広告:ここはグリーン・ウッド (第6巻) (白泉社文庫)
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■春動(7)

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吉田邦生は、ライブの後、久美子たちと一緒に千里に金沢まで送ってもらった。1月3日夜22時頃、自宅アパートに近い、コンビニ前で降ろしてもらう。それでペットボトルのお茶とお弁当におやつを買い、自宅に戻る。
 
ところがアパートの所まで着た時、困惑した。
 
アパートが無いのである!
 
アパートがあったはずの場所は駐車場になっていて、多数の車が駐まっていた。
 
邦生は周囲を見回すが、周囲の風景からして、やはりこの場所だと思った。
 
彼は真珠に電話を掛けた。
 
「俺、今金沢まで戻ってきたんだけどさ」
「あ、帰ってきたの?お帰り〜。今夜はボクが優しく昇天させてあげるからうちに来ない?」
「いや、それより、アパートの所に来たら、アパートが無くなっている気がするんだけど、まこちゃん、何か知らない?」
 
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「ああ、連絡するの忘れてた。12月にあのアパート、階段が崩壊してさ」
「え〜〜!?」
「誰も怪我無かったけど、消防のはしご車で脱出したんだよ」
「大変だったね!」
 
「それで大家さんも階段の補修しようかと思ったらしいけど、アパート自体がかなり傷んでてさ」
「確かに傷んでた」
「それでアパート廃業することにして、建物は崩したんだよ」
 

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「えっと、うちの荷物とかは?」
「同じ不動産屋さんが管理してて、わりと近くにあるマンションに引っ越し。荷物の移動も、不動産屋さんが頼んだ業者さんに移動してもらった」
「そうだったのか!」
「実際、階段が無いから、業者さんに頼らないと、荷物の取り出しようが無かったね」
「業者さんでも大変そう」
「クレーンで上げ下ろししてた」
「それしか無いよね」
 
邦生は訊いた。
「その引越先の場所はどこ?」
「ちょっと説明が難しいなあ。ボク今からそちらに行くから連れてってあげるよ」
「あ、頼む」
「自宅から行くから1時間くらい待ってて」
「分かった」
 
それで邦生は、荷物は重たかったものの、さっき買ったペットボトルやお弁当をリュックの中に入れ(その分、衣類とかを旅行バッグに無理矢理押し込んだ)、さっきのコンビニに逆戻り。トイレを借りた後で、あらためてコーヒーとパンを買って、付属の飲食コーナーでコーヒーを飲みながら待った。
 
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45分くらいで真珠が来たので、再度トイレに行ってから、真珠と一緒におやつとかビール(つまり今夜は帰らないつもりなのだろう)とかを買ってから、彼女のバイクの後ろに乗り、引越先のマンションに行った。
 
「しっかり掴まっててね」
「うん」
 
真珠に抱きつくようにして乗ったが、女体を抱きしめる形になるので、さすがにドキドキした。
 
ほんの5分ほどでマンションに到着する。
 
「なんか前の所より中心部に近い気がする」
「家賃は本来8万だけど、前の所と同じ4万円でいいって」
「それは助かる」
 
敷地内のバイク置き場に真珠のSuzuki GSX250Fを置く。隣に自分のNinja1000が置かれている。
 
「ここのバイク置き場は置き場所とか決まってるの?」
「特に無い。自由に置いてって」
「了解」
 
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エントランスゲートみたいなものはなく自由に出入りできるようだ。ただ1階に郵便受けと宅配ボックスが並んでいた。そばに台車が数台置かれているので、重たいものはあれに乗せて自力で持って行かないといけないようである。
 
「郵便物も宅配も無いみたいね」
と真珠が覗き込んでいた。宅配ボックスは中央縦にガラス窓があり、中に何かあれば見える。
 
「郵便受けとかの鍵は?」
「部屋の鍵と同じ。カードキー」
「なるほど」
 
エレベータで7階まであがった。ここは12階建てである。
 
「ここの703号室ね」
「へー。並びの端か」
「わりと音を気にしなくていいと思うよ」
「確かに」
 
ここはコの字型に部屋が並んでおり、両翼に701-703, 710-712があって両翼を結ぶ長い部分に704-709が設定されている。
 
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邦生に割り当てられている703は、窓が西向きの部屋である。
 

