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■夏の日の想い出・星遮りし恋人(5)

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(C) Eriko Kawaguchi 2021-05-06
 
フラワーライツが出演していた番組『マカロニグラタン』はフラワーライツの活動停止に伴い、後任の出演者として、小さなプロダクションの所属ではあるが、最近盛んに営業している“パンプキンコーチ”という中高生女子(男の娘1名を含む:学校にも女子制服で通学しているが本当に可愛い)のグループを採用した。3月上旬の収録から、フラワーライツに代わり登場した。降板することになったフラワーライツについては、リーダーの川中光梨がカメラの前に出て
 
「事務所が閉鎖になってしまい、活動ができなくなってフラワーライツは活動停止しました。この番組にも出られなくなってしまい、視聴者の皆さんごめんなさい」
 
と謝罪。パンプキンコーチのメンバーに
「急な降板で迷惑かけるけど、よろしくね」
と言って、全員とエア握手していた。
 
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この番組では少人数の(あまり売れていない)アイドルユニット4組が出演している。これまで出ていたのが、 6ix sense(一応メイン), Flower Lights, Donuts Center, Grotta Azzurra(“青い洞窟”という意味) の4組で、この中のFlower Lightsが交替してパンプキンコーチ (Pumpkin Coach:かぼちゃの馬車 *1)が加わった。
 
(*1)シンデレラの物語で、おなじみのカボチャの馬車とガラスの靴が登場するのはペロー版(サンドリヨン)で、原文では carrosse と書かれており、これが英語だと coach に相当する。6頭立ての巨大な重馬車である。現代でいえばロールスロイス・ファントムみたいなもの?なお、グリム版(アシェンプテル)では、2日目が銀の靴と黒馬の馬車、3日目が金の靴と白馬の馬車になっていて、“スリッパテスト”は金の靴で行われる(1日目は眺めるだけで参加しない)。
 
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ところが3月末にDonuts Center(ドーナツの真ん中)のメンバー2名が未成年なのにスナックのような場所で飲酒喫煙している写真が週刊誌で報道された。時計が映り込んでいて、時刻は23:35。日付も3/20であることが読み取れる。そもそも酒類提供飲食店に営業短縮要請もされている中(東京都は3/8-21の間、緊急事態措置期間になっていた)、そもそも夜間外出の制限がある高校生が、根本的に違法になる酒・タバコをしていたというので、この2名は即刻契約解除(つまりクビ)になる(ついでに高校も退学になる)。そしてユニット自体、当面の活動を自粛することになって、この番組からも降板してしまった。
 
フラワーライツの場合は、1月頃以降、あの事務所は変だぞというのが業界内でも噂になっており、制作側も万一の場合に備えて、代替グループを密かに探し検討していた。しかしドーナツセンターの場合は突然の不祥事で、制作側も何も準備が無かった。しかし番組はアイドルユニットが4組無いと成立しない企画が多い。
 
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プロデューサーは翌日に番組収録をしなければならないという時間の無い中、多くのプロダクションを傘下に持つ、∞∞プロの鈴木一郎社長に電話した。
 
「(番組の予算が無いので)安いギャラで使えてスケジュールの取れる、10代女子のアイドルユニットが居ませんか」
と打診する。
 
「今月結成したばかりの7人組のアイドルユニットがいるんだけど。年齢は16歳から19歳」
「おお、それは素晴らしい。ぜひ出演してください。ギャラは1回20万円とかでもいいですか?(つまり1人1回の手取りは約1万円:超低ギャラである)」
 
「いいよー(適当に答えている)」
 

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ということで、
「明日収録する番組に出て」
と唐突に言われたのが、フラワーサンシャインだったのである。
 
