広告:ここはグリーン・ウッド (第5巻) (白泉社文庫)
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■夏の日の想い出・星遮りし恋人(15)

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「よし、次はお魚ね」
と雨宮先生が楽しそうに言うので、私もコスモスも頭を抱えた。
 
舞音はワクワクした顔で雨宮先生を見ていた。
 

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常滑舞音の『とことこ・なめなめ・招き猫』が大ヒットになったので、次のCDもヒットさせようと、雨宮先生が
「私にプロデュースさせなさい」
と言って、名乗り出てきたのである。
 
舞音にはあちこちからCM出演などのオファーが来ているが「一度には全部受けられないのでちょっと待って」と言って、順番待ちにしてもらっているところである。
 
またどれを受けてどれを断るかという問題についても、川崎ゆりこ、舞音のマネージャーになった西岡空世(悠木恵美)、サブデスクの美咲瞳で検討して競合関係やイメージ戦略を考慮の上、絞り込んでいる所である。
 

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「やはり漁連さんだから、色々なお魚に扮してもらおう」
と雨宮先生。
 
「どんな魚に扮するんですか?」
と舞音が楽しそうに訊くと雨宮先生は
 
「そうね。ヤツメウナギ、チョウチンアンコウ、オコゼ、チンアナゴ、フグ、ナマズ、・・・・」
と名前をあげた所で、私の顔を見て言い直す。
 
「ケイが恐い顔してるから、もう少しおとなしい魚にしよう。えっと、金目鯛、カジキマグロ、桜鱒、松葉ガニ、伊勢エビ、アオリイカ、・・・」
 
それで、舞音が各々の魚に扮して撮影されることになる。作詞担当の若生暢子さんが見学している。この撮影の様子を見て詩を起こすらしい。そうすると松本花子システムが作曲・編曲してMIDIと楽譜が翌日には届くはずである。
 
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カジキでは長い角のような“吻(ふん)”を付けた着ぐるみを着て、吻で船板を貫通し、釣り人役を演じる木下宏紀(浦島太郎のような衣装)を驚かせるシーンなどを撮影した。
 
(各々の着ぐるみは、ベースにする数種類の魚の着ぐるみを小道具係さんがその場で改造している)
 
「この嘴(くちばし)みたいなの何で出来てるんです?マジで合板の船板を貫通するって」
と木下君が焦って言う。
 
「スティール製だよ。あんたのお股に穴が開かないように気を付けてね」
「お股に穴は開けたくないですー」
「既に開いてるんだっけ?」
「開いてませんよ〜」
「まだ、ちんちん取っただけなの?それで開けてもらう?」
「嫌です」
 
しかし舞音は面白がって、用意されている色々なセットに突進して穴を開けていた。
 
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「男の子が女の子に突っ込みたい気持ちが少し分かりました」
などと舞音は言っている。
 
「あら、それ実体験してみる?」
などと雨宮先生が言うと
 
「ああ、寝るくらい構いませんよ」
と舞音は平気な顔をして返事する。
 
さすがに雨宮先生が次の言葉に迷っていたら、コスモスがギロッと睨むので
「今の無しね」
と雨宮先生は慌てて言っていた。
 

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松葉蟹ではハサミをつけた蟹の衣装で楽しく横歩きし、イカでは10本の足を動かして楽しそうに動いていた。
 
「あんたまるで足が本当に10本あるかのように動かすね」
「足は3本しかないんですけどね」
「なんで3本もあるのよ」
「真ん中の足って言うじゃないですか」
「あんた、真ん中に足が付いてるの?」
「雨宮先生のをハサミで切り取って頂戴しようかと」
「勘弁して」
 
と雨宮先生の方が、パワフルな舞音に押し負けていた。
 
「あんた本当に気に入った。ここまで私が押されちゃうのは、ケイと醍醐以来だ」
などと雨宮先生は言っていた。
 

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そういう訳で『タイカジキ、カニエビ、イカタコ、サケマグロ』のPV撮影は楽しく完了したのである。
 
しかし軽率な発言の件ではコスモスからかなり叱られたので、舞音も昨日はちょっと調子に乗りすぎたかな?雨宮先生とマジで寝ることになってたら、やばかったかもと少し反省する。それで翌日出ていったら、既に楽曲ができているので驚く。
 
ほんとに松本花子先生って筆が速いんだと思う。譜面を見てもとても1晩で書いた曲とは思えないので、ほんとに凄いと思った。
 
この日はイリヤ・スタジオのアレンジャーさんの指導で歌の練習をし、3時頃には歌唱完成させた。
 
「君よくこの曲を半日で仕上げたね」
と感心される。
 
「先生のご指導が分かりやすかったですから」
 
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なお、この時点では伴奏はMIDI音源だったのだが、発売までには生バンドの演奏に置換するという話だった。
 

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この曲のc/w曲は『マネのマネキ・マネキン(舞音の招きMannequin)』というタイトルの曲で、着せ替えのように多数の服を着せられるマネキン人形が主役である。
 
