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■少女たちの晩餐(19)

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「学校で男子の列に並ばされるから、女子の友だちからは『なんで男子の列に並んでるの?』と言われるし、男子からは『お前女の列に行けよ』と言われるし、トイレも女子トイレにしか入れなかったし」(*19)
 
「まあ女の子には男子トイレは使えないよね」
 
「妹まで『なんでお兄ちゃんって女なのにお兄ちゃんなの?』と言うし」
 
実際千里のちんちんを見ているのは、生まれた時のお医者さん・助産師さん、乳幼児健診の際の保健師さん、それにおむつの交換をしていた母くらいである。千里は3歳の頃以降、一度も誰にも、ちんちんは見せていない(半分は小春の力にも頼っている)。玲羅は千里にちんちんが“付いてない”のを何度も見ている。父は1度もちんちんを見たことがないはずである。父は子供のおむつを交換したりする人ではない。その1度もちんちんを見てない父が最も頑強に千里に男を強制するのも不思議だ。
 
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「じゃ君のこと男の子だと思ってたのはご両親くらいなんだ!」
「だと思います。父は漁師なんで、私を跡継ぎの漁師にしたかったみたいですけど、そもそも私船酔いするし」
「そりゃ漁師になるのは厳しいね」
と判事さんは笑っていた。
 
そんな感じで、判事さんとは1時間ほど楽しく会話して面談は終了した。その後、美輪子叔母が迎えに来るまで裁判所内に留め置かれ、お昼休みに美輪子が迎えに来てくれたので、それで引き取られて裁判所を出た。
 
(*19)千里は話を脚色している。千里は幼稚園では女子トイレを使用していたが、小学1-3年の頃は結構男子トイレを使用していた(女子トイレを使っても咎められなかった)。4-6年生頃については本人は「男子トイレを使っていた」と言うが、蓮菜や留実子は「いや、女子トイレしか使ってない」と明確に否定する。どっちみち判事さんとの会話では自分が有利になるように脚色している。
 
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「あんた、裁判所に何の用事があったの?ブラジャー万引きしたとかじゃないよね?」
と美輪子から言われる。
 
「まあかぁ。ブラジャーくらいちゃんと自分で買うよぉ」
と千里。
 
「確かにあんた、母ちゃんよりお金持ってそうだし」
「さすがにそこまではない」
 
(千里は毎月遠駒貴子さんから振り込まれている金額を知らない)
 
「私の戸籍上の性別が女に変更されるかも」
「ほんと!?」
「私が男と登録されたこと自体が誤りなんだって」
「確かにそれは納得する。あんたはどこをどう見ても女だもん」
 
「札幌のS医科大でもそう言われた。半陰陽でさえないって」
「確かに確かに。あんたには男の要素が全く無い」
「それは自覚してたけどねー」
「そしてあんた男の子の気持ちが全く分かってない」
「蓮菜とかからもよく言われる」
 
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結局、美輪子の職場近くの大衆食堂で400円!の天麩羅定食(並)をおごってもらい、「仕事に戻らないといけないから」ということで、バス停の場所だけ教えてもらい、(駅前までの)バス代までもらって別れた。美輪子にはよくよくお礼を言っておいた。
 
お昼代を結局使わなかったので、それでお土産に「き花」を買った。
 
そして午後のバスで留萌に戻った。
 
旭川駅前15:00-16:57留萌駅前
 

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12月23日(祝).
 
もう冬休みが目の前であるが、この日は天皇誕生日の祝日で学校は休みである。
 
千里を含むN小合唱サークルのメンバーは市民体育館に集まった。この日行われるクリスマスイベントに出演するのである。これが6年生にとってはラストステージになる。
 
この日は月曜だが祝日なので、父の船は明日火曜日に出港する。それで父が家にいることもあり、千里は中性的な格好で出掛け、現地で合唱サークルの制服に着替えた。
 
「津久美ちゃん、冬休みに女の子になる手術受けるんだって?」
 
「そうなんです。既に病院で『あんたは女』って診断書もらったから、それで学校の書類も戸籍も既に女に訂正済みなんですけど、冬休みにちんちん切ってもらって完全な女になります」
 
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「ちんちん付いてても女なんだ!」
 
「卵巣・子宮・膣があるから、間違い無く女らしいです。ちんちんに見えるのは実際にはクリトリスが何らかの原因で肥大化したものらしいです」
 
「ちんちん切るの惜しくない?」
「ちょっと」
「逃亡するなら今の内だよ」
「どこに逃亡するんですか〜?」
 

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今年のイベントは予算があったのか、全員にケーキとシャンパンまたはシャンメリー(子供は当然シャンメリー)が入口の所で配られた。蓮菜は大人びた雰囲気があるので誤ってシャンパンを渡されたが、匂いで気付いて申告し、シャンメリーに交換してもらった。
 
