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■春足(15)

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その日、優子が奏音を連れてホテルに戻ったのは20時頃だった。
 
「ごめーん。古い知り合いに会って、話し込んじゃって。これ一応お弁当買ってきたけど」
 
「いや、こちらもラッシュに引っかかって、さっき戻った。疲れた疲れた。お弁当嬉しい。頂きまーす」
 
「疲れたなら明日のディズニーランドはやめる?」
「行く!」
 
そしてその夜、千里からショートメールがあったのである。
 
「私、青葉が高岡に戻るのに同乗して明後日19日にビジネスジェットで能登空港に飛ぶんだけど、もしそちらと日程が合えばご一緒できないかと思って」
と千里。
 
「助かります。こちらも明後日19日に帰るつもりで、新幹線の手配をしようとしていた所だったんです」
 
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(本当は格安ツアーバスに乗るつもりだった)
 
「じゃ一緒に帰りましょう。明後日の朝とか熊谷まで来られます?」
「ええ。レンタカーもそちらで返すし、車でそちらに向かいますよ。何時ですか?」
「10時とかは?」
「行きます」
 

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それで10月18日は優子は、奏音と両親と一緒に東京ディズニーランドを1日楽しむ。
 
そして19日は朝6:30にホテルをチェックアウトし、奏音と両親をレンタカーのプリウスに乗せ、外環道から川口JCT→東北道に乗り、羽生ICで降りて熊谷に向かった。郷愁飛行場に到着したのは8:40頃だった。
 
そして千里たちのG450に乗り、能登空港まで送ってもらった。千里は青葉と、40代くらいの女性を伴っていた。“モニカ”と同年代かなあと優子は思った。
 
10時半か11時くらいに出発の予定だったが、乗る人がみんな揃ってしまったので9時半には郷愁飛行場を離陸した。今回は優子の父がコーパイ席に乗り、子供のようにはしゃいでいた。
 

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「青葉さん、短水路選手権はどうでした?」
と優子は尋ねる。
 
「今回は金銀銅のメダル三種コンプですね」
「すごーい!」
「でも日本選手権だし」
と青葉が言うので優子は意味が分からず困惑する。しかし千里が
 
「国際的に活躍する選手はこういう感覚ですね」
と言うので、国内大会ならメダルは当然という意味か!と理解した。さすがオリンピックのゴールドメダリストだ。
 
優子がねだるので、青葉はその金銀銅の3種類のメダルを見せてあげた。
「写真撮ってもいい?」
と言うのでいいですよと青葉は答える。
 
それで優子は青葉が3つのメダルを首に掛けている所を撮影していた。
 

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「しかし青葉は17日はずっとプールにいたから、雨が降ってるの気付かなかったよね?」
と千里。
 
「降ってるなあとは思ったけどね」
 
「こちらは熊谷に詰めてる某タレントさんを東京で別件の仕事があるのに連れて行くの頼むと言われて同伴してヘリで往復して来た」
と千里。
 
「そういう仕事にまで借り出されてるんだ!?」
と言いながら、千里が同伴したのなら、アクアか常滑真音だろうなと青葉は思う。千里が付いてたら、万一ヘリが墜落しても助かる確率が高い。
 
「今あそこはスタッフの数が全然足りてないからね」
「確かにねー」
 
「ヘリコプターも1機は所有してるけど、今月は他に2機借りてる」
「わあ」
「スタッフもだけど足の確保にも苦労してる」
「そうかもね」
「SCCのドライバーも昨年春に設立した時の倍の120人・120台になってるし。バスも10台所有してるし。バスの運転手さんは20人」
「必要だろうね」
「幸いにもコロナ不況のおかげで優秀な人材が確保できる」
「営業成績あげている会社はみんな人手不足だと思う」
 
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「足といえば、17日は買物に出てて急に雨が降ってきて、車に乗れば平気と思ってて、スーパーの玄関まで来てから『しまった。旅先で足が無かった』と思い出して」
 
「どうしました?」
「うまい具合に昔の友人が通り掛かって、彼女の車に乗せてもらいました」
「それは良かったですね!」
 
「そのついでに長く話し込んでしまって。スーパーからホテルまで1kmくらいだったんですけど、仙台経由になっちゃった」
 
「わっ」
「話がはずんではずんで。車も交替で運転しながら」
「久しぶりだとつもる話もあったでしょうね」
 
と言いながら、青葉は優子さんの“お友だち”って、もしかして恋人?と感じた。ビアンだから、女性のお友達というのが実は恋人であることが多いのは、桃姉と同じという気がする。それにそもそも優子さんって、高校時代は「北の桃香・南の優子」と言われた人だし!
 
