広告:ここはグリーン・ウッド (第6巻) (白泉社文庫)
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■春春(10)

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それで優子は千里にメールを送ってみた。
 
(この手のメールや電話の接続は実は“司令室”が電話交換みたいなことをして最適の人につないでいる。司令室で取ることもある)
 
・7年前に父が保証かぶりで800万円の負債を負うことになった時、その借金の本来の借主であった叔父が、お金ができたといって800万円を返しに来た。
 
・それでこちらは住宅ローンと、その時に新たに借りたローンを完済した。
 
・2019年にムラーノを譲ってもらった時、わざわざ車検を通してから譲渡してもらったので、せめてあの時の車検代も含めて30-40万千里さんに払いたい。
 
すると、10分ほどして千里から直接電話が掛かって来た。
 

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「あの車は元々“信恵ちゃん”の物だから、私よりよっぽど“信恵ちゃんの夫”だった優子ちゃんにこそ権利があると思う。私は籍は入れていても、事実上彼女とは全く結婚生活の実態が無かったんだよ。ほとんどセックスもしてないし」
 
「そんなこと“信恵”も言ってた。あまりにも忙しくてデートできないって」
「多分“彼女”とは2度しかセックスしてない」
「なるほどねー」
 
(本当は“信次”とのセックスが2度だけで、“信恵”とは10回くらいセックスしている。しかしここでは言わないことにする)
 
「新婚旅行の最中にも急ぎの仕事が飛び込んで来て、私ひたすら仕事してたもん」
「なんて悲惨な」
 
優子はSEって大変なんだなあと思っているが、実際にはあの時は上島雷太が逮捕されて、彼が書いていた楽曲が使えなくなり、数人の作曲家で必死に代わりの曲を書いていたのである。ケイ・千里・丸山アイ・青葉、毛利五郎や田船美玲など中堅の作曲家が、みんなフル稼働だった。あまりの忙しさを緩和するため、千里と青葉は“松本花子”を作った。
 
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「ムラーノは本来の持ち主のところに行っただけだよ。だから車の代金は要らないよ」
 
千里は実は、貴司と結婚するのに、信次の遺品の車は使えないと思い優子に譲ったのだが、優子は夏樹と結婚してもムラーノが前の“妻”の遺品だということは全く気にしていない!夏樹もそういう細かいことを気にする人ではない。
 
「でもわざわざ車検を通してもらったから。せめてその分の代金だけでも」
「うーん・・・じゃ10万だけもらおかな」
「うん。じゃ口座番号教えて」
「じゃそれは後でメールするよ」
「うん」
 

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「だけど、優子ちゃんも“モニカ”ちゃんと別居生活で大変だね。折角結婚したのに。また千葉に行く時は言ってね。飛行機手配するし」
 
「あ、それなんだけど、モニカは金沢支店に転勤になったんだよ」
「ほんと!?」
 
モニカって誰だ?と両親は一瞬思った。
 
「4月7日からこちらで勤務。だから一緒に生活できる見込み。引越の手伝いで私も千葉に行ってこなくちゃ。ひとりでは荷物整理できないみたいだし」
 
「ああ。だったらさ。今私、S市に来てるんだけど、明後日、4月2日に熊谷まで飛ぶから一緒しない?」
 
(↑事件がそれまでに解決するだろうと千里5は予見している)
 
「あ、助かる。ムラーノ運転して行こうかと思ってた」
「優子ちゃんがムラーノで行くと、向こうから2台で帰って来ないといけないからきついよ。車を使わずに行けば、向こうから彼女の車を2人で交替で運転して来れて楽ちん」
「言えてる。そうさせてもらおう」
「じゃ2日のたぶん15時か16時になると思うから」
「分かった。だったらその時刻に」
 
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千里5はこの話し合いの結果だけ千里4に伝えた。
 
「4月2日に解決してるの?」
「青葉がてこずってたら(*18)、千里ちゃんがチョチョイと解決しちゃえばいい」
「私が解決したら番組にならないよ!」
「来月からは『金沢コイルの霊界探訪』にするとか」
「それ、グレースがやってよね」
「やだ」
 
(*18) “てこずる”の漢字は“梃子・擦る”。梃子(てこ)で動かそうとしても棒が、すべってしまうほど、重たいこと。“手こずる”は誤字。
 

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それで、4月2日(土)、優子は父に車で送ってもらい、能登空港まで行った。
 
