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■少女たちの卒業(8)

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「あ、これ可愛い!」
と思ったのがピンクがかった白のデジタル時計である。メーカーはカシオだ。カシオなら品質は間違いない気がする。価格は3980円が半額で1990円になっている。なんて素敵なお値段。
 
スタッフさんが寄ってくる。
 
「スポーツウォッチをお求めですか?」
「いえ、腕時計が欲しいなと思っていただけで」
「何かスポーツなさいます?」
「ソフトボールを少々」
「でしたら、ベビーGとかいかがですか?丈夫だから。ウォーミングアップ中とかも着けておけますよ。少々ぶつけても平気ですし」
 
と言われたのを見ると28,000円のが半額で14,000円になっている。ちょっと予算オーバーかな。シューズとかブラとか高いの買ったし。
 
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「ちょっと予算オーバーだし、こちらでいいかなあ」
と千里は今見ていたのを指さす。
 
「ああ。それもわりといい製品ですよ。でも電波時計ではく普通のクォーツなので、使っている内にどうしてもくるいますね」
 
「どのくらいくるいます?」
「月に20秒くらいです」
 
「あ、全然問題ないです。やはりこちら買います」
「分かりました。お出ししますね」
と言って、スタッフさんはガラスケースから出してくれた。
 
これを買ってスポーツ用品店を出た。
 
このカシオのスポーツウォッチは、これから約5年間使用することになる(その後もサブウォッチとして22歳頃まで使用した)。
 
他に、書店で英和辞典・和英辞典・国語辞典・漢和辞典・古語辞典を買う。これは蓮菜から教えてもらった、お勧めのものを購入した。更に100円ショップでノートやシャープペンシル・ボールペン・マーカー・筆入れ・定規などまで買っているとこの日1日だけで、使ったお金は6万円を超えた。
 
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やはり入学準備だけでもかなりのお金が掛かるなと思った。
 
この日の夕方のバスで留萌に戻った。
 

3月3日(月)は、ひな祭りで、千里の12歳の誕生日でもある。ひな祭りなので、学校が終わった後、いつもの年と同様に、段飾りの雛人形が飾られている蓮菜の家に集まった。この時に集まったのは、こういうメンバーである。
 
蓮菜、恵香、美那、沙苗、千里、玲羅、小春、小町。
 
この日は千里が玲羅に小振袖を着せた。そして自分は、またワンタッチ振袖を着てきたのだが、沙苗が普通のセーターとジーンズで来ているのを見ると
 
「沙苗(さなえ)ちゃん、中学になったら髪切らないといけないでしょ?今の内に振袖を着なさい」
と言って、千里は自分が着ていた振袖を沙苗に着せた。
 
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「可愛い!」
という声があがり、沙苗は照れていたが、物凄く嬉しそうだった。
 
千里は蓮菜に服を借りて、セーターにロングスカートを穿いた。
 

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「沙苗(さなえ)は4月までに髪を切るのではなく、ちんちんを切って女の子になれば、セーラー服を着られるのに」
 
「ちんちん切りたーい、セーラー服着たーい」
「なんならみんなで押さえつけて、ちんちん切り落としてあげる?」
「私、医療用メス持ってるよ」
 
なんて危険な物を持ってるんだ?
 
「待って。麻酔とか掛けてくれるよね?」
「そんな上等なものは持ってない」
「すみません。遠慮します」
「命より、ちんちんの方が大事なんだ?」
「そういう訳じゃないけど」
 

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でも、女の子できる最後のチャンスかもというので、みんな沙苗の記念写真を撮ってあげた、むろん全員並んだところを、蓮菜のお母さんに頼んで撮影してもらった。
 
例年通り、千里の母が差し入れてくれたケーキを今年の参加人数8人で8等分して皿に盛り、白酒代わりにカルピスで乾杯して、食べる。
 
「あ、そういえば千里、ハッピーバースデイ」
「ハッピーバースデイ」
「さんきゅ、さんきゅ」
 
「千里はセーラー服で通学するんだよね?」
「当然」
「凄いなあ」
と沙苗が言っている。
 
「小学校の書類が性別女になっているから、ちゃんと中学でも女で行ける」
「ほほぉ」
 
「ほら、私の入学案内」
「おぉ!ちゃんと性別女と書かれている」
「だから全然問題無い」
 
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「るみちゃんは残念だったね」
「るみちゃんには、学生服持って来て、昼休みとか放課後はそれを着ておきなよとか唆そうと思っている」
「それは良いことだ」
 
