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■少女たちの卒業(3)

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母は30分がかりで何とか玲羅に小振袖を着せたのだが、何とかなったかなと思ってふと千里を見ると千里が振袖を着てるのでギョッとする。
 
「あんた、父ちゃんの前でそれ着るの?」
「コート着れば分からない。私女の子だもん」
「うーん」
母は悩んでいたが、確かにコートを着てしまえば分からないかと妥協したようである。
「でも振袖なんていつ買ったの?」
「美輪子姉ちゃんのお下がり」
 
「そうだったのか。でもよく短時間で着られたね」
「ワンタッチで着られるんだよ。上下セパレートになってるの」
「なるほどー」
 
「たぶん、来年はもう着られないから玲羅に譲るよ」
「じゃ、ちょうだい。それ凄く柄が可愛い」
「OKOK」
 
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それで千里も玲羅も振袖の上にダウンコートを着た。母はこんな時に着るような和服も無いしというので、厚手のタイツを履き、ワンピースを着た上にやはりダウンコートを着た。
 
それでタクシーを呼んでQ神社まで行った。自家用車で行くと、お正月は混雑していて駐車場所に困るのである。実際行ってみると道路上の縦列駐車が凄かった。
 
「みんなよくこんな短い間隔で駐められるなあ」
などと母は感心している。母には無理かもねと千里は思った。母は普通のバック駐車も苦手である。5-6回切り返しても最終的に曲がっている!
 

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結構な参拝客があるので、ゆっくりと人の流れに合わせて境内を進み、1人100円ずつ、お賽銭を入れて、お参りした。千里は参拝する時だけ、コートの前のファスナーを外し、振袖が見える状態にしてお参りした。母がギョッとしていたが、すぐにまたファスナーを閉じたので、父は気付かなかった。
 
父がトイレに行く。その間に母は千里と玲羅にコートを脱ぐように言い、2人が振袖で並んでいる所の写真を撮ってくれた。
 
この時、千里は30代の巫女さんと身体が接触しそうになった。
「ごめんなさい」
「ごめんなさい」
と言い合ったのだが、向こうはハッとしたように、千里を見た。
 
何だろうと思ったが、母は2人にコートを着るように言ったので、千里は振袖の上にコートを着る、巫女さんもこちらを見ながら離れていった。
 
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これが千里と細川保志絵のファースト・コンタクトだったのだが、この遭遇を保志絵は覚えていたが、千里は覚えていなかった(だいたい何でも記憶に残らない人である!)。
 
その後、おみくじを引いた。母は小吉、玲羅は大吉だったが、千里は大凶だった。
 
願望 叶わず。
健康 悪し。神仏に帰依せよ。
仕事 失敗しやすい。
恋愛 別離の予感。神仏に帰依せよ。
待人 来たらず。
失物 出て来ず。
出産 安し。
金運 出費多し。節約に努めよ。
商売 損多し。
相場 休むが良し。
学業 成らず。
転居 今は待て。
 
ここまで酷いのって、なかなか無いんじゃない?と思った。出産だけ安しになってるけど、今妊娠してないし!
 
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(恋愛は晋治と別れる予定だからやむを得ない。健康は3ヶ月後に死ぬ予定だから良い訳が無い!)
 
それで千里はおみくじを、みくじ掛けに結んで、無かったことにした!
 
誰かが笑っているような気がしたが、見回しても誰もいないので、気のせいだろうと思った。
 
実はこの神社のQ大神(姫大神)である!Q大神は
「1日に1枚しか混ぜない大凶の中でも最悪の御籤(みくじ)をわざわざ引き当てるとか、この子、面白すぎる。霊的なパワーも凄いし。私が欲しい」
と思った。
 

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父がなかなか戻って来ないので、千里たちは境内に出ている出店で御手洗団子(みたらし・だんご)を買って、食べながら待っていた。食べている時、千里は何か視線を感じてキョロキョロしていた。
 
しばらく3人で会話していたのだが、千里の反応が無いことに玲羅が気付く。
 
「お姉ちゃん!?」
 
玲羅が千里の目の前で手を動かすが反応が無い。母も異変に気付き狼狽している。
 
「うーん・・・」
 
と玲羅は腕を組んで悩むと、いきなり千里の足を数回蹴った。
 
「何するの?」
と母が驚くが、千里は
「いったーい」
と言って、蹴られた所を手で押さえている。
 
「姉貴、死んでたから足を蹴って蘇生させたよ」
 
「ありがとう。最近私よく死ぬのよねー。こないだも蓮菜に蘇生してもらった。でもできたら足を蹴るより、振って欲しいんだけど」
 
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「そんなの男の子にしか無理」
と玲羅は言った。
 
「あんた今死んでたの?」
と母が不安そうに訊く。
 
「あ、よくあることだから心配しないで」
と千里は言った。
 

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父は30分くらいして戻って来たが「トイレの列が凄かった」と言っていた。
 
「これだけ参拝客がいればねぇ」
 
それでまたタクシーで帰宅した。
 

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父は1月2日から4日まで、ゆうばり温泉へのツアーに出掛けた。玲羅は
 