この曲は物語仕立てである。
 
古い倉庫に舞音マネキン(まねまねきん)が、ほこりをかぶって放置されている。債権者みたいな人(演:秋風コスモス)が来て、倉庫の中のものを売りさばく。舞音マネキンは『10円』という値札が付けられ、ワゴンに入れられた。それをブティック経営者?の女性(花咲ロンド)が買っていく。
 
ロンドは舞音マネキンを店のショーウィンドウに置いた。そして毎日色々な服を着せる。
 
ここから舞音のファッションショーである。
 
シックな黒いビロードのワンピースは、ピアノの発表会に出る女の子(練習生の古村春菜:小4)の母親(桜木レイア)が買っていった。
 
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ハワイアンムームーは、かりゆしウェアを着た女子中生(恋珠ルビー)が買っていった。
 
紺のリクルート・スーツは、Tシャツとジーンズの女子大生(原町カペラ)が買っていった。
 
水色のマリンルックの服は、ブレザーとチェックのプリーツスカートの制服を着た女子高生(上田信希!)が買っていった。信希の女子ガールズとしての初出演である(もっとも過去に何度も女装で登場している気はするが)。
 
豪華な振袖は佐藤ゆか、ワンピース水着!は山口暢香、カジュアルウェアは高島瑞絵、ワークシャツ+ジーンズパンツは三田雪代、ウェディングドレスは木下宏紀!(一応男の子のはず)、イブニングドレスは長身の山本コリン、テニスウェアは水谷康恵、最後にセーラー服は水谷雪花が買っていった。
 
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(南田容子が出てないが、まだ桜を追いかけて全国を走り回っている最中である)
 
そしてお店はどんどん繁盛して、店員さん(ガールズ関東の子たちを動員)がどんどん増え、店の面積も広くなっていく。
 
そしてある日、舞音マネキンはショウウィンドウから降ろされる。そしてトラックに積み込まれる。
 
PVを見ている人は一瞬不安になる。
 
お店が儲かったから、古いマネキンは捨てられるのだろうか?と思わせる演出である。
 
しかし、トラックが到着したのは高級住宅街にある素敵なおうちである(*1).
 
花咲ロンドと彼氏(演:花ちゃん)が舞音マネキンを迎える。
 
そして舞音マネキンに可愛いドレスを着せて、家の玄関に飾ったのであった。
 
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舞音マネキンは全編無表情で演じているのだが、この玄関に飾られて、ロンドと彼氏が抱き合って家の奥に行った後、初めて笑った。
 
そこでCFは終わりである。この曲は最近人気上昇中のカジュアルなファッションブランド“ノノ・パパイヤ”のイメージCFとして制作された。テレビでは30秒バージョンが流されているが、動画投稿サイトや、本家サイトでフルバージョンを見ることができる。
 
(*1)松原珠妃の自宅で撮影させてもらった:舞音は珠妃からサインちょうだいと言われて嬉しそうに書いていた。むろん舞音も珠妃のサインをもらい大事そうにしていた。
 

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『マネのマネキ・マネキン』は、作詞は『タイカジキ、カニエビ、イカタコ、サケマグロ』と同じ、名寄多恵(若生暢子)だが、作曲は松本花子ではなく琴沢幸穂(千里)である。
 
タイトル曲の『タイカジキ、カニエビ、イカタコ、サケマグロ』がキャンペーン曲ということもあり、1オクターブちょっとの歌いやすい曲であるのに対して、このカップリング曲は音域が2オクターブを越える曲で、これをちゃんと歌えるのは、常滑舞音以外では、§§ミュージックでもアクア、東雲はるこ、七尾ロマンくらいしか居ない。結構な音域を持つ町田朱美や白鳥リズムにも出ない高い音まで使っている。
 
『タイカジキ、カニエビ、イカタコ、サケマグロ』の制作の時、若生暢子さんが
 
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「君、音域を確認させて」
と言ってチェックしていたので、それを琴沢幸穂に伝えて、わざと難しい曲にしたようである。
 
舞音は期待通りこの難曲をしっかり歌い、高品質の歌に仕上げた。若生暢子の意図は、この子の歌唱力をアピールしておくということでもあったようである。
 

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この曲はゴールデンウィーク直前の4月21日(水)に両A面扱いで発売されたが、テレビCMでたくさん『タイカジキ、カニエビ、イカタコ、サケマグロ』が流れた一方で、『マネのマネキ・マネキン』は動画投稿サイトなどにアップされたPVを見たり、FM局で多数のナビゲーターさんが気に入って掛けてくれたこともあり、ふたつの曲が違う客層の人にアピールして売れるという現象を招く。
 
