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■夏の日の想い出・星遮りし恋人(7)

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出演している参加者は、コロナ下でエキストラが使えないという事情もあり、信濃町ガールズ・ミューズを含む§§ミュージックのタレントを総動員し、♪♪ハウスの人で手が空きそうな人にも出てもらった。この日は上田兄弟(姉妹?)も男装で男役を演じている。一般的な女子よりは背が高いので、男装で参加してもらった方が助かるのである。仮面舞踏会の参加者は、男性が女性よりずっと多くなければならない。
 
舞踏会出席者↓
 
所属記号:
C5;Cold Fly 5
FS:Flower Sunshine
BB:Bun-Bun
♪:Other ♪♪ House artists
LO:Lyceennes d'Or
 
(女子 24名)
高崎ひろか 悠木恵美 三田雪代 太田芳絵 中村昭恵 斎藤恵梨香 今川容子 坂田由里 青木由衣子 左蔵真未 水谷康恵 水谷雪花 甲斐絵代子 豊科リエナ 箱崎マイコ (15)
 
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竹原比奈子(FS) 神谷祐子(FS) 山道秋乃(FS) 水端百代(FS) 田倉友利恵(C5) 花咲鈴美(C5) 吉沢蕾美(BB) 阪口有菜(BB) マリ (9)
 
(男子 51名)
木下宏紀 春日ライト 夢島きらら 花園裕紀 直江ヒカル 直江アキラ 山鹿クロム 三陸セレン 長浜夢夜 西宮ネオン 弘田ルキア(AF) (11)
 
/以下は女子メンバーの男装
品川ありさ 山下ルンバ 桜野レイア 桜木ワルツ 秋風コスモス 川崎ゆりこ 姫路スピカ 花咲ロンド 石川ポルカ 原町カペラ 七尾ロマン 恋珠ルビー 町田朱美 東雲はるこ ケイ 千里 美高鏡子 (17)
 
佐藤ゆか(LO) 南田容子(LO) 山口暢香(LO) 高島瑞絵(LO) 大崎志乃舞 甲斐波津子 山本コリン 大仙イリヤ 鹿野カリナ 鈴鹿あまめ 花貝パール (11)
 
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松梨詩恩(♪) 羽鳥セシル(♪) 広沢ラナ(♪) 水野雪恵(♪) 神田あきら(♪) 米本愛心(C5) 木原扇歌(C5) 桜井真理子(FS) 安原祥子(FS) 立花紀子(FS) 溝口ルカ(BB) 中町リサラ(BB) (12)
 
 

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75名の舞踏会参加者、キャプレット夫妻や親族・使用人、27人の楽団まで入ると、かなりのボリューム感がある。この広間のセットは30m×30mという体育館並みの広さがある(だからなかなか目的の人に会えない)。外側は実は短期間で建てられる鉄骨構造だが、内装は華やかでこの内装に5000万円掛かったらしい。
 
しかし私まで男装で参加させられた!男装はほんとに久しぶりだった。マリは女装参加である。私もマリも見学者だったのだが。
 
フラワーサンシャインのメンバーは映画の撮影なんて初体験なので、ずいぶんはしゃいでいた。
 
弘田ルキアは坂出モナが電話して呼び出した。桜木ワルツはマネージャーとして臨席していたのに「あんた演技できるだろ?」と河村監督に言われて、(男性用)衣装を渡された。
 
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甲斐波津子は150cm台だが、男装参加になった。実は映画スタッフが、絵代子がわりと背が高いのに気付き「良かったら男装して男性側を演じてくれない?」と声を掛けた。スタッフさんは彼女が元男子だったことを知らない。絵代子が一瞬戸惑うような表情をした。すると姉の波津子が「私が男役します」と名乗り出たので、甲斐波津子が男性側を演じることになった。
 
大崎志乃舞は男装は平気である。彼女は自分の性別について心の整理が出来ている。
 
山本コリンは「男役ですか?やります!やります!」と楽しそうに名乗り出た。コリンも安原祥子同様に地方からの昇格メンバーなので、とにかく目立ちたがりである。彼女が名乗り出たのを見て、同様に地方昇格メンバーの大仙イリヤと鹿野カリナも男役に志願した。新人の鈴鹿あまめと花貝パールは、有無を言わさず男性用衣装を渡された。
 
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「なんで誰も台詞を言わないの?」
とマリが訊く。
 
「感染拡大防止の観点から基本的に無言で演じるんだよ」
と私は答える。
「へー」
 
演奏をしている楽団も音を出していない。演奏しているふりをしているだけである。これも音は別録りして重ねる予定である。但し弦楽器、特にリュートは原理上音が“出てしまう”(ヴァイオリンは松ヤニを塗ってない弓を使用)。しかしこの音は使用しない。
 
