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■春春(24)

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翌日はテーブルオフィシャルについて説明し、また実際にやってもらった。
 
「タイムキーパーは試合全体の時間を管理します。スコアラーはひたすらスコアを付けます。アシスタント・スコアラーは、試合をずっと見ていて、スコアに付けなければならないことをスコアラーに伝えます。そして24秒オペレータは24秒計の操作をします」
と春貴が説明すると
 
「24秒オペレータが何と言ってもいちばん大変」
と舞花が言う。春貴も頷く。
 
まずは各々の作業の仕方を説明。特にスコアの付け方と24秒オペレータの操作については詳しく説明した。
 
その上で、試合のビデオを流し、1クォーターの10分間について、2年3年の4人に実際にテーブルオフィシォルの作業をしてもらって、1年生4人にはそれを見学させた。
 
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「アマチュアの大会では、他の競技でもそうだけど、“負けオフィシャル制”といって、負けたチームが次の試合の審判やテーブルオフィシャルをします。だから、決勝戦に進出したチーム以外は、必ず審判かT/Oのどちらかはすることになります」
とキャプテンは言った。
 
「1回戦はどうするんですか?」
「色々だね。会場校や近隣校の出場しない部員がすることもあるし」
 
「ルミちゃんは試合には出ないけど、多分テーブルオフィシャルは頻繁に頼まれると思う。特に24秒オペレータとか頼まれると思うからしっかり勉強して」
「分かりました」
 

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実際にやってみる。2チーム編成し、最初はこのようにする。
 
A-Team AS:河世 S:舞花 TK:五月 24:夏生
B-Team AS:晃 S:愛佳 TK:美奈子 24:松夜
 
1年生がアシスタント・スコアラーとタイムキーパーである。これでやってみて、両チームのスコアを比較すると、両者は結構食い違う。それで最初に2〜3年で付けたスコアと見比べて、どこで間違ったかを検討する。
 
次はこのようにする
 
A-Team AS:舞花 S:河世 TK:夏生 24:五月
B-Team AS:愛佳 S:晃 TK:松夜 24:美奈子
 
1年生がスコアラーと24秒オペレータを務める。
 
2組の書いたスコアは大きく違う!
 
「ごめんなさい!頭が付いていきませんでした」
と、どちらも言っていた。
 
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その後もローテーションして、全ての役割を体験してもらったが、結構頭がパニックになったようである。
 
テーブルオフィシャルへの道は、まだまだ遠い。
 

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4月12日(火)の夕方、優子と夏樹の家。
 
ちょうど夏樹が帰宅し、御飯を作ろうとしていた時、ピンポンが鳴るので出てみると、播磨工務店の徳部さんである。
 
「基礎を作ってから一週間経ちましたので、今夜建設工事をしますが、あまり騒音は建てないようにしますので」
「あ、はい。よろしくお願いします」
 
この日は優子たちは夜21時には寝た。正確には奏音は20時に寝せ、その後、優子と夏樹はあまり音を建てないように気をつけながら(何しろひとつの部屋である)セックスをして、21時半頃にはふたりとも眠った。
 
夜中0時過ぎ、優子がトイレに起きると、隣で4〜5人の人が作業している感じの声が聞こえる。ほんとに作業を始めたようだ。
 
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「でも夜中にも作業するのね」
と思った。あるいは夜間に使えるバイトさんとか使うのかも?昨今のコロナの影響で収入が減り、会社が終わってから、副業に出掛けるという人も多い。よく体力があるものだと思うけど。
 
(“夜間使えるバイト”というのは。ある程度正しい。精霊たちの中には夜間しか稼働できない者たちも多い。夜間に作業する第1の理由は、クレーンも使わずハウスユニットを持って登って填めたりしているから、それを見られないため)
 

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(4/13 wed) 朝8時。夏樹を会社に送り出すのに2人は玄関まで出る。
 
「行ってきます」
と言って、優子にキスしてから数歩踏み出した夏樹が
「わっ」
と声を出す。
 
「どうしたの?」
「家ができてる」
「え?」
 
と言って、優子も外に出てみる。
 
「嘘」
 
それで見ると、昨日の夕方までは基礎の白いコンクリートだけがあった所に、既に2階建ての家が完成していた。
 
「千里ちゃんが言ってた。2階建ての学生さん向けアパートくらいなら、2-3時間で組み上がるんだって」
 
「これも2階建てだから、7〜8時間で出来たのかもね」
 
「そういえば昨夜徳都さんは言った。『今夜建設工事をします』って。考えてみたら『今夜から建設工事をします』じゃなかったのよ」
 
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「1晩でできるんだ!」
 
(12日23:07までボイドだったので、作業はその後、始めて4時間ほどで完成している。EVのトレーラーでユニットを運んできて、その後はメンバーが手に持って組み立てていく。彼らにとっては、レゴでも組み立てているような感覚である。昔は拠点からユニットを抱えて飛んできていたが、目撃されると騒ぎになるのでEVトレーラーを使うようになった)
 

