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■春歩(11)

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5月12日(木).
 
この日は午後から雨になった。
 
H南高校女子バスケット部は、放課後、春貴のキャラバン(この車は高校の構内に駐めさせてもらっている)に、8人の部員と愛佳の母の10人で乗って、火牛スポーツセンターに行った。簡易検査キットによる陰性確認の上で
 
「今日はシーガルをお使いください」
と言われた。
 
「シーガル?」
「換気の良い北体育館が一部完成しているので、そちら優先で割り当てることになったんですよ」
 
と言われ、地図をもらった。
 

 
後列:フェニックス、サンダーバード、ロプロス(伝説?の鳥)
中列:イーグル、ファルコン、ホーク(猛禽)
全列:シーガル、スワン、スワロー(特急列車??)
 
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「ああ、部分的に使えるんですか!こないだ基礎工事してたと思ったのに」
「播磨工務店さんの仕事は早いですから」
 
それで地図を見ながら行くと、火牛スポーツセンター外周の道路の北側に体育館がいくつか並んで建っているのを見る。
 
現在建っているのは手前に3個とその向こうに作りかけと思われるもの1個である。地図と照らしあわせると、手前の完成した3つがシーガル、スワン、スワローで、スワローの向こうに建築中なのがホークのようである。
 
「なるほどー。ひとつひとつの体育館を独立して建てることにより、換気を良くしたのか」
と、春貴は運営側の意図が分かった。
 
「これは観客を入れて見せるための施設ではなく、純粋に練習のための施設ということなんでしょうね」
と愛佳の母が言う。
 
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「でも採算取れるんですかね?」
と舞花が心配している。
 
「ここのオーナーさんは、お金が減ることが好きだから」
と春貴が言うと
 
「はぁ!?」
とみんな訳が分からないようだった!
 
(実際にはこの“北体育館”を建てているのは“お金が減ることが好き”な若葉ではなく“体育館作りたい病”の千里である!)
 

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ともかくも、春貴たちはカモメの水兵さん!の絵が壁に大きく描かれた体育館"Seagul"(シーガル)に入った。
 
体育館は二重構造になっていて、外壁と内壁の間に幅2mほどの通路がある。基本的には内壁の窓は全て開放しておき、換気を良くするが、外壁のお陰で騒音は外には漏れないという、火牛アリーナ本館と同じ方式である。通路奥に向かう風があるので。通路の奥で吸引して強制的な空気の流れを作っているようである。
 
内壁の内部にはバスケットコートが1つ取られているが、その外側の余裕から見て、体育館内部の広さは21m×38mくらいだろうか。
 
「うちの第2体育館と似たような広さだ」
「練習にはこれで充分だよね」
「体育館を共用せずに使おうとすると、このサイズで造るのがいちばん上手いかもね」
「でも床が平らだというのは素晴らしい」
 
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それでこの日は最初の20分、敵選手に見立てたコーン(道路工事などの所で置いておくやつ:春貴が持参)を交わしてドリブル走する練習をして、その後、40分間、紅白戦(4人対4人)をした。試合は先月24日の大会3回戦以来18日ぶりなので、みんな楽しくプレイしていた。
 
春貴も審判として40分間走り回った。
 
(ルールの勘違いを数回、愛佳たちに指摘された!まだまだ大会の審判などをするのは無理っぽい)
 
帰りは愛佳の母の運転で氷見に戻った。選手たちも春貴も寝てた。
 

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千里のグラナダの家での日本代表長距離組の練習は続いていた。STスイミングクラブ所属の2人は
 
「24時間、しかも独占レーンで泳げるっていいね」
と感動していた。
 
テンガについては(男子の部屋では)置き場所から1個取ると、自動的にエアシューターみたいなの(昔のラブホテルに会計用に設置されてたみたいなもの?)で新しいのが運ばれてきて補充されるので、2人ともかなりハマってしまいつつあった。
 
「俺、これが癖になったら、もう女を抱けないかも」
などと不安を感じるほど気持ち良かったらしい。
 
(ちなみに筒石は毎晩マラとセックスしている!きっと姿を消してこっそり付いてきていたのだろう。千里も黙認して、筒石の部屋には食事を2人前配送させていた)
 
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ある日、夜中に山先が泳いでいたら、突然足が吊った。
 
「うっ」
と思い、言われていたように背泳に切り替えようとするが、足が痛くて身体の姿勢をうまく制御できない。
 
やばっ!
 
