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■春足(6)

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『あべこべ物語』(別名『あべこべ玉』『ポンポコ玉』)はサトウハチローの1932年(昭和7年)の作品である。
 
中学2年の運平と、小学6年の千枝子の身体が入れ替わってしまうのだが、その入替えを起こした“ポンポコ玉”というのは、1973年にTBSでドラマ化された「へんしん!ポンポコ玉」の設定とは違い、人を入れ替える玉ではなく、“何でも1度だけ願いが叶う玉”という設定であった。
 
運平と千枝子はどちらがこの玉を使うについて言い争いをしている内に、「女っていいよな」「男の方がいいわよ」「ああ女になりたい」「私こそ男になりたい」などと言ってたら、その“願い”が叶って、運平と千枝子の身体が入れ替わってしまうのてある。そしてこのポンポコ玉が願いを聞いてくれるのは“1度のみ”である。つまり2人は元に戻る手段が無い。
 
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ただ、他の人が2人が元に戻るようにと願ってくれたらその人のおかげで元に戻ることは可能である。しかし、ポンポコ玉で願いを聞いてもらった人は、そのことを他人にしゃべってしまうと死ぬ、という設定が入っており、2人は入れ替わったことを他の人に話すことができない。そこで2人は自分たちが変→入れ替わっていることに気付いてくれる→元に戻るようにお願いしてくれる、という可能性に賭け、わざと自分たちが変に思われる行動を取る。
 
それで様々な騒動が巻き起こるのである。つまり他の多くの作品のように、自分たちが入れ替わっていることがバレないように行動するのではなく、逆にバレるように行動している。
 
それで運平の姿になった千枝子は担任の先生に「私はあなたを知りません」と言うし、千枝子の姿になった運平は犬の喧嘩の仲裁をして三河屋の丁稚に感心される。
 
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こういう作品は他に例が無いと思う。
 

この作品が書かれたのは昭和7年であり、当時の社会的な時代背景を理解しないとこの作品は読み解けない。
 
当時は男子と女子の教育は大きく異なっている。尋常小学校の6年間は男女共学だが、それでも結構男子と女子は受ける授業の内容が異なり、男子のみ、女子のみの授業がかなりあった。
 
尋常小学校を出た後は、3種類の進学先があった。
 
高等小学校 男子の8-9割、女子の7-8割くらいがここに進学する。2年間。
 
中学校 男子のみの中等教育機関。5年間。エリート養成校であり、入試も難しいし、授業料も物凄く高い。現在の私立大学なみの授業料である。当時、田舎では1つの村から中学に進学するのは1〜2人だったらしい。
 
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高等女学校 女子のみの中等教育機関。5年間。そこそこ頭が良ければ入試は通る。
 
男女で中等教育機関への進学難易度に差があるのは、男子はどうせ兵隊に行くのだから、一部高級官僚や学校の先生、研究者など社会の中核になる優秀な人材以外は適当に教育しておけば良いという考え方があったからである。むしろ教育程度の高すぎる兵隊や単純労働者は有害と考えられた。
 
これに対して女子の場合は、次世代の優秀な子供を育てるには、母親がきちんとした教育を受けている必要があると考え、学ぶだけの才能を持つ女子はちゃんと学ばせるという方針があったためである。女子はどっちみち仕事には就かないから教育水準が高くても問題無いと考えられた。
 
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(かくして日本では妻に頭があがらない夫が増える)
 
それで昭和7年時点の統計を見ると、中学校が全国で558校だったのに対して高等女学校は倍近い963校もあった。
 

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このような時代背景なので、主人公の運平が中学生ということは、かなりのエリートだし、また中学の高額な授業料を払えるということは裕福な家庭ということでもある。
 
そして実はこの物語は、中学の授業が難しくて、突然運平の姿になった千枝子には授業内容がさっぱり分からない!というのが重要な要素になっている。つまり男女が入れ替わったことより、13歳と11歳が入れ替わったことによる不都合の方が大きく描かれている。
 
一方、千枝子の姿になった運平は「あり得ないほど粗暴な態度」と言われて学校の先生から保護者にお手紙を渡される。またごはんを5〜6杯食べようとして「女の子がそんなに食べるとは」とこれまた叱られてしまう。
 