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時間が無いので、夏樹は出勤して行く。優子は家を見てみたが、とても1晩で作った家には見えない。それに、ユニット工法ってプレハブみたいなのを想像していたのに、とっても素敵な雰囲気の家である。おしゃれで、これだけ見たら4000-5000万円くらい掛かってそうに見える。
 
新しい家の玄関には
《9時に検査班が来ます。検査で問題無ければ、お昼すぎの引き渡しになります。都合のよい時刻を検査に来た者に伝えて頂くか、私宛てご連絡ください》
 
という紙が貼られていた。
 
それで、奏音を幼稚園まで送ってから戻って来てみると、数人の作業服を着た人たちが家の検査をしているようであった。
 
「あ、御主人、今検査をさせて頂いております。多分数時間で終わると思います。引き渡しに都合の良い時間をお聞きするように言われたのですが」
と責任者っぽい40歳くらいの女性が言った。
 
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優子を見て「御主人」と声を掛けるのは凄いなと思った。
 
男装していればそう呼ばれることもあるが、奏音を幼稚園に送るのに、優子は女装!?していた。スカートも穿いてるし。これが桃香だと、女装しても男に見えるのだが(そもそも桃香はスカートを持っていない)、優子は女装すれば一応女に見えるようだ。男装時と女装時で、心の中の回路が切り替わる感じなので、多分それで“雰囲気”も切り替わっているのだろう。
 
「あ、はい。14時くらいの引き渡しでもいいですか」
「はい、それでOKです」
 
15時を過ぎると、振込ができない。
 

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優子は母に連絡し、家が完成したので、例の400万円を持って来るか、振込のできるパソコンを持って来て欲しいと頼んだ。
 
「お父ちゃんのパソコン持ってく!」
と母は言っていた。400万の現金を持ち歩いていて、万一スリにでも遭ったら悲惨だ。
 
また夏樹にも連絡した。
 
「分かった。早引きしてそちらに向かう」
ということである。
 

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優子は、洗濯物が溜まっているから、洗ってから新居に運び込もうと思った。
 
ところが、洗濯機置き場に行けない。
というか、洗面所から浴室に行くドアが無くなっており、壁になっている!
 
「嘘!?」
 
それで外に出てみて、ユニットハウスの状態も変わっていることに気付いた。
 
昨日まで

 
現在

 
ユニットハウス側でもお湯は使えるが、どうも本宅側から管を引っ張ってきているようである。おそるおそる徳部さんに尋ねてみる。
 
「ああ、本宅側に使用予定のボイラーを一時転用していたので、昨夜本宅を組み上げるのに、そちらに戻しました。浴室と洗濯室も洗濯機ごと本宅に組み込んでいますので」
 
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「分かりました!ありがとうございます」
 
ということは、奏音のアヒルさんやお魚さんに象さんのジョウロとかもそちらに移動しているのかな。
 

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11時頃
「検査完了です。問題はありませんでした」
という報告がある。
 
「ありがとうございます!」
 
それで検査班は引き上げて行った。
 
徳部さんも
「では引き渡しの時にまた来ますが。何かありましたら、いつでもご連絡ください」
と言って帰って行った。
 

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11時半頃、母が優子のムラーノを運転して、パソコンを持って来た。すぐその後で、夏樹が帰宅する。
 
夏樹は宮春のパソコンを操作し、振込の操作を確認する。
 
「お義母さん、ワンタイムパスワードは?」
「忘れた!」
 
結局金沢から母が取りに行くより、高岡市内にいる父が取りに行ったほうが早いので、父に連絡して(会社を早引きして)持って来てもらうことにした。優子は14時に約束しておいて良かったぁと思った。
 
12時半、千里が来てくれた。
 
「ごめーん。返済計画をまだ提示してなかった」
と千里に謝る。
 
「ゆっくりでいいよ。今日は1万でも2万でも入れてもらえば、それで契約は成立するから。それより、こちらも正確な建築費を出してなくて」
「そういえばそうだった!」
 
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「私もアバウトに考えすぎてたみたいで、費用積算させたら1196万円になったんだけど」
「あ、1000万超えました?」
 
