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■春歩(2)

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やがて、遙佳たち3人は金沢に到着した。ビスクドール展、最後の土日ということで、会場には、明恵・真珠・初海の3人も来ていた。遙佳は真珠の左手薬指の指輪に気付いた。
 
「もしかして結婚なさったんですか?」
「うん。13日に結婚した」
「おめでとうございます!」
「でもこれで他の女の子とは遊べなくなった」
「女の子と遊ぶんですか〜?」
 
「この子、バイだから」
と明恵が言っている。
 
「そういうのもいいなあ」
と遙佳は言った。
 

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なお3月18日の『北陸霊界探訪』で、ビスクドールを手放したい場合“人形美術館金沢事務局”(〒〒テレビ・北陸霊界探訪編集部内)で、手数料1体1000円で引取るというのを公表した所、様々な事情(引越や結婚が多い)で手放したいという人がこれまでに6件あり、明恵か真珠が所有者とお話しして意思確認して4件20体を引き取った(2件は話している内に本人の気が変わり、キャンセルになった:真珠たちはできるだけ翻意を促すように話している)。
 
その20体を館長に見てもらい、人形美術館で受け入れることを正式決定。この20体は明日持ち帰る。(館長が拒否した場合は、青葉がうちで引き受けると言っていた:広い家が無いと置き場所が難しい)
 
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人形展は盛況で、ふだんの美術館の来客の20-30倍は来てるなあと思いながら遙佳は見ていた。11時半頃、千里さんが来た(*3).
 
「お客さん、大盛況だね」
「なんか期間中に、うちの美術館の半年分くらいのお客さんが来てるのではという感じですよ」
と遙佳。
 
「まあ人口2万人の町と人口60万の都市圏とでは、どうしても差が出る」
「警備も大変みたいですけどね」
「町が大きくなると、おかしな人も増えるからね〜」
「期間中、石を投げ込んだ女が逮捕されたんですよ。幸いにも人形は無事でしたが、石崎さんが祖母に謝ってました」
「あの後、警備員の人数が増えました」
 
「でも凄く好評だから、夏にもまたやらないかという話を、石崎さんと祖母がしているみたいです」
 
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「君たち、お昼は食べた?」
と千里は尋ねた。
 
「交替で行きましょう」
と真珠が言う。
 
「じゃ、私がまこちゃんと歩夢ちゃんとで待機してるから、あきちゃん、遙佳ちゃん、初海ちゃんで先に行って来なよ」
 
「そうしようかな」
 
「お弁当とお茶を用意しておいたから、駐車場のC457に駐めてる青いロッキー(*3)に行って。ナンバーは****」
と言って千里さんは明恵に、駐車枠番号と車のナンバーを書いた紙、そして車のキーを渡した。
 
「ありがとうございます。行ってきます」
と言って3人は会場を出て行った。
 
これが12:05だった。
 

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「ここは駐車枠番号のおかげで、自分の車が探しやいですね」
と歩夢。
 
「そうなんだよね。ここを見て、例の名札作戦を思いついたんだよ」
と真珠。
 
千里さんは何だろう?という感じの顔をしている。
 
「名札作戦には私も参加していますが、夏くらいまでかかりそうです」
「人形の数が膨大だからね〜」
 
“人形が勝手に動いているのでは?”という話があったので、各人形に名札を付け、また各々の席にもその名札を立てておこうという話になっているのである。自分の名前が書かれた席があれば、一時的にどこかに勝手に動いたとしても、最終的には自分の席に戻るのではないかという考えなのである。
 
これは真珠と明恵が提案し、渡辺薫館長も賛同して、現在作業中である。作業に先立ち、人形の管理簿を電子化し、複数の名前を持つ人形の名前を選択し、また名前の無い又は分からない人形に新たな名前を付けてあげる作業は、館長と遙佳の2人で行なって、そこまでの作業は既に完了している。それで今は人形の服に、名前を貼り付ける作業を進めているところである。(管理番号は20年くらい前から貼られている)
 
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「でもここのレイアウトはいいですね。春の小川、夏の砂浜、秋の紅葉、冬の子供部屋のセットを作って、それを背景に人形を並るって。姉が言っていたんですよ。お人形の中にも、春が好きな子とか、冬が好きな子とかいるって」
 
