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■春足(12)

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「でもこの家の主は青葉なんだから、青葉の部屋は4つくらいあってもいいのよ」
と朋子が言う。
 
「4つ!?」
と言って青葉は図面を数えてみる。
 
「ほんとに4つもある!」
と言ってから
「もう少し減らせない?」
などと言い出す。
 
「この図面なら、建物の幅は 31 半間(はんげん)=28mになる。その場合、道路から建物南端までの距離は6mで済む。西側の庭を使わなくても、前面だけでも車が5-6台駐められる。これを例えば東西1部屋ずつ減らして28半間=25mにすると9mも空くから、空きすぎでよくない。するとこの程度の幅はあったほうがいいんだよ」
 
「裏庭を空けたりはしないの?」
「エレベータは端に作らないと邪魔」
「あっそうか。エレベータは飛び出させるとか」
「家に出っ張りを作りたいの?」
「それは問題外だ」
 
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浦和の家は本来足りないスペースに強引にプールを造ったので、非常脱出は長ーーいハシゴを登らなければならないが、この家は充分な広さがあるので空堀りから階段で脱出できる。空堀りの階段の出口は姫路の家や上島邸などと同様にグレーチングになっていて、内から外には簡単に出られるが、外から内への侵入は困難。グレーチングの下には吊り屋根があって空堀り内にはあまり雨は降り込まない。なお、敷地内に降った雨水や漏れ出してきた地下水は浄水してプールの水に使用する(この付近は小矢部川に近いので、どうしてもその関係の地下水も豊富である)。プールの排水はトイレ洗浄水などに使用して下水に流す。
 

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↓敷地境界から北と西1m東2m(空堀を含む)後退した18m×34mに対する建物・設備位置
 

 
「ねぇ、地下2階のプール、なんでこんなに端に寄ってるの?」
と青葉は訊いた。
 
「ああ、それは青葉が気が変わって4コースのプールを作りたくなった時のため」
「さすがに4コースも要らないよ!」
「いや、青葉が4人くらいに分裂したら必要になるかも」
と千里。
「恐ろしいこと言わないで」
と青葉。
「青葉は既に5人くらい居ると思ってた」
と桃香。
 
朋子は冗談だと思っているが、他の3人は“あり得ること”と思っている。むしろ桃香は本当に青葉は複数いないか?と疑っている。
 
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「しかしバスケットコートを使うのは千里が来てる時だろ?頻繁に使うプールが地下1階じゃダメなの?」
と桃香が質問する。
 
これは青葉が答えられる。
 
「それはプールを地下一階にしたら、その水の重さを支えきれないから、だよね?」
と最後は千里に確認した。
 
「そうそう。だからプールは必ず一番下」
 
「なるほどー」
とこれは桃香もすぐ納得した。
 
25mプールの水の容量は2レーンで 5m×25m×2m = 250m3、つまり250トンになる。4レーンなら500t, 8レーンだと1000tである。
 
「まあプールの下に体育館を作ると、プールを支えるために体育館にたくさん柱を立てないといけませんね」
と南田さん。
 
「それぶつかるよね?」
「障害物バスケットの練習ができますよ」
「ふつうのバスケットがしたい」
 
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話し合いが終わった後で千里が青葉と2人だけになった時、千里は言った。
 
「そういやコスモスちゃんからさ」
「うん」
「アクアで『若草物語』撮るなら、アクアはメグ、ジョー、ベス、エイミーの内誰ですかね?と訊かれたからさ、その4人ならエイミーだと思いますよ。ベスは東雲はるこあたり、ジョーは白鳥リズムでと答えておいたけど、青葉はどう思う?」
 
細雪(ささめゆき)じゃなくて若草物語になったの〜?と青葉は思った。
 

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10月14日(木).
 
