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■夏の日の想い出・止まれ進め(26)

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9月3日(土).
 
ΛΛテレビで昔話シリーズ第10弾『牡丹灯籠』が放送された。
 
一般に知られている『牡丹灯籠』は明治期の落語家・三遊亭圓朝がまとめたものをベースにしたストーリーが多く、主人公の名前は萩原新三郎(はぎわらしんざぶろう)となっているが、今回のドラマは元々の『伽婢子(おとぎぼうこ)』のストーリーに沿っているので、主人公の名前も荻原新之丞(おぎわら・しんのじょう)である(*26)。
 
主な配役
荻原新之丞:岩本卓也
弥子:木田いなほ
浅茅:町田朱美
隣の住人:光帆・音羽 (XANFUS)
東寺の行者:月城すずみ
下男:魔暗胡瓜
食堂の店主:三藤幸雄
万寿寺の住職:木崎望夢
万寿寺の僧:丸本秀行
語り手:馬仲敦美
 
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この他、通行人を放送局のスタッフなどが演じた。信濃町ガールズも10人ほど通行人役で出ている(ノンクレジット。出演料1人3万円:3万円ももらえた理由は後述)。何とも低予算である。『竹取物語』の50分の1の予算で作られている。それでも一般的なドラマよりは豪華である。特にセットや衣裳をしっかり作っていた。
 

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町田朱美は岩本・木田の次に表示され
「嘘。私より木崎さんが上でしょ?私は今回セリフも無いのに」
と焦っていたが、
 
「いや、ぼくより町田さんのほうが実績は上だと思う。ぼくはレギュラーにもなったことないもん。それに今回の伽婢子(おとぎぼうこ)の役って、セリフが無いところを表情と仕草だけで演じるという難しい役。ぼくみたいな大根役者には絶対出来ない」
と言っていた。
 
(↑つまり女の子役がしたいのか?というツッコミ)
 
実際この2人のどちらを先にするかは局内でも議論があったらしい。ただ実際の2人の演技を見てみた人の多くが「これ朱美ちゃんの演技で物凄く引き締まっている」
と、その演技力を評価する声が高かったので朱美を先にしようということになった。
 
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最初伽婢子(浅茅)の役は「セリフもないし東雲はるこでいいのでは」という意見もあったのだが「いや、この伽婢子こそがこの物語の鍵を握ります」と沢口監督が言い、演技力のある町田朱美にさせることになった。東雲はるこが伽婢子の場合は、町田朱美に隣人役をさせる予定だった。朱美を伽婢子役に使用したので、隣人役は“いかにもノゾキとかしそうな人”という基準でXANFUSの2人が選ばれた!(でも2人の名前はラストに表示された。実際、端役専門の三藤幸雄さんを除くと最もキャリアが長い)
 
隣人役は最初から女性にさせる予定だった。例えば健康バッドとかケイナとかの男性にノゾキの役をさせると「こいつ本当にやってそうだ」と言われるので女性にさせようということにした(ケイナはきっと男の分類で良い)。朱美が隣人役をする場合は、隣の家を覗くシーンはカットする予定だった。
 
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東雲はるこやXANFUSの他のメンバーは通行人として出ている!
 
(ノンクレジット、ついでにノーギャラ!)
 

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編成局長は
「予算が低いのは申し訳無いけど、だからといって詰まらない作品にはしないで欲しい。美しい絵を撮って欲しい」
と言い、鳥山プロデューサーは
 
「だったら出演者のギャラを1〜2割上げてください」
と言って、認められた。特に町田朱美については、そもそも主題歌を歌うためのカメオ出演でドラマの俳優としてのギャラはゼロ!だったのが、熱演したこともあり、主演の2人に次ぐギャラが支払われて本人がびっくりしていた。
 
また沢口富恵監督は制作を始める時、出演者一同に言った。
 
「この物語は怪談ではなくラブロマンスですから」
 
実際この物語を恐ろしい怪談に仕立てたのは圓朝である。
 
しかし原作『伽婢子』の中には幽霊と夫婦生活を送り、その幽霊が子供まで産む『原隼人佐(はら・はやとのすけ)鬼胎の事』なども含まれている。原隼人佐昌胤は武田信玄の部下で武田二十四将の一人である。彼は実は幽霊から生まれたというのがその話である。これは実は“飴買い幽霊”のバリエーションである!
 