「お父ちゃんがいない間は、のんびりしたお正月が過ごせる」
などと言っていた。
 
千里は父がいない間、ずっと家の中ではスカートを穿いていたが、母はむろん何も言わなかった。
 
3人は1月3日にジャスコに行き、食料品その他を買ったが、千里はこの買物の時もスカートを穿いていた。
 
途中で神崎さんの奥さんと娘の美加さん(高2)に遭遇したので母はギョッとしたようだが、千里は何度もスカート穿いている所を奥さんにも美加さんにも見せているので、にこやかに
 
「明けましておめでとうございます」
と挨拶しておいた。
 
「仁志さんは受験でしたよね?どこの高校受けるんですか?」
と千里は尋ねる。
「あの子は何も勉強してないから、S高校は絶対無理だと先生に言われて」
「ありゃあ」
 
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S高校は公立だが、掛け算の九九が出来たら合格すると言われている。つまり九九も怪しいということか!?でもうちの玲羅も危ないぞと千里は思う。
 
「学費高いから頭痛いけど、U高校にやるしかないかなと思ってる所なのよ。でも無駄でもいいから少し勉強しなさい、と言って問題集渡して勉強させてるから今日は留守番」
 
ひとりになったら絶対漫画読んでそうと千里は思ったが、そんなことは無論言わずに
「受験大変ですよね。頑張って欲しいですね」
と言っておいた。
 
ちなみにU高校は私立なので学費は高いが、レベルとしては、答案用紙に名前が書いてあれば合格する、と言われている高校である!過去10年でここの入試に落ちたのは“特攻服”を着て面接に行った人だけらしい!(そもそも高校に行く気が無かったとしか思えない)
 
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「そちらは一家でお買い物?」
と奥さんから訊かれるので
 
「ええ。うちのが出てるから、残り3人で食料品の補給に出て来ました」
と母は言っていた。
 

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おもちゃ屋さんに980円(+5%消費税で1029円)の囲碁セットがあったので、母はそれを玲羅に買ってあげていた。
 
玲羅は帰宅してから早速開けたが、
「姉貴、少し相手してよ」
などと言う。
「姉と呼んでくれるなら相手しようか」
と言って、相手をする。
 
千里は最初に玲羅の石の打ち方が違うと言って、石を碁盤に打つ時の正しい持ち方を教えてあげた。
 
「なんか自分でも格好いい気がする」
と玲羅は言ってる。
「これだけで凄く強くなった気がする」
 
玲羅は基本的なルールは知っているものの、二眼も分かっていなかったので、眼が2つあれば、それは相手に取られないのだということを実例を交えて教えてあげた。
 
「すごーい」
と玲羅はこれにも感動していた。
 
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また「ツケにはハネよ」、「ハネにはノビよ」という基本中の基本を教える。その後はしばらく入門本(図書館で借りた!)で勉強していたようであった。
 

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千里は12/26から1/5までは毎日神社に行っていた。小学生は一応1日4時間までということにしていたので、恵香や美那たちは本当に4時間で解放されたものの、千里は「あんたはもっとご奉仕しなさい」と大神様から直接言われて、色々雑用に走り回っていた。日によっては8時間くらい働いていた。
 
11日間の報酬として8万円頂いたので、千里は半分の4万円を母にあげた。母は
「本当に助かる。これもらう」
と言って涙を流していた!
 
「これで一家心中しなくて済む」
「そういうのは勘弁して欲しい」
 
母はそれで滞納していた電気代とガス代を払い、灯油も4缶買って、取り敢えずこの真冬に一家凍死するような事態は回避できたようである!
 
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(心中するか凍死するかの二択??)
 

1月5日(日)は全国的に強烈な寒波が来て、留萌でもバスが運休したりした。神社ではバイトしている小学生たちの家に電話して
 
「バイト代は今日の分まであげるから、今日は家でお休みしてて」
 
と伝えた。神社との往復で遭難でもされたら困る!
 
でも千里は「人手が足りないから来て」と言われて、決死の覚悟で!長靴で積雪を踏み固めて“道を作りながら”出て行き、朝から夕方までお仕事をしていた。でもさすがに参拝客は少なかった。
 
父は夕方、
「船に積もった雪を下ろさないといけない」
 
と言って、母に車で送ってもらって港まで行こうとしたが、母が
 
「こんな凄い雪の中、しかも暗くなるのに、運転する自信が無い」
 
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と言うので、結局タクシーで往復した。他の船員さんたちも、だいたいタクシーを使ったようである。船長の鳥山さんが、出て来てくれた人全員にタクシー代を配っていたらしい。
 
「しかしタクシーの走る速度が遅いこと、遅いこと」
などと父は帰ってきてから言っていた。
 
この雪ではね〜。
 

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父の船は1月6日(月)に新年の操業を始め、出港して行った。また月曜の朝から金曜の夕方まで船上で過ごすサイクルが始まる。
 
千里は父が出港している間は一貫して家の中でスカートを穿いていた。
 
1月7日には美輪子が宝くじの当選金9万(1万は手間賃として美輪子にあげた)振り込んできてくれたので、これでかなり助かったようである。母もツアー代金で借りていた3万を千里に返してくれた。
 
厄払いの初穂料は??
 