「応援団にも入りたいとか言ってた」
「あの子だったら入れてくれる気がする」
「するする」
 

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「そういえば3月3日は耳の日だね」
「ああ、語呂合わせの記念日ね」
 
「なんかたくさんあるよね、その手の」
 
「3月2日ミニの日、3月3日耳の日、3月4日サッシの日、3月5日珊瑚の日、3月7日サウナの日、3月8日ミツバチの日、3月9日サンキューで“ありがとう”の日、3月10日砂糖の日、3月12日財布の日、3月13日サンドイッチの日、3月14日円周率の日」
 
「ほぼ毎日何かあるな」
「そんなの誰が決めてるの?」
「別に誰も決めてない。誰かが言い出して、それが定着すれば記念日として残る。実際、誰も何もイベントをしない、幽霊記念日も多い」
 
「だろうねー」
 
「それどころか、いくつか存在する記念日掲載サイトに名前は見るものの、実際どういう趣旨の記念日か誰も知らないという、幽霊未満、残像みたいな記念日もある」
 
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「提唱した本人も忘れてたりして」
 

「3月8日は僕たちの結婚記念日だよ」
と高岡は言った。
「それはいいけど、いい加減私を入籍して欲しいんだけど。龍虎も」
「ごめーん。来年くらいには必ず」
 
この時期高岡が考えていたのは、自分はたぶん今年中か来年春くらいまでにはワンティスのボーカルを首になりそうな気がする。だから、そうしたら、実は結婚して子供もいることも発表し、夕香と2人のバンドを作ろうという線だった。
 
1年くらいはどこの事務所も契約してくれないしテレビ局も出演させてくれないだろうけど、この業界ではだいたい1年経てば、前所属事務所も許容的になることが多い。現在は、★★レコードの制作部長から直接釘を刺されていたので、ワンティスに居る限りは結婚を公表できない気がしていた。高岡はこのことを誰にも話していない。
 
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「来年ねぇ。それに龍虎の出生届けも早く出したいし」
「それもごめーん。でも当日はデートしようよ」
「まあいいけどね」
 
それで当日、2人は朝からまずは松戸市の志水家を訪ねる。この時、夕香はお気に入りの青い振袖を着ていた。高岡はダンヒルのスーツを着ていた。
 
「2人揃って、いらしたの久しぶりですね!」
と照絵に驚かれる。2人は龍虎を抱っこしたり、高い高いして遊んであげたりしてから、照絵と一緒にケーキを食べた。龍虎にもプティケーキをあげたが、服がひどいことになって着替えさせた。
 
「でもどうなさったんですか?」
「今日は僕達の結婚記念日だから」
「そうだったんですか!おめでとうございます」
 
それで2人は1時間くらい龍虎と戯れてからマンションを出た。
 
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照絵は高岡が置いていった龍虎へのプレゼントがシナモロールの絵が入ったピンクのロンパースなので「うーん・・・シナモロールは一応男の子かな?」などと悩んだ。
 

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ふたりは高岡のポルシェ(*3)に乗り、予約していた六本木のレストランに入った。そして冷酒で乾杯してから(←飲酒運転する気満々)、予約していた、お雛様ディナーを一緒に楽しんだ。
 
この冷酒で乾杯した時、自分たちを嫉妬するような視線で見ていた小学生の少女(冬子)がいたことに、2人とも気付かなかった。
 
そして冬子が生前の高岡を目撃したのは、これが最後になった。
 
(*3) 事故を起こした時の車体ではなく、その前に乗っていた 996 カレラ・カブリオレ(Carrera Cabriolet) である。この年の12月に 40th anniversary edition を買う時、下取りに出した。その車体の行方は誰も知らない。
 

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2003年3月12日(水).
 