と思ったら「ビーーーーー!」と大きなブザーが鳴る。他のレーンで泳いでいた、筒石とリルが泳ぎを中断して「何?」と声をあげる。リルは端の近くに居たので、少し泳いでプールから出た。
 
そして、テンプラを油から上げる時に使う網みたいなのに載せられて山先さんがプールから引き上げられるのを見た。遅れて、そのレーン全体で網があがってきた。
 
「大丈夫ですか」
「うん。お陰で。しかし凄いシステムがあるね」
 
「どうしたの?」
と立ち泳ぎの状態でこちらを見ている筒石が尋ねる。
 
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「足が吊っちゃって。でも、もがいていたらブザーが鳴って、これで引き上げられた」
 
「監視AIが作動したんでしょうね」
とリルが言う。
 

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そこにメイドのクリスティーナが駆けつけて来た。
 
「Some trouble?」
 
「足がつったって英語で何というんだっけ?」
「Got a crampかな」
「それ」
 
「Please Rest a while」
と言ってクリスティーナが網の上を歩いて彼を助けに行こうとしたが、その前に筒石が寄ってきて、彼女を制して網に乗り、助けに行く。そして山先の肩を支えてプールサイドまで連れて来た。
 
「いったん上がって少し仮眠でも取るといいよ」
「そうしようかな」
 
「でもここが凄く安全な練習場だというのがよく分かった」
と山先は言っていた。
 

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5月14日(土).
 
朝、また歩夢は夢を見ていた。
 
ビスクドールが出て来た。この子は4月24日朝の夢に出て来た子だ。
 
「プリエール・ヴィエルジュちゃん?」
「うん」
と彼女は笑顔で返事をした。
 
「あゆむちゃんの身体、もうほとんど女の子になってるよ」
「なんかそんな気がした」
「このまま女の子になっちゃう?それとも男の子に戻りたい?」
「男の子には戻りたくない」
「だったら、もう女の子になっちゃう?決めるのは、あゆむちゃん自身だよ」
 
「女の子になりたい」
 
「本当にいい?今ならまだ戻れるけど、もうこの先は後戻りできないよ。後悔しない?」
 
歩夢は少しだけ考えた。
 
でも言った。
 
「後悔しない。私、女の子になりたい」
 
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「そう?だったら、きっと1ヶ月ほどの内には、完全な女の子になるよ」
 
プリエール・ヴィエルジュは、歩夢に、そう告げると微笑んだ。
 

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そこで目が覚めた。
 
歩夢が夢の余韻に少しぼーっとしていたら、また地震があった。
 
ほんとに多いなあ。
 
でも、私。後悔したりしないもんね。私、女の子になるんだ!
 
お母ちゃんに叱られるかも知れないけど、男にはなりたくないもん。
 

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その日の夜、タックを解除してみたら、ペニスはもう5-6mmサイズになっていた。
 
これもうほぼクリトリスだよね?
 
私、ちんちん無くなっちゃった!
 
もう私、女の子でいいよね?
 
それでお風呂に入ってから、あの付近を洗っていた時、指が何かに引っかかる。
 
ん!?
 
陰嚢皮膚(玉が無いので身体に貼り付いている)の少し後ろのほう、自分では見えない付近に、何か穴のようなものがあるのである。もちろん肛門ではない。肛門はもっと後ろにある。
 
何だろう?と悩んでいた時、琥珀の声が聞こえた。
 
「それヴァギナだよ」
「うっそー!?私にヴァギナができたの!?」
「今夜からは寝る時、パンティライナー着けててね。昼間も」
「ヴャギナがあるなんて、まるで女の子みたい」
「あゆちゃんは、既に女の子だと思うけど」
 
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そういえば、今朝、私、プリエール・ヴィエルジュに「私女の子になりたい」と言ったんだった。だから早速、女の子の器官ができちゃったのね。だけど、割れ目ちゃんとかは無いの!?
 
などと思ったら、琥珀がくすくすと笑った気がした。
 

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ペニスが事実上消滅したので“タック”作業は単純に陰嚢皮膚を伸ばして折りたたんで割れ目ちゃん風にするだけの作業で行けそうだ。凄く楽になりそう、と思ったが、このクリトリス(と思うことにした)を疑似割れ目ちゃんの下に隠してしまうと、おしっこの向きが制御できないことに気付く。
 
少し悩んだ末、タックはしない!ことにした。そして、クリトリスを指で押さえて、おしっこの向きを制御するしかないと思った。ただ、これだとみんなの前に、裸を曝せない。もっとも裸を曝すこと自体が異常だけどね!
 
(あの時以降は、みんなの前にお股を曝したりはしていない。パンティを交換する時は壁を向いて交換している。みんな一度、自分が女の子であることを確認したので満足した模様)
 
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でも歩夢はその晩から、ショーツにパンティライナーを着けて穿くようにした。物凄く女の子の気分になった。朝起きると少し汚れていたので交換し、汚れたパンティライナーは丸めて包装紙に包み、汚物入れに捨てた。
 
なお、歩夢は自分のナプキンとパンティライナーは、古いレッスンバッグに入れてビニールロッカーの端に掛けている。またポピアで買った生理用品入れにパンティライナー2個とナプキン1個を入れて、生徒手帳や財布を入れているミニトートに入れ、いつも持ち歩いている。
 

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翌日(5/15 Sun).
 
