広告:ボクの初体験 2 (集英社文庫―コミック版)
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■少女たちのBA(8)

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一応、班単位の行動ということにはなっていたのだが、中に入ると結構バラバラになった。蓮菜と田代君、留実子と鞠古君は各々別行動になったので、班長の恵香は携帯を持っている、蓮菜・鞠古君と電話連絡で1時間ごとに所在を確認していた。
 
千里と恵香は、美那・穂花と4人で歩き回った。穂花も携帯を持っていて、2班の班長・玖美子と連絡を取り合っていた。
 
「あんたたちHなことはするなよ」
「さすがに遊園地の中ではキスくらいしかしないよ」
「キスしたのか!?」
 
千里たちのグループには“絶叫マニア”?が居ないので、おとなしいアトラクション中心で行く。カントリートレインに始まり、サイクルモノレール、ゴーカート、ドラキュラハウス、などあまり“三半規管に来ない”もの中心で行った。回る系統のものとしては2階建てカルーセルくらいである。メリーカップは美那が面白がってハンドルを回すので、降りてからしばらく立てなかった!
 
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午前中たっぷり乗り物などに乗り園内でお昼を食べてから、午後はこのグループは乗り物にも乗らず、散策しながらおしゃべりして時間を過ごした。
 

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15時にゲートの所に集合する。各自トイレに行って来てから点呼を取り、全員居ることを確認。それからゲートを出て、バスに乗り込んだ。
 
R230で札幌に戻り、市内の大丸デパートでいったん下車する。ここで1時間ほど自由時間となった。
 
多くの子が8階の三省堂書店に行った。食い気が勝っている子は地下の食品売場に行く。千里と蓮菜は留実子を4階に連れて行った。
「何があるの?」
「るみちゃんさ、お風呂の中で見たけど、胸がかなり育っている」
と蓮菜は言った。
 
「それ憂鬱なんだけどね」
と留実子。彼女は自分の性別に違和感を持っているので、身体がどんどん女性化していくことに不快感を持っている。
 
「それだけの胸を普通のブラジャーで支えていたらスポーツする時に充分な動きができないと思う。春の大会で、1点しか取れなかったでしょ?」
と千里。
 
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「うん。なんか走り出す時はブレーキが掛かる感じ、停まる時はちゃんと停まらない感じで。この胸を切り落としたいくらいだよ」
 
「だからさ、しっかりしたスポーツブラを着けなよ」
と蓮菜は言った。
「お金は私と蓮菜が出すからさ」
 
留実子の家は貧乏なので、下着にしてもいつもかなり安物を着けている。本格的なスポーツブラは結構なお値段がする。
 
留実子は少し考えてから言った。
「ありがとう」
 

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それで3人はワコールのランジェリーショップに行ったのである。蓮菜が店員さんにサッカーをするのに良いしっかりしたスポーツブラが欲しいと言った。店員さんは留実子の胸のサイズを計った上で、カタログ上でいくつかお勧めを提示しててくれた。
 
「CW-Xにしようよ」
と千里が言った。
「でも高いよ」
と留実子。
「お金は私たちが出すから心配しないで」
と蓮菜。
 
それで3人はCW-Xのスペシャルスモールサイズを3枚買ったのである。ただ、店頭に在庫が無いので取り寄せてもらうことにした。直送してもらうことにする。
 
「すぐオーダー入れますから、明後日くらいには到着すると思います」
 
商品は蓮菜の家に送ってもらい、蓮菜が留実子に渡すことにした。
 
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千里と蓮菜が1万円札を1枚ずつ出したので、お店を出てから留実子が
「お小遣いの範囲越えてない?」
と言ったが
「先生には内緒ね」
と2人は言った。本来は修学旅行に持って来てよいお小遣いは3000円である。
 
千里は昨日白い恋人を1箱買ったが、昨夜食べちゃった!ので今朝、旅館のショップでまた1箱買っている。それで残り1000円だった。蓮菜は昨日の内に3000円ほぼ使い切っているが、ブラジャー代はふたりともそれと別に内緒で用意していたものである。実はふたりとも2万円ずつ用意していた。
 
ランジェリーショップを出た後は3人は本屋さんに行き、立ち読みをしていた。千里は小町に頼んで食料品売場でチョコを買ってきてもらったので、あとでバスの中でみんなで食べることになる(これで千里のお小遣いは無くなった)。
 
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志水家のアバートの、お風呂の工事の人は、午後1時すぎにやってきた。
「水道の栓をいったん閉めますので水が必要でしたらとっておいて下さい」
「ちょっと待って下さい」
 
