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■夏の日の想い出・いろはに金平糖(29)

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(C) Eriko Kawaguchi 2022-05-22
 
政子は夜中に私を揺り起こして言った。
「あのね、あのね、詩を書いたの」
「どんな?」
 
「兎(うさぎ)さんと亀(かめ)さんが競争して兎さんが勝ったでしょ」
「勝ったのは亀さんだと思うけど」
「え〜?嘘。だって、兎さんの方が速いのに」
「あんまり差が付くから、少し待ってようと思って途中で寝てたら、その間に亀さんがゴールしちゃったんだよ」
 
「亀さんも不親切だね。兎さんが寝てたら起こしてあげればいいのに」
 
「確かに亀さんはフェアじゃないという議論はある」
 
「それでね、兎さんとの競争に負けた亀さんが今度は栗と競争したの」
「いやだから亀が勝ったって」
「まあいいじゃん」
「でも栗は自分では動けないじゃん。どうやって競争するのさ」
「動けないから亀は今度こそ勝てるだろうと思ったのよ」
 
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「ふーん」
「ところが亀さんは最初は勢いが良かったけど、ピークに達したら急速に勢いを失って停まってしまったの。でも栗さんは、ゆっくりスタートしたけど、長く動き続けたから、最終的には亀さんより遠くまで到達できたのよ」
 
私は唐突に政子の意味する所が分かった。
 
「却下」
「詩を読んでよぉ」
「読む前に却下」
「どうして〜」
「そんなの公表できる訳が無い」
 
「私、冬に確認したかったのがさ、男の子と女の子は想像できるけど、亀さんから栗さんに変身した場合、それって亀さんの感覚のままなのか、栗さんの感覚に変わるのか知りたいのよ」
 
「知らん!」
「冬はどうだった?性転換手術を受けた後?」
「マーサが自分で受けてみたら?」
 
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「うーん・・・。手術してみてもいいけど、ちんちんあったら邪魔っぽいし」
「お母ちゃんがお父ちゃんに変わっちゃったら、あやめや大輝が困るかもね」
 

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3月2日(水).
 
常滑真音withスイスイ(常滑舞音+水谷姉妹)が歌う“こどものうた”の第二弾『こどものうた・はるのうた』が発売された。20曲入りのアルバムである。春をテーマにした童謡や唱歌が集められている。
 
『春よ来い』
『どこかで春が』
『うれしいひなまつり』
『ちょうちょう』
『はるのおがわ』
『めだかのがっこう』
『かすみかくもか』
『春が来た』
『おぼろ月夜』
『みどりのそよ風』
『さくらさくら』
『お花がわらった』
『チューリップ』
『どじょっこ・ふなっこ』
『一年生になったら』
『花のまわりで』
『花の街』
『早春賦』
『荒城の月』
『花(瀧廉太郎)』
 
一部、昨年8月に出した『こどものうた』に含まれる曲もあるが、音源は流用せず新たに録音している。
 
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このアルバムの制作は、ちょうどアクアがトリビュートアルバムの制作をしていた時期に平行して、主として女子寮地下のスタジオを中心に進められた。
 

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制作方法は夏の時とだいたい同じ流れである。
 
STEP1 山本コリン・水谷姉妹が、女子寮地下のスタジオで、鹿野カリナのピアノ伴奏で歌って仮音源を作る(監修:古城風花)。
 
STEP2 仮音源を参考にオーケストラが演奏(練習)
 
STEP3 オーケストラの演奏を確定させ伴奏音源とする。
 
STEP4 伴奏音源を聴きながら舞音と水谷姉妹が歌唱する(女子寮地下のスタジオ)。これはだいたい朝の5〜7時頃の時間帯を使っている。曲によってはコリンやカリナも入る。
 
結局、舞音があまりにも多忙なため、舞音の時間が取れた時に収録しようということになったら、早朝しか空いてなかったのである。深夜だと舞音が疲れきっているので歌唱の品質に問題が生じる。帰宅してぐっすり寝てから、朝の録音ということになった。
 
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オーケストラは、夏の時と同様に信濃町バンドのピックアップメンバーを中心に構成したアンサンブル・オーケストラ(一部渡辺グランドオーケストラのメンバーも入っている)だが、練習と録音は、越谷の小鳩ホール(*26)を、ほぼ独占して使用した。オーケストラの指揮は夏の制作の時と同様、清水春浩(*25)である。
 
