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■春歩(20)

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6月4日(土).
 
高校バスケットボールのインターハイ富山県予選は、今日は男女の準決勝が行われる。H南高校の部員8名に、春貴と愛佳の母は、早朝氷見を出て富山市の富山県総合体育センターまで出て来た。
 
「立派な体育館だなあ」
「こんな所で試合ができるって凄い」
「うん、君たちは強い」
 
女子の組合せはこのようになっている。
 
高岡C高校−H南高校、富山B高校−高岡S高校
 
H南高校以外はシード校である。H南高校の山は3回戦でシード校を破ったチームが交通事故による通行止めのせいで準々決勝の試合開始に間に合わず没収試合となった。それでH南高校は思いがけずも準決勝に進出することになった。
 
高岡C高校とH南高校は春の大会では3回戦で当たり、120-45で高岡C高校が勝っている。しかし今日、高岡C高校のヘッドコーチ矢作先生は、試合前のこちらの練習を見ていて、腕を組み厳しい顔をしていた。
 
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試合はどちらも10時に始まる。
 
事前練習が終わり、いったんベンチに座る。マネージャーの晃は、ウィンドブレーカーを着て春貴の隣に座る。春貴は彼に「足を怪我してるかのように装え」と言っておいたら、彼はコートからベンチに戻る時、足を引きずるようにしていた(向こうは怪我しているかと思うと思う)。
 
彼には、今日はベンチでスコアを付けるように指示している。
 
スターターがコートに出て行く。こちらは愛佳・舞花・夏生・河世・美奈子という布陣で出て行った。
 
向こうは背番号4〜8の5人が出て来た!
 
「向こうさんマジですよ」
とベンチスタートになった2年生・松夜が言う。
 
「一流のチームは、決して手を抜かないんだよ」
「そうかも!」
「それに、準決勝まで勝ち上がってきたチームを舐めないと思うよ」
「マジにやられたら、200対0で負けるかも」
「そういうのも気持ちいいんじゃない?」
 
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ティップオフは向こうの170cmセンター寺下さんが取り、攻めて来る。そしてパス回しの後、寺下さん自身が進入してシュートしようとするが、チャージングを取られてH南高校のボール。愛佳がスローインして攻めて行き、スリーポイントラインから美奈子が鮮やかなスリーを決める。
 
0-3.
 
なんとH南高校の先制で試合は始まった。
 
「200-0は免れたようだよ」
と春貴は楽しうに松夜に言った。
 

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体育館を使わせてもらえたこの一週間は、攻守交代して、進入してシュートする練習と、進入させない練習をひたすらした。全員に“シリンダー”という考えをしっかり教えた。
 
その成果が現れて、最初のC高校の攻撃では相手チャージングを引き出す形で進入を阻止できたのである。
 
しかし向こうは基本的に無茶苦茶強い。勢いは完璧に向こうにある。
 
それでも、3回戦で見せたように、勢いで負けていても、こちらはミドルシュートで点数を稼ぎ、美奈子・夏生がスリーを撃って、美奈子は4割近く、夏生も2割くらい決めるので、点差としてはあまり離れずに付いていった。
 
確率の高い美奈子だけでなく、夏生も安心してスリーを撃てるのは河世が3割くらいリバウンドを取ってくれるからである。170cmの向こうのセンター寺下さんとの争いに河世が全然負けていない。
 
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それで第1クォーター 20-18, 第2クォーター 23-22 で前半を終わって43-40である。1ヶ月前に120-45の試合になったチームとの点差ではない。今の状態では、勝負は全く予断を許さない。
 
「私たちわりと強いかも」
と舞花が言っていた。
 
「うん。君たちは強い!」
と春貴は行った。
 

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第3クォーター、相手は引き離しに掛かる。積極的にパスカットやスティールを狙いに来る。3回戦で対戦した所にもこれをやられたが、あの時はそれが結構なファウルを呼んだ。しかし高岡C高校は上手いので、ファウルはあまり取られない。
 
それで少しずつ点差が広がっていく。第3クォーターは24-16。ここまでの合計は67-56で、11点差である。高岡C高校相手には厳しい点差かなと春貴は思った。
 
ところが第4クォーター、相手の6番さん、170cmのセンター寺下さんが5ファウルで退場になると、リバウンドを河世が支配するようになる。これでゲームの流れが変わってしまった。
 
3回戦の相手とは格が違うのだが、それでもどうしてもH南高校のゲームスタイルでは、相手側のファウルがかさみやすいのである。それに河世がバスケ初心者ではあるが、パレー経験者だから、高く飛ぶ能力は高い。それがこの2ヶ月の経験でかなりリバウンド争いに関する力を付けてきた。
 
