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■少女たちの卒業(5)

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(C) Eriko Kawaguchi 2021-12-25
 
1月29日(水)は1月5日と同様の猛烈な寒波が日本列島を襲い、千里たちの小学校は臨時休校を宣言した。前日の段階で、物凄い寒波が予想されていたので、
「学校があるかどうかは、当日7時に町内放送および保護者への一斉メールで連絡します」ということになっていた。実際には6時すぎには、休校のお知らせがあった。代わりに2月1日(土)が登校日になった。母の職場も29日は臨時休業で2/1に「出て来られる人だけ」出て操業した。
 
1月27日〜2月1日の週(1/29を除く)、学校では6年生を対象に三者面談を行い、進学先の最終確認を行った。基本的には保護者に出て来てもらいたいのだが、仕事の都合でどうしても平日に両親のどちらも来られない場合は、先生と児童だけで話した上で、親の署名捺印した書類提出と、念のため電話での確認というので、代えることにした。留実子の両親はこれに該当し、S中に進学したいという回答書を提出した上で、留実子のお母さんが職場の昼休みに我妻先生に電話し、それで間違い無いことを確認した。
 
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千里の場合も、母が正社員になってしまって休めないので、留実子同様、母が署名捺印した回答書でS中に進学したいと書き、やはり昼休みに電話連絡して、間違いないことを確認した。
 
結局千里たちの学年で私立に行くのは川崎典子のみ、帯広に転校する子が1名のほかは、全員S中への進学希望である。学校側では書類を2月3日(月)にとりまとめ、学籍簿のコピーとともにS中に校長が持参して手渡した。典子の書類は保護者が取りに来て、書留で進学先に郵送したようである。
 

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翌日・火曜日(2/4)にS中から千里の性別についてN小に照会があった。
 
「彼女は間違い無く女子です。なんか戸籍が誤って男子として登録されていたらしいんですよ。それに先日気付いて、12月に家庭裁判所に申告して、1月20日には訂正されましたが、戸籍や住民票が修正されるには半月くらいかかるらしいです。現時点では微妙ですが、来週くらいまでにはちゃんと住民票の上でも女子になっていると思いますよ」
と我妻先生は言った。
 
(我妻先生はやはり少し誤解している気がする)
 
「じゃ性転換したとかではないんですね?」
「違います。生まれながらの女子ですよ。単純ミスらしいです」
 
「そういうことでしたか。分かりました。それでは女子として処理します」
「はい。よろしくお願いします」
 
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2月2日(日)、千里は母と一緒にジャスコに行った。
 
「あんたの制服買わなきゃね」
と言ったが
「学生服で済んだら安いのに」
と付け加えた。
 
「ごめんねー」
「取り敢えず冬服だけでいい?夏服はまた後日で」
「うん、いいよ」
 
まあお金が無いんだろうなと思う。千里が正月に渡した4万円で『これで一家心中せずに済む』なんて言ってたくらいだしね。
 
それでまずブラウスはワゴンセールのを3枚買い、内履きおよび体育館シューズはいづれも「S中学指定」と書かれているものを購入する。もっともこれらは留萌市内の中学4校の内S中を含めて3校が共通で、1校たけ違うものを使っているようであった。
 
(2003年当時、留萌市には中学が4校あったが、2007,2018に1校ずつ廃校になり、2021年現在は2校しかない。小学校は10→5, 高校は2→1である。なお留萌市内の私立高校は昭和40年代に存在した時期があるが、かなり古い時期に消滅している。この物語内の架空の存在である。留萌は一時期市を支えていた水産物加工業も大都市近隣の町との競争に負けて現在主幹産業が存在しない。まるで夕張の後を追いかけているかのようで私はとても悲しい)
 
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「あんた20cmでいいよね?」
と母は千里の足のサイズを確認する。
 
「21cmにしとこうかな。念のため」
「そうだね。女の子は中学で結構背が伸びるしね」
と母は言ってから、千里を“女の子”と言ったことで悩んでいる風だ。
 
やはり性別の移行って結構大変なんだなと千里は思った。性別の壁を乗り越える人は、多くの“風”に耐える必要がある。
 
実際にはこの頃千里は163cmと、女子にしては結構な長身だったのだが、この後はそんなに伸びず、高校3年頃に168cmに到達した。ちなみに留実子はこの時点で既に170cmあり、高校3年頃は184cmに到達する。
 

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内履きなどを買った後、制服コーナーに行く。
 
多数の女子制服がマネキンに着せられて並んでいる。女子制服は学校ごとに違うので大変だ。男子制服はこの付近の中学は全部学生服なので、すみっこに申し訳程度に置かれているだけである。
 
