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■夏の日の想い出・Long Long Ago(13)

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(C) Eriko Kawaguchi 2022-03-12
 
理史の川口市のマンションが10月7日の地震で一部壊れ、出入りできなくなっている問題で、アクアは念のためコスモスに、理史と同居してはダメか?と訊いてみたものの、コスモスは恐い顔で!
 
「ダメ」
 
と一言言った。
 
仕方ないので、理史の新しいマンションを探すことにした。
 
「Mは彩佳と一緒に暮らしてるのに〜」
と、龍虎はぶつぶつ言っていた(彩佳的見解では夕食を持って来て一緒に食べてるだけ)。
 
しかし探すといっても、2人とも仕事が忙しいので、候補選びは和城理紗(わっちゃん)に任せた。
 
すると、わっちゃんは1日歩き回ってから
「荻窪とかどう?」
と言った。
 
「ああ!」
 
わっちゃんは、目を付けてきたマンションの位置を地図で示した。
 
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「荻窪駅は新宿から中央線と総武線、それに地下鉄丸ノ内線で結ばれているからコロナが落ち着いたら仕事に行くのに電車でのアクセスもいい。このマンションは、荻窪駅の1kmくらい南にあって、駅から歩いて12-13分。それに荻窪からは中央線快速で八王子まで35分くらい。コロナが落ち着いたら電車で八王子にも来やすい」
 
「八王子駅から龍の家まで電車が欲しい」
「歩いたら3時間掛かるかもね」
 
「まあここは高井戸ICまで3kmくらいだから、高速で八王子まで20分かなあ」
「そちらがいいね」
 
それで深夜(しか時間が取れない)に3人で見に行ってみた。
 
「ここわりといいと思う」
「うん。霊道とかも通ってないから過ごしやすいと思うよ」
と、わっちゃんは言うが、霊道とかは龍虎にも理史にも分からない。でも感じがいい気がした。
 
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土地の雰囲気は昼と夜でガラリと変わることがあるので、昼間見ていい場所だと思っても夜はとんでもない状態になることもある。しかし夜間に見ても大丈夫ならたぶん大きな問題は無い。
 
「だけどここ便利だから高そう。家賃はいくら?」
と理史は訊いたのだが
 
「え?家賃??買うんじゃないの?」
と、わっちゃんは慌てている。
 
「分譲なの〜〜?」
「うん。築8年だし、今回の地震でも全く被害は出なかったみたいだし」
「ちなみに分譲価格は?」
「新築じゃないからわりと安いよ」
「で、いくら?」
「9980万円」
「なんかスーパーの目玉商品みたいな値段の付け方だ」
「消費税入れたら1億1千万かな」
「うん。1億0978万円。数字が78901と並ぶストレートフラッシュだよ」
「スートは〜〜?」
 
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「とても払えない」
と理史は言うが
「ボクが買おうか」
と龍虎は言う。
 
「あ、龍ならお昼御飯代程度だよね」
と、わっちゃん。
 
「まあそれでもいいか」
ということで、龍虎がお金を出して、このマンションを買うことにしたのである。
 

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購入手続きは2人とも時間が取れないので、龍虎の顧問弁護士・新井川さんに手続きをお願いした。新井川弁護士は、10月15日(金“ひらく”)にわっちゃんと2人で不動産会社に行き、このマンションの購入手続きをしてくれた。なお、購入する部屋は、わっちゃんが昼間に見せてもらい、霊的な環境と風水が最も良い部屋を選んでいる。
 
入居は10月21日以降と言われたが21日が“さだん”て゜建築関係の吉日なので、その日に入居することにして、当日、わっちゃんが理史のかばん1個と伏見稲荷の“砂”を置いてきた。これでその日入居したことになる。“砂”があると弱い雑霊は近付けないので、部屋が自然にクリーンになる。
 
でもこの時点ではまだ川口市のマンションに出入りできないので荷物の本格的な移動はできなかった。理史は取り敢えず通販でベッドを頼んでおいた(到着日に、わっちゃんに行って受け取ってもらう)。また電気・水道・ガスの手続きをしてもらい、包丁・まな板・煮鍋・フライパン・オーブントースター、電気ケトルなど最低限の調理器具、箸・茶碗・皿、トイレットペーパー、トイレの汚物入れなど数日滞在するのに最低必要なものも買いそろえてもらった。
 
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10月16-17日は東京江東区の東京辰巳国際水泳場で、短水路選手権(正式名“日本選手権(25m)”)が行われたので、青葉をはじめとする“津幡組”を能登空港→熊谷にA318で連れてきた(10名ほどのスタッフを含む)。
 
青葉には大会終了後の18日、§§ミュージック社員寮の候補地(さいたま市内だが、旧岩槻市内になる)を千里と一緒に見てもらい、コスモスは即、売買契約をした。ここに現在建っているマンションを崩して、新しいマンションを建設。社員寮とすることになる。
 