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加えて、H南高校にはスリーを高確率で放り込めるようななってきた美奈子の存在がある。
 

それで第4クォーターはこちらがリードを奪う展開になった。
 
点差がどんどん縮まって行く。
 
そして残り2分で何と80-80と追いついてしまった。その後、手に汗握る展開が続く。
 
120s 80-80▲河世
102s ▲82-80
88s to
68s ▲84-80
58s 84-83▲美奈子
38s to
21s 84-85▲舞花
 
こちらが一度パスカットされたことから4点差に広がったものの美奈子のスリーで1点差に迫る。その後、相手のシュートが外れて河世がリバウンドを取り、この攻撃機会に舞花がシュートを決めて残り21秒で84-85と、何とH南高校が土壇場で逆転に成功する!
 

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残り21秒なので24秒計は停まる。
 
ゲームクロックだけがカウントダウンしていく。
 
相手はゆっくりと攻め上がってくる。慎重にパス回しする(残り時間を使い切ろうとしている)。
 
残り8秒で5番SFの府中さんが中に強引に入ってきてシュートする。
 
外れた!?
 
河世がリバウンドに飛び付く。
 
が、相手キャプテンの分家さんも飛び付く、
 
2人がボールを持って離さない。
 

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笛が吹かれる。
 
審判は両手の親指を立てて手を伸ばす。ヘルドボールによるジャンプボール・シチュエーションである。みんな一瞬ポゼッションアローの向きを見る。審判は高岡C高校を指し示した。
 
つまり最初のティップオフは高岡C高校が取った。だから第2クォーターはH南高校、第3クォーターは高岡C高校、第4クォーターはH南高校の先攻だった。だからこのヘルドボールでは高岡C高校がボールの権利をもらうのである。
 
これがもしH南高校が攻撃機会をもらえる順番たったら、この瞬間H南高校の勝利がほぼ決まっていた所だった。しかし運命はこの日は高岡C高校に味方した。
 
高岡C高校がスローインに行く。
 
しかし残りは3秒である!
 
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スローインするのは高岡C高校のキャプテン分家さんである。すぐそばに居る7番のSG(シューティングガード)初瀬さんにトスした。そこから初瀬さんがミドルシュートを撃つ。撃ったのと同時に試合終了のブザーが鳴る。
 
ボールは・・・
 
ダイレクトにゴールを通過した。
 
スコアボードが86-85になり、得点者が「2ポイント・フィールドゴール高岡C高校7番初瀬さん」とコールされる。
 
C高校のメンバーが物凄い歓喜である。
 
H南高校のメンバーは河世と美奈子以外、全員座り込んでしまった。
 
整列が促される。
 
「86-85で高岡T高校の勝ち」
「ありがとうございました」
 
お互いに握手し、ハグして健闘を称え合った。
 
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愛佳と舞花が泣いていた。
 
「悔しいです。あと少しだったのに」
「また練習頑張ろう」
「はい」
 
これでインターハイ予選では、H南高校は3位となり、残念ながら香川県で行われるインターハイ本戦には行けないことになった(3位決定戦は行われない)。
 
しかしBEST4なので、ウィンターカップ予選ではシードされることになる!
 
万年1回戦負けの学校が運もあったとはいえ、シード校になるというのは凄いことである。
 

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試合終了後、高岡C高校の矢作先生は
 
「そちらの11番さんが出てたら、うちが負けてたかも。怪我とかしたの?でもほんの1ヶ月で見違えたね。奥村先生は名将だよ」
 
と春貴を褒めていた。矢作さんとも堅い握手をし、
 
「また、やりましょう」
と言い合った。
 
横田先生に電話で連絡をすると
「高岡C高校相手に1点差ですか!凄いですね!」
と驚いていた。
 
「ほんとに強くなりましたね」
「この1週間体育館をもらえたので攻守の練習ができたので、それで相手の進入をかなり阻めたのが大きかったです」
 
「しかしそこまて急成長してきているなら、何とか練習場所を確保したいなあ」
と横田先生は言っていた。
 

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試合後、春貴は帰り道に、マクドナルドに寄って“やけ食い”で1人2個までおごるよと言ったら全員2個頼んでいた。自腹で追加して3個・4個頼んでいた子もいた!テイクアウトして車内で食べたが、みんな涙を流しながら食べていた。
 
