広告:乙女心?の自由形 (おと★娘シリーズ5)
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■春春(7)

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翌日(4/2)は朝御飯を食べてから、ホテルの会議室に集まり、今回の件の最終編集会議を開いた。その上で、まとめの撮影をした。
 
撮影の冒頭には、番組の制作体制が変わり、神谷内が「いしかわ・いこかな」の全体担当になり、幸花が『北陸霊界探訪』のディレクターになったので、真珠が4月から、この番組のメインキャスターになったことを3人並んで報告した。この映像は明恵が撮影した。
 
その上で、金沢ドイル、明恵、真珠、初海、遙佳の5人でまとめの座談会をしている所を撮影した。これを撮影したのは神谷内である!
 
千里が配ったお弁当を食べて13時に解散した。
 
初海は遙佳、幸花、神谷内をMazda3に乗せて、まずは遙佳を自宅まで送る。幸花と神谷内も遙佳の母に挨拶。その後、初海は幸花と神谷内を乗せて金沢に向かった。
 
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一方、千里は青葉をMazda CX-5の助手席、明恵と真珠を後部座席に乗せて能登空港に向かった。
 
「ちー姉、あの土地、実際何に使うの?」
「本当に私も分からないんだよ。性転換病院ではないと思うけど。たぶん2-3日中に必要になりそうな気がしたんだよ」
 
「あぁ。どっかから降りてきたんですね」
「そういう感じ」
 
「でもなんで、600万じゃなくて700万で買ったの?」
「青葉も分かったくせに」
「つまり退職金は半分くらい使ってしまって、残り200万しか残ってないんだ?」
「一家5人の引越だけで50万飛んだはずだよ」
「そうかもね」
「中学生の娘さんが2人いるから、制服作り直しとかも大変だし」
「それ女子は大変ですよね!」
と明恵が言う。
 
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「でもよくそんなの分かりますね」
と真珠は感心している。
 
「私も300万は残ってない気がした」
と明恵が言うが
 
「ぼくはそんなのさっぱり分からない」
と言って、真珠は首を振っていた。
 

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やがて、能登空港に到着し、明恵と真珠が3階の見学者デッキまで上がって見送る中、千里と青葉は、パイロットさんと一緒にホンダジェットを駐機している所まで行った。3人が乗り込む。
 
それから少しして、パイロットさんだけ降りて空港の建物の方に戻る。
 
「何だろう?」
と言っていたら、パイロットさんは30歳くらいの女性を連れてホンダジェットに一緒に乗った。
 
「同乗者がいたのか」
「桃香さんのお友達の優子さんみたい」
「ああ。千葉の彼氏のところに行くのかな」
「千葉に居るのも女性みたいだけど」
「レスビアン婚?」
「そうみたいだよ」
「最近多いね〜」
「まこも、そうじゃん」
「うん。実質そうだという気がする」
 
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「結婚式はウェディングドレス同士?」
「何とか着せようと企んでいる」
 
「もう今更、くにちゃんにタキシードなんて着せられないよ。だって、ほとんどの人が、くにちゃんは女性である、あるいは女性になったと思ってるから」
「社会的には既に性転換済みだよね〜」
 
やがて飛行機が動き出す。滑走路に向かうのを手を振って見送り、離陸してから、明恵と真珠はCX-5を運転して金沢に戻った。
 

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Honda-Jetblackは17時頃、郷愁飛行場に着陸した。
 
千里と優子が飛行機のタラップを降り、空港の建物に向かう。出入口の所にケイが立っている!千里は笑顔で手を振った。ケイは腕を組み、厳しい顔をしている。千里は冬子って修行が足りないなと思った。コスモスなら絶対ここで笑顔で迎える。
 
千里は優子に
 
「私の黒いインプレッサが空港の駐車場に駐めてあるから、それ使って千葉まで行くといいよ。番号は****」
 
と言って、優子に車の鍵を渡した。
 
「さんきゅ。借りる」
と言って先に行く。
 
それを見送ってケイが言った。
 
「千里、青葉は?」
「知らない、能登空港で別れたから」
「嘘!?」
 

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ケイ(冬子)は恐らく郷愁飛行場の到着予定情報を見てHonda-Jetblackがこの時刻に到着することを知り、青葉をキャッチするため、ここに来ていたのだろう。それで青葉が捉まえられると思うのは、甘いね〜。
 
「だから飛行機には私と友人で乗ってきたよ。私、明日は平塚で試合があるし」
と千里は言う。
 
「“今日も”平塚で試合があったみたいだけど?」
 
今日あったのはファイナルの準々々決勝で、それに勝ったので明日は準々決勝である。
 
「そうだっけ?だったら、きっとそこにも私出たんだよ。最近忙しくて記憶が不確かで」
 
むろん試合に今日出て、明日も出る予定なのは千里3番、ここに居るのは4番である(ケイは2番だと思っている)。
 
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「じゃ青葉は、金沢(放送局)か高岡(自宅)か津幡(練習場)に行ったの?」
「知らない。本人に電話して聞いてみたら?」
「あの子が答える訳無い」
「あはは」
 
「仕方ない。もう日程が動かせないんだよ。『ミュージシャン・アルバム』の取材に、千里付き合ってよ」
「青葉無しでいいの?」
「大会前でどうしても時間が取れないので、お姉さんの醍醐春海さんに代理をお願いしましたと言うから」
「そんなぁ」
 
という訳で、ケイは青葉の身代わりで千里を拉致して、郷愁村のコテージ8021でラピスラズリと一緒に待機してもらっている、三つ葉の3人とのところに連れて行ったのであった!
 
