広告:オトコのコはメイド服がお好き-Illust-stories-2012-カスカベアキラ
[携帯Top] [文字サイズ]

■少女たちのBA(3)

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 
前頁次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

7月4-5日(木金)には、 5年生が旭川まで宿泊体験に行った。
 
剣道部は5年生が居ないと、女子は寂しいので、玖美子が
 
「千里剣道部に行くよ」
などと言って体育館に連行し、手合わせした。
 
玖美子、ノラン、千里の3人で1人が審判になり、あとの2人で試合形式の練習をする。
 
「え〜〜!?今の1本入ってた?」
とノラン。
「入ってた」
と玖美子・千里。
 
強い玖美子と千里に鍛えられて、ノランはこの2日だけでもかなり進化したようであった。
 
「外人仲間でエヴリーヌが『私も剣道部入ろうかなあ』とか言ってるんですけど」
「歓迎、歓迎。連れてきて」
「でも彼女、去年日本に来たばかりだから、たぶん大会の出場資格無いかも」
「それは構わないよ。試合に出なくても、練習だけでも楽しいよ」
 
↓ ↑ Bottom Top


この日は木刀(ぼくとう)を使って“形”(かた)の稽古もした。
 
防具を着けた竹刀(しない)による打ち合い稽古と防具を着けない木刀による形の稽古は剣道では稽古の両輪とされ、級位・段位の認定試験でも課されるが、実際は形(かた)はあまり練習されておらず、直前の付け刃(つけやいば)の人が多い。でもたまには練習しておく必要がある。
 
竹刀(しない)が発明される以前の江戸時代中期までは、実は道場ではひたすら木刀で形(かた)の稽古をしていた(*1).
 
竹刀は当たっても怪我しないように作られたものなので当てるのだが、木刀は当たると痛い(最悪怪我したり、希に死ぬこともある)ので、木刀による形(かた)の演武では、当てずに止める“寸止め”で行わなければならない。
 
↓ ↑ Bottom Top

ところが玖美子はこれがあまり上手くないので、当たる当たる。
 
「ちょっとぉ、ちゃんと止めてよ」
「ごめーん」
 
「へたすると死ぬこともあるんだからね」
「千里が死んだら、私が代わりに女装するから」
「何かよく分からない話だ」
「だって千里は女の子の癖に女装してるからね」
「私時々自分がよく分からなくなる」
 
(*1) 現在の竹刀は幕末頃に発明されたものだが、安土桃山時代にはこの前身に当たる“袋竹刀”というものが考案され新陰流などで使用されていた。細く割った竹に袋をかぶせてまとめたものである。但し当時も基本的には形練習に使用されており(寸止めに失敗して当ててしまっても木刀よりダメージが少ない)、打ち稽古が行われるようになったのは、防具が発達した江戸中期以降である。そして打ち稽古のために多くの流派が木刀ではなく袋竹刀を使うようになった。これが江戸時代後期とされる。
 
↓ ↑ Bottom Top


小春は、神社の境内で、小学生くらいの女の子を千里・蓮菜・恵香の3人に紹介した。
 
「こちら、小町ちゃん。この神社に常駐してもらうから、よろしく」
「小町です。よろしくお願いします」
 
「こないだのキタキツネちゃんだ!」
 
こないだは高校生くらいに見えたが、今日は小学生くらいの雰囲気である。
 
「どうも先日はお世話になりました。小春さんに声を掛けてもらったので、ここに居ようかなと思って。御飯の心配しなくていいよと言うし」
と小町は言っている。
 
「まあ鶴とかは食べられないけど、鶏も美味しいよと言った」
「鶴食べるの?」
「白鳥の方が美味しいですけど」
「うーん・・・」
 
「小学校にも行くの?」
「行ってないと、お巡りさんに叱られそうだから行こうと思います」
 
↓ ↑ Bottom Top

「何年に入るの?」
「どうしましょう?」
と小春に訊いている。
 
「3年生くらいにしとく?」
「じゃそれで」
「だったら、仁美ちゃんとかと同じ学年だ」
「うん。彼女たちにフォローしてもらおう」
 
「本当は何歳なの?」
と蓮菜が尋ねる。
 
「2歳です。一昨年の6月頃に生まれました」
「おお、若い!」
 

↓ ↑ Bottom Top

7月13-14日(土日)は神社の例祭があり、千里たちの集落全体が盛り上がる。この祭りで小町はかなり頑張っていた。どうも小春は祭りで色々仕事をするだけの体力が無いので若い小町をスカウトしたようである。千里や蓮菜たちも巫女衣装を着て、手伝えるだけ手伝った。
 
