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■春歩(23)

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「校長先生、補償の話をしたいのですが」
「でしたら、教頭と、あの建物を使っていた、バスケット部の顧問さんにも同席してもらいましょう」
 
ということで、播磨工務店側が千里と徳部、学校側は、校長・教頭に、横田先生、春貴が入り、6人で話し合う。
 
「あの教室は何に使われていたのですか?特別教室ですか?」
「元は美術室だったのですが、今はその用途には使っていなくて、バスケットボール部が練習に使っていたんですよ」
「バスケットの練習に使うのなら、天井は高かったんですね」
「いやそれが4メートルしかなくて」
「ロングシュートがぶつかるじゃないですか」
「他に空いてる所が無くて」
 
「でしたら、お詫びに体育館1個建てましょうか?」
「いや、そんな大きなものを建てると校庭が狭くなってしまうので」
 
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千里は少し考えるようにしてた。
 

「だったら、先日から、この近くで、うちが建てていた体育館をそちらで自由に利用できるようにしましょうか」
「もしかして、あの焼肉店跡に建てていた体育館ですか?」
と春貴が訊く。
 
「そうです。11日に完成して昨日検査が終わり、播磨工務店からフェニックス・エステートに引き渡されました。ま、どちらも経営者は私で、引き渡しは書類上のものなんですけどね」
 
「あの体育館はどこかの企業か何かが使うのに建ててたんですか?」
 
「いや、実はうちの工務店の若手の技術研修のために先輩社員が指導して作らせていたんですよ。建てたのは若手ですけど、きちんとベテランの社員が監督していますから、手抜きや欠陥は無いことを私が保証します。ただ撤去作業をしている最中に事故を起こしてしまって」
と千里は申し訳無さそうに説明する。
 
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亡霊の住処(すみか)だなんて言えない!
 
「なるほどそういうことでしたか」
と校長は納得している。
 
教頭は「この展開なら自分が壊したことはバレずに済むかも」と思っている。
 

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「事故を起こした奴は罰として去勢しますから」
と徳部は言っているが
「去勢は可哀想です。許してやってください」
と春貴が言った。
 
春貴は、九重さんなら、ほんとに去勢くらいしかねんと思って止めた。
 
「そうですか?まあこちらさんが言うなら今回だけは許してやるかな」
 
「するとその体育館をこちらに貸して下さる形ですか」
と教頭は、後ろめたい気持ちを隠しながら言った。
 
「はい。自由に使って下さい。管理人は24時間居るようにしますから、24時間365日使っていいですよ」
 
管理人には実は、おキツネさんを数人(数匹?)雇う予定である。報酬は、油揚げの載った氷見うどん食べ放題!
 
「一応、うちは部活は終わりの会の後18時までなのですが」
と横田先生。
 
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「体育の授業とかにも使っていいですか?」
と校長が尋ねる。
 
「どうぞどうぞ。ただ、バスケットボール部の練習場を壊してしまったお詫びなので、できたらバスケットボール部優先ということで」
「分かりました。ちなみに借り賃は」
「もちろん無料で」
 
「1年くらい?」
「永久に無料でいいですけど、念のため1年更新にしましょうか」
「それがいいかも知れないですね」
 

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「ほかに確認したいのですが、あの教室に先生や生徒さんたちの私物はありませんでしたか?」
と千里が尋ねた。
 
「おそこに、奥村先生が個人で買った、ドリブル練習用のウッドカーペットがあったのですよ。多分床などと一緒に壊れたのではないかと」
と横田先生が言う。
 
「それは申し訳無い。いくらくらいのですか?」
「1万円のを3枚です」
「でしたら、それは今現金で補償しましょうか」
「そうしてください」
と横田先生が言うので、千里はその場で現金で春貴に3万円渡した。春貴はすぐに受け取りを書いて渡した。
 
「生徒の私物は無かったはずです」
「良かった」
 

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その後、この6人で体育館を見に行った。
 
歩いて行ける距離だが、諸事情で、千里が持って来ているエスティマに全員で乗っていく。
 
「学校から400mくらい離れてるかな」
「生徒はここまでウォーミングアップで走ってくればいいね」
「ここは市道ですよね。一応街灯はあるようですが、もし学校側で市に働きかけて頂けたら、うちの費用で街灯を追加したりガードレールを設置したりしてもいいですが」
 
「それは市に話してみます」
「お願いします」
 
体育館の敷地は幅が40-50m, 奥行きが100m近くありそうである。前面がアスファルト舗装の駐車場になっており、ドア開閉スペースのための隙間がある、U字型の駐車枠が多数描かれている。
 