真珠がカードキーを1枚渡してくれた。楕円形の金属製カードキーである。開け方・閉め方を教えてくれたので、それで開けて中に入る。
 
「なんか広い気がする」
「3DKだからね」
「家族向けって感じだ」
「くにちゃんが、ぼくと結婚して子供3-4人できても何とかなるよ」
などと真珠は言っているが、邦生はスルーした。
 
「子供は4人できても、男の子と女の子で分類すれば男女2人ずつの2部屋で収まる」
 
「男の子3と女の子1だったら」
「1人性転換すれば問題無い」
「無茶言ってる」
 
「でも今夜は誰も来てないみたいね」
「ここの鍵は誰が持ってるの?」
 
「鍵は5個作ってもらった。クニちゃんの分を確保した上で、クニちゃんのお母さん、ぼく、(伊川)峰代さん、(南田)里菜さんが持ってる」
 
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「やはり女子行員のたまり場になってるな」
「よく夕食とか食べて泊まっていってるみたい」
「やはり宿泊所か」
 

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「取り敢えずごはん食べよう」
「そだね」
 
それで、コンビニのお弁当をチンして、邦生と真珠は一緒にお弁当を食べた。邦生はお茶を飲んでいるが、真珠はビールを飲んでいる。
 
「お前ビール飲んでるし、帰りは俺が家まで送って行こうか」
「今夜は泊めてよ」
「まあいいけどね」
「気持ち良くしてあげるから」
 
「そういうジョークはやめろってのに」
と邦生は言ったが、真珠はそれには答えず、笑顔で一番搾りを飲みながらお弁当を食べていた。
 
0時頃には一息つく。
 
「じゃお風呂入って寝ようよ」
「まあそれがいいね」
 
それで先に真珠がお風呂に入る。
 
彼女がお風呂から裸で出て来たらどうしようと思ったが、ちぉんとパジャマを着て出てきたのでホッとした。真珠はミッキーのシルエット模様のスカイブルーのパジャマを着ている。何か可愛いじゃんと思った。
 
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邦生が入る。
 
「この着替え使って」
と真珠から渡される。
 
ウィングのピンクベージュのブラ&ショーツセット、大人っぽいゴールド色のミニスリップ(これもウィングだった)、それにくまのプーさんのシルエット模様のベージュのパジャマである。
 
「これもしかして、まこちぉんのとペア?」
「そうそう。ブラ&ショーツもだよ。ぼくのはブルー。ペアランジェリーしようよ」
「あはは」
 
まいっか。しばらく会えなかったし。
 

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それでお風呂に入る。バスルームも広いなと思った。バスタブもおとな2人入れそうなサイズである。
 
邦生は、髪を洗い、身体を洗って、浴槽に浸かる(真珠が入ったあとの湯船だが、これまでもさんざん女子たちが入った後に入っていたので気にしない)。
 
しかし真珠は20分くらいであがった。その時間でお湯を溜められたとは思えないので事前にお湯を溜めていたのだろう。たぶんリビングにリモコンがあったのでは?あとで聞いておこう。
 
疲れてるので眠りそうになった。慌てて湯船を出る。熱めのシャワーを身体に掛け、顔も洗っていったん身体を起こす。
 
そしてお湯を流してバスルームを出た。
 
身体を拭いてから、真珠に渡された女物の下着を着ける。
 
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なんか俺って、女の子の下着姿やヌードにも、女物の服にも不感症になってるよなあと思った。さっき真珠のバイクの後部座席に乗り、彼女に抱きつくようにした時は、さすがにドキドキしたけど(でも大きくはならなかった)。
 
「これ、こぼれる」
 
ショーツのサポート力が無いので、男性特有の器官がこぼれるのである。
 
「まあ寝る間だけならいいか」
 

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できるだけこぼれないように穿き、ブラジャーとミニスリップを着け、パジャマを着た。髪をタオルでよくよく拭いてからバスルームを出る。真珠はリビングには居ない。
 
もう寝たのかな?
 
