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■少女たちの卒業(4)

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玖美子の受験が終わったのに合わせて、剣道部女子の合宿が行われた。1月15-19日(水〜日)の5日間である。男子は先週合宿をしている。男女の日程をずらしたのは「施設の収容人数の関係」とも言っていたが、男女一緒にやった場合、恋愛問題(もっと生々しく言うとセックス問題!)の管理が大変だからだろうなと千里と玖美子は言っていた。
 
場所は市内の新聞社関係の研修施設で、宿泊施設(最大8人収容の部屋×10部屋)と講習室、お風呂1つ、食堂、小さな体育館がある。
 
男子の合宿では4-5年生16人が2部屋に収納されたのだが(角田先生と財前コーチは引率者用の小部屋(Max4人)に泊まる)、今週の女子の合宿では、角田先生は前回同様引率者用の小部屋に泊まり、4-6年生9人とOGで女子大生の道田さんの10人が8人部屋に泊まった!
 
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「どうやって10人寝るんです?」
「4段ベッド2つに8人寝て、2人は床に布団を敷いて寝る」
「酸素が足りなくなりそう」
 
(筆者は中学時代に4段ベッドに8人寝る:つまり1つのベッドに2人ずつ寝る、というかなり無茶な合宿をしたことがある)
 

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結局道田さんと、「私寝相が悪いからベッドだと確実に転落する」と申告した五月とが、床にカーペットを敷いた上に布団を敷いて寝ることになった。このカーペットがあることで、温かさが段違いになるようだった。
 
合宿のメニューは9-11h, 12-14h, 15-17h と日に3回の2時間の練習時間を設定して、主として午前中はジョギングや筋トレなどの基礎的な体力を付ける練習、午後は素振りや型の稽古などをして、夕方は打ち合い練習を中心に行った。
 
「剣道は基礎が大事なのよ」
とOGの道田さんは言っていた。
 
「やはり運動も勉強も大事なのは基礎なのね」
と千里が言うと
「当然当然」
と玖美子は言っていた。
 
なお合宿所のお風呂では、千里はむろん他の女子たちと一緒に入浴している。他の子たちは千里を普通に女子だと思っているので、何も感じていないが、玖美子は何だか楽しそうであった!
 
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2003年1月20日(月).
 
剣道部の合宿が終わった翌日、長い冬休みが終わり、N小学校では3学期の始業式が行われた。早速この日から授業が行われたが、この日の体育はスキーだったので、近隣の小学校専用スキー場に行き、みんな楽しくスロープを滑っていた。
 

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始業式のあった日、千里が帰宅すると、郵便受けに裁判所から手紙が来ていた。早速開けて見る。
 
千里の性別訂正を認可するという通知であった。千里は涙が出て、その通知を胸に抱きしめた。
 
夕方帰宅した母にもその通知を見せたが、母はまた溜息をついていた。母としては、できたら却下して欲しい気分だったのだろう。母は
 
「あんた。ちょっと裸を見せてよ」
 
と言うので、千里は全部服を脱いでみせた。そしてその身体を見て母は
「はあ」
と溜息をついた。
 

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千里は母に
 
「健康保険証の性別を女に変更して欲しい」
と言った。
 
母はかなり悩んだ末に
 
「女の子になったんだから仕方ないか」
 
と言い、千里と玲羅を父の船員保険の被扶養者から外し、自分の職場の健康保険(政管健保)の被扶養者にしてしまった。移動させる理由として
 
「私の方が報酬月額が小さいから、保険料が安くて済むんですよ」
と説明すると、漁協の人も納得していた。
 
そして母の健康保険の被扶養者に登録する際に、千里を長女、玲羅を次女として届けたのである。
 
千里は健康保険証に「長女」と記載されているのを見て、物凄く喜んだ。
 
(この頃はまだ健康保険証は個人別のカード化は、されておらず、冊子状の健康保険証の被扶養者ページにその名前が一覧記載されているだけである)
 
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「私は巻き添えで次女になるのか」
と玲羅。
 
「ごめんねー」
 
「私って昔から長女なのか次女なのか、あやふやにされる」
と玲羅は文句を言っていた。
 

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なお、学校には翌日の1月21日、裁判所からの通知の原本を提示し、学校ではそれをコビーして保管していた。千里の学籍簿上の性別は既に先月性別検査を受けた段階で既に正式に女になっている(誤って女と記載された状態から、正しく女と記載された状態に変更:作業上は何もしていない!)。それでも我妻先生、桜井先生、馬原先生などから
 