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「一応普通車用の駐車枠を50台分引いています。大型を駐める時には適当に」
「なるほど」
「黒いアスファルトに白線ですから、夜間も見やすいと思います。一応ライトはセンサー式のものが立っていますが」
「ああ、立っているライトはセンサー式ですか」
 
「はい。照度計が750LXを切った状態で人や車が居るのを感知したら点灯します。また、夕方17時から20時までは強制的に点灯しています。このあたりの照度基準や時間帯は設定変更可能です」
 
「21時までがいいかも。あの付近暗いから防犯に」
「ではそうしましょう」
と言って、千里はスマホにメモしている。
 
「750ルクスといったらどのくらいですかね」
「晴れてる日の日没7分前(*32)、曇ってる日の日没20分前くらいの明るさですね」
「それなら充分でしょうね」
「運用してて、もう少し水準上げたほうがいいかもと思ったら管理人に言ってください」
「分かりました」
 
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(*32) この数値はJAFがおこなった実験で測定されたもの。測定は(2021年?)11月4-5日に行われている。詳細は↓
https://bit.ly/3Wln1OH
 

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中に案内する。
 
「あれ?思ったほど広くない」
「これは2つの体育館を並べて建てているんですよ。法的な問題で(*33)建物としては1つの建物になっていますけど」
と言って、千里は図面をプリントしたものを全員に配る。
 

 
「不思議な構造ですね」
と校長や教頭は言ったが
「これ火牛北体育館と似た仕様てすね」
と春貴は言った。
 
「そうそう。体育館は二重壁になっています。コロナが落ち着くまでは内壁の窓を全て開放しておき換気をよくしますけど、外壁があるから練習の音が外に響かないです。内壁と外壁の間の通路では強制換気するので、空気が内壁の外に出て行きます」
 
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「なるほどー」
 
(*33)ひとつの筆には建物はひとつしか建ててはいけない(一敷地一建物の原則)。この原則の例外となるのは、倉庫・浴室棟・プロパンガス室・管理人室などの“付属する”建築物の場合。学校の付属体育館もこれに準じる。
 
この“火牛・氷見南体育館”の場合、学校の体育館同様、一体の建物であるとの主張は可能と思われるが、面倒を避けるため、屋根と壁を繋ぎ、間違い無く一体の建物にしている。
 

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「コロナが終わったら、二重壁が音響にいいので、ライブとかするのにもいいんですよ。この外壁はロックウールを使用した防音壁で、内壁は適度の反響がある音響壁になっています」
 
と千里は言うが、ここに音楽の先生とかが居ないので、よくは分からないようだ。
 
「それなら、近隣から苦情は出ないでしょうね」
と校長先生が言っている。
 
「ひとつのフロアに2コート取れるようにするのではなく、わざわざ2つのフロアに分離したのも感染拡大防止のためですね」
「です。場所を共用しないというのが、感染拡大防止の基本です」
「徹底してますね」
「火牛アリーナさんは感染拡大防止対策に物凄くお金を掛けてますね」
 

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エレベータで2階に上がる。むろん階段でも上がれるが、エレベータを使うのは諸事情!による!
 
「生徒は階段だな」
と横田先生が言っている、
 
↓2階図(フラミンゴ)

 
「手摺りが高いですね。それにアクリル板ですか」
 
「手摺りは2階で運動していても転落の危険が無いよう、高さ2mで作りました。刑務所に入ってる気分かも知れませんが。手摺りの隙間は子供が転落しないと言われる15cm間隔です。ミニバス用の5号ボールが直径22cmだからボールもすり抜けないはずです。透明の板はアクリルではなくポリカーボネイトです。アクリルは火事になった時に有毒ガスを発生するんですよ。ポリカーボネイトなら大丈夫なので」
 
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「有毒ガスというのは考えてなかったなあ」
「アクリルのほうが安いし、透明度が高いので」
「ああ透明度ですか。これでも充分透明だと思うなあ」
 

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「左右に控室が1つずつですか」
「試合をする場合に対戦チームがひとつずつ使えるようにですね」
「そうか。そのためにエレベータがわざわざ2個あるのか」
「はい。相手チームと呉越同舟にならないよう2個です」
「でも若いもんは階段を使ったほうがいい」
 
「この2階席をぐるっと1周走れば1階のゲームに影響無いですね」
「1周は102mですよ」
「じゃ約100mで計算しやすいですね」
 
「あれ?トイレは両方とも女子トイレですか?」
と教頭が言う。
 
「試合をする時に両方女子チームだと、小便器があるのはまずいので。男子チームの場合も、個室を使ってもらうということで。トイレは基本的にその隣の控室を使うチーム専用です。ま、一応1階には小さな男子トイレ・女子トイレもありますが」
 