千里に電話すると、外人女性のパイロットさんが迎えに来てくれて、それで飛行機に搭乗するが、前回使ったのとは別の塗装の機体であった。飛行機はすぐ飛び立った。
 
「ありがとう。これ車検代」
と言って、優子が封筒を渡すと、
「さんきゅー」
と言って受け取り、中も見ずに用意していた10万円の受け取りを渡す。
 
「中身見なくていいの?」
「まあ、間違い無いだろうし」
と千里は言っている。
 
「まあ私もわりと適当。桃香は結構きちんとやるね」
「うん。あの子は1円玉までしっかり数える。私はいつも適当」
「私もそっちだなあ」
 
「でも金沢支店ってどこにあるの?」
「イオン金沢店の近く」
「示野?」
「そっちじゃなくて福久のほう」
「あ、そっちか」
「そこから歩いて行ける所らしい」
 
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「あの付近か。だったら、優子ちゃんの家から朝は1時間近くかかるかな」
「やはりそのくらいかかるかな」
「昼間や夜間はパンダちゃんやフクちゃんや白ちゃんが居なければ30分で行くかも知れないけど、朝夕は時間かかると思うよ」
 
「フクちゃん嫌らしいよねー。一度フクちゃんに切符切られた」
「やはり先頭にならないようにしないと」
「それが肝心だよねー」
 
「でも金沢に住もうと言ってるんだよ」
「ああ、通勤時間節約で?」
 
「それはあるけど、それよりパートナーシップの問題があるんだよ」
と優子は言う。
 
「あ、そうか!高岡だと、パートナーシップが無いんだ!」
と千里はすぐに答えた。
 
「そうなのよ。でも金沢にはある」
「桃香が高岡に戻らない理由のひとつなんだよ、それ」
「なるほどねー」
 
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「じゃ金沢にマンションか何か借りて、優子ちゃん・奏音(かなで)ちゃんと3人で暮らすの?」
 
「それがうちの父ちゃんが、金沢に家を建てて、みんなで引っ越そうと言い出して」
「へ?」
 
それで優子が、ここまでの話の経緯を話した。
 
「でも私も金沢のどの付近が安いかとかよく分からなくて。誰か金沢方面の知り合いに訊かないといけないかなあと思ってるんだけどね。どっみち、家を建てるなんて話は、モニカが引っ越してくる4月5日か6日には間に合わないから、まずはアパートでもいいから借りないといないと思ってて。それは明日くらいにでも、うちの母が探しに行ってくれる予定」
 

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千里は腕を組んで考えた。
 
「ねぇ。偶然にも、先日、金沢の住宅地を買ってさ、来週くらいにもそこに家を建てるつもりなんだけど、そこ優子ちゃん買わない?」
「へ?」
 
「場所はね、この付近」
と言って、千里はバッグから取りだした石川県の紙の地図でその付近を指し示した。
 
「ここ、支店まで歩いて15分で行ける!支店はここなんだよ」
と優子は夏樹の勤務予定地を指差す。
 
「ああ、△△音楽教室と書かれてる。あれ?モニカちゃん、△△だっけ?」
「フランチャイジーなんだよ。でも何に使うのに買ったの?」
「それが自分でも分からなかったんだよ。何かで数日中に使いそうな気がしたから買った」
「千里ちゃん、わりとそういうのあるよね?」
「うん。去年も東京で似たようなことがあったのよね」
 
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(自分でも分からないままマンションを借りたら、そこに彩佳たちが住むことになり、結果的にアクアのスキャンダルになりかねないことを未然に防いだ)
 

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「目的が無かったのなら、買いたいかも。でもいくら?」
「土地は600万円で買った。建物はこれから発注するけど、1000万円くらいかな」
 
(+100万円は抵当権を消去するためのアドオンなので、土地代は600万と考えている)
 
「うち、叔父さんから返してもらったお金の残りが今450万くらいあるんだけど」
「それ頭金にローンででもいいよ」
「ほんと?」
 
「正確な金額は工務店にきちんと計算させるけど、1600万円を超えることにはならないと思う。その1600万円の内、400万円くらい頭金でもらったら、残り1200万円を例えば5万円ずつ240ヶ月=20年とか」
 