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土地の売買契約をした翌日、10月19日、コスモスは播磨工務店の前橋と社員寮の建設について話し合った。彼女を現地に連れて行き、土地も見せる。概略設計図も見せた。
 
「なるほど、地下に駐車場を含めて2フロア、地上に10フロアの合計12フロアですか」
「ええ。1階が管理関係の部屋で2〜10階が住居になります」
 
セキュリティ問題もあるので、隣の部屋の会話が聞こえたりしないこと、しかしムーラン建設が建設中の第2女子寮のような防音構造にまでする必要はないこと、など、いくつかのポイントを示した。
 
「“お急ぎ”ですか?」
 
播磨工務店の“お急ぎ”は危ないなとコスモスは思った。彼らはこのくらいのビルを半月程度で作る能力を持っているが、部屋の天井と床が逆になっていたりしかねない!?
 
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「無理して急ぐ必要はないので、普通の工程で作って下さい」
 
「分かりました。今建っているマンションは一晩で崩しますので、その後、“お急ぎ”でないなら基礎工事のコンクリートが固まるのを待つ間に構造計算して設計図を書いて建築確認を取って、10月30日から建築作業に入り、12月1日の完成、検査後、12月3日(金)のお引き渡しになります」
 
なんか順序がおかしい気がするが気にしない!でも前橋さんはまだまともだ。南田社長なら完成後に設計図を書いたりしかねない(青葉の家は南田)。九重さんになると本人が好きなように作るから何ができるか予測が付かない!?(八王子の龍虎の家が九重)
 
「ああ、充分です。ではそれでお願いします」
「分かりました。では早速今夜から取りかかります」
 
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ということで、12月上旬に社員寮が完成することになったのであった。
 

10月19日(火)。
 
夕方、秋風コスモス(本名:伊藤宏美)の祖父(伊藤太郎の父)伊藤辰吉が亡くなった。1916年(大正5年)生れの105歳で、スペイン風邪に当時罹ったものの生き延びた、“スペイン風邪免疫”世代である。今回のコロナでも最初は
 
「俺は西班牙風邪の免疫があるから罹らん」
 
などと言っていたらしい。でもワクチンが出来ると優先接種グループなので
 
「やはり受けとこうかな」
と言って、ちゃんと2回接種を受けたが、副作用はあまり無かったらしい。
 
今回の死因は医者によると老衰ということで、死に顔も穏やかであったらしい。
 
大往生である。
 
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宏美(コスモス)は『八犬伝』の撮影中で多忙な時期なので、葬儀は欠席させてもらおうかなと言っていたものの、千里が乗り込んできて
 
「何かあったらサポートするから行って来なよ」
と言って送り出した。宏美も千里がいるなら安心かなと思い行くことにした。
 
宏美と夫の道雄、姉の秋好(秋風メロディー)と夫の田船智史に2人の子供(5歳と3歳)、宏美たちの両親の伊藤太郎・花子と8人まとめてA318で関空に飛ぶ。
 
この日は実はG450は、青葉が富山に戻るのに使用していた。それでコスモスはA318(定員100名)を使ったが、コスモスの両親は
「こんな大きな飛行機に私たちだけでいいの?」
と不安そうに言っていた。
 
関空からは智史の運転するレンタカーのセレナで奈良県御所(ごせ)市の祖父宅に行った。
 
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祖父には宏美は(歌手デビュー以来忙しすぎて)しばらく会っていなかったが、姉は曾孫を見せるために4年前と2年前にここを訪問している。今回智史が運転を担当したのは過去に2度行っているからである。
 
20日が通夜で21日午前中に葬儀ということだったので、21日に葬儀が終わったところで帰ることにする。
 

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「喪主はお父ちゃんじゃないんだ?」
と宏美は言った。
 
喪主は次男の次郎さん(宏美の叔父)になっている。
 
「ああ、俺は親父の本当の子供じゃないから」
と太郎は言った。
 
「嘘!?」
 
「実は俺は“藁の上の養子”なんだよ、戸籍上は親父とお袋の長男になってるけど、実は別の人の子供を養子としてもらいうけた」
「そんなことがあったんだ」
 
「気持ちの上では親父の息子のつもりだし、弟たちとも兄弟のつもりだ。弟たちは俺を兄と親しんでくれたし、長男として立ててくれる。両親は俺を実の子供と分け隔て無く育ててくれた。でもこういう時は遠慮しようかなと次郎に言った。次郎は今更気にすることもないのにと言ったけどな」
 
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御所市への道々、太郎が話したのはこういうことだった。
 
太郎が生まれたのは1954年だが、当時辰吉は38歳、妻のトムは34歳だった。ふたりは辰吉が22歳・トムが18歳の時に結婚したが、16年間妊娠していなかった。年齢的に考えても、もう子供はできないと思われた。それで養子をもらったらしい。藁の上の養子にしたのは、実母がまだ女学生だったので妊娠・出産がバレると退学になってしまうからだと聞いた。何かの間違いで妊娠してしまったのだろう。
 