青葉たち“津幡組”はスタッフも一緒に千里のA318で熊谷に飛び、用意してもらっていたSCCのバスで深川アリーナに移動した。
 
10月16-17日(土日)の短水路選手権(第63回日本選手権(25m)水泳競技大会)に出場する。
 
今の時期は深川アリーナはサブプール(25m×4)の方を一般開放しているので、津幡組はメインプール(25m×8)の方で練習することができた。
 
(深川アリーナは、夏は8コースのメインプール、冬は4コースのサブプールを一般開放している。夏の土日の日中はメイン・サブの双方を開放する場合もある)
 

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桃香、優子一家、南田社長はHonda-Jetで熊谷に移動した。優子一家は優子が信次の遺品となったムラーノに娘と両親を乗せて能登空港まで来た。千里はA318の方に同乗した。青葉・桃香・千里は朋子が運転するマーチニスモで能登空港に入った。マーチニスモはそのまま朋子が運転して帰るが、ムラーノは優子たちが戻るまで空港に駐めっぱなしである。
 
津幡組の他のメンバーは数台の車に分乗して能登空港に集まり、やはり車は駐めっぱなしにする。
 
Honda-Jetの機内では奏音がコーパイ席に乗せてもらいはしゃいでいたが、キャビンにいるおとなたちは、南田社長が色々な建設の裏話をして、飛行機に乗るのが初めてという優子の母も笑い転げていて、乗り物酔いする間もなかった。
 
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郷愁飛行場で別れる。桃香は千里が運転するヴィッツで浦和に帰宅した。優子たちはレンタカー(*8)のプリウスに乗り、優子の運転で桶川の康子の家を訪ねた。
 
(*8) 郷愁飛行場・ホテル昭和は利用が多いので大手のレンタカー会社が、予約しておけば配車してくれる。
 

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優子たちは、まずは仏壇にお参りする。
 
「そこに掛かっているの、もしかして四国88ヶ所の御朱印ですか?」
と優子の母が尋ねる。
 
「そそ。これ千里ちゃんが信次の菩提を弔うといって88ヶ所歩いて回ってきたのよ。それを頂いたの」
 
「歩いてですか!」
「さすが日本代表のバスケット選手」
と優子が言う。
 
「日本代表なの!?」
「東京オリンピックで取った銀メダル見せてもらったよ」
「さっすが。普通の人には歩いて回るの無理だよね?」
「無理なことはないですけど、相当な体力ないと厳しいと思いますよ」
 
その後でプリウスと康子のポルテの2台で、千葉市の信次のお墓まで行った。(プリウスは優子、ポルテは優子の父が運転した)
 
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優子たちはその後、千葉市内のホテルに泊まることにし、康子は自分でポルテを運転して桶川に帰還した(暴走ドライバーの康子が切符を切られないか心配ではあったが)。
 

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さて、青葉たちが出場する短水路選手権であるが、今回、津幡組の女子長距離組が出場するのは下記の種目である。
 
川上・竹下 400m, 800m, 400iM
南野 400m, 800m
金堂 400iM, 200iM
 
実は800m自由形のタイム決勝と400m個人メドレー決勝が30分ほどしか空いていないし、400m自由形決勝と200m個人メドレー決勝は20分程度しか空いていないため、この両方の種目に出場するのは困難である。それで金堂は 400m, 800m を諦めてメドレーに賭けることにし、南野はメドレーを諦めて800mに賭けた。
 
10/16(Sat)
10:41 400m個人メドレー 予選
15:54 800m自由形 タイム決勝
16:42 400m個人メドレー 決勝
 
10/17(Sun)
10:31 200m個人メドレー 予選
10:52 400m自由形 予選
15:40 200m個人メドレー 決勝
16:10 400m自由形 決勝
 
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でも青葉とリルは30分空いていれば続けて泳ぐ自信があったので、800m, 400miMの両方に出ることにした!
 

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1日目。
 
800mでは、青葉が金メダル、竹下が銀メダル、南野が銅メダルと、この種目では津幡組がメダルを独占した。
 
400m個人メドレーでは800mを諦めてこちらに賭けた金堂が金メダル、永井さんが銀メダル、青葉と竹下が同着!で2人とも銅メダルだった(*9).
 