彼女たちが白河夜船社長が作ってくれた真新しい制服を着て放送局に来ると司会者のネルネルが顔をしかめて言った。
 
「なんか見たことのある奴がたくさんいるんだけど」
 
「おはようございます。今月から始動した“フラワーサンシャイン”でーす。チャンネルさん、ケンネルさん、よろしくお願いしまーす」
と立花紀子が言った。
 
みんなが一緒にお辞儀をする。
 
「お前がリーダー?」
とケンネルが紀子に尋ねる。
 
「すみません。私がリーダーの桜井真理子です。チャンネルさん、ケンネルさん、よろしくお願いします」
 
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と桜の花のマークの入った制服を着た桜井真理子が言う。
 
フラワーサンシャインのメンツは各々シンボルマークとして花のマークを制服に染め抜いている。これも白河社長のアイデアである(制作に一週間掛かった)。紀子は橘(たちばな)、メインボーカルの祥子はヒマワリのマークである。
 
「お前もあちこちの番組で見たことあるな」
「たぶんアクアのリハーサル役とかによく借り出されたので」
「§§ミュージックさん?」
「私とこちらの安原の2人は§§ミュージックから♪♪ハウスへの出向です。あとの5人は♪♪ハウス所属です」
 
「ああ、ナイトさんとこに拾ってもらったか」
「はい、助かりました」
と紀子。
 
「そうだ。立花、お前高校卒業したんだろ?もう淫行にならないから1度やらせろよ」
 
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安原祥子がギョッとしているが、紀子は慣れっこである。
 
「寝てもいいですけど、ツイッターに写真付きで投稿しますけど」
 
と軽く返す。
 
「まだ謹慎になりたくないから、やめとくか」
 
この程度のジャブはケンネルと紀子の間では日常茶飯事である。しかしこの手の際どいネタにちゃんと反応してくれる立花紀子の復帰は、ケンネルも歓迎だったようである。
 
(ケンネルは実際には枕営業には応じない。また法的には未婚だが売れていなかった時代から長年連れ添った事実上の妻がいる。糟糠の妻で仲も良いようだが、なぜ正式に婚姻しないのかは誰も知らない)
 

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§§ミュージックでは、毎年春に実施していた信濃町ガールズの入団オーディションは今年は行わないことにした。すぐ先にビデオガールコンテストがあるのて、入団したい人はそちらに応募してくださいということにした。
 
地方の信濃町ガールズからの昇格試験は実施した。全国で20名の昇格希望者がいたので、ホンダジェットを使って熊谷に集め、郷愁村内のスタジオで試験を行った(プレゼント集積場の5階)。
 
醍醐春海(千里:歌担当)、振付師のジュン広多さん(ダンス担当)、から各々にかなり辛口の批評がある。泣き出してしまう子もいるが、それで潰れてしまうような子には芽が無い。その意見を参考にして努力して短所を克服または長所を伸ばす子は来年以降にチャンスがある。しかし見学していた悠木恵美が「私たちの時より遙かに厳しい」などと言っていた。
 
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昨年もこの2人にコメントさせたのだが、昨年千里からボロクソ言われた子が今年再挑戦して、美事合格した。千里が
「君、この1年でほんとに進化したね」
と言うと、彼女は嬉し泣きしていた。
 
しかしその様子を見て、今回落ちた人たちも自分たちがこれから1年何をすれぱいいかが分かったようである。
 
今回の合格者は下記3人である。
 
信濃町ガールズ東海・森村雪子(中2)“鈴鹿あまめ”
信濃町ガールズ九州・松元徳代(中1)“長浜夢夜”
信濃町ガールズ沖縄・平良百合(中3)“花貝パール”
 
学年は4月からのものである。“”でコメントしたものが、半月後にコスモスが付けた彼女たちの芸名である。1年前にボロクソ言われて、それを改善して今回合格したのは東海の森村さんである。今どき“子”の付く名前は珍しい。東海からは昨年の安原祥子に続いて2年連続の昇格となった。しかしその安原さんも本名が田中優子で、やはり“子”のつく名前である。
 
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沖縄の平良さんは宮古島出身で、実は恋珠ルビーの親友である。そもそも彼女が信濃町ガールズ沖縄に参加していたので、恋珠ルビーは自分も入りたいと言って、木下先生のところを訪れ“審査”してもらった。すると君は上手すぎるから、本オーディションを受けなさいと言われ、それで美事優秀して初代ビデオガールになったのである。そういうわけで恋珠ルビーの親友なので、コスモスは似た系統の命名をしてあげた。
 