朝起きてからトイレに行き、昨日と同じようにクリトリスを指で押さえて、おしっこの向きを制御しようとしたら、おしっこはクリトリスではない所から出た。
 
え?
 
おしっこが終わって、トレペで拭いてから確認すると、尿道口がクリトリスより少し後ろのほうに移動していることに気付く。
 
そうか。女性化が進行しているんだ!女の子はクリトリスからはおしっこしないもんね!(←双葉より女の構造に詳しい)
 
でもこの位置からおしっこが出ると、おしっこの飛ぶ方向の制御が難しい。少し試行錯誤が必要な気がした。
 
またこの日は少しお腹が痛い気がした。天候が不安定だから、寝冷えしたかなあ、と思い、この日は部活を休ませてもらって、授業が終わったらそのまま帰宅した。
 
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5月16-17日(月火)。
 
歩夢の尿道口は毎日少しずつ後ろに移動した。17日になると、便座に普通に腰掛けておしっこができるようになったし、おしっこするのに、全然ストレスがなく、おしっこが身体から真下に落ちて行くのに近い感じになった、
 
男の子のおしっこは“出す”もの。女の子のおしっこは“出る”もの、って誰か言ってた気がするけど、尿道が短かくなって、きっと女の子感覚に近づいてるんだ、と歩夢は思った。
 
お腹の傷みはどんどん酷くなった。明日休んだほうがいいいのかなあ、などと思ったら、琥珀の声が聞こえる。
 
「休む必要は無いよ。でも今夜はナプキン着けて寝なよ」
「ナプキン!?」
「明日の朝になれば分かる」
 
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まさか!?
 

5月18日(水).
 
歩夢はまた夢を見ていた。道を歩いていたら、急に雨が振ってきた。傘を差して歩くが、道に水があふれ、まるで池の中を歩くような感じになる。そしてとうとう鉄砲水みたいなのが来て、歩夢は水に流されてしまう。
 
「きゃー」と思っていたら、目の前に人形美術館がある。歩夢は必死で泳いでそこに辿り着いた。
 

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「入って入って」
と言って、姉の遙佳が、手をつかんで歩夢を中に入れてくれた。
 
「助かったぁ」
「雨が止むまでここで休んでなよ」
「うん」
「着替えるといいよ。私の服、貸してあげる」
「ありがとう」
 
それで、歩夢は服を脱いで、渡されたバスタオルで身体を拭く。バスタオルの長い辺の両側に半円形の羽根が付いているので、変な形!と思った。
 
姉が言う。
「あんた、ちんちんどうしたの?」
 
「無くなっちゃった」
「包丁か何かで切ったの?」
「縮んでって無くなった」
「無くなるもんなの?」
「男の娘は13歳になったら女の子に進化しないといけないんだよ。私、ヴァギナもできたよ」
 

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「へー。あんた、すっかり女の子になったね」
と、姉は言った。
 
「えへへ。私、女の子になっちゃった」
と歩夢も笑顔で言う。
 
「でも女って出産は凄く痛いよ」
「私、頑張る!」
 
「でも残念だ。あんたのちんちん切ってあげようと思ってたのに」
と言って姉は刃渡り30cmくらいの巨大なハサミをかちゃかちゃさせている。なんか電動ドリル?みたいなのも持ってる。
 
「広詩のちんちん切ってあげようかな」
「広詩はちんちん切られたら泣くと思う」
「泣いて感動するのね」
 
「そのドリルは何するの?」
「お嫁さんになるのに必要な穴を開けてあげる」
「痛そう」
 

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「でもこの美術館大丈夫かな」
「2月に、お人形さんたちのバルコニー作る時に、壁の強化工事してるから、たぶん持ちこたえると思う」
「持ちこたえてほしいね」
 
と歩夢は遙佳と会話をした。
 

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そこで目が覚めた。多数の天使たちが
「Welcome to the woman's life」
と言っているような気がした。
 
歩夢はお股付近を確認した。レッスンバッグから替えのナプキンを取るとトイレに行く。ナプキンは真っ赤になっていた。
 
「とうとう生理が来たんだ。私、ほんとに女の子になっちゃった」
 
それで先日からパンティライナーでしているようにナプキンを交換し、血が付いたナプキンは丸めて包装紙に包んだが、これだけでは足りないと思い、更にトイレットペーパーで包んでから汚物入れに捨てた。
 
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