しかしほぼ連続に近い形で行われたこの2つの競技で、800mの1,2位が400iMの同着3位になったので「凄いスタミナだ」と言われた。
 
(*9) 例によって青葉の方が明らかに早かったと言われて、写真を確認して確かにふたりがほぼ同時にゴール板にタッチしていることが確認された。身長が川上・南野・竹下・金堂で161, 174, 179, 185cm なので、それから推定される腕の長さは 61, 66, 68, 71cm で青葉を基準に時間差に直すと南野・竹下・金堂は 0.03 0.04 0.06s有利となり、青葉は竹下より肩の位置で0.04秒以上先行していないと勝てない。
 
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そして2日目。
 
200m個人メドレーは、金堂が金メダルで2冠。2位は東京五輪で8位入賞した榎箸さん(春の日本選手権で1位)であった。3位は津幡組の希美が入り、銅メダルである。
 
そして最後の400m自由形では、竹下が金メダル、青葉は0.3秒差の銀メダル(例によって青葉が先にゴールした気がすると言われて写真を確認して、以下同文!)、永井が銅メダルで、南野は永井と僅差の4位だった。
 
永井さんは今年は日本選手権(50m)でもジャパンオープンでもメダルが取れなかったが、400mに絞ることで今回は銀と銅を1個ずつ獲得した。
 
なお、男子の筒石は400m,1500mで金メダルを取り2冠である。筒石が1500mでメダルを取ったのは実は初めてである。(今大会では男子の800m, 女子の1500mは実施されていない)
 
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女子短距離組は100mで夏鈴が銅メダル(200mは6位)、200m, 200iMで希美が銅メダル(100mは8位)で、2人は全国大会で初メダルとなった。
 

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今回、青葉は800mで金、400mで銀、400iMで銅、また竹下リルも400mで金、800mで銀、400iMで銅で、この2人は三種類のメダルをコンプリートした!
 
今回、いつもの金堂と竹下の“メダル競争”は、金堂が金メダル2個、竹下は金銀銅1個ずつで
 
「これどちらが勝ちだと思います?」
と2人から尋ねられて、南野里美が困っていた。
 
〒〒スイミングクラブ代表として来ている皆山幸花は、
「金の多い(金堂)多江ちゃんの勝ち。でもリルちゃんも頑張ったから、青葉が2人にケンタッキーをおごろう」
と判定して、2人とも歓声をあげていた。
 
「なぜ私がおごるの〜?」
と青葉は思ったものの、ケンタッキーを50本買って(電話で予約して世梨奈に取ってきてもらった)、金堂・竹下に10本ずつ渡し、自分と南野、短距離の希美と夏鈴が5本ずつ取って、残りは“女子”スタッフで分けてもらった。
 
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「俺の分は〜?」
と筒石が言っていたが
 
「男子は男子でよろしく」
とジャネが言うので、自分で15本!+男性スタッフ用に5本買っていた。
 
「15本って、さすが男子ですね」
とリルが言う。
「女子でも10本くらい入るよな」
と言って筒石も楽しそうに食べていた。
 
世梨奈は買い出しのついでに個人でも4本買い、幸花の許可を取って、東京で暮らしている親友の明日香の所に、17日夜は泊まった。青葉は時間が取れず行けなかったが、明日香のアパートに仕出しの配送を頼み、今夜の晩御飯の差し入れとした。
 
「明日香の住んでるマンション、4階以下はどこかの学校の男子寮と聞いてたけど、女子寮に変更になってたんだね。女子の生徒さんばかりだったよ」
と世梨奈は言っていた!
 