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「足といえば、青葉、足つかみ妖怪の方は何かヒント見つかった?」
と千里が尋ねる、
「全然。妖怪っぽい事例はたくさん見つかるんだけど、解決策が分からない」
と青葉は答える。
 
「何ですか?その足つかみ幽霊って」
と優子が訊く。
 
それで青葉は、全国的に“人の足首をいきなり掴んで転ばせる妖怪”が出没していて、青葉が出演している〒〒テレビの番組でそれを調査しているけど、解決策が見つからないのだと正直な所を話した。
 
「転ばせるかぁ。私、子供の頃、いつも足首に糸付けてたね」
と優子は言った。
 
「糸?糸って何です?」
 

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「あら、知りません?」
と優子のお母さんが言った。
 
「私も小さい頃、よく転んでたから、お祖母ちゃんに言われて、足首に糸を付けていたんですよ」
と優子の母は言う。
 
優子のお母さんは55-60歳くらいだろう。多分1960-65年頃生まれ。そのお祖母さんというのは、大正生まれかな?と青葉は頭の中で暗算した。
 
「糸を巻き付けておくと効果があるんですか?」
「“転ばぬ先の糸”って言うんですよ」
「へー!」
 
その時、青葉は思い出した。この話、曾祖母(八島賀壽子 1923-2005)から、聞いていた。“転ばぬ先の杖”の話が出た時、何かあったような気がしたのはこの記憶だ!でも今更言えない!
 

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「私は、裁縫の糸みたいなの巻いてたね?」
と優子が言う。
 
「そうそう。ミシン糸の白糸を左足首に巻いて結んでた」
「それずっと巻いておくんですか?」
「時々まき直してたね」
「たいてい数日で取れてしまうんですけど、毎月旧暦の1日に巻き直すと1ヶ月間、効果があると、私はお祖母ちゃんからは聞いたんですけどね」
と優子の母。
 
「毎月旧暦の1日に・・・左足首がいいんですか?」
「男は右で、女は左と聞いてた」
「最近流行の男の娘さんは女性と同じでいい気がします」
 
「でもあれ諸説ある気がする。利き足でいいんじゃないかなあ。だって、人は利き足から歩き出すから、転ぶ時も利き足を着地しそこなって転ぶ気がする。私は左足が利き足だからちょうど良かったのかも」
と優子は分析する。
 
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「この話、知ってる人がいないかテレビ局で聞いてみようかなあ。でもお母さん、よかったらテレビ局でその話、ちょっと聞かせてもらえません?優子さんも」
「いいよ」
 

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それで、この日、高岡に戻ってから、まずは先日購入した土地を受け取り、登記をして、千里姉に軽い結界をしてもらった。そして夕方すぎに、優子と母を〒〒テレビに連れて行ったのである。
 
幸花はとうとう解決策が出て来たというので大喜びであった。優子にも付き添ってもらい、お母さんが“転ばぬ先の糸”に関して説明してくれる所、幸花と偶然居合わせた明恵の左足に巻いてくれる所を撮影させてもらった。
 
なお、この番組の放送予定は11/26かと思ったのだが、幸花は
「金沢ドイル復帰記念で10/29に放送する」
と言う。
 
「すぐじゃないですか!」
 
幸花は、青葉・明恵・真珠・吉田!、更には明恵たち経由で彼女たちの友人、竹本初海・川西玲花・米山舞佳などにも話し、“物を知ってそうな人”にこの“転ばぬ先の糸”のことを知らないか、尋ねてみた。すると真珠が斎藤種雄さんも知っていたという情報をつかんできた。
 
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津幡アリーナ内に建つ“辺来の里(ヘライのさと)神社”の宮司さんである。
 
まさに灯台元暗しだった。早速、幸花たち取材班が行ってインタビューした。
 
宮司の話はだいたい優子のお母さんの話と一致していた。やはり旧暦1日に巻くが、宮司の話では、旧暦1日の日没までに巻き、翌日(旧暦2日)の日没を過ぎたら切ってもよいということだった。
 
「時間指定があるのか」
「いや、昔は日没から次の日が始まることになっていたから、1日の日没からもう2日になってしまう。だから1日の内に巻かないといけないのだと思う」
「なるほどー」
 
また宮司さんは、男が左足で、女が右足だと言った。優子の母の方式と逆である。
 
「ドイルさんは分かるでしょ?左はひ(火)で男、右はみ(水)で女ですよ」
「なるほどー」
 
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「やはり諸説あるのかな」
「それはある気がします」
と斎藤さん自身も言っていた。
 