いや越えて当然だと思うぞ。これ3000万とか4000万とか言われても不思議ではない、と優子は考えた。1200万円というのもかなり抑えた価格という気がする。
 
「そこから1割出精値引きさせて1076万4千円。これが限界だと播磨工務店さんが頑張るからさ」
「80万オーバーくらい、いいですよ」
「それで私がこの土地を523万6000円で売るから。それで合計1600万円ジャストで」
「すみませーん!」
「だって1600万は越さないようにすると言ってたからね」
 
「消費税は?」
「(面倒臭いから)税込みで」
「了解」
 
※実を言うと、千里としては、火牛アリーナにパイプオルガンを建築するには、夏樹の力が必要なので、本当は彼女の住まいくらい、ただで提供しても良いくらいなのである。でもタダにすると贈与税を取られるから、売買の形を取った。
 
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前の支店長さんは他の地区への転出を画策していたのだが、その前に亡くなってしまったのは誤算だった。いくら千里でも全てを見通せる訳では無い。
 

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「1600万円なら、一応こうさせてもらえないかと思って」
と言って、優子は数日前に、優子・夏樹・父・母の4人で考えた返済計画を提示する。
 
頭金:976万(夏樹550 宮春426)
月割り:
2022.04-2023.03 12月×10万=120万
2023.04-2030.03 84月×6万=504万
 
「父が退職するまでは月10万、退職したら月6万の線で8年で返済」
 
「月10万とか大丈夫?」
「うん。これまでは毎月ローンを18万くらい払ってたから、それよりは楽」
「月18万は辛いね」
「だから実は康子さんが送ってくれる養育費頼りで生活してたんだよ」
「なるほどー」
 
“信次”の名義で送ってくれていた養育費である。
 
「でも奏音を夏樹の養子にするから、養育費は打ち切りだよね」
「そんなことないと思うよ。康子さんと相談してごらんよ。向こうは奏音ちゃんが20歳になるか大学を卒業するまでは送金してくれると思うよ。それが実の父親としての信次の義務だもん」
 
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「・・・じゃちょっと相談してみる」
 

この話をした直後、4番は脳間通信で5番に連絡したので、5番はすぐに康子に電話し、奏音の養育費の件は、ちゃんと奏音が大学を卒業するまで千里が養育費を出すからと言った、康子が信次名義で送金している養育費の資金源は実際には千里である。
 
奏音の養育費は初期の頃は信次の貯金から自動送金されていたが、残高が尽きる直前に康子や千里たちが気付き、その後は、千里が資金提供している。千里はこの送金は信次の元妻としての義務だと考えている。
 
幸祐についても、母親の水鳥羽留とパートナーシップ宣言をした原野由梨が養子にしたが、同様の処置を既に実施済み。幸祐の養育費は、20歳になるか、大学に進学した場合は卒業まで(但し浪人・留年した場合は最大24歳になる3月まで (*41)、医学部・薬学部の場合は最大26歳になる3月まで)送金する予定である:大学院進学は対象外。
 
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(*41) 幸祐は2019.4.1生まれなので“早生まれ”となり、法的には2043年3月31日24:00に24歳になる。
 

千里はその後「お守りを作るね」と言って、家の最奥部にあるボイラーの斜め前、敷地ギリギリに立っている道路標識のポールみたいなものの先に、鏡のようなものを取り付けた。
 
「それは何ですか?」
「八卦鏡というものです。これで風水を改良します。万一壊れたり曲がったりした時は、私か青葉に連絡してください。どちらでも対処できます」
 
「分かりました!」
 
「それ光を反射してまぶしかったりは、しませんかね?」
「ほぼ北北東を向いているので大丈夫だと思いますよ」
「ああ、そちらが北北東ですか」
「鬼門封じみたいなものですか」
 
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「実はこの方角に競馬場があるので、そこから流れてくる邪気を反射拡散するんですよ」
「なるほどー。すった人たちの嘆きの念だ」
「そうなんですよ」
 
と言ってから、千里は尋ねる。
「ふたりはギャンブルは?」
 
「宝くじを買う程度ですね」
「私は“たヌキのたからくじ”ばかり買ってる」
「ああ、たいてい皆さん、タヌキ製の宝くじみたいですね」
「きっと葉っぱで出来てるんですよ」
 
 
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春春(24)

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