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■夏の日の想い出・アルバムの続き(17)

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「しかし今年初めのラピスラズリ独立で、寮を出て独立するには何が必要かというのがよく分かったね」
「朱美ちゃんもあそこまで必要とは思わなくて苦労したみたい」
「彼女はお姉さんと一緒に住みたいというのがあったからね」
 
そういうわけで朱美が今年3月に寮を出た後で必要になったものは下記である。
 
・1戸建てか高度にセキュリティのあるマンション(普通のオートロック・マンション程度では不可)
 
・1戸建ての場合は警備会社との契約
 
・音楽練習室(できればプロ仕様の録音機器、ネット中継設備付き)
 
・買物係
・料理係
・掃除人
(この3人は兼任不可。特に買物係と料理係は必ず別の人)
 
また音楽練習室を取れる家というのは、最低でも3LDK程度以上の広さが必要である。朱美は最初中古住宅を買って改造するつもりだったが普通の家で音楽練習室が作れる家というのは希である。それで結局ユニット工法による新築を選択した。アクアだって代々木のマンションでは2部屋ぶち抜いてピアノ室を作っている。
 
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賃貸では改造できないので必ず買う必要がある。仕事の都合上都心に1時間以内に到達できる場所でないと困るのでこの住宅取得費で5000万はかかる。
 
また毎月の費用も上記だけで60万円程度かかる。ラピスだから払えるが、普通のタレントには独立は今のご時世では困難ということになる。初期の頃警備会社と契約してなかったら帰宅した時ファンが5〜6人玄関ドア前に並んでいて「お帰りなさい」と言ったなどという怖い事件もあった。
 
現在の女子寮は警備面と防疫面で“護送船団”になっているので、ここから独立しようとすると自前で護送船団を構築しなければならないのである。この状況はおそらくあと1年くらいは変わらないと思われる。
 
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以前の桜木ワルツみたいに、デビューしたから都区内の安い所に1DKのアパート借りて独立というのはできない状況にある。寮の性格もデビュー前の子が住み込める場所というものから、現役タレントの住まいという形に変化してしまった。
 
昔、おニャン子クラブが活動していた頃、メンバーの数人から
「毎日タクシー代出してもらうの悪いし、いっそ寮とか作れないですか」
という提案があったが、秋元康は
「そんなおニャン子の寮とか作ったら警備員を常駐させて要塞みたいにしないといけない」
と答えたという。現在の五反野の女子寮はまさに要塞である。
 

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11月27日(日).
 
『少年探偵団VI』の撮影が始まった。2018年1月に始まったこのシリーズも今年が6回目。アクア(21)は今シーズンで“小林少年”役を卒業することを表明しており、最後のアクア版・少年探偵団となる。
 
来期以降も誰か別の人に小林少年役をバトンタッチして続けられるのか、或いはこれで終了なのかは未定である。アクアと同時に探偵団の第1期メンバーも卒業することが発表されている。
 
元原マミ(1998花崎マユミ)
鈴本信彦(2000井上一郎)
松田理史(1998溝口洋平)
今井葉月(2002山口あゆか)
内野涼美(2003河野令子)
 
ただし、まだ若い内野に関しては、来期の花崎マユミ役にオファーされて元原マミと“引き継ぎ式”をしたなどという噂も流れていた。
 
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「そんな企画も決まってない内から引き継ぎ式とかあり得ないです」
と内野は否定していたが。
 

「やはりアクアも“少年”役を演じるのはそろそろ限界だったよな」
「だいぶ育ってきたし」
「そうそう。あれだけ女として成熟してくれば」
「次はおとなの女性役だよね」
「やはり明智文代役をするのでは」
などという勝手な噂も流れていた。実は今回これまで文代役を演じていた山村星歌が今シーズンは産休で出演できない。番組では文代不在については特に説明をする予定は無い。
 

