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■夏の日の想い出・いろはに金平糖(20)

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1月26日(水).
 
新人の立山煌(きらめき)が『山に登りましょう、娘さん』でCDデビューした。今年の新人2人目のデビューである。CDの収録曲は下記。
 
『山に登りましょう、娘さん』
『立山の美女平』
『山に登りましょう、娘さん(hi-ho version)』
『山に登りましょう、娘さん(off vocal version)』
『立山の美女平(off vocal version)』
 
『山に登りましょう、娘さん』というタイトルはむろんポーランド民謡『森へ行きましょう、娘さん』を意識している。このポーランド民謡の原題は『Szla dzieweczka(娘は行った)』で、娘が森に行ったら男の子と遭遇し、彼が娘を口説くという歌である。つまり日本語歌詞では男の子が「森へ行こう」と誘っているのに対して、元歌ではそもそも娘はひとりで森へ行き、そこで男の子と遭遇して口説かれるという筋立てになっている。
 
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立山煌が歌う歌は、漫画家としての方が有名な登山家の平野鉄郎さんが詩を書き、奧さんでピアニストの峰京子さんが曲を付けた作品である。hi-ho versionはヨーデルを組み込んだアレンジで、煌は格好よくヨーデルを歌っている。
 
登山家が書いた詩なので、娘さんを山に誘うのは、一緒に山の自然を楽しみたいだけであり、スケベな下心は無い!だいたい中学生にそんな不純な歌を歌わせる訳が無いが、心の汚れたおとなはタイトルで変なことを想像するらしい!?
 
なお曲の2サビとして「まんまるちゃん、まんまるちゃん」の歌の一部が取り込まれている。これは上記ポーランド民謡の中の「ランラララン、ランラララン」というコーラス部分の替え歌(作詞者不明)の絵描き歌で、完成すると子豚ちゃんの絵になる。
 
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まんまるちゃん、まんまるちゃん、まんまーるちゃん
まんまるちゃん、まんまるちゃん、まんまーるちゃん
インドのお船に連れられて、父ちゃん、母ちゃん、さようなら
 
ろくろくちゃん、ろくろくちゃん、さぶろーくちゃん
ろくろくちゃん、ろくろくちゃん、富士のー山
 
(歌詞は微妙なバリエーションが多数ある。「インドのお船」は、人によって「大きいお船」や「小さなお船」になったりする。「連れられて」は「乗せられて」の場合も。「さぶろくちゃん」は「さんじゅうろく」も。また「ろく・かける・ろくは、さんじゅうろく(6×6=36)」と歌うバージョンも。「富士の山」は「山登り」も。上記は峰京子さんのお父さんが記憶していたものらしい)
 
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もっとも煌の歌では「さようなら」までしか歌っておらず、歌のコーダで煌が完成させた子豚の絵が披露される。

 
「きらちゃんって歌は上手いけど絵は下手なのね」
とネットでは随分言われたようである!
 
「ブタじゃなくてクマに見える」
という意見もあった!
 

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2月1日(火).
 
諸田望美(太田芳絵)はP女子大からの郵便を受け取った。開封してみると合格通知であった。ここは共通テストの成績だけで二次試験も面接も無しで合否が決定される。
 
しっかし・・・・
 
私のあの共通テストの成績で合格させてくれるって・・・・この大学ほんとに大丈夫か?願書出しておいて言うのも何だけど!
 
コスモス社長からは行く大学決まったら連絡してねと言われていた。それで、社長に連絡しなきゃと思い、取り敢えずメールを打とうとした(コスモス社長への直接の電話は繋がる確率がとても低い)。
 
ところがそこに当のコスモス社長から電話が掛かって来たのである。
 
「ちょっと相談したいことがあるの。受験で大変な時期に申し訳ないけど、ちょっと信濃町の事務所まで来てくれる?」
 
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「はい」
 
芳絵はこの電話で社長に大学に合格したことを伝えてもいい気がしたが、社長と会うのなら、その場で言えばいいしと思い、言わなかった。
 
一応合格通知をバッグに入れて1階まで降りて行き、女子寮にいつも待機しているSCCの車に乗ると、
 
「信濃町の事務所までお願いします」
と言った。
 

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事務所にやってきた芳絵に、コスモスは申し訳無さそうな顔で言った。
 
