広告:Back-Street-Girls-4-ヤンマガKCスペシャル
[携帯Top] [文字サイズ]

■女子中学生・冬の旅(17)

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 
前頁次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

(C) Eriko Kawaguchi 2023-01-15
 
さてS中のスキー大会に話を戻す。
 
リレーのコースは5kmレースと同じで、裙側を走行し、上り坂を登坂して山側を走行して戻り、最後は下り坂を滑降で下りてくる。中止指令が出た時、最後尾を走っていた2年3組の菅原君は、上り坂を登っている最中に上から滑り降りてきた山原先生から
 
「レース中止。山を降りるよ」
と言われた。そこから一緒に下に滑り降り、そのまま本部には戻らず山を降りた。
 
先頭を走っていた2組の竹田君はもう牧野先生の所まで到達しつつあったので、そのままコースを滑降してゴールに向かわせた。
 
1組の公世は山側のコースを走っている最中だった。牧野先生は彼に中止を報せるため、コースを逆に走って彼を迎えに行った。
 
↓ ↑ Bottom Top

その時、何かが壊れるような音がした。
「何今の音?」
 
「全員退避!スキー場を出るよ」
という山口教頭の声がかかり、悲鳴があがる中、生徒が移動し始める。
 
香田先生がヒュッテのスタッフさんたちにも声を掛けたので、彼らも一緒に退避する。
 

↓ ↑ Bottom Top

「何してるの?千里、退避するよ」
と玖美子が言うが
 
「公世が・・・」
と言って千里は上の方を見ている。
 
「無事を祈るしか無いよ。林の中に逃げ込めば助かる確率が高い(と祈りたい)。私たちも逃げないと巻き込まれるよ」
と玖美子。
 
千里Rはいきなり、司令室に居る千里Gに“脳間直信”した。
 
『お願い。公世と牧野先生を助けて。最悪、公世だけでも』
 
Gはいきなりの直信に驚愕したが答えた。
『分かった。助けるから君も逃げて』
 
しかし千里Rはまだ逃げずに山を見ている。玖美子が泣き叫ぶように
「行こう、千里!ここにいたら死んじゃう!」
と言って腕を引いた。
 
でも千里はその腕を振り払うと、両掌を内側に向けて伸ばし、手の指を全部開いて、小指同士をくっつけ、印を結ぶかのようにした。そして千里は雪崩を見詰めて強く念じた。
 
↓ ↑ Bottom Top

ト・マ・レ。
 

玖美子が千里の身体を引っ張ろうとしてやめた。
 
「停まった?」
「停めた。たぶん1分くらい持つ」
 
雪崩の動きが止まったのである。
 
千里は印?を結んだまま、雪の塊から目を離さない。ずっと注視している。
 
それで、千里・玖美子・小春、そして千里たちがまだ逃げてないので駆け寄ってきた蓮菜の4人は山の上方を無言で見ていた。
 
スキーで滑ってくる2人の姿がある。
 
「公世(きみよ)だ!」
「大きな声出さないでよ。早く崩れるから」
「うん」
 
「あなたたち何やってるの?」
と広沢先生が駆け寄ってきた。
 
「あっ」
と言って広沢先生もその2人を見る。
 

↓ ↑ Bottom Top

彼らがかなり下まできた所で雪崩が再び動き始める。
 
「間に合うかな」
と蓮菜が不安そうに言うが
「2人ともスキー上手いから何とかなる気がする」
と玖美子は言った。
 
「あなたたちスキー履いて。多分歩くより速い」
と広沢先生が言うので、千里・玖美子・小春・蓮菜がスキーを付ける。
 
公世と牧野先生がかなり近くまで来る。そのかなり後方を雪崩が来る。
「行くよ」
「はい」
 
広沢先生と女子4人がスキーで滑って退避路に向かう。
 
その後を追うように、公世と牧野先生も下まで辿り着いて、退避路に向かう。
 
2人は降りてきた勢いがあるので、千里たちに追いついた。
 

↓ ↑ Bottom Top

そして全員安全な所まで逃げた時、雪崩が下まで来て、さっきまで千里たちがいた付近まで飲み込んだ。
 
「危なかった」
「助かったぁ」
 
「公世(きみよ)、良かった」
と言って、千里は彼をハグした。
 
「何が起きたか分からなかった」
と彼は千里にハグされたまま言う。
 
「雪崩が来て、ぼくも牧野先生も飲み込まれたかと思った。でもいつの間にか斜面に居たんだよ。それで2人で声を掛け合って、すぐ滑降してきた」
と公世。
 
「僕も何が何だか分からないけど、どうも生きているようだ」
と牧野先生。
 
「確かに2人とも生きてますよ」
と広沢先生は涙を流しながら言う。
 

↓ ↑ Bottom Top

山口教頭が駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか?」
「何とか全員無事です」
と広沢先生。
 