(8022にはボニアート・アサドが待機している)
 
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一方、青葉は飛行機の中で離陸を待っていたはずが、突然周囲の様子が変わって、何だ?何だ?と思い、あたりを見回した。
 
大きなお屋敷がある。
 
もしかして、ここ龍虎(アクア)の自宅??八王子にあると千里姉が言っていた?
 
青葉は玄関のピンポンを押してみた。カメラがこちらに向く。
 
「大宮万葉先生!今開けますね」
と龍虎の声がして、玄関が開いた。
 
「どうなさったんですか?」
「ケイさんから逃げて来た。しばらく、かくまって」
「いいですけど」
 
「それとここプールがあるんでしょ?しばらく練習で使わせて」
「はい、もちろん!だったらしばらく滞在なさいます?」
「できたら4月中旬まで半月くらい。その後は、熊谷の郷愁プールに移動して同じスイミングクラブのメンバーと合流できると思う」
「はい、自由に使って下さい。お部屋をひとつ用意しますね」
 
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と言って、龍虎は青葉を西の対(にしのたい)に案内した。
 

渡り廊下のような所を通って西の対まで行く。電子キーで開けて中に入ると、長い廊下があり、その両側に部屋が並んでいるようだ。そのいちばん手前、右側の部屋から龍虎の個人マネージャー竜崎由結が出てくる。
 
「大宮万葉先生、おはようございます!」
「おはようございます。竜崎さんだったね」
「りっちゃん、半月くらい大宮先生を泊めるから、食事の用意をよろしく。あと、雑用とかも可能な範囲で対応して」
「はい、分かりました」
 
それで由結も一緒に3人で廊下を進む。
 
「この家、広いね〜」
「播磨工務店の徳都さん(じゅうちゃん)が、好きなように増改築してるんですよ、ぼくの知らない間に何かできてたりするから、びっくりするんですよね」
「ああ、播磨工務店の人たちには驚かされる」
と青葉も言った。
 
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高岡の新居、次行ったらまた形が変わってたりしないか不安だ!
 
龍虎はこの廊下のいちばん向こうにある右手の部屋を青葉に割り当ててくれた。
 
「この部屋を自由にお使い下さい」
「ありがとう」
「バストイレは部屋に付属しています。wi-fiのキーは後でこちらに持たせます。そちらの廊下からも母屋に行けます。その廊下の右端にエレベータがあるので、そこから地下のプールに行けます。プールでもwi-fiは使えます」
 
「ありがとう!じゃしばらく居候させてもらうね」
 
部屋にバストイレが付いてるってホテルみたい、と思った。
 
(アメリカの家では各部屋にバストイレが付帯するのが普通なので、その方式を踏襲しているだけ)
 

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青葉が部屋に入ってすぐ、竜崎由結がケーキと紅茶を持って来てくれたので
「ありがとう」
と言っていただく。
 
「何か用事がありましたら、こちらのボタンを押してください。それとこちらがWi-fiの暗号化キーです」
と言って、キーをプリントしたメモとボタンを渡してくれた。
 
「ありがとう。預かるね」
と言って受け取り、暗号化キーは自分のスマホとパソコンに入力した。
 
ケーキを食べてから、少しウトウトしていたら、竜崎由結が
今度は夕食を運んできた。
「足りなかったら呼んで下さい。すぐお代わりをお持ちします」
「いや、これだけあれば充分だよ。ありがとう」
 
それでwi-fiのキーを書いた紙を返し、食事を頂き、少しニュースなど見ながら休んでいたら、千里姉から電話がある。
 
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「青葉さ、熊谷で2月中旬から3月末まで過ごした間に使ってた着替え、コテージに残されていたのをまとめて持って来たから、今から10分くらいでそちらに行くね」
 
「分かった」
 
それで青葉が母屋のパーラー(広間の表側半分)まで出ていると、車が入ってくる音がする。龍虎のスマホが鳴る。
 
「千里です。開けて」
「はい」
と言って、龍虎がドアを開けると、千里は、Volvo XC40 から、旅行カバン3つの着替え、電子キーボード、ノートパソコン、SSD2台を持ち込んだ。
 