「実は4月から9月まで、2クール全24回くらいの予定で、常滑真音主演『アイドルを探せ』というドラマをやるのよ。ΛΛテレビ」
「はい」
 
「物凄い大雑把なあらすじを言うと、お金持ちの家から指輪が盗まれる。この指輪というのが、指輪自体はそう高価なものではないけど、奥様のお母様が、香淳皇后(昭和天皇の皇后)から頂いた大事な指輪だった。そして1ヶ月後に、その家のお嬢様がお見合いをする席に着けていく予定だった。お見合いの相手の奥様にその指輪のことを話していたから、付けてないと縁談にも影響が出る」
 
「はい」
 
「盗んだ犯人は、家の庭師だったんだけど、すぐバレる。実は物理的に彼以外には盗むことのできる者が居なかった」
 
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「だったらバレますね」
 
「庭師も反省して奥様に謝る。それで奥様はとにかく返してと言うんだけど、彼はその指輪を、ロビーに置かれていたギターの中に隠していた」
 
「そのギターが持ち出されてたんだ!」
「そうそう」
 

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「奥様はその指輪さえ返ってきたら警察には訴えないと言う。期限はお見合いのある1ヶ月後。表沙汰になると、家の揉め事と思われて、やはりお見合いに影響が出るから、あくまで秘密に探さなければならない。それで彼は協力してくれるメイドさんと2人で、そのギターの行方を追って日本全国を駆け巡ることになる」
 
「ああ、何となくストーリーラインが見えてきました」
 
「事実上の主人公である、そのメイドに常滑真音、庭師には吉永浩」
「とんでもない豪華組合せですね!」
 
メイド役が本来はアクアだったとは言わない方がいいかなとコスモスは思った。
 
「ここで、この事件を察知して、このお見合いを邪魔し、自分ちのお嬢様をそのお相手と結婚させようとする2人組が出てくる。この2人組も全国を駆け巡る。双方は、指輪の行方を追って抜きつ抜かれつ、どちらが先に指輪に到達するか競争することになる。こちらの配役は、今キャスティング作業中なんだけど、その2人組の片割れを芳絵ちゃんにやってくれないかなというオファーが来てるのよ」
 
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「え〜〜〜〜!?そんな重要な役を!?」
 
「結局、舞音ちゃんが物凄く元気な子だから、そのライバルもそれに負けないくらい元気な子でないといけない。そして、こういうストーリーだけにライバルの子というのは、プライベートでは舞音ちゃんと仲良くしてるというのを局としては演出したい。それで同じ事務所の子を使いたいという意向があったのよ」
 
芳絵は声も出せずに聞いている。
 
「うちの事務所でそういう元気な子というと、真っ先に浮かぶのは白鳥リズム、次いで町田朱美、恋珠ルビーだけど、3人とも予定が取れない」
 
「無理でしょうね。ルビーちゃんも取れません?」
「実はルビーは『シンドルバッド2』を撮る。だからビーナも」
「わっ」
「これまだ非公開だから誰にも言わないでね」
「分かりました」
 
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「それで、(和田)プロデューサーは『少年探偵団』で小林少年が変装するメイド役をした太田芳絵ちゃん、使えないですか?と言ってきた。プロデューサーさんは、あけぼのテレビのクリスマス特集も見たらしい。そこでくるみ割り人形を演じて、ねずみ軍団と戦う演技をした芳絵ちゃんも見て、この子、凄く動きがいい、と惚れ込んだらしくて」
 
「えー?」
 

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「八犬伝では、簸上宮六の役をしてたけど、この子、殺陣(たて)が上手いと思ったって。くるみ割り人形でもやはり剣を扱うのが様になってたしと」
 
「よく、そんな端役まで見ていてくれましたね。小学3年の時まで剣道してたから。あまり好きじゃなくて辞めちゃったんですけど」
「ああ、それは聞いたことあった。でもやはり剣を扱う基本ができてたんだね」
「それはあるかも」
 