「千里ちゃん、おめでとう。これで完全な女の子だね」
と言ってもらった。
 

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千里と留実子の学籍簿上の性別は小学校4年の春には、千里が男、留実子が女と記録されていた。4年生で千里たちの担任になった我妻先生は当初、千里を女、留実子を男と思い込んでいた。ところが保護者面談で先生は自分が性別を勘違いしていたことに気づき
「学籍簿を直さなきゃ」
と思った。
 
それで、千里を女、留実子を男に修正してしまったのである!つまり本当は修正する必要が無かったのに、「勘違いしてた」と思ったことから、誤って逆にしてしまった。しかし千里も留実子も2年半逆の性別で登録されていたのに、かなり助けられている。
 
しかしこの12月に教頭から指摘されて「あれ〜。私修正したと思ってたのに」と思いながら、留実子の性別は女に修正した。千里については、実は本当に女なのではと思われたので、性別検査の結果を待った。そして最終的に、女のまま、変更しなくてよいことになった。
 
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この日、1月21日(火)には学期始めの身体測定があった。身体測定の時、これまでは、留実子のカルテが男子のほうに入っていたので、いつも男子の保健委員の田代君がそれを抜き出して、女子の保健委員の美那に渡し、留実子は女子と一緒に身体測定か受けられるようにしていた。ところが今回は留実子の書類は最初から女子のほうに入っていた。美那は恐る恐る先生に訊いてみた。
 
「ああ。花和君の性別を私、ちゃんと女子に修正したつもりが修正できてなかったことに気付いてさ。ちゃんと修正したから」
と先生は言った。
 
るみちゃんは残念がるだろうけど仕方ないかなと美那は思う。美那は千里の件も尋ねようかと思ったが“先生が千里の性別誤りにも気付いて”千里の性別を男子に修正してしまったら千里が可哀想だと思ったので、千里の件は尋ねなかった。そしていつものように、千里の書類は女子の先頭に置き、千里とお互いに下着姿を見るのは、千里の最も古い親友のひとりで、お互いに裸も見ている恵香だけになるようにしておいた(恵香の苗字は大沢で女子の先頭)。
 
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そういう訳で、千里の性別訂正後も、多くの友人が、千里は法的には男子になっていると思い込んでいる状態がずっと続いていくのである。
 

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1月26日(日).
 
千里と母は進学予定のS中学に出掛けていった。この日、進学予定者への説明会があるので、それに出席したのである。
 
この時点で、私立中学の入試はほぼ終わっており、私立に進学する子は既に公立には辞退の連絡をしている(最終的には1/31までには連絡しなければならない。それより遅れる可能性がある場合は留保の連絡が必要)。
 
それでこの日集まった子はほぼ全員、4月からS中に行くことになるはずだ。S中に進学するのは、主としてN小学校と隣のP小学校の子である。
 
千里は黒いビロードのワンピースを着て、出掛けていった。ワンピースを着ていても、その上にコートを着ているので父は気付かないようだった。
 
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現地に行き、体育館に入ってコートを脱いでから受付で葉書を出すと、受付の先生(?)が、いったん青い袋と青いリボンを渡そうとして「あれ?」という。
 
「女子ですよね?」
と千里を見て言う。
 
「そうですけど」
と千里は答える。
 
「ごめんなさーい。性別が入力間違ってたみたい」
と言って、先生は名簿の「村山千里」の横にある性別を男と印刷されているのを二重線で消して、女と書き直し、赤いリボンと赤い袋をくれた。
 
「ありがとうございます」
と言って受け取り、少し戸惑っているふうの母と一緒に体育館に入った。
 

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「あんた、やはり男子として通学しないといけないのでは?」
と、またまた言う。
 
「まだ税別訂正が“浸透”してないだけだよ」
と千里は言った。
 
実際家庭裁判所の判事さんからも、性別訂正が認可された後、戸籍や住民票に反映されるまで半月くらいかかるからパスポートなどを取る場合は、できたら浸透するまで待ってと言われていた。
 