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さて今回の番組の初回エピソード(2時間スペシャル)は実は2年前から企画されていたもので、これまでに既に数千万円の制作費を使用している。これは2年前に登場した“ロマノフの小枝”というフルートと並ぶお宝フルート“火の鳥”が登場する。実は“火の鳥”を制作するのに2年近く掛かったのである。
 
ところで今回の初回エピソードの本格的制作開始の前に、テレビ局の上層部で一悶着が起きた。それは制作開始に当たって企画書類を見たテレビ局の社長が
 
「ロマノフの小枝とは何だ?このご時世にロシアの宝物など放映できるか?ほかの名前にしろ」
と言い出したのである。
 
鳥山編成局長が説明する。
「このフルートは白いプラチナの管体に青いサファイア、赤いルビーが埋め込まれているので帝政ロシアの国旗の色になっていることからロマノフの小枝と呼ばれているという設定です。それに2年前にその名前で放送していますから今更他の名前に変える訳にはいきません」
 
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「うーん・・・・それにしても何か別名があったとかいう訳にはいかんのか。たとえばフランスの“ブルボンの陽気”とか」
 
「このフルートは色の順序が上から白青赤なんですよ。色自体の組合せは例えばおっしゃられましたフランスの国旗や他にもオランダの国旗と同じですが順序が違います。元々帝政ロシアの国旗はオランダの国旗の色の順序を変えて作ったと言われてるんですけどね。またセルビアの国旗とは逆順です」
 

 
ロシア帝国の国旗は現在のロシア共和国のものとは微妙に色合いが異なる。フランスの国旗は実はコロコロ変わっているが上にあげたのは2020時点のもの。革命当時の国旗は色合いがもっと暗い。だいたい昔は明るい色を出せなかった。
 
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「そうか。フランスとは順序が違うか」
と残念そうである。
 
「それにロシア国旗の赤がロシア、白がベラルーシ、青がウクライナなんてのは近年になってから出て来た話で,元々は聖ゲオルギウスが青いケープをまとい、白馬に乗って赤い大地を駆けていくという中世の絵からこの3色は出てるんですよ」
 
「そうだったんだ!」
 
「スラブ3民族の色だというのなら、ロシア民族の色を真ん中に置くでしょう。その説ならウクライナこそスラブ3民族の中心ということになりますよ」
 
「あ、そうだよね!フランスのは自由と平等と友愛だったっけ?」
 
「それは全くの後付けですね」
「そうなの!?」
 
「あれは革命軍がパリ市の紋章に由来する青と赤の旗、王党派が白の旗を使っていたので、新しい政治体制を作るため2つの旗をあわせて青白赤の旗を作ったんです。あれはフランス国民統合のマークなんですよ(*52)」
「へー!」
 
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この話は知らなかった人が多いようで、みんな「へー」と感心していた。
 
報道局長が手を挙げて言う。
 
「そもそも政治的その他の問題で文芸作品の中の固有名詞を変えるというのはあってはならないことです。どこかの国営放送が“真っ赤なポルシェ”を“真っ赤な車”と歌わせたり、戦時中に野球でストライク・ボールをよし・だめと言っていたような愚をまたおかしてはいけないです。その手の政治的な問題に対して最も中立であるべきなのがわれわれマスコミではないですか」
と彼は援護射撃してくれる。
 
出席者がみんな頷いている。
 

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社長は悩んでいたがふと思いついたように言った。
 
「うまい具合にセルビアと逆順だよね。“セルビアの天使”とかではダメ?」
 
すると鳥山は答えた。
「それではこのフルートを吹く羽鳥セシル君に逆立ちして演奏してもらわないといけません」
 
一同爆笑になり、議長を務める専務が「それではロマノフの小枝という名称の継続使用は問題無いですね?」と言い満場の拍手で、“ロマノフの小枝”という名称使用は承認された。ただ鳥山編成局長はこの番組の小池プロデューサーに指示した。
 