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今回の選手権で上位に入った選手は12/16-21にアラブ首長国連邦で行われる短水路世界選手権 (15th World Swimming Championships (25m) ) に派遣される予定である。海外に出るとなると2019年7月に韓国の光州で行われた世界水泳以来2年5ヶ月ぶりとなる。
 
11/7-17にフィリピンで“第11回アジア水泳選手権”も日程として掲示されているが(本来は2020/11/7-17の予定だったのがコロナのため1年延期)、この大会の代表選手について水連からはまだアナウンスが無い。そもそもこの大会のホームページには現時点でタイトルが出ているだけで中身が全く入っていない。
 
青葉は本当に実施されるのか疑問を感じていた。
 
それで青葉はそれと重なる日程の11/6-7に宇都宮市で行われる「第4回・日本社会人選手権水泳競技大会」にエントリーしている。万一フィリピンにも行ってくれということになったら、そちらはキャンセルすることになる。
 
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短水路選手権が終わった翌日、10月18日、青葉は、舞音タロットの編集状況を見せてもらい、千里姉・雨宮先生・コスモスと意見を交わした。
 
(千里2は今月頭からLFBのシーズンが始まった。10/16 18:30 (JST 10/17 1:30)に試合があったが次の試合は10/23である。千里3はWリーグは10/16に始まったが千里姉の試合は10/22が最初である、この日来たのがどちらかは青葉には分からない)
 
それで話し合いが一段落した所で解散する。雨宮先生が電話すると夢路カエル!が何やら凄い車で迎えに来た。
 
「何ですか?その化け物のような車は?」
とコスモスが訊いた。
 
“化け物”と言われて、雨宮先生は嬉しそうである。
 
「フェラーリGTC4ルッソ (Ferrari GTC4 Lusso)ですか?」
と車に詳しい千里が言った。
 
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6262cc 12気筒 690PS という凄まじくパワフルなマシンである。エンジン音も物凄い!
 
「そうそう。実は樟南から2000万円で買い取った」
「樟南さんから?」
「あいつ観咲美沙都さんの所に行って土下座して酒辞めるから帰って来て欲しいと言ったらしい。でも奥さんは車も辞めることを要求した」
 
『え〜?車を辞めるの?』
と樟南。
『男を辞めるのでもいいけど。去勢したらもう少しまともな性格になりそう』
と美沙都。
『男辞めるのは勘弁して』
と言って車を辞める決断をした。
 
「それでこの車を売ることにしたんだよ。ところが中古車屋に見積もり取ると、みんな査定が1000万円以下だったらしくて」
と雨宮先生は言う。
 
「かなり痛んでたんですね」
「だいぶあちこちぶつけてたし」
「ああ」
「私のフェラーリ好き知ってるから、雨宮先生なら2000万円で買ってくれませんかと言うからさ、買った!と言った」
 
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「好きですね〜」
「まともに走るようにするのと外装直しで1500万掛かった」
「3500万出したら新車で買える気がします」
「この強力フェラーリが廃車にされるのも可哀想だからさ」
「ほんとにフェラーリ、お好きなんですね」
 
「それで美沙都さん、戻って来てくれたんですか?」
「戻って来た。今は美沙都さん自身が自分のレガシィで仕事先には送迎してやってる。実際、樟南は6月に免許取り消しくらって、足に困っていたらしいんだよ」
 
「免許取り消しって何やったんです?」
「点数の累積。最後はスマホ持って25kmオーバー」
「よく報道されませんでしたね」
 
「1年間は再取得できないらしい」
「その程度で済んで良かったじゃないですか」
「幸いにも捕まった時、飲んでなかったらしい」
「幸いなのか不幸なのか」
 
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しかし飲酒運転で捕まったら、レコード会社から活動停止処分を食らいそうだ。飲酒運転に対する最近の世間の目は厳しい。
 
8月に取材した時のことを青葉は回想したが、そうだ、あの時はチューニング係の男の娘女子高生・檸檬ちゃんの運転するデリカD:5(在杢さんの車 8人乗り)に乗ってケイさんのマンションまで来たんだった。全員アルコールが入っていたから、彼女しか運転できなかったと言っていた気がする。檸檬ちゃんは免許取り立てだったらしいが「少々ぶつけてもいいからと言われて、恐る恐る運転してきました」とか言っていた。
 
ついでに彼女は免許証の写真が軽くメイクした写真になっていた。自動車学校にも女子制服で通いましたよと彼女は言っていた。
 
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