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■夏の日の想い出・Long Long Ago(6)

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私とコスモスが、山村から提案のあった女子寮の太陽光パネルとプロパンガスによる非常電源設備について千里に相談したら、千里はすぐに動いてくれた。8日の内には太陽光パネルを“取り敢えず”10枚持って来てくれて、女子寮の屋上に仮設置してくれた。
 
「1枚の太陽光パネルは大雑把に言って1日に1kwh(キロワット時)の電力を生み出す。10枚なら10kwh程度。これを例えば蓄電池ユニット2台で10kwh溜めておくとする。停電時に最低必要なものとして、館内の非常灯と音声放送で700wくらい使ったとしたら、10kwhの蓄電池で、10÷0.7=12-13時間程度は照明と音声放送を維持できる」
 
「もしかして大事なのは太陽光パネルより蓄電池?」
「当然そういうことになる。太陽光パネルが威力を発揮するのは停電が何日も続いたような場合だよ」
「そうだったのか!」
「どっちみち夜間は太陽光パネルは無力」
「確かにそうだ」
 
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「ちなみにここの屋上のサイズを計ってみたら33m×9m≒300m2くらいだから、1.4m×1.0m の太陽光パネルは300÷1.4≒200枚くらい設置できることが分かった」
 
「そんなに載るんだ!」
「1個20万で費用が4000万掛かるけどね」
「そのくらいは問題無い」
「1個27kgで重量が5.4トンになるけど」
「それが耐えられないかも」
 
「200枚載せるとパネルのパワーは300w×200=60000w=60kwになって、月に6000kwhの発電ができる計算になる。この女子寮の電力消費がどのくらいか知らないけど、建面積300m2の10フロアで3000m2として、1m2あたり10kwhで計算して月間30000kwhとすると、その2割くらいを太陽光パネルでまかなえる計算になる」(*3)
 
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(*3) オフィスビルの消費電力は1m2あたり60wと言われる。1日10h使って600wh, 1ヶ月で600wh×30=18000wh=18kwhとなる。しかし、千里は寮ではそこまで使わないだろうと考えて約半分の10kwhで計算した。
 
桁の大きな計算をスラスラとしているので、ケイは、ここに居るのが間違い無く千里3であろうと判断した。3人の千里の中で計算が得意で(実は)プログラムも書ける理系女子は千里3のみなのである。千里3は3桁×3桁の掛け算を暗算でできるが、千里1や2は2桁同士の足し算を電卓使っても間違う!
 
千里3が青葉およびイリヤさんと一緒に松本花子をしていて、千里2がケイや丸山アイ・若葉と一緒に夢紗蒼依をしている。でも2人はしばしば入れ替わってお互いに相手をスパイしている!霊能者の青葉や丸山アイでも欺されるから凄い。息子の京平君でさえきれいに欺されるらしい。
 
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「200枚も並べて2割かぁ」
「エアコンを停めればもう少し何とかなる」
「やはり非常時には1階の部屋に集めて夜を過ごさせるしかないなあ」
「コロナが落ち着くまでは集めるのが恐いけどね」
「それがあるのよ」
 
「エアコンを一晩維持するにはどのくらいの蓄電が必要?」
とコスモスが訊く。
 
「シミュレーションが難しいけど、例えば1台のエアコンが400wくらいで運転された場合、全館で50台のエアコンを動かすと20000w=20kwの電力を使う。これを例えば8時間維持するには、160kwhの蓄電が必要で、5kwhの蓄電ユニットを使うなら32台必要になる」
 
「それどのくらいのスペースを食う?」
「高さ50cm厚さ20cmの蓄電ユニットを10cm空けで横に並べて15メートルくらいかなあ。過熱しないようにその部屋自体に強い冷房を掛ける必要があるから、もっと必要かも。当然常時監視してないと危険」
 
