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■春足(16)

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その日、吉田は勤務している銀行から「定期健康診断に行ってきて」と言われ、職場から近い、金沢市内の総合病院に行った。受付で会社から渡された書類を出すと、カルテを渡され、おしっこを取ってから数字の順番に回って下さいと言われる。
 
それで紙コップをもらい、まずはトイレ(男子トイレ)に入り、トイレの棚に紙コップを置く。その後、検査室に行き、体重・身長・腹囲・血圧を測り、採血されたのだが、女性の検査技師さんから声を掛けられた。
 
「よしだくにおさん?」
「はい」
「おしっこは提出しました?」
「トイレの棚に置きましたけど」
「無いのですが」
「え〜?」
と言って、そちらに行く。
 
「ここに出てますけど」
「あなた男子トイレ使ったの?」
 
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え?俺、男子トイレ使っちゃいけないの?と思うが、検査技師さんはそれ以上追及しなかった。
 

その後、眼科に行って視力、耳鼻科に行って聴力を測定された。眼科で待っている間に問診票に記入し、提出した。問診票には
 
・妊娠していますかあるいはその可能性がありますか
・生理は乱れていませんか?
 
という質問があった。男女兼用フォームなんだろうなと思う。それで妊娠の可能性はないので、妊娠には「いいえ」、生理なんて来たことがないので乱れようもないから「乱れてない」を選んでおいた。
 
(桃香が渡された問診票にはこのような項目は無かった!)
 

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胸部X線検査に行く。
「よしだ・くにおさん、2番の部屋へ」
と言われて、2番に入る。
 
吉田邦生は「よしだほうせい」と読むのだが「くにお」と誤読されるのはいつものことなので、気にしない。
 
レントゲン室に入ると、直前に撮影した女性が服を着ていている最中だったのでギョッとする。会釈してからすぐ後を向いた。女性が悲鳴をあげたりしないかと思ったが、彼女は平静である、むしろ何で男が入ってきても悲鳴をあげたりしないのか疑問を感じた。
 
彼女が部屋を出て行ってから、吉田は銀行制服の上着を脱ぎ、ワイシャツを脱ぎ、アンダーシャツを脱いでカーテンの中に入った。
 
アルコール消毒の臭いがする。1人ずつ機械を消毒しているようである。
 
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検査技師が「あれ?」という表情で
「よしだ・くにおさんですか?」
と尋ねるので
「はい。そうです」
と答える。
 
すると技師は平静を装い、機械に抱きつくよう吉田に指示し、撮影室に入った。
「息を吸って、止めて」
「はい、OKです」
 
それで吉田はカーテンの外に出て服を着たが、次のクライエントは吉田が服を着て退出した後で!呼ばれた。
 

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その後、心電図検査に行く。また例によって
「よしだ・くにおさん、2番の部屋へ」
と呼ばれるので、中に入る。ここもアルコールの臭いが凄い。
 
靴下と、上半身の服を脱いだら呼ぶように言われる。
 
それで上半身裸になってから技師を呼ぶと、女性の技士がギョッとしている。
 
「よしだ・くにおさんですか?」
「はい。そうです」
というやりとりの上、技師さんは吉田の胸にクリップをつける。足にも付ける。それで心電図検査をした。
 

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心電図検査で終わりなので、受付に行き、書類をもらって銀行に帰還した。
 
吉田はカルテに「吉田邦生・よしだくにお・女」と記載されていることに最後まで気付かなかった。
 
(吉田は30歳前なので、胃癌検診と婦人科検診!は無い。桃香は30歳以上だが、書類が男になっていたので、男には婦人科検診は無い!!)
 