それで自分も寝ようと思い、部屋のひとつの襖を開けると2つ並べられた布団のひとつに真珠が寝ていた。
 
「あ、ごめん」
と言って、襖を閉め、別の部屋の襖を開けたのだが・・・
 
真珠に後ろから抱きつかれた。
 
真珠のおっぱいの圧力を感じる!(でも大きくはならない)
 
「一緒の部屋に寝ようよぉ」
「それはまずいよぉ」
「いつも一緒に寝てるじゃん」
 
そういえば、前のアパートで多数の女子が泊まっている時、女子たちを和室に寝せ、自分は台所で寝ていたが、真珠もよく台所で邦生の隣に布団を敷いて寝ていた。
 
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「じゃ隣に寝ようか」
と言うと
「うん」
と嬉しそうに真珠は言った。
 

それで真珠が寝ている布団の隣の布団に潜り込む。
 
「おやすみ」
「おやすみ」
と言って、目を閉じる。
 
セックスしようとか言われたらどうしよう?と思ったが、真珠は純粋に一緒に睡眠を取りたいだけのようだ。
 
と思って、邦生は眠り掛けたのだが、ふと下半身に異常な感覚を感じて目を覚ます。
 
「ちょっと何してるの!?」
「クニちゃんは寝てていいよ。ぼくがしたいからしてるだけ」
 
「そういうのやめよぉよ〜。俺、まことは友だちでいたいからさ」
 
「うん。友だち。これはただのじゃれ合いだよ。でも2ヶ月逢えなくて寂しかったのは本当だからさ。お願い。今夜はさせて。朝にはお互い忘れるということでもいいからさ」
 
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「・・・・じゃ忘れる」
 
「うん」
 
と真珠は嬉しそうに返事すると“作業”を続けた。
 
邦生はその夜、極上の黄金色の夢を見た。
 

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翌朝、邦生が目を覚ますと、真珠は隣の布団ですやすやと寝ていた。何だか凄く幸せそうな顔をしていて、邦生はこの顔を涙でいっぱいにだけはしたくないなと思った。
 
邦生が起きたのは6時頃で、それから御飯を炊いて(炊飯器が新しいのになっていた。お米はライサーにたくさん入っていた)、下着を普通の?に交換。その上で、冷蔵庫の中を見繕って、目玉焼きを焼き、ウィンナーをチンして皿に乗せた(食器は10人分くらいになってた。確かにこの部屋の広さなら10人くらい泊まれそうだ)。
 
7時になる。
 
「まこ、そろそろ起きなよ」
 
「うん」
と言って、真珠は笑顔で起きてきた。ちゃんと服を着て寝ていたようだ。
 
「美味しいー」
と言って朝食を食べている。
 
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「クニちゃん、料理上手いね」
「卵焼いて、ウィンナーはチンしただけだけど」
「でもセンスいいもん。クニちゃんがぼくの奧さんになってくれたら、朝御飯が毎日楽しみになりそう」
 
「俺が奧さんなのかよ!?」
 

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真珠は今週の授業はリモートらしい。
 
「今日1日ここに居ていい?どうせ夕方には他の子たちも来ると思うけど」
「まあいいよ」
 
それで、邦生はライダースーツに身を包み、
 
「行ってきまーす」
と真珠に言って部屋を出ると、1階に降りてバイクを始動する。
 
昨夜確認しておくべきだったが、ちゃんとエンジンが掛かったのでホッとした。燃料もたくさん入っている。きっと時々起動しておいてくれたのだろう。
 
それでH銀行金沢支店まで行き、2ヶ月ぶりに使用する社員証で通用口を通ろうとしたのだが、ゲートを通れない!?
 
「おかしいなあ。磁気が弱くなってるのかな」
などと言って、もう一枚持っている女子の社員証を使うと、今度は通れた。
 
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出勤の記録をしてから。いつものように!女子更衣室に行く。邦生のロッカーはずっとここに置かれているので、ここで着替えざるを得ない。ここで制服に着替える。邦生は何も考えずにロッカー内に置かれている制服に着替えた。クリーニングのビニールに入っていたので、誰か(南田さんかな?)がクリーニングに出してくれていたようだ。その袋を破って中に入っている“制服”を身に付けた。
 
それで渉外課に行く。
 
森田課長と、大野由海だけが来ている。少し早かったかなと思った。
 

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「課長、長期出張より戻りました」
「ああ、お疲れさん。新たな精算があったらフォームから提出してね」
「大丈夫です。日々精算してもらっていましたから」
 
2ヶ月間の出張の経費をまとめて精算したら恐ろしいことになりそうだ。邦生は毎日その日の活動を日誌にまとめてVPN経由で支店のシステムとつなぎ、電子提出していた。もっとも日々の費用はほぼ§§ミュージックがもってくれているので、H銀行負担の費用はほとんど発生していない。
 
「取り敢えずお土産です」
と言って、“焼き鯖寿司”を出すと、由美が寄ってきて
 
「ありがとう!じゃお昼の時にみんなに配るね」
と言っていた。
 

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