽室の思い出』は?」
「あれはとても恥ずかしくて公開できません。闇から闇へ」
「あはは」
 
「しかしアクアちゃんたちも水野歌絵とか翔太&リル子の名前で多数の楽曲の歌詞を書いてあられるし、§§ミュージック自体が創作集団になりつつあるのかも知れませんね」
 
「その傾向はあるかも知れませんね。歌手としては成功しないまま引退した海浜ひまわりとか秋風メロディーが今は作詞作曲家として活躍しているし、彼女たちから提供された曲もうちの歌手たちは随分歌ってますしね」
 
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「ああ、そうですよね」
 

(*35) 薬王みなみ専用の松本花子システム“鹿賀カノン”は薬王みなみ本人が「こういう部分が歌いにくいです」とか「このくらいの度数音がジャンプしても音程は取れますよ」とか「ここはこう歌いたい」などといった細かい注文に合わせて日々微調整している。だから、鹿賀カノンは完璧に薬王みなみ好みにチューニングされてきており、鹿賀カノンの曲を聴いただけど「あっみなみちゃんサウンドだ」とファンが思うようになりつつある。
 
それで薬王みなみは作曲印税の1割を頂いている。常滑舞音も同様にして福沢聖子の作曲印税の2割を頂いている。調整してあげているのは小樽ラボのスタッフ。ここは現在女性プログラマーが5人。こんなにプログラマーを雇えるようになったのは舞音のお陰である。家ももう少し広い所に引っ越している。相変わらず2階は男子禁制。
 
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夏の日の想い出・アルバムの続き(9)

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