「それを見分けられるのは、館長さんや、遙佳さんだけかもね」
「そうなんです。私には全然分からない!」
 
と歩夢は言っていた。
 
「お姉ちゃんは、高校を出たら金沢に出て来たいみたいだけど、君はどうするの?」
 
「私、お父さんのレストランを手伝っててもいいかなあと思うんですよね。料理とか好きだし。ここだけの話、祖父が店に出て来てる時だけ提供する“ミュンヘン風ハンバーグ”って去年くらいからは私が作ってるんですよ」
 
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「へー」
 
「祖父は視力が衰えて、素材に火が通っているかどうかよく分からないらしいです。それで私が製作代行してるんですよ」
「挽肉は特に分かりにくいかもね」
「そうみたいです。“仔牛のドレスデン風”は祖父が自分で作るんですが」
「牛なら赤い部分が少し残るくらいがちょうどいいよね」
 
「だったらほんとうにレストラン継ぐといいかもね」
「はい」
 
「遙佳ちゃんが金沢に行っちゃったら、君が看板娘を継いで、その内、誰かお婿さんもらうといいかもね」
と真珠が言うと
 
「あ、そ、そうですね」
と言って、真っ赤になっているので、真珠は「ん?」と思った。
 
そして、あることに気付いてしまった。
 
そうだったのか!
 
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全然気付かなかった。この子、女の子にしか見えないのに!
 

千里さんは、口を挟まずに、そういうやりとりを興味深そうに聴いていた。
 
真珠は“試して”みたくなった。
 
「青葉さんも、昨日(4/22)、津幡組の他の人たちと合流したようですね」
「ああ、そうみたいね」
 
「私たちも随分青葉さん振り回しちゃったけど、その後は3週間“越谷で”集中して練習できたみたいで良かったです。いい成績出せると、いいですね」
と真珠は言った。
 
「うん。頑張って欲しいね。その後は、ヨーロッパ遠征になるし。ケイは日本選手権の後の青葉を捉まえようとしてるみたいだけど、選手権終わったら即合宿してヨーロッパに移動するから、ケイは、また空振りだね」
と言って、千里さんは笑っている。
 
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「でも前半の合宿地のシェラネバダって、私てっきりアメリカかと思いました」
「日本人はわりとそちらを連想するよね。でもシェラネバダって“雪をかぶった山”という意味だから、わりとありふれた地名。メキシコやコロンビアにもある」
 
「そうみたいですね。青葉さんが『日本語で言えば“白山”』と言ってました」
「そうそう。白山というのも、たくさんある」
 

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真珠はこういった会話をしていて、確信した。
 
“この”千里さんは、“動く人形の怪”や“白い虎の怪”で一緒に作業した千里さんとは別の千里さんだ!
 
恐らくあの千里さんの都合が付かず、頼まれて代理で来た千里さんなのだろう。
 
(1) 名札作戦のことを知らないっぽい、
 
(2) 青葉さんが籠もっていた場所を自分が“越谷”と言ったのに、何の反応もしなかった。つまり、青葉さんがいた場所(本当は八王子)を知らないんだ。
 
(3)シェラネバダの話は、だいたい千里さんから自分と明恵が教えてもらったもの!
 
この千里さんは、あの千里さんから、色々引き継ぎのための情報は提供されているのだろうが、本人ではないので細かい点では知識が無い。だいたい千里さんは“忘れっぽい”と自分でもよく言ってるけど、それは入れ替わっていても怪しまれないための言い訳なのだろうと思う。
 
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30分ほどして、明恵たちが戻って来る。
 
「お疲れ。何かあった?」
「特に無かったよ。トイレの場所を訊かれたのを教えてあげたのと、食事ができる所って訊かれて、家族連れだったからココスを勧めておいた」
「かえって、迷わないよね」
「そうそう」
 
ココスは店舗のビルから離れて、駐車場の向こうにあって分かりやすいし、なんといっても家族連れ向きだ。
 
「あと、美術館の場所も尋ねられたから、パンフレット渡して、行き方を簡単に説明しておいた」
「あそこ、少し分かりにくいですよね」
と遙佳が言っている。
 
「ちょっと細い道を通る所で『迷ったかも』と思うかもね」
「それで引き返しちゃう人も、あるみたいなのよ」
「もっと町中に場所が取れたらいいんだろうけどね」
「予算が無いとね〜」
 
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「ほとんど祖母の道楽でやってる施設だから。あそこの土地は坪5000円だし」
「安いね!」
 