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なお原作でも今回の朗読劇でも、運平は離れた町の中学に通うため、おじさんの家に下宿しており、春休みの終わりに入れ替わってしまった後、夏休みまでは離れ離れになるので、双方の連絡や情報交換に苦労する。原作では頻繁に手紙をやりとりするが、今回の朗読劇ではスマホで細かく連絡を取り合う。
 
なお原作は昭和7年という時代なので、男女が入れ替わった時に最も重要な問題:ちんちんはどうなったか?トイレはどうした?お風呂はどうした?生理の処理は?などといった問題には全く触れていない。当時そんな内容を書いたりしたら即発禁処分をくらっていたろう。
 
最後は、運平になった千枝子が、野球の大会を前にして困っていたら、千枝子になった運平が長い髪を切って丸坊主にして駆け付け、代わりに出場して大活躍し「やればできるじゃん」と言われる。(つまり頭を丸坊主にした千枝子は運平とそっくりだったのである)
 
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それで危機は乗り切ったものの、この後どうする?と2人は悩むのである。
 

今回のドラマの配役
 
運平・千枝子:水森ビーナ(二役)
運平たちの父:湯元信康
運平たちの母:高崎ひろか
千葉のおじさん:篠原倉光
千葉のおばさん:松梨詩恩
でたらめおじさん:大林亮平
運平の担任:森原准太
英語の先生:木下宏紀
野球部監督:本騨真樹
千枝子の担任:原町カペラ
家庭科の先生:石川ポルカ
音楽の先生:花咲ロンド
床屋さん:木取道雄
駅員さん:織原青治
野球部の先輩・杉山:西宮ネオン
運平の親友・福田:夢島きらら
運平の同級生・有田:花園裕紀
千枝子の親友・よし江&百合子:鹿野カリナ・山本コリン
運平の友人たち:WADO (若春・淳紀・大児・央我)
千枝子の友人たち:大仙イリヤ・鈴鹿あまめ・美崎ジョナ・宮地ライカ・知多めぐみ
 
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ビーナは男声・女声の両方が出るので、
・千枝子
・運平
・女声・男言葉で話す千枝子(中身は運平)
・男声・女言葉で話す運平(中身は千枝子)
 
を全部ひとりで演じてくれた。
 

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それ以外の配役は苦労している。
 
実は§§ミュージックには、男声の出るタレントさんが少ないので、配役は大変だった。「ひろちゃんは男の子みたいな声も出たはず」という情報があり木下宏紀も起用した上で、♪♪ハウスの湯元君・織原君と、更に元Wooden Fourの4人にもお願いした。(立山きらめきは声変わり前なので男声が出ない)
 
また運平の友人たちの役をWADOの4人にお願いしたのだが・・・彼らが10/16に“みんなで性転換しました”という発表をしたのに仰天した。コスモスが彼らの事務所の社長に連絡したら、社長さんが「本当に申し訳ない」と謝っていた。社長さんとの話し合いで彼女たちの扱いについてはこのようになった。
 
・WADOが男声で声を当てているのは男声のまま放送してよい。
 
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・クレジットが男性名義になっているが、男性名でも女性名でもよい。そちらの都合に任せると言われたので、急遽編集して女性名に書き換えた。
 
WADO(若南・淳子・大菜・央花)と表示する。
 
しかしこのドラマはWADOの“最後の男声”が聞けるというので物凄い視聴率になった。これを聞くため、スティックレシーバー(*5)を買った人もかなりあったようである。
 
(*5) 普通のテレビに差すだけであけぼのテレビ・ジェッターTV・アロロなどの代表的なネットテレビが簡単に見られる(マイナーなネットテレビも設定さえすれば見られる)。設定されている局は、スティックに付いているチャンネルボタンにタッチするだけで見られる(スマホでも切り替えられる)。
 
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今回の朗読劇の時代設定は、戦前の学校制度はやはり理解されにくいということで、現代に移すことにした。そのため、男女の授業内容にあまり差が出ないので、千枝子になった運平は、運平になった千枝子ほどは苦労しない。
 
ただし、千枝子ほど歌がうまくないという設定で、この“下手に歌う”部分はFlower Sunshineの立花紀子に吹き替えをお願いした。
 
「わあ、音痴にも需要があるんですね!」
と喜んで、音痴な歌で『みどりのそよ風』を歌ってくれた。
 
花咲ロンドが
「こういう歌い方は、音感のある人には絶対できない」
 
と呆れて?言っていたら、本人は得意気であった!
 