実際小春は「これが自分が見る最後の例祭かなあ」と思っていたが、そんなことは蓮菜たちには言わない。そしてこの時期小春が必死で考えていたのが、来年4月に死ぬ予定の千里をどうやって助けるかということであった。
 

↓ ↑ Bottom Top

「え?三発機より双発機の方が落ちにくいの?」
「うちの兄貴がそんなこと言ってた」
と留実子が言った。
 
それは飛行機のエンジンの数の問題であった。
 
「飛行機は搭載しているエンジンの半数以上が動いていれば飛び続けることができるようになっているんだって。例えばエンジンが0.1の確率で故障する場合」
と留実子が言ったら
 
「そんな壊れやすい飛行機には乗りたくない」
とみんな言う。
 
「いや。計算を簡単にするためのたとえだよ。本当はもっと故障確率は低いよ」
と留実子は言う。
 
「1発のエンジンが0.1の確率で壊れるなら、両方壊れる確率は0.1×0.1=0.01になって、双発機は単発機よりずっと安全」
 
「それは分かる」
 
↓ ↑ Bottom Top

千里以外!は全員この話を理解する。
 

「今、0.1の確率で壊れるエンジンを3機積んだ飛行機を考える。問題は三発機の場合、1機だけエンジンが生きていても機体を支えきれない。最低2個は動いていないといけないということなんだよ」
 
「あ、何となく分かった」
と蓮菜と玖美子が言うが、他の子たちはまだ分からない。
 
「この場合、こうなる」
 
3個とも壊れる確率 0.1×0.1×0.1 = 0.001
2個壊れる確率 3x0.1×0.1×0.9 = 0.027
1個壊れる確率 3x0.1×0.9×0.9 = 0.243
0個壊れる確率 0.9×0.9×0.9 = 0.729
 
検算(1) 1+3+3+1 = 8 (23)
検算(2) 1 + 27 + 243 + 729 = 1000
 
「何で3倍するの?」
と千里が訊くので恵香が「壊れる2個の選び方が3通りあるから」と説明してあげたが、それでも分からないようなので、千里は放置して話を進める!
 
↓ ↑ Bottom Top

●●●3個
●●○2個
●○●2個
●○○1個
○●●2個
○●○1個
○○●1個
○○○0個
 
↑2個壊れるパターン、1個壊れるパターンは各々3通りある。中学の数学で書くと、組みあわせの数 C を使って
3C2= 3×2/2×1 = 6/2 = 3
3C1= 3/1 = 3
 

↓ ↑ Bottom Top

「そういう訳で三発機で2個以上のエンジンが壊れる確率は0.028あって、双発機の2.8倍も落ちやすいんだよ」
 
「すごーい!」
と千里以外はこの話に驚いた(但し蓮菜と玖美子は少し前から気付いていた)。
 
「四発機ならどうなる?」
「計算してみればいいよ」
と玖美子が言って、書き出してみる。
 
4個とも壊れる確率 0.1×0.1×0.1×0.1 = 0.0001
3個壊れる確率 4×0.1×0.1×0.1×0.9 = 0.0036
2個壊れる確率 6x0.1×0.1×0.9×0.9 = 0.0486
1個壊れる確率 4x0.1×0.9×0.9×0.9 = 0.2916
0個壊れる確率 0.9×0.9×0.9×0.9 = 0.6561
 
検算(1) 1+4+6+4+1 = 16 (24)
検算(2) 1 + 36 + 486 + 2916 + 6561 = 10000
 
↓ ↑ Bottom Top

3個以上壊れる確率は 0.0037 で、双発機の墜落確率 0.01 より小さい。
 
「なるほどー。四発機だと双発機より安全か」
「三発機がまずいのか」
 
「三発機にも1個だけでも飛べるくらい強いエンジン積んだら?」
「それなら双発機で充分。わざわざ三発機にする意味が無い」
「あっそうか!」
 

↓ ↑ Bottom Top

この計算は、故障確率が例えば0.01だと
 
単発機 0.01
双発機 0.0001
三発機 0.000298
四発機 0.00000397
 
故障確率が例えば 1e-5 (10万分の1)だと
 
単発機 0.00001
双発機 1,0e-10 (100億分の1)
三発機 2,99998e-10 (100億分の2.99998)
四発機 3.99997e-15 (1000兆分の3.99997)
 
