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■夏の日の想い出・星遮りし恋人(10)
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最初のホームルームが終わってから、大城さんの周囲に女子が集まる。信希も後を振り向いて、彼女（？）の方を見る。
「大城さん、トイレはどっち使うの？」
「よかったら女子トイレ使わせて。着ている服の都合で男子トイレ使えないし」
「いやこの服で男子トイレに入ろうとしたら追い出されるよ」
「トイレは構わないんじゃないの？」
とクラス委員に先生から指名された花村翡翠も言うので、みんな「まあトイレはいいか」という雰囲気になる。たぶん彼女（？）は他の女子に危害を加えるようなことはないだろう。
「体育の着替えは？」
「それ、個室の更衣室を用意すると言われた」
と本人が言うと、ホッとしたような空気が流れる。
女子トイレの使用までは容認しても、彼女（？）と同じ更衣室で着替えるのには抵抗を感じる子も多かったようである。
しかし、彼女（？）の存在があまりにも強烈だったため、信希は全く目立たなかったし、この日は普通に女子トイレを利用し、６時間目の体育の時も他の女子と一緒に普通に女子更衣室で着替えた（来週頭に受講票を提出するまでは必修科目を並べた暫定時間割で稼働している）。
信希は普段も女子用楽屋を使っているので、女子と一緒に着替えるのは平気だし、女子の下着姿を見ても何も感じない。もっとも隣で着替えた涼花から「のぶちゃん、おっぱい小さいね」などと言われて触られたが！
むろん信希は女の子に胸を触られても何も感じないし、女の子の胸を触っても何も感じない。普段から信濃町ガールズの女子メンバーにそのあたりは充分“鍛えられて”いる。反応するシステムが既に存在しないという問題もあるが！
雪渡知香（七尾ロマン）は２組だった。学校が終わって一緒に送迎の車で寮に戻るが
「どうだった？」
と知香から訊かれて
「何か普通だった」
と答える。
「そうだろうね。のぶちゃんが女子の中に入って何か問題が起きる訳ないよ」
と言って、彼女は笑っていた。
「講義申し込みの件で相談するのに、後で、のぶちゃんの部屋に行っていい？」
と知香が尋ねる。
この学校は単位制なので、どの授業を受けるかは自分で決めて申し込みをしなければならない。この時必須科目をちゃんと選択するようにすることと、授業の時間がぶつからないように選択する必要がある。
「うん。いいよ。鍵掛けてないから、反応が無かったら勝手に入って。きっと寝ているだけだと思う」
「ＯＫＯＫ」
と言って、知香は何だか楽しそうだった。
課題になっていた、舞音とYe-Yoのマネージングであるが、舞音については、信濃町ミューズ最年長の悠木恵美(2000年生)が、自分が彼女のマネージャーをしてあげたい、と申し出たので認めることにした。
彼女はそもそも近いうちにミューズを卒業したいと言っていたので、何かしたいことがあるのかなとコスモスも思っていたのだが、彼女は芸能界には残りたいけど、バンドとかをする才能も無いしということで、マネージャーという道を選んだようである。確かにこの世界には自分の見果てぬ夢を次世代の子に託してマネージャーになる人が時々いる。
思えば彼女は昨年秋頃から、他の子の音源制作を見学させてもらったり、熊谷のブレゼント仕分け場の見学をしたり、また若いガールズが放送局に行く時に付き添ってあげたりなどして、またお使いや車での送迎を買って出たりして（彼女は18歳で運転免許を取得しており、既に２年間の運転経験がある）、裏方の仕事を少し勉強していたようであった。
それでもマネージングは初体験なので、３月上旬以降舞音の担当をしてくれていた村上麗子をそのままサブとして残し、当面一緒にマネージングすることにした。
それで悠木恵美は、信濃町ミューズを卒業となる。これまでのＢ契約（研修生）を、§§ミュージックとの雇用契約（社員契約）に切り替えた。
「恵美ちゃんのレベルだとこれまでより手取りが減ると思うけど」
「大丈夫です。私、贅沢とかしないし」
信濃町ミューズのメンバーは、“デビュー”はしていなくても、結構多くの番組に出演していて、少なくともフラワーサンシャインなどより良いお給料をもらっている子が多い。悠木恵美が（バラエティの雛壇要員、ドラマのその他大勢役などで）出演していた番組については、大半を高校を卒業して活動時間が多く取れるようになった、三田雪代に代わってもらうことで、多くの放送局側の承認を得た。（一部三田が出演中の番組とスケジュールがぶつかるものは、まだ高校生だが太田芳絵に代わってもらった）