「それにそもそもこの説明会の案内は年内に届いたでしょ。つまり12月下旬の住民票に基づいて名簿が作られてるんだよ」
と千里が言うと
「あ、そうか」
と母も納得していた。
 

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赤いリボンをワンピースの胸に付けて、適当な席に座る。実際には母は留実子を見つけてその隣に座った。
 
留実子は青いリボン!を付けており、青い袋を持っていた。
 
「るみちゃん男らしい」
と千里は言う。
 
留実子はグレイのメンズのセーターの上に濃紺のメンズのブルゾンを着ている。下もメンズのズボンである。髪も短いし、普通に男の子に見える。
 
「今日はいいよと言われた。千里はすっかり女の子してる」
「うん。中学からは堂々と女子中学生するから」
「勇気あるなあ」
と留実子。千里は自分の性別が訂正されたことを誰にも言っていない。
 
「るみちゃん1人で来たの?」
と母が訊く。
 
「両親とも仕事休めないので」
「大変ね!じゃ何か保護者にとかいうのがあったら私に言ってね」
「はい、すみません。お願いします」
 
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「後(あと)でもらった資料を見比べようよ。たぶんるみちゃんに必要なものもあるよ」
「じゃ後(あと)で」
 

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その内、蓮菜、恵香、美那、穂花なども来るので手を振っておいた。多くはお母さんが付き添ってきている。
 
時間ギリギリくらいになって沙苗がお母さんと一緒に来たが、女の子の服を着てる!
 
「すごーい。沙苗(さなえ)、赤いリボン付けてるし」
「入学式まではいいよと言われたから、この格好で来た」
「やはり沙苗(さなえ)、入学式までに性転換しちゃいなよ」
「性転換したーい」
と言う、沙苗をお母さんは優しく見守っていた。
 
やがて説明会が始まる。S中の応援団員が壇上に登り、太鼓を叩き、両手を前・横に振って、応援の仕草をしながら、校歌を歌った。留実子が憧れるように見ている。るみちゃん、ああいうの、やりたいのだろうか。
 
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その後、校長先生の挨拶がある。
 
その後、複数の先生が交代で壇に立ち、中学での学習内容、生活の規則、入学までに用意しておいてもらいたいもの、また制服や体操服、靴やカバンなどについても説明があった。
 
更に生徒会長が壇に立って、部活動についても説明する。各部の紹介はスライドで流された、
「るみちゃんはサッカー部?」
「当然当然」
「男子サッカー部だよね?」
と訊くと、留実子は不安そうな顔をして
「入れてくれたらだけどね」
と言った。
 
「千里は何に入るの?ソフト部?剣道部?その兼部?」
「帰宅部かなあ」
「え〜〜〜!?」
と留実子は言ったし、近くに座っていた玖美子が
「それは絶対許さん。剣道部には強制的に入ってもらう」
などと言っていた。千里は取り敢えず笑っておいた。
 
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なおS中には合唱部は無い。先輩の阿部さんとかにも聞いたのだが、S中では音楽室とか理科室とかは吹奏楽部が使っていて、合唱同好会を作っても練習場所が確保できないという話だった。千里はどこかで歌を歌ったり、楽器を演奏できる場所は確保したいなあと思った。
 
これは思わぬ筋から場所を確保できてしまう。
 

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なお、クラブ紹介が行われている間に視聴覚室で保護者向けの説明会があり、津気子はそちらに出た。資料は「友だちのお母さんにも頼まれたので」と言って“女子用”の資料を2部もらってきて、1部は留実子に渡した。
 

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説明会は9時に始まり、12時前に終わった。町に出て制服の採寸に行くという子も多い。
「千里も行かない?」
と恵香から誘われる。
 
「まだお母ちゃん、給料日前だし」
 
母の職場の給料日は毎月27日なのである。
 
「採寸だけしておけばいいのに」
「来週くらいに行くよ」
「セーラー服だよね?」
「私が学生服とか着るわけがない」
「少し安心した」
「正確には着られる訳が無いだな。千里の身体のサイズに合う学生服なんて存在するわけないもん」
と穂花が言っている。
 
「確かに千里の胸を収納できる学生服は無いだろうな」
「千里、ウェストが細くてヒップはあるから、その体型に合う男物のズボンも存在しないよ」
 
 
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少女たちの卒業(4)

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