となる。現在の航空エンジンの故障確率はもっと低いはず。だいたい100年運用して1回壊れるかどうかくらいと言われる。(それでも全世界で2万機飛んでいたら年間100機くらい故障が発生してもおかしくない:だから整備が大事)
 
どっちみち、三発機は双発機の約3倍、墜落の危険があることになる。
 
むろん航空機事故はエンジンだけの問題ではない。きちんと整備していることで事故確率はもっと減らせるし、いい加減な整備で飛躍的に高まる。多くの航空機事故が、エンジンを留めるボルトの取り付けミスで起きていたりする。また操縦ミスや外的要因(落雷やバードストライクなど)で事故が起きる場合もある。
 
↓ ↑ Bottom Top


その日、照絵が自宅アパートで必死でスコアを書いていたら、ピンポンが鳴る。
 
「はーい」
と言って出たら、なんと英世の母である。
 
「お母さん!いらっしゃい」
と心で焦りながら笑顔で言い、
「散らかってますけど、取り敢えず中へ」
と言って上にあげる。
 
英世の母・詩子(うたこ)は笑顔で部屋に上がったが凍り付いた。
 
「確かに・・・散らかってるわね」
「ごめんなさい。でもこのスコアを今日の夕方までに仕上げないといけないので、気にはなってはいましたけど、放置して仕事してます」
「あんたも大変ネ!」
「申し訳無いです。コーヒーメーカーにコーヒー入ってますし、冷蔵庫に麦茶あるのでセルフサービスでお願い出来ますか」
「了解、了解」
 
↓ ↑ Bottom Top


その時、ベビーベッドに寝ていた龍虎が泣き出した。
 
「あ、ミルクかな」
と言って、粉ミルクをポットの湯(90℃程度)で溶くと、冷蔵庫で冷やしていたペットボトルの赤ちゃん用の水を開封して哺乳瓶に足して適温にする。
 
「そんなやり方があるんだ!」
とお母さんが驚いている。
 
ミルクの“本来の”作り方は、粉ミルクを70℃以上のお湯で溶き、哺乳瓶を流水などで冷やして40℃くらいまで冷やしてから与える。この冷やすのにどうしても時間が掛かるので、アイスノンに似たもので冷凍室に入れておいて哺乳瓶をそれでくるんで急冷するものなど、様々なグッズも出ている。
 
70℃以上で溶くのは雑菌を死滅させるためである。赤ちゃんは免疫力が弱いので、できるだけ無菌に近い状態でミルクを作る必要がある。また70℃以上のお湯を作るのも大変なので、常時70℃のお湯を出す赤ちゃん用ポットなども販売されている。
 
↓ ↑ Bottom Top

照絵は半分のお湯の量で粉ミルクを溶き、等量の0℃の水を加えて40-45℃にしてしまったのである。残った水はポットに足して沸騰ボタンを押しておく。開封してしまったものは次はそのままは使えない。
 

↓ ↑ Bottom Top

「とにかく急ぐ時にはこれが1番です。コストはかかりますけど」
「だろうね!」
 
それで照絵が龍虎にミルクを飲ませる。龍虎はお腹が空いていたようで、ゴクゴク飲んでいる。
 
「ででも、あんたたちいつ赤ちゃんできたのよ?」
「お友達から預かっているんですよ」
「そうだったんだ!いつ生まれたんだろうと思った」
「この子の誕生日は去年の8月20日です」
「だったら11ヶ月か。でも可愛い子だねー」
 
「すみません。ちょっとこの子にミルク飲ませておいてもらえません?私スコアが」
「OKOK」
 
と言って、英世の母は龍虎を受け取ると、膝に抱えたままミルクを飲ませてあげた。人見知りしないようで、ご機嫌が良い。
 

↓ ↑ Bottom Top

「でも可愛い女の子だね」
「すみません。よく間違われるんですが、男の子です」
「うっそー!?」
 
だってキティちゃんの、赤いロンパース着てるし!?
 
「男の子だなんて信じられないくらい可愛いですよね」
「なんか男の子にするの、もったいなーい」
「ね?」
 
「あれ?でもベビーベッドまであるの?」
「長期間預かっているので」
「長期って1〜2週間?」
「それが多分2〜3年になるだろうと」
「え〜〜〜!?」
 

↓ ↑ Bottom Top

↓ ↑ Bottom Top

前頁次頁目次

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 
少女たちのBA(3)

広告:放浪息子-3-Blu-ray-あおきえい