「人形の密度が高くなってるから、土地を買い増して美術館を広げるのも考えてはいるみたいだけど、あそこ後ろに崖があって危険だというので、開発には県知事の許可が必要なんだよ」
 
「それマジで危なくない?」
「市街地や大きな道路沿いに適当な場所があれば、そちらに引っ越すのも選択肢なんだけどね。でも大きな道路沿いだと坪1万くらいするみたいだし」
「それでも安い気がする」
 

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「じゃ、私たちが食事に行ってくるね」
「うん」
 
それで千里は真珠と歩夢を連れて駐車場に行く。これが12:45くらいだった。
 
千里さんは青いコンパクトカーをアンロックした。
 
「また初めて見る車だ」
「あ、そうかな?ダイハツのロッキー(*3)という車」
「SUVですか?」
「一応その分類になるみたいね。小さいけど」
「結構がっちりした感じですよね」
 

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「ということで、お弁当を、車の中で食べよう」
 
と言って、2人を後部座席に乗せて、千里さんは助手席に乗った。そして、まだ暖かい、かまどやのヒレカツ弁当とお茶のペットボトルをふたりに渡した。
 
「私まで頂いていいんですか」
などと歩夢が言っている。
「どうぞどうぞ」
 
歩夢は深く考えていないようだが、このお弁当が作り立てのような温かさということは、明恵たちが終わった後で、千里さんが眷属か何かに買いに行かせたのだろう、と真珠は思った。
 
(“この”千里は特に眷属使いが荒い!買ってきてくれたのは<いんちゃん>。S市で千里4をサポートしていたのは、小杉:小道の妹:であった)
 
千里はレースのカーテンを閉めた上で窓を全開にした。
 
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「徹底してますね〜」
「私も、真琴ちゃんも基本外食禁止だからね」
「そうなんですよ。でもコロナもだいぶ落ち着いてきましたね」
「うん。このまま終息してくれるといいんだけどね」
 

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(*3) ダイハツのロッキーを使用するのは主として千里1である。千里1は5月21日からWBDAが始まる(本当に??この件後述)ので、5月上旬に渡米する予定。1番はアメリカでは(2019年まで2番が使っていた)テスラ・モデルSを使っている。少し大きすぎるのだが、購入当時はテスラ内部の混乱でモデル3が入手できなかった。
 
国内では、以前2013年型の青いヴィッツ(2019年購入)に乗っていたのだが、手軽な車なので、複数の千里に眷属たちも使い、更にアキ(←猫が運転していいのか?)、桃香(←アキの10倍危ない)などに貸したりしている内に、どこに行ったか分からなくなった!?ので、この春、新車でロッキーを買った。似たようなサイズの車という気はする(ヴィッツは“一時抹消登録”した:本体が行方不明なので永久抹消登録ができない!が税金等は払わなくてよい)。
 
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Mazda CX-5 を使用しているのは主として千里4である。2Aは主としてオーリスを使用する。3はスペインではSEATのIbiza、日本国内ではアテンザを使用する。2Bは最初の頃はIbizaを使っていたが、3がスペインに頻繁に来るようになったので、2020年に家を買ったのを機に、独自の車としてプジョー(Peugeot)208 を購入した。
 
黒いインプレッサはみんなから便利に使われており、今どこにあるのか誰も把握していないが、大抵どこかにある!?ので、たいちゃんが見付けてくれる。つまり、青いヴィッツは、たいちゃんにも行方が分からない。恐らく既にこの世の物ではない!
 
この日、千里1は千里2を装った千里4から
 
「私、別件で用事あるから、ちょっと代わりに顔出してきて」
と言われて、気分転換にロッキーを運転して金沢まで出て来た。千里1は3月29日に真珠・明恵・初海が能登空港→郷愁飛行場と移動した時、アキ・アイ親子と一緒にHonda Jetに同乗した。翌日、郷愁→能登に乗ったのは千里4である。
 
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千里4は実は今日は指導している中学生の大会があり、そちらに顔を出している。
 
千里1が渡米すると、妊娠中の千里2Aがしばらくは浦和の家の主(あるじ)となる。
 
2Bは現在 LFB レギュラーシーズンの最後の方である。上位になればプレイオフに進出し、決勝戦まで進出すると日程は6月4日までである。3はWリーグは終わったが、日本代表に呼ばれれば5月7日から合宿がある。
 

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