「このキーボードとパソコンは高岡の家から持ち出してきた」
「ありがとう」
 
「持つの手伝います」
と龍虎が言い、結局、青葉・千里・龍虎・由結の4人で荷物を運んだ。
 
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「龍ちゃん、由結ちゃん、ありがとね」
「いえいえ」
 
「じゃね」
と言って、千里は帰って行った。
 
「竜崎さん、ごめん。もう一度wi-fiキー教えて」
「でしたらこれお渡しします。入力が済んだら破って捨ててください」
「分かった」
 
龍虎が言った。
 
「今の千里さん、何番さんですかね」
「私もさっぱり分からない!」
 
と青葉は答えた。S市で一緒に仕事をしたちー姉とは別みたいな気がするなあ。あのちー姉は、面積を暗算で計算してたから、きっと3番。だったら今のは1番かなあ、オーラが少し弱かったし、などと考えてみたが確信が無かった。(どちらも外れ!)
 
「ちなみに君はFちゃんだよね?」
「そうですよ。この家に居るのはたいていぼくです。Mはたいてい代々木のマンションにいますから」
 
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「君たちも大変そう」
「自分が7人くらい欲しい気もしますけど、そんなこと考えててほんとに7人になったら収拾が付かない気がします」
 
「君が7人居たら、きっと7人分の仕事を入れられるというのに1票」
「それありそうで恐いです!!」
 

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それで青葉は部屋に戻った。
 
眠ってしまってもいいように、布団を敷いて潜り込んだままスマをを見ていたら、車の音がする。龍虎への来客?のようだ。理史君かな?
 
だけど、龍虎はFが理史君と付き合い、Mが彩佳ちゃんと付き合ってるけど、結婚とか、どう発表するつもりだろう。結果的にはアクアが2人居ることを公開せざるを得ないのでは?千里姉はそのあたりはどう考えているのだろうと青葉は疑問を感じた。
 

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30分くらい眠っていた気がする。
 
「少し泳ぐか」
 
北陸に行っていた間、全く泳げなかったのでストレスが溜まっている。
 
千里姉が持って来てくれた荷物の中に練習用の水着も入っていたので、それとバスタオルに下着の替えを持ち、トイレ(部屋に付いている)を済ませた後、部屋を出て、エレベータに行く。
 
ボタンを押そうとして迷う。1,B1,B2とボタンが並んでいる。
 
プールっていちばん下の階に作るだろうからB2かな?と思い、青葉はB2のボタンを押した。やがてエレベータが到着する。青葉がエレベータを出たら灯りが点いた。
 
「嘘!?」
 
千里姉からは“25mプール”と聞いていたのに、ここにあるのはどう見ても50mプールである。私、聞き間違ったかなあ。
 
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「まいっか」
 
青葉は細かいことは気にしないことにして、浄水施設のスイッチを入れた上で、準備体操し、シャワーを浴びてから水に入り、泳ぎ始めた。
 

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ところで・・・郷愁飛行場で千里が青葉の代わりにケイに拉致されて行った直後、“司令室”は少し焦ったのである。
 
三つ葉のメンバー花山波歌(かやま・しれん)は、桃香の従姪(従姉の娘)で、彼女は2016年4月に高知県土佐清水市でおこなわれた高園和彦(にぎひこ)の葬儀の時に千里と会っている。その時に千里からオーディションに出ることを勧められ、参加したら(実質)合格し、三つ葉の結成(2016.5.7)に参加することになった(実質合格者を決めたのはケイ:決めるはずの人たちが全員離脱し、通りがかり!のケイに託された)。
 
その葬儀の時に波歌(しれん)と会った千里は2017年4月に3人に分裂する前の千里である。つまり現在の千里1〜3が一時的に合体していた状態であり、その時の波歌との遭遇は千里4は知らないことである。
 
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しかし千里が三つ葉のインタビューをすれば、絶対その話は出る。
 
話が通じないとヤバいなと、千里たち全員の管理をしている千里5は思った。千里2Bあたりと入れ換えるのが理想だが、2Bは今日、日本時間の27:00からフランスで試合がある。千里4はバスケットなどしないから2Bの代役はできない(身体能力は高いし、フランス語もできるがバスケのルールを知らない!!チームメイトの名前も知らないし)。
 
千里5は自分がインタビューに出るしかないと判断した。5番は6番に言った。
 
「ヴィクトリアちゃん、青葉の着替えを龍虎の家に運び込むの頼む」
「分かった。結局そこまで私がやるのね」
 
「じゃ行ってくる」
と言って5番は4番と入れ替わった。
 
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4番はキョロキョロしてる。
「ロビンちゃん、今晩は。インタビューはグレースがやるから」
と6番が言う。
 
「助かったぁ」
「私は少し出掛けてくるから、しばらく司令室をお願いね」
「私が司令室を見るの〜〜〜!?」
 
「よろしく」
と言って、6番はXC40を運転して出掛けてしまう。
 
「ロビンさん、お疲れ様です。私も手伝いますから」
と、ほしちゃん(花星)は4番に言った。
 

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