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「現実的じゃない気がする」
 
「と思う。バッテリーで動かせるのは、照明と音声放送に、ノートパソコン、冷蔵庫、スマホの充電用電源くらいだよ。エアコン使いたかったら自家発電が必要」
 
「松本花子で使ってるようなプロパンガス発電システムは?」
 
「あれは1台のユニットで800wくらい発電できる。エアコン動かしたかったら発電ユニットが25基必要」
 
「やはり現実的じゃない気がする」
「松本花子のはコンピュータを動かし続けるための電力確保だからね。たとえ大地震が来ても納期を守るのにマシンを動かし続けることが目的。発電ユニットは2個用意しているけど、コンピュータと回線だけに使う。暑さ寒さは我慢」
 
「ああ」
 
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「実際に一度大地震を経験したけど、あの時は太陽光パネルだけで乗り切ってプロパンまでは使わずに済んだ」
「太陽光パネル凄いね!」
 
「夢紗蒼依だと小型の発電所まで持ってるらしいけど、そこまでは必要無いと思うし、この女子寮なら普通の自家発電システムを作った方がいいと思う」
 
「分かった。その方向で検討する」
「うん。それがいい。ムーラン電機(*4)に相談するといいよ」
「そうだね。大矢さん(ムーラン建設の副社長)に電話してみよう」
とコスモスは言っていた。
 
(*4)ムーラン建設の子会社で電気設備の施工を担当する。
 
しかしこの日千里が連れて来たスタッフが太陽光パネルが生み出した電力を蓄える蓄電ユニットも4個(20kwh分)設置したし、2日掛かりで女子寮全館に配線工事をして、放送設備と非常灯に各部屋の冷蔵庫までは、そこから供給される電力で動かせるようにしてくれた。“スマホ充電専用”と書かれたUSBも設置した。パソコン電源については、冷蔵庫用のコンセントから分岐させれば取れるが「常識的な範囲で」と技術者さんは言っていた。
 
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姫路スピカみたいにパソコンを常時10台?動かしている人はきっと常識の範囲外だ。
 

ところで、少し時間が前後するが、水上先生のリモート追悼会が終わった後、三宅先生から
「ちょっと相談がある」
と言われて、私とアクアが、三宅先生の指定する都内の貸し会議室に集まった。
 
「普通なら食事でもしながら話したい所だけど、こういう折だから」
と先生はおっしゃる。
 
「でも今日は龍ちゃんスカートなんだね」
「出掛けにスカートしか見付からなかったら」
 
ああ、アクア家の日常だなと思う。それにアクアがスカートを穿いていても、ファンは誰も変に思わないから盗撮とかもされない。
 

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「実は水上君の借金問題で」
と三宅先生がおっしゃるので、私は腕を組んだ。
 
「いくらあるんです?」
「白金のマンションは1億2千万を20年ローンで購入して、ローンはまだ10年しか支払われていなかった。実は土地不正取引事件の後、返済が滞っていて、強制執行とかもあり得る状況になっていた」
 
「残額6000万円ですか?相続拒否すべきだと思います。そしてどこか小さなアパートでも借りた方がいいです」
と私は言った。
 
「それはそうなんだけど、水上は防音室を作るなどあのマンションを改造していた。退去するなら、せめて転売できるように原状回復してから出てくれないかと不動産会社は言っているらしい。場合によっては損害賠償の訴訟を起こすと言っている」
 
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「で、その原状回復させる資金が無いと?」
「まあそういうことなんだよ。しかもコロナで死亡した後というのはゲンが悪いし」
「うーん・・・」
 

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「それでさ、ざっくばらんに。あそこ買ってくれそうな人を知らない?ローン残高程度の金額で。防音室はミュージシャンならありがたがると思うんだよ」
 
「10年経ったマンションで、しかも改造されてるんでしょ?それにあのマンション私取材でお伺いして見てますけど1億の造りじゃなかったですよ。何か安普請で。普通なら4000万だと思いました。白金ってだけで高く売ったんじゃないですかね〜。私ならせいぜい出しても1500万までです」
と私は言った。
 
「実は雨宮も自分なら1200万と言うんだよ」
と三宅先生。
 
私も1200万と思ったが、水上先生だからこそ少し上乗せして1500万と言った。雨宮先生も似たような評価だったようだ。雨宮先生はこういう問題にはシビアだ。たとえ友人でも、筋の通らない支援はしない。
 
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もっとも銀座で1晩で1000万使ったことはあるが!??
 