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10月27日(水曜“開く”)に青葉邸の新築工事は始まった。この日は青葉と朋子は南田社長と一緒に、新しいご近所さんに
「工事中、ご迷惑おかけします」
と言って、菓子折を持って回った。
「工事はいつまでですか?」
「11月下旬までです」
「早いんですね!ユニット工法ですか?」
「まあ似たようなものかな」
と南田は言っていたが、青葉はそういえば工法は聞いてなかったぞと思った。
 
隣接する学校にも挨拶に行ったが、校長先生は青葉を知っていて
「東京オリンピック金メダリストの川上青葉さん、そして金沢ドイルさん、そして作曲家の大宮万葉さんですよね?」
と嬉しそうにしていた。
 
「作曲のピアノの音とかします?」
「ピアノは防音室に入れるからピアノの音でご迷惑は掛けないと思います」
「残念だ!聞こえたら子供たちの音楽教育にもいいのに」
などと言っておられる。あははは。
 
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「でも水泳の金メダリストさんなら、御自宅にプールとか作らないんですか?」
「地下に体育館とプールを作る予定です」
「おお!体育館も」
と言って、校長先生は青葉に打診した。
 
「ね、ね、その運動施設、空いてる時はうちの学校の児童に使わせてもらったりはしないですよね?」
 
あははは。体育館はたいてい空いてる気もするなあ。
 
この件は、後日検討することにした。
 

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青葉は母や桃香たちから言われていた、ドライバーの件で、誰かやってくれそうな人を知らないかと、明恵・真珠・初海に訊いてみた。
 
「それ拘束時間は?」
「ほとんどが待機時間だと思うんだよ。その待機時間中、基本的にはできるだけ身体を休めてて欲しい。万が一にも疲労運転はしてもらっては困るから。それと基本的には飲酒は控えて欲しい。いざという時にアルコールが体内にあったら困るから。12時間交替で2人あるいは8時間交替で3人という線。ほとんどが待機時間だけど、いつ仕事があるかは全く分からないのが難しい」
 
「給料はお幾らくらい?」
「月20万くらいを考えている。お休みが取れるように、雇うのは4人必要と思ってる」
 
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「それ私たち3人がやっちゃいけません?」
「え〜!?だって君たち学校は?」
「まだしばらく、リアルとネットの授業が週交替なんですよね」
「私と、アキちゃん・マコちゃんが反対の組だから、たいていどちらかは空いてる」
と初海。
 
君たちネット授業の時はパソコンの前にいなければならないのでは??
 
「それにもし3人ともふさがってたら、誰かの母とかが対応できると思う」
「なるほどー!」
「3人ともお母ちゃんも運転免許持ってますよ」
「時間帯によっては舞佳ちゃんも対応できると思う。私たち3人もあの子もお酒は飲まないし」
 
(実は真珠は母から叱られて禁酒中!)
 
それで、青葉は明恵・真珠・初海の3人を専任ドライバーとして雇うことにしたのである。各々のお母さんがバックアップドライバーをしてくれる。また舞佳も臨時には対応してくれることになった。
 
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ただ4人とも大学生なので、コロナが落ち着いてきてリアル授業中心になった場合、昼間が手薄になる気はした。しかし青葉はすぐにも昼間のドライバーを確保できることになる。
 

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『金沢ドイルの北陸霊界探訪』は10月29日(金)の深夜−正確には10/30 0:10-1:10 に放送された。ドイルの復帰作・約1年ぶりの出演ということもあり、視聴率が深夜番組としては驚異的な6%もあった。それで“妖怪足つかみ”に対する反響は物凄かった。
 
「自分も妖怪足つかみにやられた」
という声が物凄く多数寄せられるとともに、“転ばぬ先の糸”についても
 
「おばあちゃんから習った」
「私もよく転んでたから実践してる」
という声が多数寄せられた。
 
転ばぬ先の糸をするようになってから、めったに転ばなくなったという声も多かった。
 
右か左かについては、男女で違うというのは聞いておらず、自分は左に巻けと言われたとか、右に巻けとと言われたという意見が多かった。明恵の後輩たち、和栄や舞佳で集計してみると、男性では左が7割、女性では右が6割で、やはり斎藤宮司が言っていた“男が左・女は右”が本則?なのかも知れないと思われた。しかし男女で違うという説については、男が左説と女が左説が拮抗していた。また優子が言っていた“利き足に巻く”という意見も全体の2割ほどあり、両方に巻く!というのも5%ほどあった、
 