つまり今回、歌唱は五反野、オーケストラは越谷で収録したのである。
 
オーケストラのアレンジは基本的に仮音源に沿っているが、清水さんや佐良さん(後述)が違和感を覚えたものは、風花とメールや電話で連絡を取り調整している。
 
オーケストラの収録は、夏に熊谷でやった時は小さなスタジオだったが、今回はホールなので音響が良く、出来に清水さんも満足していた。(観客に擬したマネキンを大量に座らせている:アクア宛てに送られてくる大量のお洋服のプレゼントを活用させてもらった)
 
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越谷は、岩槻の社員寮から20-30分で行けるし、東京都心からも比較的アクセスが良いので、オーケストラのメンバーも集まりやすかった。ただ
 
「いっそ泊まり込みたい」
 
という希望もあったので、付属の宿舎を借りて彼らを入れた(後述)。
 

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ボーカル・コーラスの録音をおこなう、女子寮地下のスタジオも、仮音源制作は通常の音響のB12スタジオ(約10畳)を使うが、最終音源収録を行う約50畳のB10スタジオは最近改装工事を行って音響を改良している。舞音がそこで歌って
 
「わっ。残響がある」
 
と驚いていた。以前は他のスタジオと同様に防音板で囲まれて反響を全部殺していたのが、防音板の前にスプルース製の壁・吊り天井を設置して、あえて反響を作り出している。但しカーテンの開け閉めにより、反響の強さを調整できるので、ほとんど反響の無い状態にもできる(電気楽器を使った収録の場合など)。
 
それでこのスタジオを使い、まるでホールで歌っているかのような音響でボーカルも収録したのである。
 
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(*25) 清水春浩(1965年度生56歳)は渡辺グランドオーケストラの元メンバーで担当楽器はヴァイオリンであった。一時期はオーケストラを退団して群馬県で農業をしていたのだが、信濃町バンド(SSB)を結成した時に、私がスカウトしてプリンシパル・コンダクターに就任してもらった。
 
「僕は指揮の勉強とかしたことないのに」
と言っていたが
 
「ポップスオーケストラの指揮者って、専門の指揮の勉強した人より、何かの楽器担当だった人の方が多いんですよ」
と言うと、納得していた。
 
実際ポール・モーリアやピエール・ポルトはピアニスト、レイモン・ルフェーヴルはフルーティスト、フランク・プゥルセルはヴァイオリニスト、ベニー・グッドマンはクラリネット奏者、グレン・ミラーはトロンボーン奏者、原信夫や高橋達也はサックス奏者、ダン池田はパーカッション奏者である。
 
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なおオーケストレーションについては、♭♭音楽大学の指揮者コースを卒業したものの、就職先が無くて困っていた佐良美結さん(1997年度生)をスカウトして、清水さんと二人三脚で作業をしてもらっている。ヨーロッパ留学も考えていたらしいが、コロナで渡航が困難になっていたらしい。
 
楽器奏者ならどこかの楽団のトゥッティ奏者に滑り込む道もあるが、指揮者はひとつの楽団にせいぜい2-3人しか必要無いので、極めて狭き門である。ある程度の実績がないと採用してもらえないが、指揮者にならないと実績は積めない!
 
更に女性の指揮者には抵抗のある楽団も物凄く多いので、女性の指揮者というのは茨の道というより垂直の崖を登るような道である。信濃町バンドは元々女性の演奏者が多いこともあり、女性の指揮者にも寛容な空気があった(女性演奏者たちのアイドルになっている。ラブメールまで来るらしい)。
 
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彼女にはマスター・コンダクターの称号を与えたが「偉いのか偉くないのかよく分からない名前だ」と言っていた!
 

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(*26) 越谷市内に、若葉・千里・私の共同出資で建てた施設。敷地面積は約1万平米。地上には広い駐車場と約3000人入るホール(小鳩ホール)、5階建てのマンション?、地下には5000人入る体育館(小鳩アリーナ)がある。この体育館もライブができる仕様になっている(ライブ使用なら8000人)。
 
埼玉県南部を活動拠点とする女子バスケットチーム『チーム白鳩』の本拠地として、オーナーに就任した若葉が建築した施設だが、私と千里も相乗りして地上にコンサートホールを作った(私と千里が17%ずつで若葉が66%)。実は建蔽率の問題でアリーナを地下にせざるを得なかったので、空いている地上にホールを建てさせてもらったのである。
 