「寮は出ないといけないですよね？」
「コロナが落ち着くまではそのまま寮に居なよ」
「じゃそうしようかな」
♪♪ハウスに出向することになった桜井真理子と安原祥子も同じ理由で、当面、寮に残ることになっている。
そういう訳で、本年度４月時点での女子寮居住者は下記である。
数字は↓のような意味である
契約年度 生年度:現在学年(契約時学年)
学年の代わりに年齢で書いているものは年度中にその年齢になるということで、4月1日現在の年齢は表記年齢マイナス１である。
本棟 3人
2019 1974:47歳(45歳) 天羽亜矢子 寮母 高崎ひろかの母
2014 2001:20歳(中1) 天羽飛鳥“松梨詩恩”高崎ひろかの妹
2014 1998:23歳(高1) 4.川内峰花 “花ちゃん”“山下ルンバ”副寮母
7F 7人
2014 1999:22歳(中3) FG15.佐藤絢香“品川ありさ”最後のフレッシュガール
2014 1999:22歳(中3) 2014繰上優勝.柴田邦江“高崎ひろか” 初代ロックギャル
2015 1999:22歳(高1) 2015繰上優勝.大村祭梨“花咲ロンド”2代目ロックギャル権利者
2015 2004:高2(小5) 2015-1.秋田利美“白鳥リズム”(第２回ロックギャルコンテスト優勝：年齢不足)
2016 2000:21歳(高1) 2016-1.中井朋絵“姫路スピカ”第3代ロックギャル
2017 2003:高3(中2) 2017-1.柳田章枝“石川ポルカ”第4代ロックギャル
2018 2002:19歳(高1) 2018-1.森下比南代“原町カペラ”第5代ロックギャル
6F 9人
2019 2005:高1(中2) 2019-1.月乃岬“東雲はるこ”（ラピスラズリ）
2019 2005:高1(中2) 2019-3.落合茜“町田朱美”（ラピスラズリ）
2020 2005:高1(中3) 2020-1.雪渡知香（石川県 2005.8.7）“七尾ロマン”
2020 2006:中3(中2) 2020-1.新里好永（宮古島 2006.7.1) “恋珠ルビー”
2020 2005:高1(中3) 2020-12.杉浦舞美 常滑市 “常滑舞音（マネ）”
2020 2005:高1(中3) 2020-9.緒方飛蝶 韮崎市 “甲斐波津子”
2020 2007:中2(中1) ↑同室 妹の美鶴“甲斐絵代子(エーヨ Aejo)”
2017 2000:21歳(高2) 2017-9.西岡空世“悠木恵美”2021.4引退
2020 1997:24歳(23歳) 上野美津穂 カウンセラー
5F 7人
2015 2001:20歳(中2) 2015-8.佐藤ゆか “リセエンヌ・ドオ”
2015 2002:19歳(中1) 2015-10.南田容子 “リセエンヌ・ドオ”
2016 2003:高3(中1) 2016-2.山口暢香“リセエンヌ・ドオ”
2016 2003:高3(中1) 2016-5.高島瑞絵“リセエンヌ・ドオ”
2018 2001:20歳(高2) 2018-4.高橋夏実“桜井真理子”“Flower Sunshine”
2020 2002:19歳(高3) 田中優子“安原祥子”2018東海参加 2020本部昇格“Flower Sunshine”
2017 2002:19歳(中3) 2017-2.大西香緒“三田雪代”
4F 7人
2017 2004:高2(中1) 2017-3.島原世令菜“中村昭恵”
2018 2005:高1(中1) 2018-2.上野有里絵“今川容子”
2018 2005:高1(中1) 2018-3.川口朋世“坂田由里”
2018 2005:高1(中1) 2018-7.松田志帆“青木由衣子”
2019 2003:高3(高1) 2019-4.諸田望美“太田芳絵”
2019 2004:高2(中3) 2019-10.坂井光子“斎藤恵梨香”
2017 2005:高1(小6) 上田信希 直江ヒカル 2017応募参加 2021春男子寮から移動
3F 6人
2019 2005:高1(中2) 2019-5.広原恵美“左蔵真未”
2019 2005:高1(中2) 魚中広菜 山本コリン 富山県1位で北陸４位 2019本部昇格
2019 2006:中3(中1) 2019-12.溝口千歌“水谷康恵”
2020 2007:中2(中1) ↑同室 妹の溝口双乃 “水谷雪花”
2020 2006:中3(中2) 2020-7.横山朋菜 福岡 “箱崎マイコ”
2020 2007:中2(中1) 2020-5.植野純央 “豊科リエナ” 東京在住
2F 4人
2020 2004:高2(高1) 酒井青花 大仙イリヤ 2018年G関西参加、2020年本部昇格