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そういう話も含まれている『伽婢子(おときぼうこ)』において幽霊との恋は怪談というより“存在する世界が異なるため添い遂げられない”悲恋であるが、牡丹燈籠の場合は、双方幽霊になれてハッピーエンドである!
 

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(*26) 登場人物名比較
 
三遊亭圓朝:男は萩原新三郎、女はお露、侍女はお米
伽婢子:男は荻原新之丞、女は弥子、侍女は浅茅
剪灯新話:男は喬生、女は麗卿、侍女は金蓮
 
『牡丹灯籠』は『伽婢子』の中の一話。『牡丹灯記』は『剪灯新話』の中の一話。
 
浅井版の“荻原(おぎわら)”が圓朝では“萩原(はぎわら)”になっているのに注意。
 

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今回のドラマのあらすじ。
 
時は天文17年(1548)戊申の年。
 
「天文年間というと、こういうことが起きた時代です」といって語り手はフリップボードで説明した。
 
10年武田信玄が甲斐国当主に。
12年種子島に鉄砲伝来
17年長尾景虎(上杉謙信)が長尾家の家督を継ぐ。
18年濃姫が織田信長に嫁ぐ。
18年フランシスコ・ザビエルが来日。
 
当時室町幕府の権威は地に落ちて京都は無政府状態に近い状態でした。この物語はそういう時代の京都を舞台にした物語です。
 

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盆の7月15日から24日までは、精霊(しょうりょう)の祭りが行われます(*27). 家々に精霊の棚を飾り、また様々な種類の灯籠(とうろう)を作って、軒や精霊棚に飾ります。通りを三味線(*30)の伴奏に合わせて歌いながら踊り歩く盆踊りの一行が流して行ったりもします(*28).
 
数年前に妻(木田いなほ:二役)を亡くした荻原新之丞(岩本卓也)は亡き妻を偲んでお経をあげたり、妻とのことをあれこれ思い出したりしていました。
 
7月15日の夕方、新之丞はぼんやりと通りを眺めていました。すると通りをひとりの女性が歩いてきます。その女性に亡き妻の面影を見て、新之丞は思わずその女性を注視してしまいました。
 
女性(木田いなほ)は年の頃は20歳くらいで、14-15歳(*31)の女童(めのわらわ)(町田朱美)を連れています。そして女童は牡丹花の灯籠を持っています(*32).
 
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新之丞はこれは天女が舞い降りたか、あるいは龍宮城の乙姫が出て来たかと思い、その女性の後をふらふらと付いていってしまいました。
 
(どう見ても不審人物)
 

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(*27) 本来盆は7月15日。8月15日にやるのは“中暦”といって、新暦の1月遅れを採用して、新暦の日付を使いながら旧暦の季節感に合わせたもの。現在、日本では盆はほとんどの地域で中暦を使用し、七夕・ひな祭りも地域によっては中暦を採用する。
 
(*28) 盆踊りをしたのは信濃町ガールズの若手の子たち。度胸付けのために出した。民謡の素養のある子中心で構成している。三味線(*30)の弾ける川泉パフェが伴奏を務め、七石プリムが唄い、月城たみよが篠笛(日本音階調律)を吹いた。
 
(本人たちの性別は気にしない。むろん3人とも女着物を着ているが、かなりの視聴者は月城たみよを見て「男の子が女装してる」と思った。『竹取物語』の銀色の女を演じた子と認識した人も「可愛い男の娘だね」と思った!)。
 
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彼女たちの音楽と踊りが本格的だったので最初はノーギャラ(ラピスのついで)の予定が1人3万円もギャラが支払われた。歌ったのは黒田節の元歌としても知られる『今様』で、三味線の名取りでもある花ちゃんが編曲し踊りは暇な!米本愛心に指導させた。
 

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『今様』慈円(1155-1225)作詞 日本古謡
 
春の弥生の曙に
四方(よも)の山辺を見渡せば
花盛りかも白雲の
掛からぬ峰こそ無かりけれ
 
花橘も匂うなり
軒のあやめも薫るなり
夕暮様の五月雨に
山ほととぎす名乗るなり
 
秋の初めに成りぬれば
今年も半ばは過ぎにけり
我がよ更けゆく月影の
傾く見るこそ憐れなれ
 
冬の夜寒の朝ぼらけ
ちぎりし山路は雪深し
心の跡は付かねども
思いやるこそ憐れなれ
 
放送で流れたのは3番・秋の部分である。(昔の季節区分では1-3月が春、4-6月が夏、7-9月が秋、10-12月が冬。月名が今の暦と1ヶ月ずれてることに注意)
 

