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■少女たちのBA(7)

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蓮菜が留実子に言った。
 
「るみちゃん、鞠古君と“した”んだっけ?」
「まだしてない。キスしただけ」
と留実子が答えると
「キスしたんだ!」
と恵香が驚く。
 
「千里は?」
「まだキスもしてないよ、抱き合いはしたけど」
「おぉ!」
 
「蓮菜はどうなのさ?」
と千里が訊くと
「セックスはしたけど、入れさせてない」
と蓮菜の弁。
「意味が分からん!」
とみんな言った。
 
「なんかみんな大人だなあ」
と恵香は言うが
 
「女の子は初潮が来たらもう“女”なんだよ」
と蓮菜は言う。
 
「We are called girls before menophania, and we are called women after menophania」
「before/afterか・・・」
「初潮ってメノフェニアというのね」
「メナーキー(menarche)とも言うよ」
 
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このグループは外人の子たちとの付き合いが多いので英語はだいたい分かる。文法はわりと適当だが!
 
「でもwomanって何か凄く深い響き」
「私たちはもうwomanなのさ」
 
「千里はwomanになりたくてたまらない顔してるけど実は既にwomanになっていると思う」
 
千里は蓮菜の言葉を噛みしめる。
 
「るみちゃんはあまりwomanになりたくないみたいだけど、実はwomanという単語の中にはmanという単語が含まれている」
「確かに」
「だから自分の内側に男を持っていればいいのさ」
 
留実子は蓮菜の言葉を考えている。
 

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「取り敢えず、るみちゃんも千里もこれ持っておきなよ」
と言って、蓮菜は2人に1個ずつ“それ”を配った。千里は3月にももらったけどとは思ったが、また受け取った。
 
「それ私にもちょうだい」
と恵香が言うので、蓮菜は彼女にも1個あげた。
「生理用品入れに入れておけばいいよ」
「そうしよう」
 
「使い方分かる?」
と蓮菜は訊くが、誰も知らないようである。
 
「じゃ練習してみよう」
と蓮菜は言う。
 
「どうやって?」
「誰かちんちん持ってる人がいたら、実験台にするんだけど」
 
「ぼくにあったらいいんだけど、持ってないし」
と留実子。
「千里に付いてないのはお風呂の中で確認したし」
と恵香。
 
「じゃ代わりにこれを使おう」
と言って蓮菜が取り出したのは、小型のサランラップかクレラップの芯(15cm)のようである。
 
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「それわざわざ持って来たの?」
「いや、るみちゃんと千里にはしっかり教えておかないとやばいと思ったからね」
 

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「でもそれ大きすぎない?」
と恵香は言ったが
「いや、本物はもっと太いし、長さももう少し長い」
と蓮菜が言うので
「そんなに太いの?」
「それより長いの!?」
と他の4人が驚く。
 
「そんな長いものが“あそこ”に入るわけ?」
「全部入る訳じゃ無いけどね。それでもヴァギナは10cmくらいはあるよ」
「そんなに深いんだ!」
「それに赤ちゃんが通るんだから、ちんちんくらい入るって」
「確かに赤ちゃんの方がちんちんより明らかに太い」
 
「千里は太く長くなっているの見たことない?」
「ううん。彼とはそんな所までしてない」
 
自分には付いてなかったのか〜?と恵香はツッコミたくなったがやめておいた。それに千里のは多分付いてた時代も小さかったかも知れないという気もした。
 
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「太さとしては、トイレットペーパーの芯の方がもっと近いんだけどね。あれは長さが短すぎるし、持ってくる間に潰れちゃうから」
「へー」
 
「まず表裏を確認する。これ裏返しでは入らないから」
「ふむふむ」
 
「表裏はだいたい袋の表面に書いてある。表裏とか外内と書かれているものと、これみたいに♂♀のマークになっているものがある。♂が裏側・内側で♀が表・外」
 
「女の子が表なんだ!」
「装着した状態を想像してみれば分かるよ」
と蓮菜は言う。
 
「開封します」
と言って蓮菜は開封し、中身を取り出した。
 
恵香は息するのも忘れて見ている。
 
「たくさんゼリーが付いている。これは女の子に入れる時にスムーズに入るようにするため」
 
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「ここでも表裏をよく確認すること。こちらが表でこちらが裏」
と言って、みんなに見せている。
 
「この裏側をちんちんの先に当てる。すると外側にくるくる巻かれた部分があるよね。これを指で押していくと、自然にちんちんをカバーすることができる。恵香、やってみて」
「うん」
と言われて、恵香がやってみると、それはラップの芯を半分くらいまでカバーした。
 