2020 2006:中3(中2) 佐藤晴恵“鹿野カリナ” 2019石川県4位（月乃岬,雪渡知香,落合茜に次ぐ）北陸から2020昇格
2021 2007:中2(中2) 森村雪子“鈴鹿あまめ” 2020G東海加入 2021春昇格
2021 2006:中3(中3) 平良百合“花貝パール”2019G沖縄加入 2021春昇格
倉庫 1人
2010 1995:26歳(中3) 八重夏津美“海浜ひまわり” FG11 2011debut 2014春引退 以降不法滞在 2020春雑用係に昇格（でも部屋はもらえない）
女子寮の住人は現在44人も居て、この人数の食事を１人で作るのは不可能なので、調理助手を２人雇っている。どちらも足立区内に住む独身女性で、調理師免許を持っている。むろん厳しい健康管理をしてもらっている。通勤は１人は自家用車（タント）、１人はスクーター（ビーノ）である。
買い出しも大変なので通販の類をかなり利用している。お米・お肉・卵・野菜は契約農家・農場からの直送である。醤油・味噌などの調味料、小麦粉やパスタ等もメーカー直販である。お米は福島県内で無農薬栽培している農家と契約している。パンは足立区内のパン屋さんと契約している。
これらは男子寮との共同仕入れである（但し男子寮のパンは“マリベーカリー”から買っている：毎朝デンデンクラウド！が届けてくれるので，篠原君が「あの配達の人、テレビに出てる“デンデンクラウン”とかいう人に似てますね、などと言っていた）。お米や卵については実は私がオーナーをしているローキューツの女子寮（船橋市内：正確には40 minutes・江戸娘との共同寮）も相乗りしている。
（40 minutesのオーナーは千里、ローキューツは私で江戸娘はマリである：マリは江戸娘に所属していた男の娘選手に「手術代出してあげるよ」と唆して性転換手術を受けさせたが、本人は泣いて感謝していた。手術から２年経てば女子選手として登録できるはずである）
また寮生で食材が欲しいという子（女子寮にはわりと多い。男子寮でも木下君や篠原君はわりと自分でもお料理をしている）にも適当な価格で販売している。スーパーなどで買うよりかなり安いので好評である。
上田信希は結局“通学しやすいから”ということで、女子寮に用意されている部屋を“使わせてもらう”という建前？で実質男子寮から女子寮に移動した。
ゆりこは
「妹さんは連れて来ないの？」
と言ったのだが、信希は
「誠水は私に影響されすぎていると思うんです。しばらく１人で暮らさせた方が、ゆっくり自分の性別について考えられると思う」
と言って、男子寮に残すことになった。
もっとも“ゆっくり考える”には手遅れという気もするが！？
（たぶん雅水も去勢済みだと思う）
信希は§§ミュージックのホームページでも性別表示が“男”から“女”に変更された。
この後、上田信希はバックダンサーなどとしてテレビなどに出演する時もスカートのユニフォームを着るようになった。
また彼女（でいいのだろう）はプロフィール上の本名も信貴から信希に変更した。法的な名前はまだ信貴なのだが、彼はこの名前を当面使い、数年後に“永年使用”で戸籍上の名前を変更する“かも”と言っている（性別を変更してそれと同時に名前も変更する形になる気がする）。
信希の性別と本名の変更に、ファンたちはすぐ気付いたが
「まあ信ちゃんは女の子でいいよね」
と好意的に捉えたようである。
そしてファンたちの間では“次に女子寮に移動するのは誰か？”という予想大会になっていた。むろん圧倒的予想１位は木下宏紀である。
上田信希が引っ越ししてくる時、直前に千里が来て、また盗聴器や隠しカメラを５個も撤去した。
にも関わらず、３日後には
「やはり信ちゃん、ちんちん無いよ。割れ目ちゃんもある。しっかり“見た”」
という情報が女子寮生たちの間で伝搬していた。
信希は寮の部屋のドアをロックする習慣が無いので、千里がいくら隠しカメラを撤去しても無駄という気もする。
ちなみに、甲斐絵代子(Ye-Yo)が既に女の子の身体になっていることも１月中に女子寮生たちに“確認”されていたようである。
「12月中旬まではちんちんあったけど、年明けにはもう無くなっていた」
などと、身体を直した（治した？）時期まで特定されていた！
（女子寮生たちも全く何をやっているのか）
しかし甲斐絵代子が年末に体調が悪そうだったのは、どうも性転換手術を受けたせいだったようだ。そんなお金があったとは思えないが、誰か費用を出してあげたのだろうか（出してくれそうな人の心当りは多いが）。
[*前p 0目次 8時間索引 #次p] 夏の日の想い出・星遮りし恋人(10)
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