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(*30) 三味線は室町時代後期の15-16世紀に誕生したといわれ、この時代にも存在する。使用した三味線は伝統的なタイプで、最近流行の津軽三味線より小型のものである。
 
川泉パフェも津軽三味線の経験しか無かったので、槇原愛(基本的に暇!)にお願いして1日特訓して合格点をもらった。使用した楽器も槇原愛の私物である。愛はパフェを普通の女の子と思ったようである。パフェのついでに七石プリムと入瀬ホルンも一緒に三味線のお稽古を受けた。
 
(*31) 木田いなほは2003生で数え20歳で役柄ジャスト。町田朱美は2005生で数え18.このドラマが11月くらいに撮影されていたら、入瀬ホルンなどが年齢的には適役だった。
 
今回、木田いなほは武家の女性で流行していた、髪を巻いて笄(こうがい)で留める髪型、町田朱美は童女らしくおかっぱ髪で腰付近まで髪を垂らす。
 
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(*32) カランコロンと駒下駄の音を鳴らすのは圓朝の創作で、伽婢子版には無い。圓朝はおそらく、しゃべりだけで来訪を表現するのにカランコロンと駒下駄を鳴らすのを思い付いたのだろう。
 

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新之丞が女性と女童(めのわらわ)の後をフラフラと付いて100m(*33)も歩いたところで女性は振り返って言いました。
 
「夜道を女だけでは家までの遠い道が不安なんです。よかったらうちまで送ってくれませんか」
 
(そうだね。君みたいな男が現れたりすると不安だよね)
 
「家まで遠いのでしたら、私の家でお休みになりませんか。朝になってから帰ればいいですよ」
 
「あら、よろしいんですか?じゃお邪魔しようかしら」
 
(なんかどっちもどっちだね〜)
 
(*33) 原文は“一町”。一町は60間(けん)=360尺なので、1尺=30.3cmとすると109.08mとなる。面倒なので100mと訳した。尺の長さはこの時期は日本自体が無政府状態だったこともあり統一基準が無かったが、だいたい 30.2-30.4cm くらいだったものと思われる。
 
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それで新之丞は女性と女童(めのわらわ)を自宅に案内しました。家に入って少し落ち着いたところで女童には
「浅茅、遅いからお前はもう寝なさい」
と言って、布団を敷いて寝せておき、新之丞と女性は夜更けまで会話を続けます。新之丞は女性がとても教養の高い人であることに気付きます。
 
「あなたの住んでいる所とお名前を教えて下さい」
「私は藤氏(藤原氏)の末、二階堂政行の後(のち)です。家は盛んな時期もありましたが、すっかり落ちぶれてしまいました。父は政宣と申しますが、京都の乱れで討死にし、兄弟もいなくなって今は私1人で、女童(めのわらわ)と一緒に万寿寺のほとりに住んでいます。名前は名乗るほどのものではありません」
 
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やがて雰囲気で2人は気持ちをひとつにします。
 
「してもいいよね?」
「愛しいお方」
 
ここでダークアウト!
 

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やがて朝を告げる雄鶏(おんどり:常滑舞音!@友情出演)の声があります。
 
「だいぶ明るくなったみたい」
とカメラは女性の姿は映さず声だけを流します。映像は家の庭です。
 
「では今日は帰ります」
「また会えるよな」
「また今夜」
 
ここまでカメラはひたすら庭だけを映す。
 
そして女性が火の消えた牡丹燈籠を持つ女童(めのわらわ)を連れて帰っていく後姿、それを見送る新之丞の背中を映す。
 
そしてこれから女は毎晩夕方になると牡丹燈籠を持った女童を連れてやってきて逢瀬をし、明け方になると帰って行きました。逢瀬は20日ほど続きました。
 

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新之丞が女性を見送った後、隣の家から女が2人(光帆・音羽)出てくる。
 
(ここでこの2人を知らない視聴者や多くの子供は姉妹か何かと思う。この2人を知っている人は当然カップルと思う!)
 