「先生、次は勝ちましょう」
「うん。ウィンターカップを氷見に持ち帰ろうよ。あれは凄く美しいカップだよ」
「へー。実物を見てみたい」
 
などと言っていたら愛佳が言った。
 
「先生、部員を増やしましょうよ。やはり8人じゃ足りないです」
「うん。どうしても疲れが溜まるから、最後の方は動きがにぶくなるよね」
 
「取り敢えず晃は性転換させるとして、あと4人勧誘して12人になれば、結構疲れが溜まらないように休めると思います」
などと舞花が言っている。
 
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晃が「え〜?」という顔をしている。
 
「県大会3位というのをアピールして部員募集を掛けようよ」
「原稿作って、校内放送でも呼びかけてみますよ」
「募集のポスターも作って貼ろう」
 
「でもこれ以上部員が増えたらこのキャラバンに乗り切れませんよ」
と心配する声がある。
 
「それは他の保護者さんにも呼びかけて何台かに分乗して移動すればいいと思うよ」
と愛佳のお母さん。
 
「それに私も、夏休み中にマイクロバスが運転できる免許を取るよ。マイクロバスが使えたら最大28人まで移動できる」
 
「そこまで増えたら、私、ベンチに入れないかも」
「まあ取り敢えず4人くらい勧誘したいね」
 
「大型免許持ってる保護者さんはわりといるかも。大会の時とかはお手伝いしてもらえるかもしれませんよ」
と愛機の母は言っていた。
 
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「私の父も大型免許持ってます。平日は無理だけど、休日なら多分頼めます」
と松夜が言った。
 

6月4日(土).
 
バスケットボールのD級コーチ・ライセンス講習会の申し込み期間が始まったので、春貴は4日の試合が終わった後、即申し込み手続きをした。
 

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6月5日(日).
 
高校バスケットボールのインターハイ富山県予選は、今日は男女の決勝が行われる。H南高校は昨日の準決勝で敗退したのだが、今日も富山市の富山県総合体育センターに出て来た。
 
実は北信越大会の代表決定戦があるのである。
 
北信越大会は、福井・石川・富山・新潟・長野の5県から合計16チームの代表が出て、今年は6月18-19日に金沢市で行われる。代表は各県から3校ずつと、地元の石川県からプラス1校である。
 
それで昨日の準決勝で勝った2チームは当然これに出るが、負けた2チームで試合をして勝った方が北信越大会に行ける。この2チームは、インターハイ予選ではあくまで両方3位なのだが、北信越大会の出場をかけて戦うのである。
 
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つまり3位決定戦ではなく、あくまで北信越大会代表決定戦(名称としては“北信越大会出場順位決定戦”)である。
 

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H南高校のメンバーは駐車場で軽い体操をしてから、会場の受付でバスケ協会の会員証を提示して中に入る。
 
試合は10時から男女の出場順位決定戦、11時から男女の決勝戦が行われる予定である。H南高校の相手は高岡S高校で、頻繁にシード校になっている強豪である。
 
ところが・・・
 
大会の運営の責任者がこちらに来て言った。
 
「高岡S高校さんは今日の試合を辞退しました」
「え〜〜!?」
「実はベンチ入りメンバーの中にコロナの陽性者が複数出まして」
「あぁ!」
 
「いづれのケースも、家族に発症者が出て家族全員PCR検査を受けたら、本人も陽性だったそうです。無症状ではあるのですが」
「無症状だから気付かなかったんでしょうね」
 
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「それで結果的にベンチ入り全員と、昨日の対戦相手・富山B高校のメンバーさんも濃厚接触者ということになり、女子の決勝戦は来週に延期されました」
「あらあ」
 
「じゃ順位決定戦も来週に延期ですか?」
「いえ、順位決定戦は高岡S高校の辞退で、H南高校さんの不戦勝になります」
「私たち、準々決勝も不戦勝だったのに」
「まあ、今のご時勢では仕方ないですね。皆さんも体調管理にお気を付け下さい」
「分かりました」
 

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ということで、H南高校のメンバーは10時にユニフォームでコートに並び、そこで審判が没収試合を宣言して20-0の勝利となった。
 
大会で2度も不戦勝というのは、本当にレアなことだと春貴は思った。
 
しかしこれで、H南高校は6月18-19日に北信越大会に参加することになった。
 
横田先生に連絡したら驚いていた。
 
「今年の女子は運がいいね!」
「いや、うちもコロナには気をつけないとやばいです。対岸の火事じゃないです」
「全くです。男子の方もあらためて感染防止を呼びかけますよ」
 
 
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