(やはり千里は金運が悪い)
 

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1月8日(水)、母はこの日の病院受診で、とうとう医者から寛解(かんかい)を宣言してもらった。
 
「おめでとう」
と千里も玲羅も言った。
 
「病院の受診はこのあとどうするの?」
「取り敢えずしばらくは月に1回受診して検査を受ける」
 
「じゃ提案。お父ちゃんには寛解のことは黙ってた方がいい。でないと、治ったんなら飲めとか言われてお酒飲まされたりするよ」
「そうかも知れない気がする」
 
ということで、このことは父には言わないことにした。
 

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「千里の母の治療が終わったようだが」
と大神様は小春に言った。
 
「千里の身体に退避させている卵巣や子宮を津気子に戻していいか?」
 
そんなことしたら千里はホルモンバランスが崩れてきっと倒れてしまう。
 
「大神様、千里は4月に亡くなるんでしょ?あとほんの3ヶ月です。だったら卵巣を戻すのはその時にしませんか?」
 
「うーん。まあそれでもいいか」
と大神様は妥協してくれた。
 

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1月11日(土).
 
千里は合宿中のソフト部から声を掛けられて、合宿に協力するのに出て行った。ソフト部は9日から13日に掛けて合宿をしているのだが、この日は千里の球を打ちたいという話だったのである。昨日は杏子が出て行ったのだが、4-5年生は杏子のボールを1割5分くらいは打つことができて、かなり自信を高めていた。
 
この日、千里が最初“軽く”投げると、4-5年生は昨日の杏子と同様に1割5分くらい打つことができた。
 
「君たちだいぶ実力付けたね」
「はい。ジョギングとかも頑張りました」
「今のはウォーミングアップ。次は本番行ってみようか」
「え〜〜〜!?」
 
それで千里が“わりと本気”で投げると、1人も千里のボールを打てなかった。何とかバットに当てたのは尋代と俊美くらいで、他の子は、かすりもしない。
 
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「来週も合宿する?」
「また春休みに頑張ります」
 
(N小が他校に勝てないわけである)
 

1月12日、玖美子は札幌の私立J中学、蓮菜は旭川E中の入試を受けた。結果は翌日発表されたが、2人とも落ちていた。私立を受けた子の中では、札幌の私立A中学を受けた、2組の典子だけが合格していた。
 
「残念だったね。どうするの?」
と千里たちは蓮菜に言った。
 
「まあ地元の公立に行くしかない」
と蓮菜は答える。
 
「やはり甘く見ていた。このあたりの学校でトップ付近に居ても、都会では全く通じないよ。ノリちゃんは学校の授業は無視して、北大出身の家庭教師を付けて頑張ってたもん。だからあの子、学校の期末試験は成績悪いのに、模擬試験とかではハイスコア出してた」
 
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「すごーっ!」
 
「じゃ旭川あたりに引っ越して、向こうの中学に行く?」
「いや、前言ってた勉強会しようよ。そしたら、高校では旭川の進学校の私立に行けると思う」
 
「勉強会か」
「メンツは?」
「私と玖美子は当然入る。あとは恵香、美那、千里、穂花だな」
 
「私もなの〜?」
と千里。
「何かさりげなく私の名前が呼ばれた気がする」
と恵香。

「千里は本気を出すと凄いのさ」
と蓮菜は言った。
「でも千里は2桁と2桁の掛け算の筆算さえできないよ」
と美那が言う。
 
「千里、3274×6583は?」
と蓮菜が訊くと
「2155万2742」
と千里は即答した。
 
「正解」
「嘘!?」
「千里は難しい問題は答えられるけど、易しい問題は間違うんだよ」
「はぁ!?」
 
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(正確には2-3桁の掛け算では千里は先頭と末尾の数字が合ってて途中の数字が誤っている結果を出しやすい←本気にならないから)
 
「しかも途中の計算式を書けないから、学校の算数のテストでは正解にしてもらえない」
「もしかして千里って天才?」
「いやただの変人」
「変人というのは納得する」
とみんな言ってる。
 
「だって千里はフルート吹けるのにリコーダーが吹けない」
「千里がリコーダー吹けないのは知ってるけど、フルート吹けるんだっけ?」
「不動産屋さんのCMで吹いてるじゃん」
「あれ音はプロの演奏じゃないの?」
「本人の演奏だよ。でしょ?」
「私フルートなんて触ったこともなかったから適当に吹いたら音が出た」
「あり得ない」
「千里はこういう人なのさ」
と蓮菜は楽しそうに言った。
 
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でもこれで美那は千里が勉強会に加わることを了承した。恵香もうやむやの内に参加することにされた。玖美子は千里の性格を熟知しているので喜んだ。穂花は直前まで何も話を聞いておらず「勉強会するから来て」と言われて「何それ?」と言いながら来たが、蓮菜・玖美子を入れた勉強会と聞いてやる気を出した。
 

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少女たちの卒業(3)

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