「迷ったら両方まけばいいのでは?」
と初海。
 
「それだと万全(ばんぜん)かもね」
と宮司は笑って言った。
 
それで宮司さんの手で、真珠・初海・幸花が右足に糸を巻いてもらった。その様子も撮影する。
 
「皆山さん、既に左足にも巻いてる」
「これで万全です」
 

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神谷内さんは、10月にこの放送をして“転ばぬ先の糸”の効果があったかについては、後日短いフォローアップ番組を『いしかわ・いこかな』の中で放送すればいいと言った。
 
(『金沢ドイルの霊界探訪』は元々毎週金曜深夜に放送されている『いしかわ・いこかな』の中の“コーナー”である。ただし、最近は霊界探訪は放送時間が長くなり、『いしかわ・いこかな』の1時間が丸ごと霊界探訪になることが多い)
 

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転ぶ所の映像は、8月の放送では幡山ジャネ(本当はマラ)が転ぶ所のリアル映像と、吉田が明恵・真珠の前で転ぶ“再現映像”が流れていたものの、あの放送の反響で視聴者から多数のリアル映像(偶然撮影していた)・わざわざ再現してくれた映像が寄せられている。
 
その中から青葉の目で、本当に妖怪っぽいものを選び出していた。更に甲斐絵代子へのZoom取材、“金沢コイル”(千里のこと)による水森ビーナへの取材(あけぼのテレビの撮影者が撮影している)、更にリアルで撮影された原町カペラが転ぶ場面(◇◇テレビの歌番組の登場シーンで撮影されたがNGになって本放送には流れていない)も、◇◇テレビと§§ミュージックの好意で使用できることになった。
 
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それから“金沢ドイル”が、今回の妖怪は“足つかみ”と仮に呼ばれているが、昔から“足まがり”とか“すねこすり”という妖怪が知られていると解説する。ここで“まがり”とは“まとわりつく”という意味の方言であることも説明しておく。“足まがり”や“すねこすり”の想像図も、真珠が描き、小道具係さんが作ったモーター入りの“すねこすり”(小さな犬のよう)が、吉田の足の間を通過して転ぶ様子も撮影された。(また俺が転ぶのかい!?と文句を言った)
 
「いや、マジでこんなのが足の間をすり抜けたら転ぶよ」
と吉田。
 
また、境港市の鬼太郎ロードに妖怪すねこすりの像があるのだが、これを鳥取・島根を放送域とする、NK放送さんが、ローカルタレントを使ってレポートする様子を撮影してくれたので、これも放送する。
 
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その上で、優子の母、斎藤宮司に取材した“転ばぬ先の糸”のインタビュー映像と実際に幸花たちの足に巻いてくれる映像が流れる。それで明恵・真珠・初海・玲花・吉田および真珠の兄の金剛(以上実験台!)が足首に糸を結んでいるところが映る(玲花・吉田・金剛には青葉が巻いた:むろん巻いてる所を撮影放送した)。
 
「これ本当は旧暦1日の夕方前までに巻くらしいんです」
「次の旧暦1日は11月5日です」
と解説した。
 
ちなみに、左右どちらに巻くかについて、現時点で2種類の説が出ているので、明恵は左、真珠は右(以上男の娘組)、初海は右、玲花は左(以上女の子組)、吉田は右、金剛は左(以上男の子組)に巻いている。幸花は両側に巻いてる!
 
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「これで1ヶ月くらい転ばなかったかを来月くらいに報告します」
「旧暦1日になる11月5日、12月4日には巻き直します」
と明恵・真珠は言った。ついでに旧暦1日になる日のリストをフリップボードで示す。
 
(2021) 11/5 12/4
(2022) 1/3 2/1 3/3 4/1 5/1 5/30
 
「結び目は短く切ってね。長かったらそれを踏んで転ぶから」
と言って、真珠が自分の足首に巻いた糸の結び目を短く切った所を示す。
 
「糸はレース糸、ミシン用のポリエステル糸、など細いものがいいです」
「絹糸やナイロン糸、釣り糸や三味線糸、ギターやヴァイオリンの弦とかは丈夫すぎて足を痛める可能性があるから使わないでね。糸が切れない代りに足が切れちゃいます」
 
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「糸はピッタリ巻いてね。遊びがあると、それがどこかに引っかかって転ぶ可能性があるから」
 
「巻く時は夕方までにね」
「切れたらそのままでいいし、汚れたら切ってもいいですからね」
 

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