「どうする?やる?何なら大学に通いながら出演してもいいよ」
 
「私やります。大学には行きません」
と芳絵は決意したように言った。
 
「分かった。じゃ退団するのはキャンセルでいいね?」
「はい、辞める辞める詐欺みたいで申し訳ないですけど」
「私も花ちゃんも、芳絵ちゃんを買ってたよ。才能があるって。ただこれまでなかなかチャンスを与えてあげられなくて申し訳無かったんだけど」
 
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「いえ。せっかくのチャンスですから頑張ります」
「うん」
 

それで芳絵はコスモスと握手した。
 
最近はたいていエア握手だけど、ちゃんと手を握るのもいいなあと芳絵は思った。来年くらいにはもう普通に握手できるようになるかな?
 
「そうだ。まだ辞めないなら『少年探偵団』で小林少年がメイドに化けるというエピソードのある話をまた撮りたいらしいけど、行く?」
 
「行きます!」
「じゃ7日の日よろしくー。正確な時刻は後で(美咲)瞳ちゃんからメールさせる」
「分かりました!」
 

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太田芳絵が事務所を出る際、何か大きな封筒をゴミ箱に捨てるのを見たが、コスモスは気にしないことにした。
 
しかし瞳から連絡させると言ったけど、瞳ちゃん、大丈夫かな?
 
コスモスは最近、スケジュール管理の元締めをしている美咲瞳もオーバーワーク気味だし、誰か助手を雇わないといけないなあと考えていた。
 
本来デスクは沢村朋代(29)なのだが、彼女が忙しいので2019年秋に助手として美咲瞳(当時高卒の18歳)を雇い、サブデスクとした。その後、会社はラピスラズリが売れ、スケジュール管理を実質委託されていたローザ+リリンも売れたことにより大いに忙しくなる。結局、おっとりした沢村に代わり、頭の回転の速い美咲が事実上、マネージングの中心になってしまった。更に2021年は羽鳥セシル、常滑舞音、水森ビーナ、と超多忙な人が続出。調整が難しい上にミスが許されないので、美咲の負荷も大きくなってきている(念のためシステム課の吉原・紀ノ本にプログラムも援用してダブルブッキングと移動手段の手配漏れについて1日2度チェックさせている。瞳もシステムからの警告に随分救われている)。
 
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それで本来は沢村の助手だったはずの美咲に助手が必要な状況になってきているのが現状である。
 

そんなことを考えていたら、当の沢村が深刻そうな顔をしてコスモスの所に来た。面談室で話を聞く。
 
「どうしたの?」
「私、デスクとして全く役に立ってない気がして」
「そんなことないと思うけど」
「みんなが瞳ちゃんを頼りにしています。彼女を私の代わりにマネージング部長にしてやってください。彼女はそれだけの仕事をしています。私は今担当が居ない、大崎忍ちゃんかヴァンドールのマネージャーにでも」
 
「大崎忍とヴァンドールの件は誰か適当な人を入れないといけないと思ってるけど、マネージング部長は朋代ちゃんでいいと思うよ」
「そうですか?」
 
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「瞳ちゃんも、あれだけ忙しくしてたら、絶対作業の漏れも発生する。そんな時、彼女がマネージングの最高責任者なら、向こうに謝る人が居ないでしょ。そんな時が朋代ちゃんの出番だよ」
 
「私が先方に謝ればいいんですね!」
「朋代ちゃんは穏やかな性格だから、怒っている相手もある程度怒った所で鉾を収めてくれる」
「あ、それは高校時代にも言われたことある」
 
「ということで、今後もマネージング部長お願いね。瞳ちゃんの負荷問題はまた考えておくし」
 
「分かりました!頑張ります」
 
正直、瞳(21)は部長職にするにはまだ若すぎるのである。本人も部長になればその重責がプレッシャーになる。サブという立場の方がやりやすい。
 
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「でも大崎忍とヴァンドールの営業、もし片手間にでもできそうなら見てあげて」
「はい!それも頑張ります」
 
そういうことで、大崎忍とヴァンドールに(村上麗子が常滑舞音で忙しくなってこちらまで見られなくなって以来)約8ヶ月ぶりに担当が付くことになった。
 
 
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