「3本目のフルートに“青い休日”と名前を付けて青く塗装するという話はやめよう。普通の金製フルートにしよう」
 
「いいですよ。私も青はまずいのではと思ってました。普通の金のフルートだったら、わざわざ小道具として作らなくても、普通に借りられますよね」
「うん。それで行けると思う。コスモスちゃんとそのあたりは話してみて」
「ああ、§§ミュージックさんなら所有してそうですね」
 
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(*52) パリ市の紋章(Blason de Paris)↓

 
船のマークはパリが港町であることを示す。元々が船員・船主たちの町である。下部に書かれた言葉 "Fluctuat nec mergitur" は「波に打たれても沈まない」という意味。パリ市民の800年来のスローガンである。上部の花のようなマークは "fleurs de lys" (フラー・ドゥ・リ:ユリの花)といってブルボン王家を表す白百合である。
 
この紋章はしばしば上が青一色、下が赤一色のフラグで略され、これを革命軍が付けていた。だから実は革命軍のマークの中に王家の印も入っていた。しかし王党派は青を使わず白い旗を使った。
 
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それで両者に中立的であったラファイエットが双方のマークを合体させたものを考案したという。ラファイエットはアメリカ独立戦争で(独立側で)活躍し、帰国後今度はフランス革命に関わることになった。ロベスピエール時代は海外に亡命していた。
 

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“細川家至宝展”が日本橋の四山デパートで開かれた。細川一族が所有する美術品が展示されている。実は2023年は四山デハートが創業350周年であること、細川グループの創始者・細川洋氏がその礎となる細川洋品店を横浜に開いたのが関東大震災直後の1923年10月で今年は100周年の年になること、この細川洋服店の直系企業であった細川百貨店が戦後四山デパートに吸収されていて縁があったことによる。
 
現在の細川グループは、製紙部門、文房具部門、コンピュータ周辺機器を含む事務用品部門や、これらの製造を支える営林部門・化学部門などに分かれ、グループ全体の従業員は数千人、年商は1兆円近い大企業になっている。
 
ボロ布や端布の処分のために製紙業を始めたら、そちらの方が大きくなってしまったらしい:初期の頃は古い服や和服にいくらか足して新しい洋服を売るという商売をしていてボロ布が大量にあった。(初期の頃はレーヨンを作り、そこから下着などを製造していたがレーヨン需要落ち込みで製紙に転換した)
 
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系図を示す

 
 

2年前の“ロマノフの小枝”事件で登場したのが洋介(東堂千一夜)、洋造(木下春治)、聖知(羽鳥セシル)であった。
 
洋一が芸術家になったので洋の事業は次男の洋二が継いだ。洋二には女の子しかできなかったので、末娘の花子が洋一の長男洋司と結婚してその子供たちに引き継がれることになった。年代のギャップが起きるので洋造が中継ぎを務めることになった。
 
ちなみに2番目の月子は生まれた時は月男という男の子だったがヨーロッパ留学中デンマークでちょっとした手術を受け、女性に変わってしまったらしい。
 
洋二は月男に後継者として期待を掛けていたが女になったと聞いてショックで一時期寝込んでしまったという。それで花子と洋司が結婚することになった。でも月男は元々小さい頃から女性的な性格で妹の花子が男勝りの性格だったので花子は月男の“性の転向”を応援したらしいし、花子は副社長の肩書きで実質会社を統率し、業績も大きく成長させた。
 
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でもヨーロッパ絵画のコレクションは大半が長くフランスに住んでいた月子によるものである。
 
会社は現在、洋造氏が会長を務め、洋清氏が社長を務めている。洋文・洋和・洋道・洋重もグループ企業の役職に収まっている。一方洋一、洋介、洋高、聖知の系統だけが芸術家で、洋一、洋介、洋高、↑の系図では略した洋高の姉・真理がヴァイオリニスト、その各々の配偶者がフルーティストやピアニスト・ハープ奏者である。細川洋氏は趣味で尺八や胡弓を弾いていたらしいが、その遺伝子をこの系統が受け継いだのだろう。
 

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