「飲んでから『うっかり飲んじゃったけど、これお酒だったみたいです』とか言ってシャンメリー追加でもらえば良かったのに」
 
「さすがに馬原先生から叱られる」
「でも飲めるんでしょ?」
「母ちゃんから叱られて禁酒中」
「まあ小学生には早い」
 
みんな席に付いてから「おいしい、おいしい」と言ってケーキを食べた。
 
「黄金屋のケーキかな」
「こっちのはディーベルトのケーキだと思う」
「留萌のケーキ屋さん総動員なのかも」
 
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「もうこれでクリスマスは終わったな」
 

この日のプログラムはこのようになっている。
 
F幼稚園 ジングルベル・おおきなふるどけい
留萌商工会女声合唱団 アデステフィデレス、ファーストノエル
THE RUMOI BAND (支庁職員有志のバンド)
V小学校吹奏楽部
広中恵美オンステージ(1)
A菓子屋(バンド)
お元気会集団演技
N小学校合唱サークル ホワイトクリスマス・キツネの恋の物語
広中恵美オンステージ(2)
クリスマスツリー点灯式
 
留萌商工会女声合唱団は昨年のクリスマスイベントでは体育館の電源が落ちてしまって演奏できなかったので、今年は先頭の幼稚園の子たちの次に持って来た。また広中恵美ちゃんも昨年2度ステージをする予定が停電で1度しかできなかったので今年こそ2度ということで、またお願いした。彼女は昨年所属していたアイドルグループ“色鉛筆”をこの春に卒業したものの、卒業した後の方が売れている。夏に出したソロデビューシングル『ハートが勝手に動く』は26万枚を売るゴールドディスクとなった(*20).
 
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色鉛筆本体はいまだにゴールドディスクが無いのに!
 
色鉛筆は昨年卒業した吉田セリカちゃんもソロデビューを成功させており、色鉛筆はひょっとすると、歌手養成学校かも知れないという意見も出て来ているようである(実際メンバーは毎月レッスン代を払っているので、ギャラがそれに満たない子もいる)。むろんソロデビューしても売れなかった子の方が多い!!
 
(*20)現在では10万枚でゴールド、25万枚でプラチナだが、2003年6月までは20万枚でゴールド、40万枚でプラチナであった。当時はトリプルプラチナはミリオンより多い120万枚だった。90年代の“CDバブル”が終了したのに伴い、適正基準に改訂されたものと思われる。
 
(2000年以降さかんに“CD不況”と言われたが、実際には1990年代後半が異様に売れすぎただけのことであると思われる)
 
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A菓子屋(あかしや)は、留萌市および周辺の町出身の4人組の大学生バンド(V&B.女 V&KB.女 Gt.男 Dr.男/ベースの子がリーダーで作曲も手がける。男子メンバーもいるのに女子がリーダーなのは結構驚かれる)で、普段は札幌市内で活動している。名前はメンバー4人が全員、お菓子屋さんの息子・娘であることと、留萌市の木がアカシアであることに掛けている。
 
N小の出番は後の方なので、ゆっくりと待つ。昨年は漁協の団体さんが来ていて父も会場にいたので焦ったのだが、今年は漁協の団体さんはいたものの父はおらず安心して、コーラスサークルの制服(ペールピンクのチュニック+えんじ色のスカート:冬季はお揃いの黒のタイツを履く)を着ておくことができる。客の中に、父の同僚の漁労長・岸本さんはいたが、岸本さんはそもそも千里のことを女の子と思っているので全く問題無い。笑顔で挨拶しておいた。
 
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(父の友人で千里を男の子と思っている人は1人も居ない。父と馬が合いよく一緒に飲んでいる神崎さんなども父からよく“息子”のことを聞いているが、千里とは別に男の子もいて子供は3人と思い込んでいる!神崎さんの奥さんは“正しく”娘2人と思っている)
 
(岸本さんと父は元々相性が悪いのであまり話をしない。ただ、船上で機関長と漁労長が喧嘩したら船の安全運用に支障が生じるので、ふたりとも大人として表面上は穏やかに付き合っている。船長の鳥山さんが器量の大きな人で対立しやすいふたりを双方うまく立ててあげているのもある。また千里の母にしても岸本さんの奥さんにしても相互に年賀状・暑中見舞い、中元・歳暮を欠かさず、どこかに行ったらお土産を買ってきたりで、両者の関係を良好に保つ努力を日々している)
 
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昨年は途中でビンゴ大会をしたのだが、今年は何かあった時のために早めに進行させようというので、入場時に渡した整理券でコンピュータによる抽選が行われ、広中恵美ちゃんの1回目のステージの後、当選番号が発表された。当たった人は手をあげてもらい、動員している高校生のボランティアスタッフ(昨年千里たちが着たサンタガールの衣裳:動員されているのは多分女子高生のみだと思う)の手により商品が渡された。
 
