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■夏の日の想い出・秘密の呪文(13)

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(C) Eriko Kawaguchi 2021-03-21
 
お正月明けてすぐ、羽鳥セシルは事務所の白河夜船社長から言われた。
 
「君が11月9日に撮影した明治ミトラチョコのCMなんだけどね」
「あ、はい」
とは返事したものの、たくさんCM撮影したので、よく覚えていない。
 
「メーカーに、このCMに流れている曲、CDは出てないんですか?という問い合わせがたくさん来ているらしい」
「へー」
 
「それで、折角だからCD出すことにしたから、今日の午前中青山の★★スタジオ鈴蘭に行ってくれる?」
「あのぉ、私、今日は午後からΛΛテレビで“豆腐の角”に生出演することになっていますけど」
「うん。だから午前中に完成させて夕方工場に持ち込んで、明日発売」
「ひゃー!」
 
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それでセシルは§§コールセンターのドライバー・森下さんが運転するいつもの黄色い日産の車(リアに225xeという車種?のステッカーが付いている)に乗ると、青山に向かった。
 
受付で尋ねようとして、何と言う名前の部屋を指定されたか忘れてしまっていることに気付く。
 
「すみません。何か花の名前を言われた気がするんですが」
「ここは花の名前の部屋がたくさんあるんですが」
「ありゃ〜!」
「あなたのお名前は?」
「羽鳥セシルと申します」
「少々お待ちください」
と言って受け付けの人は調べてくれた。
 
「2階の鈴蘭ですね」
「あ、そんなこと言われた気がします」
「入館証にシールを貼りますね」
と言って、受付の人はラミネート加工された“羽鳥セシル様”という名前入り入館証を発行してくれて、それに 205鈴蘭 というシールを貼ってくれた。
 
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2階ならエレベータを使うこともないだろうと思い、階段を昇る。昇った所にカウンターがあり、警備員の制服を着た女性が座っている。声を掛けた方がいいのかなと思い、
 
「済みません。鈴蘭という部屋に行きたいのですが」
と言う。
 
「右手の廊下の最初のドアですから」
「ありがとうございます!」
 
それで右手の廊下に入り、最初のドアを見る。
 
花の絵が描かれている。
 
これが・・・鈴蘭なんだっけ??
 
セシルは花を見てもその名前が分からない。でもよく見ると部屋の上の方に小さな字で 205 という数字が入っているので、ここなのだろうと思い、ドアを開けた。中に人が居る。
 
「おはようございます、羽鳥セシルと申します」
「お早う。私今日の制作をする幣原咲子です」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
 
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それで譜面を渡される。幣原さんが自分でこの歌を1度歌ってくれた。
 
あ、そういえばこの歌、歌った記憶があるなという気がした。
 
それで30分くらい練習する。その間に幣原さんから、わりと“表現面”に関する注意を受けた。「ここはもっと明るく」とか「ここはスタッカート気味でいいから言葉を明瞭に」などと言われる。幣原さんが「こんな感じで」と歌ってみせたりしてくれたが、歌のうまい人だなあと思った。
 
「じゃ伴奏と一緒に歌おうか」と言われる。
 
伴奏は既に収録されていて、それをヘッドホンで聞きながら歌う。セシルはこの音は生バンドっぽいと思った。前回この歌を歌った時は MIDI音源だった気がする。ちゃんとCDを出すので生バンドに演奏させたのだろう。
 
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3回歌って、結局2番目の歌唱がいちばんいいので、それを使うと言われた。
 
「いい所をつなぎ合わせたりはしないんですね」
「それは下手糞なアイドルの歌を録らないといけない場合かな。君は上手いからつぎはぎにするより、一続きの歌唱を活かしたほうが、まとまりがよい」
 
「へー」
 

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しかしまだ10時過ぎである。わりと早く終わったな、これなら余裕だとセシルは思った。ところが幣原さんは言った。
 
「じゃ2曲目行こうか」
 
セシルはびっくりした。
 
「もう1曲録るんですか〜?」
「聞いてなかった?」
「ただ午前中に録音するからとだけ」
「2曲カップリングしたCDにするからね。実際には各々のカラオケ版も入れて4曲入りにするけど」
 