なお、紀子は歌は音痴だが、フルートは上手い。フルートはその指使いで息を吹き込めば、ちゃんとその音が出るから、と彼女は言う(ローズ+リリーのマリも似たことを昔言っていた)。
 
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そして原作には無い部分だが、せっかく男女が入れ替わったら、これをしなくちゃ、ということで、
 
・まずはトイレネタ。
・お風呂ネタ(但し家風呂)
・身体測定ネタ
・生理ネタ
 
をやっている。
 

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運平の姿になった千枝子のトイレ場面
 
「おぉ!凄い!ちんちんがある。これとうやって使うんだっけ?1度立っておしっこしてみたかったのよね〜」
と言って喜んで立って小便器を使用する。
 
千枝子の姿になった運平のトイレ場面
 
最初立ったまましようとして
「あ・・・ちんちんが無いのか」
 
などと言っていたら、母が来て
「あんた小便器の前で何やってんの?」
 
と叱られる。それで洋式便座に座ってするのだが、出し方が分からない!おしっこしようとすると、大の方も出てしまう。この初めてのトイレではそれでもいいことにしたが、どうすれば小だけ出せるんだろうと悩む。
 
(多くの男性は座ったら大をするのが条件反射になっているので、女装初心者もトイレで小だけを出すのに最初は苦労する人も多い)
 
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中学通学のため、下宿先のおじさんの家に出かけようとして着替えの場面
 
「あんたスカート穿くとか、気でも狂ったの?ちゃんとズボン穿きなさい」
「あんた、千枝子の下着つけてるの?女の子の下着を着るなんて犯罪よ」
「なんで荷物にお人形とか入れてるのよ?熱でもあるの?」
 
千枝子になった運平は男物の下着をつけているが、これはすぐにはバレない。でもお風呂に入ったあとバレて
「あんたなんでお兄ちゃんの下着とかつけてるのよ」
と言われ、女物の下着をつけるように言われる。
 
「こんなの着るとか、俺変態になった気分」
 
そして悩む。
「このパンツ、どちらが前?」
 
そしてスカートを穿いたまま男みたいな歩き方をしようとして転ぶ!
 
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運平の姿になった千枝子のお風呂場面
 
「これめくって洗わないといけないのかな」
などと言って洗っていると、大きくなってくる。
 
「これなんでこんなに大きくなるの〜?」
と困惑している。
 
千枝子の姿になった運平のお風呂場面
 
「これ中まで洗わないといけないのかなあ。チンコ無いって凄く変な気分だよぉ」
などと言って洗っている。
 
「ここ触ると気持ちいい気がする。なんだろう?」
 
内側はおそるおそる触っているので、最初のお風呂では“大きな穴”には気付かない。
 

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身体測定ネタでは運平は女子たちと一緒に下着姿になるのを恥ずかしがるし、千枝子は男子たちと一緒にパンツ一丁になるのを怖がる。ビーナはその両者をきれいに演じ分けて、これは結構評価されていた。
 
女子の同級生たちがみんな下着姿になっているのを見て
『俺まるで痴漢でもしてる気分』
などと思う。できるだけ見ないようにする。ちんちんが大きくなりそうな気がするけど、大きくなるものが存在しないので更に落ち込む。
 
運平の姿の千枝子は
『男の子の前で上半身裸になるなんて・・・』
と思い、なかなか脱がないので叱られる。
 
川崎ゆりこはオナニーネタも台本に加えさせていたのだが(シナリオライターさんが「放送できない気がします」と言った)、コスモスが削除した!
 
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おかげでビーナは男女のオナニー場面を演じなくて済んだ。
 

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