「たぶんもう少し短期間で払えると思う」
「じゃそのあたりは、無理せずに払える範囲で計画して連絡してよ。何なら1万円ずつ1200ヶ月=100年でもいいし」
「それはさすがに無茶だ。私100年も生きてないし」
 
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しかしそれで千里は桜坂から買った土地をそのまま優子に売り渡すことにしたのである。
 

「今そこは更地?」
「ホロ家が建ってるから、それを崩して新しい家を建てる。そこに住む予定の人の生年月日教えて」
 
「うん」
 
それで優子は、住む予定の5人の生年月日を千里が渡したPPC用紙に書き出した。
 
府中優子 1990.10.04
古庄夏樹 1982.06.22
古庄奏音 2016.08.19
府中宮春 1963.04,05
府中春子 1968.05.02
 
(奏音は夏樹と養子縁組させるつもりなので、その予定で書いている)
 
「お父さんもお母さんも名前に“春”が付くんだ!」
「そうそう。だから春春コンビと言われた」
 
「へー。あ、お父さんは昭和38年の春生まれだから“宮春”だ」
「そうなのよ。語呂合わせ。お姉さんは昭和40年生まれで洋花(よおか)」
「語呂合わせ姉弟か。もしかして神無月で10月生まれ?」
「そうなのよ!」
 
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千里は訊いた。
 
「性別を確認したいんだけど」
「うん」
 
「優子ちゃんは男?女?」
「ちんちんはいつも付けてるけど意識としては女かなあ」
「やはり、毎日ちんぷ摩擦してちんちんを鍛えよう」
「うむむ」
 
「モニカちゃんは?」
「ちんちん無くなったから女でいいと思う」
「そんなもの無くなって良かったね」
「無くなったのが嬉しくてたまらないみたい」
 
「奏音ちゃんは?」
「本人はちんちん欲しいと言ってるけど女でいいと思う」
「あの子、可愛いから、ちんちん無いほうがいいと思うなあ」
「最終的には性別は自分で選ばせるということで」
 
「お父さんは?」
「若い頃は女装させられたとか言ってるし性転換アプリで女顔化した自分の写真に見とれたりしてるけど、失業や離婚の危機までおかして女装生活する根性は無さそうだからたぶん男でいい」
「取り敢えず去勢してあげようか?」
「老け込みそうただからバスで」
 
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「お母さんは?」
「私男に生まれたかった、女に学問は異らんと言われて大学にも行かせてもらえなかったとか、よく言ってるけど、性転換手術までする気は無さそうだから、女でいいと思う」
「とりあえず放送大学を勧める。まずは男と対抗できる知識を身に付けよう」
「それいいかも知れない。勧めてみよう」
 

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「取り敢えず現在の性別なら、本命卦はこうなる」
と言って、千里は名前の横に書き出した。
 
優1990F 艮東
モ1982F 乾東
奏2016F 巽西
父1963M 坎西
母1968F 坎西
 
「じゃこれで運気が良くなるような部屋の配置で家を建ててあげるよ」
「よろしくー」
「部屋は20個もあればいい?」
「そんなに要らない!」
 
600万円の土地って60坪くらいだと思うけど、そこにどうやって20個も部屋のある家を建てるんだ?4〜5階建て??
 
「両親は1つの部屋でいいし、私とモニカもひとつの部屋でいいし、奏音が大きくなったら、部屋をひとつ使って最大3つかな。あ、両親の部屋は1階にして」
 
「OKOK。でも優子ちゃんかモニカちゃんがもう1人くらい産んだりして」
「タネは〜?」
「モニカちゃんに訊いてみなよ。精子の冷凍保存はもう無いのかって」
「え〜〜〜〜〜!?」
 
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「あるいは優子ちゃんを1晩だけ男に変えてあげようか?それで生セックスすれば、モニカちゃん、優子ちゃんの赤ちゃんを妊娠するかもよ」
「それもいいなあ。一度射精してみたーい」
 
「桃香は射精は凄く気持ちいいとか言ってるよ」
「やはり、あいつ精子あるんだ!」
「だって5人の女に8人の子供産ませてるんだから」
「悪いやっちゃ。去勢する必要があるな」
「私も10回くらい去勢したし、季里子ちゃんにも20回くらい去勢されてる」
「去勢されても生えてくるとは、しぶといちんちんだ」
 

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