ところが太郎を養子にもらったら、実の息子となる次郎が生まれてしまった。ひじょうによくある話だ。更に3年後、トムは39歳で2人目の実子・三郎を産んだ。むろん3人とも辰吉・トム夫妻の長男・次男・三男と戸籍には記録されている。
 
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「お父ちゃんは自分の実の両親のことは知ってるの?」
と宏美は尋ねた。
 
「よく会ってたよ」
「そうなんだ!」
 
「母親にはな。父親とも3回会ってる。でも母親はやはり自分が若くして産んだ子供のことはずっと気に掛かるんだと思うよ」
「そうだよね〜」
 
宏美は父が養親たちのみでなく、実の親にも愛されていたということだけで満足であった。しかしそうすると、父は龍虎と似た立場だったのかも知れない。
 
「アキ(秋好:メロディー)とヒロ(宏美:コスモス)が歌手になったのは、その実の母親の遺伝かもな」
と太郎は言った。
 
「え?お祖母ちゃん、歌手か何かだったの?」
と宏美は驚いて訊いたのだが、その時、宏美は太郎の隣に座っている花子がおかしくて仕方ないような顔をしているのに気がついた。
 
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「まさか、ヒロ、こんな阿呆な話信じたの?」
などと太郎は言っている。
 
「え〜〜〜!?」
 
「喪主を次郎にしてもらったのは、俺はずっと本家に来てなくて、親父は次郎たちと暮らしてたからだよ」
と太郎は大笑いしながら言った。
 
姉まで
 
「ヒロちゃん、向こうに着いて次郎さんの顔を見たら分かる」
などと言っていた。
 
「アキも一度ころっと欺されたな」
などと太郎は言っている。なるほど、姉もやられていたわけだ。
 

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それで実際現地に行き、挨拶をしたが、次郎さんは父と双子か?というほどよく似ていた。これは間違いなく実の兄弟だ。しかし、どこからあんなふざけた話が出て来たのか、と宏美は呆れ返った。
 
次郎がずっと辰吉と暮らしていたからということで彼が喪主を務めるのがやはり妥当と多くの人が思ったようだが、喪主はわりと忙しいので、太郎が弔問客を歓迎し、よく話などもして、また酒を勧めたりして喪主を助けて動いていた。遠く離れて暮らしていても仲は良いのだろう。
 
道雄や智史も男性の親族や友人たちと一緒に酒盛りしているので、ああ、帰りは私が運転することになるなと宏美は思って見ていた。その前にあんなに集まって酒盛りとかして、感染したりしないだろうな?と心配になる。帰ったら1週間くらい隔離しておかなくては。(一応窓もドアも開けて扇風機まで掛けて、換気はかなり強くやっているようではある:寒いくらいだ)
 
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次郎は御所市で辰吉と同居し、御所市役所に勤めていた。50代で外部機関に出向したが、ずっと御所市から出ていない。俺は市外に出て行く頭が無いからなどと言っていた。定年退職後も外部委託機関に勤めている。
 
三男の三郎は、奈良県内で公立高校の先生をしている。県内各地を数年単位で転勤で飛び回っている。2020年3月で定年退職したが、再任用となり、現在は御所市内の高校で教えている。一貫して剣道部の顧問をしており指導していた剣道部を何度か県大会で優勝させ全国大会に連れて行っている。自身も七段の免状を持っている。眼力が強いので、メロディーが怖がっていた!コスモスはどこかで似たような体験をしたことがある気がした。
 
なお辰吉の遺産は住んでいた家・屋敷と“山3個”だけということで、太郎も三郎も相続辞退するらしいので、次郎が引き継ぐことになる。そういう意味でも次郎が喪主になるのにふさわしかったのである。若干の預貯金や株もあるが、たぶん相続税で消える。
 
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通夜の席では、秋好・智史・宏美・道雄の“正体”はバレなかったのだが、葬儀の時には
 
「あのお、もしかして秋風コスモスさんですか?」
とか
 
「あのお、もしかしてバインディング・スクリューの田船さんですか?」
と訊いてくる弔問客がいて宏美も智史も
 
「はい、そうですよ。お世話になってます」
と明るく返事した。エア握手した人たちも結構いた。
 
コスモスが故人の孫と聞くと驚いている人も多かった。
(多分1年くらいこの話題が老人達の間で話のネタとして継続する)
 
「あんたとこの事務所の後輩のアクアちゃん、すっごい美人だね」
「ありがとうございます」
「うちの孫の嫁さんに欲しいくらいだわあ」
「まだ結婚しませんので」
「人気やもんねー」
 
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あはは。やはりアクアはお嫁に行くんだろうな。エンゲージリングはもらってたし。
 

また道雄も
「ひょっとしたら、うどん・ほー(本人の発音のママ)の木取君ですか?」
 
と3人ほどの老婦人から訊かれて
 
「僕は引退したので」
と照れていた。
 
でもメロディーには声を掛けてきた人は無く、ぶつぶつ言っていた!
 

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夏の日の想い出・Long Long Ago(13)

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