「こうなると惜しいのが『ワンザナドゥ』だなあ」
と三宅先生は両腕を上に伸ばして背伸びするよううにして言う
 
「なんでしたっけ?」
「高岡が亡くなったのが2003年12月27日だけど、その1年くらい前からワンティスはシングルの発売を控えてアルバムの制作をしていた」
 
「あ、そうそう。シングルの発売がしばらく途絶えてたんですよ、その時期」
とアクアも言う。
 
※ワンティスのシングル
1 2001.04 無法音楽宣言
2 2001.08 時計色の虹
3 2001.11 琥珀色の侵襲
4 2002.02 霧の中で
5 2002.05 漂流ラブ想い
6 2002.09 紫陽花の心
7 2002.11 リズミトピア
8 2003.07 秋風のヰ゛オロン
 
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(『リズミトピア』と『秋風のヰ゛オロン』の間に2003年4月に発売された『空っぽのバレンタイン』というシングルがあるが、名義は“保坂早穂withワンティス”である。ワンティスとしても保坂早穂への提供曲のつもりだった。楽曲を提供した縁で伴奏もしてあげただけである)
 
「高岡が亡くなる直前にアルバムはほぼ完成していた。マスターも多分作られたはず。でも高岡が亡くなって発売は凍結され、そのままワンティスの活動は停止してしまった。10年の時を経て2013年に活動再開した時に、あのアルバムを発売しようという話はあったものの、マスターが行方不明になっていた」
 
「行方不明!?」
 
「当時の技術者さんも事務所社長も亡くなってたし、唯一当時の関係者で生きていた★★レコードの加藤銀河さんも、自分はマスターには関わっていないと言った。だから誰がマスターを持っていたかも分からなかった」
 
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「うーん・・・」
 
「それで結局、上島君が持っていた譜面に、みんなで記憶を呼び起こしながら修正を加えて、新しいメンツで演奏して発売したのがグリーンアルバムだよ」
 
「ああ」
 
「その時グリーンアルバムに入れたのは夕香さんが詩を書いた作品だけにしたから、それ以外のメンバーが書いた作品は入れていない。その中に、雨宮が書いた作品、上島君が書いた作品、僕が書いた作品が1個ずつ、水上が書いた作品が2個あった。水上の作品はわりと出来が良かったから入れようよという意見もあったけど、2013年の時点では夕香さん追悼の意味もあったから、結局夕香作品だけにした。それにグリーンアルバム制作に水上は非協力的だったし。だからあのアルバムでベースを弾いたのは実はクォーツのマキ君だったんだよ」
 
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「知らなかった!」
 
「もしどこかから『ワンザナドゥ』のマスターが出て来たら、それを水上の追悼版として発売すれば、印税で2000万くらいは奧さんに渡せると思うんだけどなあ」
と三宅先生は本当に残念がるように言った。
 
(なお今回の追悼会で“御香典”としてローズ+リリーとアクアは各々300万円包んでいる。雨宮先生も多分200万くらい、青葉も100万くらいは包んだと思うので香典だけで1000万円を越えたはず。水上先生の奧さんは「ほんとにありがたい。これで借金が返せる」と言っていたが、たぶんそれは住宅ローン以外の部分だろう)
 
ずっと腕を組んでいた龍虎が言った。
 
「その音源、思いがけない所から出て来そうな気がします」
「ほんとに?」
 
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