「面白ーい。でも長さ足りない」
「まあそこまでカバーすれば精液は漏れないだろうというレベル。でもスムーズにできたでしょ?」
 
「うん」
 
「表裏を間違うとこれがうまくできないから」
「へー。間違ったら逆にしてやり直せばいいの?」
「それは絶対にやってはダメ。一度ちんちんに接触した部分が外側に来てしまうから、妊娠確率がとても高くなる。精液は射精前でも結構漏れてきてるんだよ
「なるほどー」
「だから表裏を間違った時は、それを捨てて、新しいのでやり直す」
「なんかもったいない」
「もったいながって妊娠しては元も子もない」
「確かにそうだ」
「るみちゃんとか特にもったいながりそうで恐い。必ず捨ててね」
「分かった」
 
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避妊具を装着したラップの芯は「私が処分しておきます」と小町が言うので、彼女に任せた。
 

千里たちの部屋は、20時半には消灯したが、さっきの“練習”で興奮して、みんな眠れない。蓮菜が持参の明治ベストスリー(三種のチョコ)の大袋を開け、シェアして食べる。更には千里が白い恋人の箱を1つ開けてそれも分けて食べた。
 
「開けちゃっていいの?」
「この旅館でも売ってるし」
「なるほどー」
 
それで電気は消したままおしゃべりしていた。先生が巡回してきたら、寝てるふりをした(先生の巡回は千里が察知する)。
 

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龍虎を入浴させ、お風呂からあがった詩子は、凄く柔らかい素材でできたバスタオル(マイクロファイバーである)で龍虎の身体を拭いてあげて、ついでに自分の身体も拭く。龍虎のお股の割れ目ちゃんの所もきれいに水滴を取る。そして新しいおむつを付け、自分もズロースを穿く。それから龍虎に服を着せてあげて、自分も服を着た。
 
お風呂で体力を消耗しているし、お風呂の熱で水分も蒸発しているだろうからミルクを飲ませる。美味しそうに飲んでいる。詩子も自販機でお茶を買って飲んだ。
 
少し休んでから銭湯を出てアパートに戻った。
 
「ただいまあ」
「お疲れ様でした。ありがとうございました」
 
「照絵さん、間違ってるじゃん」
「すみません。地図が間違ってました?」
「いや、地図はちゃんとなってたよ。それよりこの子、女の子じゃん」
 
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「あ、この子、時々私も女の子みたいな気がすることあるんですけど、やはり男の子なんですよ」
 
「でもちんちん付いてなかったわよ」
「私も夜中この子のおむつ替えてたらちんちん付いてない気がすることあるんですけどね。朝起きて見るとやはり付いてるんですよ」
 
と言って照絵は龍虎のおむつを外してみた。
 
「嘘!?」
「付いてますでしょ?」
「え〜〜?何で〜?」
「この子、きっと必殺ちんちん隠しの術を心得てるんですよ」
「うーん・・・」
 

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「眠れないよう。誰か何かお話しでもしてよ」
と恵香が言った。
 
「じゃ少し昔話を」
と言って話し始めたのが誰だったか、恵香も蓮菜も覚えていない。
 
「アペフチのカムイ(神)は最も古い神。この世界が生まれる前から居た」
「世界が無いのに神が存在するんだ」
「それだけ超越してるのかも」
「うーん・・・」
 
「アペフチ大神のお供は、左にラルマニ姫、右手にチキサニ姫であった。ラルマニ姫はイチイ(櫟)の精、チキサニ姫はハルニレ(春楡)の精とも言われる。実は昔は火を起こすのに木と木を摺り合わせていた訳だけど、イチイやハルニレは発火しやすかったらしい」
 
「へー!」
 
「それで火の女神のお供ということになったのかもね」
「あ、火の神様って女?」
「そそ。太陽の神ペケレチュプも女」
「へー!」
「ちなみにハルニレ(春楡)は英語でいうとエルム(elm)だよ」
「エルムって春楡かぁ!」
 
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「この世界を作った神様はコタンカル・カムイ。この神様は実際には男女一対の神様だったとも言われる」
 
「ほほお」
 
「実際、コタンカルカムイがひとりで世界を創造したとする説、妹とふたりで創造したとする説、モシリ・カラ・カムイという男神と、イカ・カラ・カムイという女神とで作ったという説とかがあるんだよ」
 
「なるほどー」
「ということは、コタンカルカムイというのが、モシリ神とイカ神の総称なのかなあ」
 
「そういう解釈は成り立つと思うよ。モシリはよく出てくる単語だよね。土地という意味。イカは花という意味」
 
「アイヌの神話では大地の神は男か!」
「神様の性別って面白いね」
 
「全てが混沌としていた中で、やがて油のようなものが集まり、それが燃え上がって天となった。残った重たいものが固まって地となった。天の中から1柱の神が現れ、また地の中から1柱の神が現れた」
 