それで一週間で30万枚を売って週間ランキング1位を取った(2位はキャッツファイブ、3位はファレノプシスで、いづれも“伏兵”に驚いたようである)。
 
5月中には50万枚を突破し、『とことこ・なめなめ・招き猫』のミリオンがたまたまの偶然ではなかったことを示した。
 
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『舞音マネキン』のPV(CF)で描かれた物語をぜひドラマにしようという企画がΛΛテレビから持ち込まれた。制作するなら“ノノ・パパイヤ”自身が制作費を提供するという話をまとめたらしい。
 
もちろん主演は、常滑舞音と花咲ロンドである。そのほか、秋風コスモスも出演したし、ラストで花咲ロンドと結婚する男性の役もPVと同じように男装の花ちゃんが出演する。ドラマのタイトルは『招きマネキン』である。
 
様々な洋服を買っていく客は多くの女優さんが出演してくれた。七尾ロマンと恋珠ルビー、松梨詩恩と羽鳥セシルも出ている。
 
1時間×4回という短いドラマだったが、舞音は“全くセリフの無い主役”という不思議な役をしっかり演じきり、彼女の名前を広く知らしめることになる。
 
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そばで客と店員がどんな会話をしていても表情を変えずにマネキンを演じきる常滑舞音の演技には、辛口の評論家さんたちも高い評価を出していた。これはひじょうに難しい演技なのである。
 
このドラマの主題歌としても『マネのマネキ・マネキン』が使用され、CDは益々売れて結局7月までにはミリオンに到達した。
 

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彼女のデビュー曲(ということになった)ブルボンのCMの曲のCDもじわじわと売れ続けていたが、5月には同じお菓子の第2弾CMが制作され放映される。このCMで舞音が歌った『風のいざない』も連休明けに発売された。ここまでに形成されたファンの大量買いもあって、こちらも6月までにミリオンを達成する。
 
(ミリオン達成の順序は、招き猫(2nd)→風のいざない(4th)→マネキン(3rd)の順)
 
3連続ミリオンにより、舞音は完全に§§ミュージックを代表する歌手のひとりとみなされることになった。
 

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なお『風のいざない』のc/w曲は『マイルドな夜明け』という曲でこれは実は同時期に放映開始されたホンダの新型スクーターのCM曲になっていた。
 
スクーターのCMには舞音自身が出演して乗っているが、舞音は4月生れなので、16歳の誕生日(*2) が過ぎた所ですぐに鮫洲の運転免許試験場に行って原付の免許を取得している。それでこのCMで実際に乗車することができた。
 
(*2)山のようにプレゼントが届いて舞音が仰天する。軽くトラック1台分あった。ホワイトデーの時よりずっと増えてる。
 
CFでは、舞音がこのスクーターに乗り、夜明けの道路を朝日に向かって走っていく所が映っている。実際にこのCMは早朝5時過ぎに、舞音の出身地に近い愛知県半田市の県道34号線で撮影された。舞音は高校生なのて、22:00-5:00の間は使用することができない。(でも3時に起こされて常滑市内のホテルから現場に連れて行かれている!)
 
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なお半田市の2021.4.25の日出は5:09、夜明けは4:35である。撮影は実際には4時から始まっているが、5時以降に撮影したものしかCFには使用していない)
 
ちなみに、このCMが受けて“夜明けに朝日に向かってスクーターで走る”という“舞音ごっこ”が若い男女の間で流行るが、朝日に向かって走る姿を撮影するのはひじょうに難しいので、動画投稿サイトでも、きれいに撮れているものは少なかった。
 
CMが好調だったため、メーカーでは舞音のロゴマークである招き猫模様がペイントされた特別仕様車“タクトマネー”(かつてのディオチェスタのように前面にバスケットを装備する)まで作り、それを使用して再度CFを撮影(今度は北九州空港に通じる道路上で撮影)した。
 
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北九州市小倉南区の2021.5.30の日出は5:07、夜明けは4:31である。例によって舞音は朝3時にホテルから連れ出され4時頃から撮影しているが5時以降に撮影したデータしかCFには使用していない。
 
しかし新しいCFを見た人たちは“前回より乗り方が上手くなってる”と評していた(前回は免許取り立てで撮影しているから下手でも仕方ない)。そしてメーカーはこの特別仕様車の1号車を舞音にプレゼントしてくれた。
 

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コスモス社長は舞音に
「当面路上では乗らないこと」
と厳命した。
 
「路上で乗らないと言うと、どこで乗れば・・・」
「まあ誰か二輪車の上手い人に指導してもらって練習するのはいいよ」
 
ということで、バイク歴8年で毎日バイク(Suzuki GSX-250R)で通勤している田崎さん(システム担当)が時々練習に付き合ってくれることになった。(舞音が個人的に田崎さんに指導料として毎回1万円払う:田崎さんは「もらいすぎ」と言って5000円になった)
 
コスモスとしては、この有望で、将来事務所の屋台骨を支えることになるかも知れない舞音に、事故など起こされると困るが、二輪の運転技能を持つのは、彼女の仕事に幅を持たせることになるだろうとも思われるので、練習はさせておきたいという難しい選択なのである。
 
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夏の日の想い出・星遮りし恋人(15)

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