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「でも地方ガールズがまともに活動するようになったのって、去年の春からですよね。それ以前は、“活動”とか無かった気がする」
と昇格試験が終わった後、悠木恵美が尋ねた。
 
「まあ元々地方の信濃町ガールズというのは、コストカットのために存在していたものだからね」
と、審査終了後、一転して普段の優しい雰囲気になった千里が言う。
 
スポーツ選手という“本職”がそれを育てたのだろうけど、この子は本当にon/offが凄い。
 
「そうだったんですか?」
「あれはケイ会長がまだデビュー前に所属していたPatrol Girlsのシステムを真似したものなんだよ」
「へー」
と悠木恵美は言っているが、そのPatrol Girlsを知らないようだ。
 
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「昔&&エージェンシーという事務所に、Parking Serviceというグループアイドルが居てさ、そのバックで踊っていたのがPatrol Girlsという子たちだった。ParkingServiceに欠員が出ると、Patrol Girlsから昇格することも多くて、次世代のアイドル候補生だったんだよね」
 
「なるほど」
「それで地方公演に行く時に、全員連れて行くとお金が掛かるじゃん。それでParking Serviceは本人たちが行かなきゃ話にならないけど、バックダンサーは各々の現地で地元の女の子を調達していた。その子たちもやはりPatrol Girlsと呼ばれていて、ファンの間では“地方メンバー”と呼ばれて、ファンサイトではリストが作られていた」
 
「わぁ」
「だから信濃町ガールズの地方メンバーというのも、§§ミュージックの歌手が地方公演する時にバックで踊ってもらうことが目的だったから、“信濃町ガールズ”と名前を付けて、その会員証を渡すだけで、普段は会費が無料のファンクラブ会員という程度の位置づけだった」
 
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「会費無料だけでもいいですね」
 
「ところがコロナでライブツアーができなくなった。それで彼女たちにしてもらうことが無くなってしまった」
 
「それでレッスンを始めたんですか」
 
「そういうこと。月に1度どこかに集まってもらって、一緒に練習する。だからこの1年で地方ガールズのレベルは随分上がったと思うよ」
と千里は言った。
 
私は特にコメントせずに頷いていた。
 

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「ところで“虹色の部屋”の噂って、やはり本当だったんですね」
と悠木恵美は言った。
 
「何だっけ?」
 
「用賀の男子寮にはドアが虹色にペイントされた部屋があって、そこで男の娘を女の子に改造する手術が行われているって」
「何それ〜〜〜!?」
と私は思わず声をあげた
 
「違うんですか?」
「虹色にペイントされた部屋は無いなあ」
と家主の千里が言う。
 
「でも男子寮では、毎日の食事に女性ホルモンを混ぜてるんでしょ?それで充分女の子らしい身体付きになったら、最終的に虹色の部屋に行って完全な女の子になるって」
と悠木恵美。
 
「マリちゃんあたりが妄想しそうな話だ」
と言って千里が笑ってている。
 
「無いんですか?」
「少なくとも食事に女性ホルモン混ぜたりはしないよ」
と私は言った。
 
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「じゃやはりガセネタなのかなあ」
「まあ、ゆりこに寮の管理任せたら、ほんとにそんなシステム作りそうだ」
「危ないのは、マリちゃんとか、ゆりこちゃんとか、雨宮先生とか」
 
「男子寮生があまり暴走しないように、志乃舞ちゃんのお母さんに寮母さんになってもらったんだけどね。自分の息子がちょっと暴走して娘に変身してしまったのを見ているからね」
 
と私は言った。
 
大崎志乃舞はまだ高校生だが、既に戸籍の性別訂正も完了している。
 
「ああ、実例を見ていたら早めに異常に気付きますよね」
「既に全員異常かも知れないけどね」
と千里は笑って言っていた。
 

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