「すみません。トイレ行って来ていいですか?」
「うん。2階フロントのそばにあるよ」
 
それでセシルは部屋を出て、階段のそばにあるフロントの所に戻る。その横に赤い▲マークがあるので、ここが女子トイレかなと思い、警備員さんに会釈してから、中に入った。
 
ここ広ーいと思った。個室が10個もあった。感染対策も万全で、基本どこにも手を触れずに利用できるようになっている。便座は紙のシートが飛び出してくる。
 
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用を済ませてから手を洗って出るが、ふと疑問を感じて警備員さんに尋ねた。
 
「ここって男子トイレはまた別の場所にあるんですか?」
「2階は女性専用フロアだから男子トイレはありませんよ」
「へー!」
「あなたがもし男子なら3階の男子トイレを使ってね」
「取り敢えず私、女子みたいです」
「性別に不安があったらトイレの中で再確認してくるといいよ」
などと警備員さんは笑って言っていた。
 

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部屋に戻ってから、幣原さんに言う。
 
「ここは女性専用フロアなんですね」
「うん。実は以前トラブルがあったから、2階は女性専用、3階は原則として男性専用になった(*1)」
 
「へー」
 
トラブルって、レイプ事件かな〜、などと思う。ミュージッシャンって、その辺りの倫理意識の弱い人が多そう。
 
「男女混合ユニットの場合は?」
「性転換しちやえばいいよ」
「あはは」
「女を男にするのは大変だから、男の子を性転換して女の子になってもらった方がいいね。ちんちん切るだけだし」
 
「そうですね」
 
ボク、ちんちん切って女の子になっちゃったよぉ、とセシルは思った。でも性転換手術って凄く痛いのを想像して覚悟してたけど、全然痛くなかったよななどと思う。麻酔掛けてるから平気だったのかな。さすがに麻酔無しでは切らないよね?
 
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「ちんちん切断機もフロントにはあるから」
「まじですか?」
 
セシルはちんちんを入れたらスパッと切断する機械とかを想像した。
 

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(*1) ★★スタジオの部屋構成はこのようになっている。
 
8F 青龍(せいりゅう)・玄武(げんぶ)
7F 白虎(びゃっこ)・朱雀(すざく)
 
↑大物アーティスト専用。2021年現在ここを使用できるのは、ローズ+リリー、アクア、ハイライトセブンスターズ、レインボウ・フルート・バンズ、など8組のみである。
 
6F 麒麟(きりん)・鳳凰(ほうおう)
5F 若鷹(わかたか)・孔雀(くじゃく)・紅鶴(べにづる)
4F 雷鳥(らいちょう)・小鳩(こばと)・雲雀(ひばり)・郭公(かっこう)
 
一般アーティストの録音用だが、6階は制作部長の許可証が必要である。将来7階以上に上がりそうな有望アーティストにしか貸さない。鳳凰は可愛い部屋で女性アーティストに人気がある。5階以下では紅鶴(フラミンゴのこと)も女性には人気である。
 
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3F(男性専用) 松(まつ)・桐(きり)・杉(すぎ)・檜(ひのき)・桜(さくら)・桂(かつら)・楠(くす)・柳(やなぎ)
 
2F(女性専用) 百合(ゆり)・菖蒲(あやめ)・牡丹(ぼたん)・雛菊(ひなぎく)・鈴蘭(すずらん)・秋桜(こすもす)・花梨(かりん)・水仙(すいせん)
 
ドアには花や鳥の絵だけ描かれていて分かりにくいので、村上社長の時代に各部屋に部屋番号が記入され、少しだけ迷子が減った。入館証にシールを貼るのはその前の松前社長の時代に導入されたシステムである。
 

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幣原さんは男女混合ユニットだったら性転換してと冗談を言っていたが、実際はその場合は3Fに案内している。別に性転換は必要無い。3Fには男子トイレも女子トイレもある。
 
元々2Fは主として女性アーティストに、3Fは主として男性アーティストに貸していたのだが、“事件”後、2Fは女性専用に変更され、トイレも女子トイレのみになり(トイレが広くなったので好評)、警備員まで置くようになった。
 