ちなみに演じている人たちと、監督・脚本家や見学している私たちとの間は透明アクリルの板で区切られている。むろんこちらに居る人たちは全員マスクを着けているし、ここに入る時は非接触式体温計で検温して、手のアルコール消毒をしている。撮影している3人のカメラマン(*1)もマスクをしている。とにかく厳戒態勢である。
 
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(*1)多くの映画は1台のカメラで全てを撮影するが、河村監督はテレビ番組の撮影のように複数のカメラで同時に撮影するのが好きである。『気球に乗って』の映画では、島への緊急着陸シーンを島側・海上・気球内から同時撮影している。今回の舞踏会シーンは会場が広いこともあり、カメラを8台も使用した。
 
(8台のうち平面から映しているのは3台でカメラマンが付いており。お互いに映り込まないような絶妙な位置に置いている。残りの5台は天井に張ったケーブルに取り付けたもので位置を動かして撮影できる(4台は前後左右に動く・1台は一段低い位置にあり円形に動く:モニターを見ながら動かしているのは美高助監督)。カメラは全てブルー塗装しカメラマンもブルーの服を着ているので、万一映り込んでしまった場合も編集で消去しやすい。また天井の4台のカメラの映像をコンピュータで繋ぎ合わせてパノラマ的な映像にすることも可能である。これも『気球に乗って5日間』で使用した技法である)
 
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「でもジュリエット役のアクアは可愛いなあ。あれ随分いいドレスだよね?」
「あのドレスだけで300万円したみたいだよ。縫い付けている宝石の値段を除いてね。それを入れると400万円近くになる」
「さっすがー!」
「ロザリン役の常滑舞音ちゃんが着てるドレスだって150万円だし」
「すごーい。豪華だね」
「安いドレスで撮影したら、映像も安っぽくなるからね。他の子が着けてる衣装も概ね50万円以上」
「きゃー」
 
このシーンの衣装代だけで6000万円掛けている。アクア映画なので予算が取れるのである。
 
「それも同系統のデザインばかりだと現実的におかしいから、10人のデザイナーさんに分けて発注している。更にロミオとベンヴォーリオの衣装は他の人のとは別の人のデザイン」
 
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「凝ってるね〜」
 

「でもアクアのドレスはかなり大胆に前が開いてるよね。胸も結構見えるけど、アクアのおっぱいも随分成長してるね」
「あれは偽装だよ。ただの付け乳だよ」
「本物じゃないの〜?」
「アクアにおっぱいがある訳無い」
「それは良くない。やはりアクアは拉致して取り敢えず豊胸手術を受けさせなければ」
「それ犯罪だから」
 
でもこのシーンでは、映画を見た人たちの多くが
「アクアの胸はかなり大きく育っている」
という感想を持ったようである。
 
(実際に演じているのはアクアFであり、Cカップの実胸を曝している)
 

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「だけどみんな仮面着けてるから、誰が誰だか分からない」
「まあそういう状況だから対立している家の息子が侵入できる」
「そうか。そういうシチュエーションだった」
 
マリはこの撮影を見ながら(ついでに撮影されながら)『魅惑のマスカレード』という詩を書いた。マスカレード(Masquerade) は“仮面舞踏会”の意味である。河村監督と脚本の小森勇子さんに見てもらうと「うん、いい感じ!」と言っていたので、これに曲を付けることにした。
 

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舞踏会の場面で演奏している楽団はルネサンス期の楽団を再現している。使用した楽器は16世紀頃に実際に使われていた楽器だが、当時の楽器をあるいは調達したり借りたり、あるいは楽器メーカーに依頼して制作してもらっている。
 
楽団 27人
 
ヴァージナル(チェンバロの一種)1人
ポジティブ・オルガン(小型のパイプオルガン:現代の電子オルガン程度の大きさでルネサンス期にはお金持ちの邸宅にはわりと置かれていた。“設置”するので移動はできない)1人
 
ヴァイオリン(アマティ作ヴァイオリンのレプリカ)6人
リュート(吟遊詩人たち愛用の楽器でギターのルーツ)4人
ヴィオール(コントラバスのご先祖で少し小さい)1人
 
ランケット(ファゴットのご先祖)1人
ツィンク(トランペットのご先祖)2人
セルパン(ホルンのご先祖)1人
サックバット(トロンボーンのご先祖)2人
 
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ルネッサンスフルート2人
リコーダー(ソプラノ)4人
リコーダー(アルト)1人
 
指揮者1
 
この時代の指揮者は長い杖を持っていて、それを地面に撞くことでリズムを指示していた。現代の指揮棒は19世紀に登場したもので比較的新しい。少し後のバロック期になると巻紙を使用した指揮(これを振ったようで、使い方は多分現代の指揮棒に近い)が出てきて、18世紀には現在でも行われるコンサートマスターが弓の動きでテンポを指示するのが定着している。今回の映画ではルネサンス期に主流であった、杖を地面に撞く方法を採用している。
 