越谷を選んだのは都心に近いのに結構土地代相場が安く、また東武伊勢崎線とJR武蔵野線が南越谷駅・新越谷駅(ほぼ隣合せ)のところでクロスしているのでコロナが終息したら鉄道で集まりやすいからである。この場所は南越谷駅・新越谷駅から2kmほどの場所で「駅からジョギングで行ける」とキャプテンの桧原来夢(旧姓小杉)は言っていた。(現在は電車・バスでの移動禁止だが、コロナが終息したら駅との間にシャトルバスを運行する予定)
 
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道路は、将来的には東埼玉道路で外環道と結ばれる予定である(現在は一部区間の“一般部”のみ供用されている)。また実は越谷市内の企業がここの土地を売りたがっていることを越谷F神社(千里はここの名誉副巫女長)の宮司さんから聞いたのもあった。
 
『チーム白鳩』は実は今シーズンからWリーグに昇格したジョイフルゴールドと40 minutesから“あふれた”選手の受け皿として設立したものである。両チームとも、趣味の範囲でプレイする選手の存在を許容しているが、あまりに凄い選手がいるので、気後れしている子たちを集めることにしたのである。現時点では、埼玉県リーグに所属している。プロチームからあふれたメンバーなので、そこそこ強い。数年以内に都道府県リーグの上位になる地域リーグに昇格するかも知れない。
 
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(元々40 minutes自体が、Rocutesと江戸娘からあふれたメンバーで作ったようなチームだったのだが)
 
この体育館は現時点ではチーム白鳩の専用体育館なので、彼女たちの練習と、埼玉県リーグの試合・練習試合にしか使わない。一般の人の利用はできないが、中高生男女の大会などでは使ってもよいと、県のバスケット協会とは同意している。一般客の利用を排除しているのは、感染対策の問題なので、コロナが落ち着いたら開放する可能性もある。
 
チーム白鳩の“加入条件”は最低限ドリブルで28m(コートの長さ)を30秒以内に走れることプラス、ランニングシュートを10本中5本以上入れられる、又はフリースローを10本中3本以上入れられること、となっており、要するに他の選手の邪魔にならない程度の実力があれば加入を認める。
 
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基本的には女子のみだが「身体は男だけど心は女」という人は、女性的な服装や髪型で女性的な言動をする人であれば加入を認める場合もある。(「その基準だと私落とされる」と言っていた天然女子も居た)
 
但し、公式戦に出るには、IOCの基準に沿ったホルモン状態であることを医師に証明してもらい、バスケット協会に女子選手として登録されることが必要である。
 
チーム白鳩は、クラブチームなので、40 minutes同様、自分の好きな時間に出て来て、好きなだけ練習すれば良いというコンセプトである。そのため体育館は24時間使えるようになっており、彼女たちのために、深川アリーナにも出店している牛丼チェーン・まき家の店舗が“小鳩ハイツ”の1階に入っている。このマンションの1階は、この施設の事務局(9:00-21:00)のほか、ポプラ(コンビニ)、まき屋がいづれも24時間営業している。
 
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マンションの2階以上には、住民は入れておらず、選手たちの仮眠や合宿などでの使用ができるようにしている。今回の制作中は、ここのフロアをひとつレンタルして、そこに宿泊希望の楽団員を泊めた。なお岩槻の社員寮に住んでいる人はそちらから大型バス(但し定員の半分しか乗せない)で運んでいる。
 
若葉が忙しいので、このチームおよび施設の管理は“オーナー代行”の佐力梨沙さんに委ねられている。彼女は越谷F神社の常勤巫女さんである。千里の小学生の時の同級生でもあり、実は松本葉子の一部らしい。通常はF神社に常駐しており、必要があれば出てくる。実際ここの事務局は、選手を兼ねている事務員2人と梨沙さんの3人で構成されている。事務員が2人なのは交替で休めるようにするためである。
 
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佐力梨沙(旧姓松井)は、両親が帰化した後で日本国内で生まれたので、生まれながらの日本人だが、スーダン人とフランス人の血を引いている。それで「あそこの神社には外人の巫女さんがいる」と評判になり、最近参拝客が増えているらしい!「関東不思議探訪」まで取材に来て谷崎潤子と話していた。
 
彼女は日本語とフランス語のバイリンガルなので、普通に日本語を話すが、フランス語で祝詞(のりと)をあげる達人らしい!「関東不思議探訪」の取材で、やってみせていた(放送後、このフランス語祈祷の希望者が殺到した!)。
 

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夏の日の想い出・いろはに金平糖(29)

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