千里は旭川ラーメン村のパスポート2枚セットが当たって、びっくりした。
 

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抽選会の後、A菓子屋の演奏を楽しんでから席を立ち楽屋口の所でスタンバイする。お元気会の演技が終わった所でスタッフの人がステージ上に壇を並べ、グランドピアノ(ヤマハのかなり年代物)を引き出す。
 
ピアノの前に美那が座り、香織も隣に座って譜めくり役になる。今日は蓮菜に指揮して(指揮しながら歌って)と言われていたので、全員が並んだところで黒いスーツを着た蓮菜が入ってきて、会場に一礼。美那とアイコンタクトをして最初の曲『ホワイトクリスマス』の演奏が始まる。
 
英語歌詞だが、英語の読めない子たちには片仮名歌詞が印刷された譜面を配って覚えたものである。千里や蓮菜たちは英語は全く問題無かった。
 
それが終わると、映子が篠笛を持って指揮者の横まで出てくる。そして『キツネの恋の物語』を演奏した。
 
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会場のほとんどの人が知らなかった曲だと思うが美しい掛け合いとハーモニーにみんな聴き惚れていたようで、演奏中会場内の雑談も停まり、静かに聴いてくれた。そして演奏が終わると物凄い拍手があった。
 

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それでN小の子たちがステージを降りた後、下手から入ってきた広中恵美ちゃんも拍手をしながら
「素敵な歌でしたね」
と言ってくれた。
 
そしてこの日2度目のステージを務めた。
 
その後、大きなクリスマスツリーのランプのスイッチを恵美ちゃんが入れてクリスマスイベントは無事終了した。
 
千里たちは体育館の女子更衣室で普段着に着替え退出した。制服は洗濯した上で6年生は3学期はじめに返却することになっている。
 

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12月24日(火).
 
千里が学校から帰ると母が
「中学から就学通知が来てたよ」
と言って見せてくれた(実際には中学ではなく教育委員会から来たもの)。
 
就学通知書
 
下記の通り、お子様の入学される学校を通知いたします。
 
入学日時:後日通知
学校名:留萌市立S中学校
児童名:村山千里
性別:男
生年月日:平成3年3月3日
 
S中学校では、1月26日(日)に入学予定者向けの説明会を行いますので、進学の可能性がある方はぜひご出席ください。なお私立に進学する方は1月中に教育委員会または所属の小学校にご連絡ください。
 

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性別:男、と書かれているの嫌だなあと思う。
 
案の定母は
「性別の変更は却下されたのかねぇ」
などと言っている(きっと却下して欲しいんだ)。
 
「まだ審理中なんだと思うよ」
と千里は答えた。
 

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この日はクリスマスイブなので、普段の年なら放課後、蓮菜の家に集まるのだが、蓮菜は来月上旬にある私立中学の入試に向けてお勉強で忙しい。それで千里は玲羅を連れて神社に行った。大神様が
「千里の妹は美事に霊感が無いな」
などと呟いているのは黙殺する!
 
(玲羅は“普通の人”よりは充分霊感があるが、千里と比べたら無いに等しい)
 
神社には、恵香・美那・穂花、更には留実子まで来ていた。小町がクリスマスケーキを買ってきていたので千里・玲羅・小春も入れて8人でケーキを取り囲んだ。
 
「神社でキリストさんの誕生祝いとかしていいんだっけ?」
と穂花が少し心配して言うが、小春は
「誰の誕生日でもめでたい」
と言う。
「そもそもクリスマスはキリスト教とは無関係だし」
「そうなの!?」
 
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「元々は冬至祭だよ。ヨーロッパの古いお祭り。キリスト教からすると異教のお祭りだから、中世には何度もクリスマス禁止令が出され、サンタクロースに死刑判決が出て、サンタクロース人形が火あぶりにされたりしている」
 
「うむむ」
 
「だいたいキリストの誕生日は12月25日ではなく、本当は5月20日らしい」
「へー!」
 
(2世紀の神学者“アレクサンドリアのクレメンス”の研究による)
 
「キリスト教のお祭りといったらイースター(easter)、日本語でいえば復活祭だよ」
「そっちかぁ!」
「カーニバルというのは?」
 
「イースターの前祭りみたいなもの。イースターの前40日間は四旬節といって肉食が禁止されるから、その四旬節の前にたくさん肉を食ってどんちゃん騒ぎしようというのがカーニバル(carnival)、日本語でいうと謝肉祭。だから、イースターの41-48日前くらいにやる。国や宗派によっても期間は違う」
 
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「お肉食べられないって大変だね!」
「現在では厳格な宗派以外ではほぼ無視される」
「ああ、外人さん、肉好きだもん。耐えられないよね。日本人なら肉食禁止にも耐えられるかも知れないけど」
 
「うちでは食卓にお肉やお魚が載ることはめったにない」
と留実子が言うと
「大変ね!」
とみんな言う。
 

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少女たちの晩餐(19)

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