(現代のオーケストラには指揮者がいるものの、個性の強い指揮者が増えて意味が分からない(特に客演指揮者の指揮はよく分からない)ので、結局楽団員はコンサートマスターの弓を見ながら演奏しているのが実態である)
 
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ヴァージナルはサマーガールズ出版が所有しているのでそれを貸した。アマティタイプのヴァイオリン、リュート、ルネッサンス期のフルートおよびリコーダーは普通に販売されているので映画制作委員会で購入した。ポジティブ・オルガンは、千葉の楽器メーカーが制作できるということだったので作ってもらったが、本当に動かせない。この広間のセットに作り付けである。若葉が欲しいと言っているので、映画制作終了後は郷愁村に移設するかも。ホテル昭和の玄関ロビーに置きたいらしい。昭和というより、慶長になりそうだが!?
 
それ以外の楽器は、アスカが教授をしている音楽大学が所有していたので、私のコネで借りた。ついでに演奏できる人も借りた!
 
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なお楽器のチューニングは、ポジティブ・オルガンをミーントーンで制作してもらったので、ヴァージナルもそれに合わせて調律し、他の楽器はそれらに合わせてもらった。この時代はまだ平均律は生まれていないが、和声が重視されはじめた頃で、3度が美しく響き合うミーントーンは好まれていた。
 

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舞踏会に出ている男女のファッションも当時の服を再現したものである。中世の女性は頭巾などで髪を隠していたが、この頃から女性は髪を人前で見せるようになって、その髪につける髪飾りが流行する。現代では教会の聖職者が頭に付ける小型の帽子・ビレッタなども当時女性達の間で流行した。
 
女性の服のフォルムは現在のものとあまり変わらない。スペイン発端のボーンを入れてスカートを大きく膨らませるものが流行り始めた頃である。今回の舞踏会シーンでも、24人の女性の中に4人、このタイプのスカートを穿いた人が混じっている(穿いているのは、高崎ひろか・三田雪代・田倉友利恵・マリ!)。当時イタリアでひじょうに流行っていたのは、ドイツ発端のスラッシュである。これは布に小さな切れ目を並行して多数入れるもので、特にそのスリットから下に着ているシュミーズ(現代でいえばむしろブラウスに近い)の布を引出すものはパフと呼ばれる。元々は戦場で傷んだ服を無理矢理つなぎ留めて着ていた兵士の服装がヒントになったものらしい。現代の穴あきジーンズと似た発想か?
 
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今回の舞踏会ではほぼ全員がこのスラッシュの入ったドレスを着ている。
 
また胸元を大きく開けるのも流行っており、極端な例ではおへそが見えるくらいの深い開きのある服を着ていた人もあったという。今回ジュリエット役のアクアが着ている服も胸の下付近まで開いている。それでバストが一部見えているのである。このジュリエット用の服のデザインは、これをアクアFが着ることを知っていた美高鏡子助監督が自分でデッサンを描きデザイナーさんに依頼したものである。当時でもかなりの高級品だったシルク製で、金糸も使い、本パールを10個縫い付け、胸元にはダイヤも縫い付けた豪華な品である。映画公開後はこの衣装はロザリン役の舞音が着ている服と一緒に展示予定である。
 
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男性のファッションは、日本では“カルサン袴”と呼ばれて徳川家康なども好んだという、膝上のタイツを大きく膨らせませるスタイルの流行が終わり、ズボン(ホウズ hose)あるいはスカートと長靴下(ブリーチ breeches 腿まであるタイプで現代のガーターストッキングに近い)の重ね穿きが主流となった時期である。タロットカードの愚者・魔術師・ページなどの服装がこの時代の男性ファッションになっており、タロットがこの時代に生まれたものであることを想像させてくれる。ズボン(あるいはスカート)を腰ベルトで留める手法が生まれたのもこの時代である。それまでは上着からガーターで吊っていた。
 
男性がスカートを着用する場合もあるが、その場合はズボンと同様に短い丈のものである。女性は床近くまであるロングスカートを着用する。
 
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今回の舞踏会参加者で上田兄弟(姉妹?)はスカートを穿いているが、短い丈なので、女性の服には見えない。また2人はヒゲ(付けひげ)も付けている。当時は、顔にデンプンを塗って、付けひげを貼り付けていたらしい。
 
(他の男装参加者もヒゲを貼り付けている。立花紀子や神田あきらが面白がっていた)
 
女性もドレス一辺倒から上着とスカートが分離した服が現れていた。この時代の上着は前を多数の紐で結んだボディスと呼ばれるものである。ホディスは男性でも着用していた。ただし今回の舞踏会シーンではボディスを着けている人は男女とも居ない。
 

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夏の日の想い出・星遮りし恋人(7)

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