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「あまり観客を入れて試合をすることは想定してないんですね」
「火牛北体育館と同様に、練習用の施設ですね。今はどっちみち客は入れられませんし。コロナが終わったら観客席とトイレを増設するかも知れません」
 
校長たちは
「なるほどー」
と感心していた。
 
千里は補償は補償として、お詫び金として学校に100万円払うと言ったので、これは寄付金として処理することになった。きっとその方が書類が簡単になるのだろうと千里は思った。学校側としても元々あの旧美術室は取り壊す予定だったので、うやむやにした方が色々助かる。実は教頭先生も助かる!!
 
教頭が何か胸が痛むような顔をしているのは何だろう?と千里は思った。
 

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そういう訳で、この日から、男女バスケットボール部は、練習場所をこの“火牛・氷見南体育館”(愛称“Fire birds”:氷見市の語源は“狼煙”(のろし)を見る“火見”だったという説もある)に移すことになったのである。昼休みの第2体育館での練習は北信越大会まで限定で先週同様認めることになった。
 
2個ある体育館のうち、女子がフラミンゴ、男子がピーコックを使うことにした。坂下君が
「だって“コック”ってチンコだろ?Pもペニスだし」
と言ったのは、女子から非難されていた!
 
「だったら女の子はプッシーカント?」
と言った五月は蹴りを食らっていた。
 
「暴力反対」
「君のコートネームはプッシーか、カントにしようか?」
「やめてー。除名される」
 
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しかしバスケット部はそもそも男子でも、これまで体育館でハーフコート分しかもらえてなかったので、今までは試合形式の練習ができなかった。フルコートで練習ができるのは嬉しい、という声が多かった。
 
「これ床がフローリングじゃないみたい」
「タラフレックスだよ。学校の体育館とかは何種類ものラインが引かれていてどれがどの競技のラインか分かりにくいじゃん。これは本来のフローリングの上にバスケット専用のラインを引いたものを載せている。タラフレックスを交換すれば、バレーとかバドミントンの専用コートにも変身する」
と春貴は説明した。
 
「へー!初めて見た」
 
「ウィンターカップ本選に行けば、東京体育館の床もこれと同じタラフレックスが敷いてあるよ」
「ぜひそこでプレイしたいですね!」
 
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旧美術室から回収した3個のゴールリングだが、「これ使い道無いですかねー」と愛佳が言ったら、
「取り付けましょう」
と播磨工務店の徳部が言い、愛佳が取り付けて欲しい場所を伝えた。
 
↓フラミンゴ2階図(再掲)

 
左右の2個はロングシュート練習用、真ん中のはミドルシュート用である。
 
「これネットは美術室が壊れた時に破れちゃったのかな」
と千里さんが言うが
 
「いえ、最初から無かったんです」
と愛佳は正直に言う。
 
「バックボードは?」
「それも無かったんです」
 
「あなたは正直者だ。あなたにはこの純金のゴールを」
「いえ鉄のゴールがいいです」
 
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「了解了解。じゅうちゃん、何か適当な板とかネットとか“あれ”とか持って来て」
「了解です」
と言って、彼は30分ほどで板、ネット、フェンスおよび多少の部材を持って来た。
 
千里さんがゴールにネットを結び付け、徳部さんが板をバックボードのサイズ (f80cm×105cm) に切り、黒いシートを貼り付けた上で、外側の線と内側の四角(ウィンドウ 59cm×45cm)の白線を引く。彼がハケを使いフリーハンドでまっすぐの線を引くので凄いと思う。
 
と思ってたら少し曲がった!
 
「ごめん」
「その程度問題無いです」
 
ゴールをボードに取り付ける。そのボードに2本のアームを取り付ける。一方でフェンスを板一枚介して床に固定し、更に板一枚介して壁にワイヤーで留める。正確に高さを測定してバックボードのアームをフェンスに取り付けた。
 
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「アームが曲がって高さが合わなくなったら、この紐を引っ張って調整して」
「分かりました!」
 
結構原始的っぽい。
 
「でもゴールを壁に直接は取り付けないんですね」
と愛佳が言った。
 
「そりゃそうだよ、ゴールを建物の壁に直接取り付けたら、その振動に壁が耐えられない。建物の壁とは別の物に取りつけるのが常識」
と千里さんは言った。
 
愛佳と舞花は無言で視線を交わした。
 
『ひょっとして旧美術室は実は、毎日数百回のシュートの振動に耐えきれずに崩壊寸前になっていたということは?』
 

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