それで、ミルク用のお湯のポットをいっぱいにし、またヤカンと鍋に水を取った。
 
それで工事が始まったが、ガス釜だけ交換するのかと思ったら、バスタブごと交換だったので、びっくりした。バスタブは今までのの1.5倍くらい広い。更にシャワー付きなので嬉しい!と思った。これまでは髪を洗う時に結構大変だったのである。
 
「これ水を入れて沸かすより、お湯を入れた方がガス代の節約になりますから」
「そうします!」
 
これまでは結構“湧かしすぎ”とかもあって、苦労していた。あれはかなりガスと水を無駄にしていた筈だ。特に譜面とか夢中になって書いていると、うっかり風呂を沸かしているのを忘れがちで、タイマーが鳴ったのにも気付かず、沸騰していたというのも時々あったのである。
 
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工事は2時間ほどで終わったので、工事の人たちが帰った後、早速入浴したが、天国だと思った。
 
「劇的ビフォア/アフターだわぁ」
と照絵は呟いた。
 

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17:30にN小の児童は大丸の玄関前に集合した。再度バスに乗り込み、点呼を取って出発する。南7条米里通り(札幌市道9901号旭山公園米里線)を進み、札幌ICから道央自動車道に乗る。
 
30分ほどで野幌(のっぽろ)PAに着き、トイレ休憩する。大丸で集合時間ギリギリに駆けつけて来た子も多かったので、多くの子がここでトイレに行った。千里たちも念のため行っておいた。ここは女子トイレの個室が10個もあったので、比較的短時間でトイレは終わった。
 
ルスツから札幌、札幌からここまでは、みんな寝ていたのだが、この先は
「歌って行こうよ」
ということになり、マイクを回して好きなだけ歌っていった。
 
千里は隣に座る蓮菜と一緒に宇多田ヒカルのナンバーを『SAKURAドロップス』、『Automatic』『travelling』『First Love』『Addicted To You』と歌い続け
 
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「そろそろマイクを離しなさい」
と言われて玖美子からマイクを取り上げられた。
 
でも再度回ってきた所で今度は、ストロベリー・フラワー『ピグミン愛のうた』、柴矢裕美『おさかな天国』、ミニハムず『ミニハムずの愛の唄』、更に童謡の『銀ちゃんのラブレター』、『かくざとういっこ(角砂糖1個)』と歌い
 
「可愛いけど、そろそろマイク譲りなさい」
とまた玖美子に言われてマイクを取られた。
 
そして最後は留萌市内に入ってから『大きな古時計』を熱唱した所で学校到着。
 
「君たち、レパートリーが広いね」
とガイドさんが感心していた。
 
到着したのは20:20であった。多くの子が迎えに来た保護者の車で帰宅した。
 
7/19の日程
7:00 朝食
8:00 出発
9:00-15:00 ルスツ
16:30-17:30 大丸
18:00-18:20 野幌PA
19:09 日没
20:20 学校着
20:30 解散
 
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修学旅行の後は、1日おいて7/21(日)に、またK小とのソフトボールの練習試合があったので、出て来た。千里はこの試合が事実上最後の試合になるので気合が入りまくっていた。丁寧なピッチングで、K小をノーヒットに抑えた。
 
ただしK小はエラーで出たランナーを盗塁とバントで3塁まで進め、犠牲フライで返して1点を取ったので、ノーヒットノーランにはならない。試合は千里とK小のエース・細出さんとの息詰まるような投手戦だったが、5回裏に杏子がフォアボールで出たのを1塁に置き、麦美がホームランを打って逆転サヨナラでN小が勝った。これで練習試合ではK小に2連勝である。
 
「だって千里を最後の試合で勝ち投手にしてあげたかったし」
と麦美は笑顔で言っていた。
 
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また麦美の前にフォアボールを選んで貴重なランナーとして出た杏子は
「私のエラーから1点取られたから何としても取り返したかった」
 
と言っていた。彼女は元々あまり慣れてないポジションに入っていたし、エラーと判定されたが、内安打と判定されてもおかしくない微妙なものだった。
 
サヨナラホームランを打たれたK小のエース・細出さんはショックでピッチャーズマウンドにしゃがみ込んでいた。千里は昨年春にエンタイトルド・ツーベースでサヨナラ負けを喫した時の自分を彼女に重ねた。でもきっと彼女は強くなる。そう千里は信じた。
 

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週明け、7月22日(月)の学校では、修学旅行の総括をしたが、6年各組では9月の学習発表会でおこなう劇の配役決めをした。
 
1組の演し物は『オズの魔法使い』と決まった。『不思議の国のアリス』も候補に挙がったのだが、アリスの背丈が伸び縮みする所の表現が難しいという問題で候補から外した。2組は『アリババと20人の盗賊』になったらしい。
 