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「それが創造2神?」
 
「そういうことになるのかも。2神は青い雲を下に投げて海を作り、黄色い雲も下に投げて土地を作った。赤い雲から金銀などの金属を作り、白い雲から多数の動物・植物を作った」
「ほほお」
 
「そして2柱の神はセックスして多数の神々を産んだ」
「きゃー!」
「また眠れなくなった」
 

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「2人の創造神が産んだ多数の神々の中に、カンナカムイという雷の男神、ペケレチュプという太陽の女神、クンネチュプという月の男神、がいた。創造神は太陽の女神・ペケレチュプには昼間を司り、月の男神クンネチュプには夜を司るように命じた。女神・ペケレチュプは雌岳、男神クンネチュプは雄岳から黒い雲に乗って天に昇った」
 
「日本神話と似てる。天照大神(あまてらすおおみかみ)と月読命(つくよみのみこと)みたい。雷神は須佐之男命(すさのおのみこと)だし」
 
「影響を受けてるんだと思うよ。でもカンナカムイ、ペケレチュプ、クンネチュプはコタンカルカムイの弟や妹であるという説もある」
「どこから生まれたの〜?」
 
「さあ。雷神のカンナカムイは、後に火の女神アペフチ・カムイの従者・チキサニ姫と結婚し、2人の間に英雄神・アイヌラックル、別名オキクルミが生まれる。このオキクルミが実は世界創造の仕上げをするんだよ。彼は幾多の試練を経て、白鳥の女神レタッチリと結婚する」
 
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「日本神話だと、カンナカムイが須佐之男命(すさのおのこと)、オキクルミは大国主命(おおくにぬしのみこと)か」
 
「うん。きれいに対応していると思う。大国主命も散々試練を受けている。オキクルミの父は太陽神ペケレチュプという説もあるけど、ペケレチュプは女神という説が有力だから女が父になる訳無いから、父親はカンナカムイのほうだと思う」
 
「そうかなあ。神様なら何とかするかもよ」
「うーん。それは何とかするかも知れない気はする」
 
「日本神話の天照大神(あまてらすおおみかみ)だって男神という説はあるし」
「確かに。天照大神には8人の奥さんがいて、それが実は八岐大蛇(やまたのおろち)の正体だったという説もある」
「あれは女の嫉妬?」
「恐い訳だ」
 
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アイヌの神話はまだまだ続いたが、その内1人眠り、2人眠り、12時頃までには全員眠ってしまった。
 

修学旅行2日目、7月19日(金).
 
千里たちは朝7時から朝食に行った(日出4:11)。
 
鞠古君がスカートを穿いていた!が
「お前それ気持ち悪いからやめろ」
と田代君に言われ朝食後穿き替えたので、留実子に殴られずに済んだ!
 
「鞠古君、ほんとにスカート持ってたんだ?」
「姉貴がくれた」
「へー!」
 
(鞠古知佐の姉・花江が小さくなったスカートを弟に“お下がり”として渡したものだが、この後、留実子が没収した。鞠古君は実は3年生頃までは学校外では結構スカートを穿いていたが、留実子と付き合い始めた頃から、あまり穿かなくなった)
 
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8時にバスに乗り込み出発した。
 
1時間ほど走って、ルスツ・リゾートに来る。今日は1日ここの遊園地で遊ぶことになっている。
 
ゲート前でクラスごとの記念写真を撮ってから、中に入る。
 
「そこに尻別岳(しりべつだけ)が見えるでしょ?」
と小春が言った。
 
「あの山が尻別岳?」
「そそ。あれが月神クンネチュプが登った雄岳・ピンネシリだよ」
「へー!」
「じぉ雌岳は?」
「太陽神ペケレチュプが登った雌岳・マツネシリは羊蹄山(ようていざん)、別名・後方羊蹄山(しりべしやま)(*4)」
 
後方羊蹄山は尻別岳の北西約10kmの所にある。
 
「雌岳の方が高くない?」
「そうそう。雌岳こと後方羊蹄山(しりべしやま)は1898m, 雄岳こと尻別岳(しりべつだけ)は1107m」
 
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「女の方がずっと大きい」
 
「だけど筑波山だって、女体山(877m)の方が男体山(871m)より高い」
「おぉ!」
 
「昔は女の方が強かったのかもよ。みんな頑張ろう」
「よし、頑張ろう!」
「男を倒そう!」
と恵香たちは気勢を挙げた。
 
(*4)“後方羊蹄山”と書いて“しりべしやま”と読む。“後方”を“しりべ”と読み“羊蹄”を“し”と読むのである。羊蹄とは“ギシギシ”という植物の漢名でこの植物の和名が“之(し)”であることから来ている。あまりにも難読なので近年は単に“羊蹄山”と書き“ようていざん”と音読みするのが一般化している。尻別岳には前方羊蹄山という別名もあるらしいが読み方は不明。さきべしやま??
 

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