なお、この時点で売場に並んでいるのは中学の制服だけである。高校の制服は高校受験が終わった後になるし、学校で採寸してまとめて注文する学校が多いようである。
 
千里はセーラー服を着られるなんて夢みたいと思いながら、多数の女子制服を眺め、特に自分が進学予定のS中の制服に触ってみたりしていた。そういう千里を母は暖かく見守っていた。
 

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係の人が寄ってきて言った。
 
「今度中学進学ですか?」
「あ、はい」
「採寸はお済みですか?」
「いえまだです」
 
などと言っていた時に母の携帯が鳴る。
 
「ちょっと御免」
と言って母がその場を離れる。
 
「お母さん向こうに行っちゃったけど、採寸だけでもしておきません? 注文は後でも良いですよ」
と係の人が言うので
 
「そうですねー。じゃ採寸だけ」
 
と言って千里はメジャーで身体の寸法を測ってもらった。
 
「バスト65、ウェスト55、ヒップ85、肩幅34、袖丈54、身丈48、スカート丈68かな。あなた身長があるから、身丈・スカート丈は長めの方がいいわね」
 
「あ、そうかもです。鼓笛隊の標準のスカート穿いたら、なんでお前だけミニスカート穿いてる?とか言われました」
 
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(千里はウェストが細いのでSを穿く。結果的にミニスカになってしまう。千里より長身の杏子はLを穿いたので、スカート丈は膝まであった。ちなみに留実子は男子扱いなのでスカートは穿いてない!)
 
「あはは。バレーとかバスケとかすると、いいかもよ」
と係のお姉さんは言っていた。
 
「一応、この数値コンピュータに登録しておくから。この登録番号を電話で伝えてもらえたら、注文できるからね」
「ありがとうございます」
 
「あ、名前と電話番号、訊いていい?」
「はい。名前は村山千里、電話は0164-**-****です」
 
それで係のお姉さんは登録番号 214 で千里の寸法を登録してくれた。千里は採寸の控えを手に取って見ながら、バレンタインデーみたいな数字だと思った。
 
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母は結局職場で急ぎの仕事が入ったということで、
「制服はまた今度ね」
ということになり、その日はそのまま帰宅することにした。
 
「急ぐならこのまま会社行きなよ。私はバスで帰るから」
「そう?ごめんね」
 
ということで買わずに帰ったのだが、採寸してもらったサイズ表は大事そうに手帳の表紙の所にはさんだ。
 

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千里は母に言った。
「あのさ、うちの家計が苦しいのは分かる」
「うん」
 
「だから、中学に納める学費、給食費・修学旅行の積み立て・生徒会費・PTA会費・教材費は私が払うから、お母ちゃん名義の口座をひとつ指定金融機関のどこかに作って私に預けてよ」
 
「そうかい」
 
S中の指定金融機関は、北海道銀行、北洋銀行、札幌銀行、JA南るもい、北海道信漁連、留萌信用金庫ということだったが、S中の学区では、北洋銀行、マリンバンク、JAバンク、留萌信金の利用者が多いようだ。母は留萌信金で給料を受け取っている。(父の船の給料は現金手渡し!!)
 
「その代わり、食材を買うお金は私にくれない?」
「そうだね、そうしようか」
 
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ということで、千里と母の費用負担の落とし所はだいたい定まったのである。
 
「あと普段着や下着も私が自分で買うから、セーラー服はお母ちゃん買ってくれない?」
「いいよ。ボーナス払いで買えるよね?」
 
「クレカのボーナス払いにできると思うよ」
 

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千里は母の職場に“行く途中”、駅前で降ろしてもらうと、買い出し用にもらった2000円を持ち、Aコープで買物をする。
 
しかし家族4人分の食材を2000円以内で買うのはなかなか大変である。
 
ともかくも安いもの(主としてシールが貼ってあるもの!)中心に買物をしてバスで自宅に戻った。そして夕飯に、おでんを作っていたら、父が帰宅する。今日は日曜だが、漁協の寄り合いに出ていた。
 
「お父ちゃん、お帰り。もうすぐごはんできるから」
「ああ、すまん。寄り合いで食べてきた。それより喜べ」
「ん?」
「お前、もう中学で着る学生服は買ったか?」
「・・・まだだけど」
「だったらちょうど良かった。神崎さんの息子が着ていた、中学の制服を譲ってもらえるらしいから」
「え〜?」
 
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神崎さんの所の息子さんは現在S中の3年生である。3月に卒業するから、その後、譲ってもらえるという話だろう。でも私、学生服とかもらっても要らないし、そもそも、神崎さんの息子さんの服が私の身体に合うとは思えない!仁志さんはかなり横幅がある。彼の服を私が着ようとしたら、安室奈美恵が渡辺徹の服を着るような状態になるぞ!?
 