もっともキャロル前田は2Fの常連である。彼が率いるアドベンチャーのメンバーもまとめて2階に案内される。
 
「あのぉ、ボクたち男の子なんですけど」
「でもちんちん無いんでしょ?君たちは女子トイレも使っていいから」
と言われて、ドキドキしながら2F女子トイレを使っているらしい。
 
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取り敢えずキャロルもアドベンチャーのメンバーも他の女子トイレ利用者(多分ほとんどが女子)との間にトラブルが起きたことは無い。
 
それどころかキャロルは女子トイレの中で若いアイドル女子からサインをねだられたこともある。
 
「キャロルさん好き。セックスしてもいいけど」
「ごめーん。ボクもう男性機能無いから」
「ちんちん取っちゃったんですか?残念!」
 
ちんちんはまだあるのだけど、話が面倒なので細かい説明はしない。
 

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ところで2019年6月の株主総会の株主動議により★★レコードから追放された村上前社長・佐田前副社長の一派が彼らの派閥の中心人物であった無藤鴻勝氏(元大阪支店営業部長)と一緒に設立しわずか半年で倒産したMSMであるが。
 
多数のアーティストが★★レコードからそちらに移籍したものの倒産のおかげで活動不能状態に陥っていた。彼らは★★レコードに各々数億円レベルの損害を与えたので、その違約金を払わない限り、★★レコードに戻ることもできないし、他のレコード会社も彼らを拾えない(拾うと★★レコードに高額の違約金を払う必要が出る)。一部のアーティストは、MSMの経営陣を詐欺罪で告発したものの検察は容疑不十分として起訴猶予になる。民事で訴訟を起こした人もあったが、それについては後述する。
 
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アーティストの中で唯一、自力で出戻りしてきたのはロックバンドのアイダラコンであった。
 
彼らは加藤制作部長のところにきて、土下座して謝り、違約金を払うと言った。加藤は町添社長とも相談の上、規定通りに計算して、彼らに約8億円の違約金支払いが必要であると言った。実際彼らの移籍で生じた損害はツアーの中止に伴う会場のキャンセル料、イベンターが被った損害の補填、発売予定だったCDの廃棄費用、それを発売できなかったことによる売上見込みの消失、空振りになった広告費、音源制作費、様々なキャンペーン中止に伴う、提携先に与えた損害など、明確なものだけでも6億円を越えている。
 
彼らはそれを銀行から借りて支払ったので、★★レコードは彼らと再契約。いったん廃盤扱いになっていた彼らのアルバムも全復活してファンに喜ばれた。
 
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銀行が彼らに8億貸したのは、彼らなら★★レコードと再契約すればそのくらい返せるだろうと見込んだからである。もし他のレコード会社と契約した場合は、過去のアルバムが発売できないので無理であった(多くのアーティスト同様、彼らもやはり初期のアルバムに名作が多い)。
 
彼らはコロナの影響でスタジオなども閉鎖される中、リーダーの米沢さんが栃木の山の中にある300万円!?の廃屋を買い、そこをメンバーの日曜大工でスタジオに改造(ホームセンターで防音板を買ってきて貼り付けた)して、そこに泊まり込んで音源制作をした。
 
そして2020年6月にアルバムを発売することができた。ファン待望の2年ぶりのアルバムだったこともあり8万枚ほど売れた。また、あけぼのテレビでネットライブをしたら、12万人も聴いてくれた。このアルバムの売上とネットライブで得られた収益から、彼らは1.3億円を銀行に返済して残債は6.7億円になった。
 
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MSMの社員の多くは他の業界に転職したもようである。彼らは★★レコードには戻れないし、同じ業界への転職も事実上不可能であった。
 
滝口さんはコンビニのオーナーになったが、3年で倒産したらしい。彼女の性格で客商売は無理だろうとケイや和泉は思った。土居さんは、しまむらに就職した。彼女の場合は成功したようで、1年後には店長になる。ケイや和泉、美空は時々彼女のお店に寄って普段着を買ったりしていた。
 
多くのアーティストがずっと活動できない状態になっている中、救済に乗り出した人たちがあった。★★レコードの鬼柳営業部次長、TKRの松前社長、太荷馬武・MHメディアプレス営業部長(元★★レコード制作部次長)たちである。鬼柳さんは★★レコードのメインバンク・◇◇◇銀行の出身なのでその人脈から銀行も動かした。
 
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