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“転ばぬ先の糸”の“動作原理”についてもいくつかの説が寄せられた。ひとつは、それを巻いておくことで足もとに気をつけるようになり、転びにくいというもの。また妖怪足まかりは綿のお化けだから、糸が巻いてあると、他の妖怪の縄張りかと思い、寄って来ないというのもあった。
 

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なお番組の中で美しく女装した青山が出ていた件も結構話題になっていた。そして勝手な噂も広まる。
 
「もう性転換手術も終わって完全な女性になったらしいね」
「去年の秋に結婚したらしい」
「相手は職場の上司だって」
「今年の夏に赤ちゃんも産んだらしいよ」
「もう一児のママか」
 
「吉田君は男装で出てたけど、どうして?」
「会社にはちゃんと女子社員として出てるらしいよ。女子を表す赤い枠の社員証を首から掛けていたの見たと言っていた人いた」
 
と吉田までトランスしたことにされていた!
 
「でも番組内で3本目の足とか言ってたけど」
「ジョークでしょ。さすがにもうちんちんは取ってると思うよ」
「ちんちん付いてて、それを真珠ちゃんが掴んだりはしないよね」
「もし付いてたら、女の子が男子のちんちんを掴む場面をテレビで流したことになるけど、そんなの常識的に考えられないから、やはり付いてないんだと思う」
 
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常識の無い番組で済みません!
 

青葉はこの番組のビデオを広嘴さんに送ってあげた。すると
「こんな画期的な転び防止策があったとは」
と言い、すぐ実戦すると彼女は言っていた。
 

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広嘴さんは11/6-7日に栃木県宇都宮市で行われた日本社会人選手権水泳競技大会で大会復帰した。この時、11月5日(旧暦の10月1日!)の事前練習時に彼女が右足首(骨折した側の足でもある)に糸を付けていたら、
 
「それで出場したらルール違反」
と水連の人に指摘された。
 
確かに水泳では、水着・水泳帽・ゴーグルなど、認められたもの以外を身につけて競技に出るのは違反である。
 

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ちょうどそれで彼女が水連の人と言い争いをしている所に幸花がいたので、寄っていき“転ばぬ先の糸”について説明した上で提案をした。
 
「糸はプールサイドまでは付けておき、スタート台に乗る前に切る。そして、離水したらまた巻くというのはどうでしょう?」
 
実は女性ホルモンの影響でバストが発達していたK大水泳部の奥村春貴のケースで、彼女は当時まだ“1年間男性ホルモンが基準値以下なら女子として認める”というルールの経過観測中だったので、男子として出場しなければならなかった。しかし男子は上半身を覆う水着は不可という規定により、公式大会ではBカップのバストを人前に曝す必要があった。しかしそれは公序良俗に反することである。それで青葉や幸花たちが水連・水着メーカーと話し合い、女子選手として認められるようになるまでの経過処置として、このような運用方法を決めたのである。
 
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上下が共布でできていて、上半身まで着たら女子水着に見えるが上半身部分を脱ぐと下半身だけの、男子用水着になる特殊な水着を開発してもらう。これで水連の認定をもらう。
 
春貴はプールサイドまでは女子水着状態で行き、スタート台に就く直前に上半身を脱ぐ。そしてレース終了後離水したらすぐまた上半身を着る。すると彼女のバストはほとんど人の目に曝さなくてすむ。
 
幸花はその応用を思いついたのである。
 

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広嘴さんは幸花の提案に乗り、外したり付けたりが容易な、マジックテープ付きの“糸”を作り、それで本番に参加した。彼女はこの大会の200m個人メドレーで銅メダルを獲得し、また転んだりもしなかったので
「転ばぬ先の糸のおかげ」
と喜んでいた。
 
彼女は糸を巻く代わりに足首に白いペイントをする方法も思いついたのだが、水連に照会すると
「違反ではないができたら遠慮してほしい」
と言われた。
 
ボディペイントしてレースに参加する選手が増えると好ましくないという判断である。それで広嘴さんはその後も、マジックテープ式の“転ばぬ先の糸”を愛用した。
 
3/2-5の“国際大会日本代表選手選考会”でも、3月3日が旧暦1日なので、その方式で行く予定である。
 
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