「息子さんが卒業したら奥さんにこちらに持たせると神崎さん言ってたから」
「ふーん」
「何て顔してんだ。買わなくて済めば助かるだろ?学生服だって1着5000円くらいするだろ?」
 
お父ちゃん、それいったい何十年前の話??
 
(武矢が中学に入学した1974年の統計で男子学生服の平均価格は 15,300円。少し前の1969年なら 4,740円。短期間に激しい価格上昇が起きているが、田中角栄内閣で激しいインフレが起た時期。総理就任直後は「中卒の庶民総理」として人気だった田中の人気が急落した時代である。どうも父の価格感覚は佐藤栄作内閣(1964-1972)当時のもののようである!なお2003年の統計では男子学生服平均価格は 31,810円)
 
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それで結局父はそのまま居間に布団を敷いて眠ってしまったので、居間は電気を消して、奥の部屋に食卓を移動。カセットコンロを載せ、台所である程度煮込んだおでんの鍋をそちらに持っていった。父が寝ている時はだいたいこういうパターンで食事をする。
 

 
↑で通常は母の布団を敷く位置にコタツを置いているが、父が寝ている時は千里の布団を敷く位置にコタツは移動する。父の寝る場所は初期の頃は奥側(北側)だったが、邪魔になる!ので窓側(南側)に移動された。窓には遮光カーテンを掛けた。父の布団の横幅が狭いのは、いつも狭い船内で寝ているので、広い布団は落ち着かず眠れないから。下も柔らかいとダメなので、わざわざベニヤ板を畳の上に置き、その上に煎餅のように薄い敷布団を敷いて寝ている。父はホテルに泊まると「ベッドが柔らかすぎて寝れん」と言う。
 
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なお母によると、父と最後にセックスしたのは、眞子内親王殿下がご誕生なさってすぐの帰港日(金曜日)だったらしい!(玲羅の受精日がよく分かる話である)
 
(眞子内親王殿下の御出生日時は1991.10.23 23:41。直後の金曜日は10.25. 一方、玲羅の出生日時は1992.7.23 8:03:23 なので、逆算すると受精は1991.10.31前後ということになる)
 

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おでんの鍋を見て漫画を読んでいた玲羅が
 
「美味しそう。食べていい?」
 
と言うが、千里は
「お母ちゃんが帰ってくるまで待ちなさい」
と言う。
 
「ケチ。いつ食べたって同じじゃん」
と玲羅は文句を言っている。
 
「食事は一家そろってから食べるもの」
と千里は言っておいた。
 
でも母が帰るまで千里は玲羅の囲碁の相手をしてあげた。
 
大石を取られたりすると
「きゃー、そういう手があったのか。待って待って」
などと言っている。
 
「ほんとは待ったは反則だけどね。ここが悪かったんだよ」
と言って千里は手を戻して、玲羅が失敗した所を教えてあげる。
 
「ここで、ここに打って補強しておかないといけなかったんだよ」
「そっかー」
と言って玲羅は悩んでいた。
 
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しかしこの1-3月、ずっと千里が指導してあげていたので、玲羅は4月になって囲碁部に入った時は「君強いね」と先輩から言ってもらったらしい。そもそもちゃんと人差指と中指で石をはさんで“打つ”だけで強そうにみえる!(初心者の多くは親指と人差指ではさんで持ち碁盤に“置く”)
 

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母は18時頃帰って来たので、一緒におでんを食べる。千里は父から聞いた話を母にしておいた。
 
「そう。神崎さんの息子さんの学生服ね・・・」
「神崎さんには悪いけど、別途買ってくれる?」
「まあいいよ。最初からそのつもりだったし。じゃ2月11日に注文入れよう」
と母は言った。それクレカの締め切りの関係かな?
 

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母は翌日、2月3日(月)の昼休みにS銀行留萌支店に出掛けて、口座を作ってくれた。それでその日の夕方、千里に通帳と印鑑を渡してくれた。
 
「その印鑑はこの口座以外には使ってないから、あんたが管理して」
「分かった、ありがとう」
 
なんか100円ショップで買った印鑑っぽいけど、いいのかなぁ?
 
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少女たちの卒業(5)

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