「お隣さん、お盛んだね〜」
「奧さん亡くして随分経つから、そろそろいいんじゃない?」
「でもどんな女なんだろうね」
「声からすると結構若い女っぽい」
「侍女を連れてるから、わりといい所の若後家(わかごけ)さんじゃないのかね」
「だったら向こうも若くして旦那を亡くしたのかな」
 
「今は戦乱でバタバタ男が死ぬからね」
「息子が足軽に取られないようにってんで、女の服を着せて育ててる人も結構あるらしいね」
「どこでも兵隊狩りやってるからなあ」
「この戦乱の世もどのくらい続くんだろうね」
「平和な時代が来るといいね」
 
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その夜。光帆が何やら壁に細い物を立てている。
 
「ミルル、何やってんの?」
「どんな女か覗いてやろうと思って」
 
光帆が持っているのは錐(きり)のようです。
 
「やめときなよー。他人の濡れ場を見て何が楽しいのさ?」
「こちらも興奮するじゃん」
 
(↑「本音では?」という視聴者のツッコミ多数)
 
それで光帆は壁に穴を開け、隣の様子を覗きます。ところが見た途端
 
「あわわわ」
と腰を抜かした様子。
 
「とうしたの?」
「覗いて見れば分かる」
 
それで音羽が穴を覗きます。
 
「ぎゃっ」
と言って音羽も腰を抜かしました。
 
画面には、新之丞が骸骨(常滑舞音!)と会話している映像が映る。新之丞が何か言うと骸骨が声を出して笑う(声は木田いなほのアフレコ)。そして骸骨のそばには女の子人形が一体横にしてある。
 
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この場面は普通なら岩本が1人で演じた所にCGで骸骨の絵を書き足す所だが、見ている子供が笑ってくれるように、ショッカーの怪人みたいな服を着て舞音が演じた。このドラマは怪談ではない。舞音はこのシーンの最後で覆面を取って手を振っており、小さな子供たちが
「あ、招き猫お姉さんだ!」
と喜んでいた。
 

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翌朝、新之丞が女性を送っていった後、音羽と光帆(役名が無い!)が声を掛けます。
 
「もしもし」
「はい」
「あなた毎晩誰と逢ってるかわかる?」
「ちょっとそれは」
 
それで2人は昨夜見たことを話します。
「それにあなた凄くやつれてますよ(*34)。きっと幽霊に精気を吸い取られてるんですよ」
「このままだと死んでしまいます。東寺(とうじ)とかに相談したほうがいい」
 
(幽霊相手でなくても毎晩朝までセックスしてたら、やつれると思うぞ。精気を吸い取られるのでなく精液を吸い取られていたりして)
 

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(*34) この場面、やつれた感じを出すため、岩本君は徹夜マージャン!をした上で撮影に臨んだ。骸骨と対話する場面、音羽たちとの会話から東寺の行者に御札をもらうシーンまでである。
 
徹夜麻雀に付き合ってくれたのは、松田理史・鈴本信彦・坂口芳治。岩本君はひとり負けしたらしい。松田の専任運転手(麻雀中は寝てた)が彼を千葉のスタジオまで運んでくれた。松田は付き添って岩本が眠らないようずっと話しかけていた。
 
岩本君がこんなに頑張って役作りしたのに、この日、木田いなほは体調が悪くて撮影を欠席した(コロナでは無かった)。それで急遽骸骨役は常滑舞音が代わった。ついでに鶏の鳴き声も録った。女が帰っていく所の後姿も実は舞音である。
 
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木田いなほは事務所社長と連名で放送局と監督に詫び状を提出。ギャラを返上したいと申し出た(8割支払った。つまり2割減額)。またコスモスと舞音に感謝するお手紙を書いて舞音には松阪牛のセットを送って来た。(スキヤキにして水谷姉妹と一緒に食べた)
 
木田いなほは線の細い感じが幽霊役にはピッタリなのだが、体力が無いのが欠点である。わりと撮影途中で休むことが多い。馬仲敦美や今井葉月が代役したこともある。昨年の『ロミオとジュリエット』もアクアがロミオで木田がジュリエットという配役で計画進行していたのが、木田のダウンでアクアがロミオとジュリエットの双方を演じることになった。
 
舞音は実は通りがかりを徴用された。次の仕事場へは竹取物語の撮影で来ていた山村マネージャーがバイクで?運んだ。それで千葉から新宿へ5分で到着した!??
 
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夏の日の想い出・止まれ進め(26)

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