ヒロインのドロシーに関しては男子たちが優美絵を推薦したものの
「私また本番前に倒れたりしたら迷惑掛けるから」
と言って辞退。北の魔女役に回ることになった。そしてドロシーには絵梨が選ばれた。彼女は今年の春転校してきた子で小柄だが、卓球部に入っており、元気一杯の女の子である。体力もあるので直前に倒れたりする心配は無さそうだ。
 
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「ああ、可憐(かれん)な少女が良かったのに」
と男子たち。
 
「悪かったね」
と絵梨がいうと
 
「可憐というと私みたいな?」
と170cmの杏子が言うので
「いや、那倉さんで良い」
と男子たちも絵梨で妥協した。
 
「でもドロシーってあまり可憐な少女という感じじゃ無いよ。猛獣のカリダを倒すし、西の魔女・東の魔女を倒すし、むしろ元気な女の子という感じだから、那倉さんが似合ってるよ」
と田代君は言っていた。
 

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全配役はこのようになった。
 
ドロシー 絵梨
トト(犬)初枝
エム(伯母)玖美子
ヘンリー(伯父)原田
かかし 田代
木こり 高山
ライオン 佐藤
北の魔女 優美絵
西の魔女 蓮菜
東の魔女 蓮菜(二役)
南の魔女 佐奈恵
カリダ(猛獣)鞠古
オズの魔法使い 中山
オズ(巨大な顔)千里
オズ(可愛い少女)穂花
オズ(野獣)飛内
オズ(火の玉)東野
門番 留実子
羽猿:恵香、上原、工藤、小室
マンチキン:佳美、鈴木、美那、津山
ウィンキー:福川、杏子、和井内
 
東の魔女を蓮菜が二役するのは、この役は足(あし)しか見えない!という役で、誰かを独立して割り当てるのは可哀想だからである。羽猿を女・男・男・男とするのは、ドロシー一行をさらう役なので、一行が女・男・男・男という構成であることに対応している。
 
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「うちのクラスって、ひょっとして新田さん以外は、みんな“元気な女の子”かも」
「それ大きい声で言うと女子たちに制裁食らうぞ」
と男子たちはこそこそ言っていたようである。それをそばで聞いていた留実子は苦笑していた。
 

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「ゆみちゃん、ブラしたんだね」
と、この日、体育の時間の着替えの時に、優美絵は女子みんなから言われた。
 
「うん。昨日、旭川まで行って、お母さんと一緒に選んだ。でも何か変な感じ」
「すぐ慣れるよ」
 
優美絵が着けているのは3Sである。旭川のランジェリーショップにかろうじて1枚だけ在庫があったので、とりあえずそれを買い、あと3枚頼んでいるらしい。札幌のお店にあったので、そこから送ってもらい、今日にも届くだろうということだった。
 

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また札幌で頼んだ留実子のブラは日曜日に蓮菜の家に到着していたので、この日蓮菜が留実子に渡し、更衣室で早速留実子は着けていた。みんな留実子に背中を向けて留実子がバストを露出するのを見ないようにしてあげた。
 
(千里の裸はみんな見るが、留実子の裸はみんな見ない)
 
この日は雨だったので体育館でバスケットをした。男子・女子に分かれ、体育館の半分ずつを使用する。男子は8vs8 女子は6vs6 で行った。千里は女子、留実子は男子に入っている。
 
この日の優美絵はドリブルで走って行き、シュートも決めるなどかなり活躍した。「シュート初めて入った!」と喜んでいたが、この日は結局4回もゴールを決めている(シュートは12回:結構確率がいい!彼女のドリブルやシュートは(暗黙の了解で)誰も邪魔しなかったのもある)。
 
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「今日のゆみちゃん、すごい」
「なんか身体が凄く動かしやすい」
「いつもよりかなりスピードがあったよ」
「ブラジャーのおかげかもー」
と彼女は嬉しそうに言っていた。
 

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留実子も男子の方で1人で30点も入れる大活躍で
「兼部でミニバスやらない?」
などと田代君から言われたらしい。
「鞠古と入れ替えで」
と田代君。
「俺と入れ替えなの?」
「鞠古は代わりに女子チームにくれてやるから」
 
授業が終わった後、留実子は更衣室で
「凄く動きやすかった。さすが300円のブラとは別物。まるで胸が無くなったみたい。これ凄くいい。劇的ビフォア・アウターだよ」
と言っていた(言葉の間違いは武士の情けで指摘しない)。
 
留実子はこのブラのおかげで、サッカーの夏の地区大会ではハットトリックを連発する大活躍。チームは準優勝することになる。
 
「春とは大違いだ」
「もしかしてとうとう性転換したのか?」
などと言われていた。
 
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