WHOは、新型コロナウィルスによる感染症 "SARS" に関する Global Alert (世界的警告)を出した。
 
また先月、国際線飛行機の機内で1人のアメリカ人ビジネスマンから大量感染(スーパー・スプレッド)が起きていたことが明らかになった。
 
彼は深圳(シェンチェン)(**)からシンガポール行きの飛行機に乗っていたが、機内で風邪症状を起こし、途中ベトナムのハノイで下ろされた。そしてこの飛行機に乗り合わせた多数の客が同じ病気に感染して、各々の行き先で感染源となる。
 
(**) 深圳。日本では一般に「しんせん」と日本語読みの名前で定着しているが本当はシェンチェン。香港の隣。↓に出てくる廣州も深圳の隣。
 
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このアメリカ人(数日後に死亡)の症状が極めて特異であったため、偶然現地ハノイに居たイタリア人医師が呼ばれた。彼はこれはとんでもなく重大な新しい病気であることに気付き、ベトナムの政府機関を通して中国政府との激しいやりとりの末、中国側は渋々、中国国内で重大な状況が起きていることを認めた。実は、それ以前にも報告は出ていたが全て中国語だったため、欧米で気付いた人は少なかった。そしてこの医師の働きによりWHOが警告を出すに至ったのである(このイタリア人医師自身も命を落とすことになる。またこの病院のスタッフも多数が犠牲になった)。
 
もうひとつのスーパー・スプレッドが同時期に、香港のホテルで発生していた。このホテルには廣州(カンチョウ/こうしゅう)の病院で患者を診ていた医師が滞在しており、彼と同じフロアに宿泊していた外国人16人がSARSに感染。各々が自分の国に帰国して、それぞれの国での感染源となってしまったのである。
 
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このようなスーパー・スプレッドの発生は一種の社会的パニックを引き起こした。この後、旅行(特に海外旅行)を控える人、出張を減らす会社が急増。特に密閉性の高い飛行機は避けられるようになった。
 
SARS自体は2003年7月に抑え込みに成功したものの、しばらくは旅行控えの傾向は続き、交通業界、特に航空業界、そして旅行業界は、深刻な不況に陥っていくことになる。
 
(筆者も2003年5月に東京に行く用事があって、飛行機で行くつもりだったのを新幹線に切り替えている。換気の良い、入口そばの席を確保して行った)
 
旅行代理店を経営していた青葉の父はこのあおりで会社が倒産。莫大な借金を抱え自身も破産に追い込まれる。そしてこの後“よく分からない商売”(青葉の母の話)をするようになり、自宅にもほとんど帰らなくなる。それが2004年頃(青葉は小学1年生)になる。
 
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3月17日(月).
 
千里たちの学校では、この日今学期最後の体育の授業、つまり小学校で最後の体育の授業が行われた。この日、着替えている時に、また優美絵のブラの変化に気付いた子がいた。
 
「ゆみちゃん、凄いブラしてる」
「うん。これ昨日、北広島のスポーツ用品店で選んでもらったスポーツブラ。中学になったら、やはりしっかりしたスポーツブラ使わなきゃといって買ってもらった。1枚6500円した」
 
「きゃー」
「るみちゃんが着けてるのと似たようなクラスのだと思う」
「ああ」
「でも、ゆみちゃん、バスト自体が大きい」
「うん。普通のブラはC60に替えた」
「C!?」
 
女子たちの間に悲鳴に似た声があがる。
 
「Cショックだぁ」
と言っている子たちがいた。
 
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「ゆみちゃん、修学旅行の時まではノーブラだったのに」
「ほんと、こんなに急成長したら、動きにくくて動きにくくて。だからスポーツブラ買ってもらったんだよ」
 
(ゆみちゃんのバストの劇的Before/After)
 

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この日は校庭のコンディションが悪かったので、体育館でサッカー(フットサル)をしたのだが、スポーツブラのおかげで、優美絵は大活躍でハットトリックを達成した。
 
「スポーツブラにはスポーツブラでないと対抗できない気がする」
という声があがっていた。
 
このクラスでスポーブラをしていたのは優美絵以外には、千里・留実子・玖美子の3人だけで、この3人も大活躍だった。留実子は4得点、千里と玖美子も2得点である(千里がゴールキーパーをすると相手チームは得点不能!なので今日の千里はフォワードであった)。
 
 
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少女たちの卒業(8)

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