「良かった、本当に良かった」
と言って、教頭は公世をハグして背中を数回叩いてから、牧野先生とも握手した。
 
「あれ?牧野先生、手袋は?」
「あれ?どうしたんだろう。取れちゃったのかなあ。そういえば髪の長いセーラー服の少女に手を握られた気がしたけどもあんな所にセーラー服の女の子がいるわけないし。山の神様だろうか」
と牧野先生。
 
「髪の長い少女といえば千里だけど」
と蓮菜。
 
「あれ?そういえば村山さんから『すぐ下に降りて』と言われた気がした。それで牧野先生に声を掛けて下に滑り降りたんだよね」
と公世。
 

↓ ↑ Bottom Top

「千里大活躍だな」
と言って玖美子が千里を見ると、当の千里はキョロキョロしている。
 
「何かあったの?」
と千里。
 
「何かあったって?今雪崩が起きて、公世と牧野先生が巻き込まれそうになったけど、千里が雪崩を一時的に停めて2人を助けたじゃん」
と玖美子。
 
「雪崩を停める?そんなことできる訳無い。神様でもあるまいし」
と千里は言っている。
 
「でも雪崩があったんだ?」
「千里何も覚えてないの〜〜!?」
 
蓮菜が玖美子の脇腹をトントンとし、千里が着けている腕時計を指差す。千里は黄色い腕時計をしている。
 
「別の千里か!」
 
「赤の子は力尽きたんだと思うよ。あれは本来の千里のパワーを遙かに越えていた。助けてくれたのは神様だと思う。千里は端末になっただけだけど、それでも激しく消耗したんだと思う」
と蓮菜。
 
↓ ↑ Bottom Top

「結局奇蹟か」
「うん奇蹟だよ」
 

そういう訳で、テレビのニュースでも報道され、新聞にも載ったこの雪崩事件(全層雪崩:春先に多い)では、ひとりの死者も怪我人も出さずに済んだのであった。
 
但しリフトは完全に壊れ、ヒュッテも歪んで危険なので取り壊すことになった。また森林の樹木もかなりなぎ倒されていた。それで経済的な被害は結構出た。スキー場は今季はもう閉鎖されることになった。
 
リフトに関しては市の予算が付いて夏の間に再設置されることが決まった。更にスキー場の上部に三角フェンスの設置による雪崩防止工事が行われることになった。ヒュッテについても再建のため市民の募金が集まった。
 
でも校長は教育委員会に謝罪文を提出したらしい!
 
↓ ↑ Bottom Top

むろん全員無事だったので、何の処分も無かった。むしろヒュッテスタッフの避難誘導もしてくれたことで学校は感謝状をもらった。
 
今回のスキー大会の時期設定について、学校ではまだ2月なので全層雪崩が起きる時期ではないと判断してスキー大会を実施した。しかし今回の事故を受けて翌年度からはもっと早い時期に実施されるようになる。
 
「やっぱ地球温暖化のせいかなあ」
「季節感を見直す必要があるかもね」
「冬でもスカート・生足で出歩くとか」
「風邪引きたければどうぞ」
 

↓ ↑ Bottom Top

小春はスキー場から唐突に移動させられたのでキョロキョロ見回して自分の家であることを認識する。
 
千里が倒れている。
 
「千里!」
と叫んで近寄る。
 
「小春〜。疲れたぁ。お腹空いたぁ。牛肉食べたい。鋤焼きがいい」
と千里は言う。
 
腕時計を見てRであることを認識する。
 
「分かった。今お肉焼くね。テーブルまで来れる?」
「うん。何とか」
 
コリンも転送されてきたので、コリンが助けて何とかテーブルの所まで行く。
 
小春は牛肉あったっけ?と思ったが、冷凍室を見たらあったので、それを解凍して、すき焼き鍋に放り込んで焼き始める。コリンが買い出ししておいてくれたのかなと思った。あり合わせのネギ、豆腐なども放り込む。
 
↓ ↑ Bottom Top

千里Rはもりもりお肉を食べた。結局1kgほどペロリと食べてしまった。小糸がまた呆れて見ていた。
 

買い出しに行かなきゃ、と小春は思う。
 
「ほんとにお腹が空いた」
「あれは物凄くエネルギー使ったと思う」
と小春もコリンも言う。
 
「うん。だから2度は発動できなかった」
と千里。
 
「あれ、どうやって停めたの?」
「あれは私が停めたんじゃない。誰か凄い人が助けてくれた。私は端末になっただけ」
 
「ああ。千里って巫女だもんね。何か印のようなの結んでた」
とコリンが言う。
 
「そのポーズをすると助けてくれる人の術を伝えやすい気がした。多分あれは伝える術により変わると思う」
 
「それどうやって分かったの?」
「勘」
「やはり千里って巫女だね」
 
↓ ↑ Bottom Top


「だけど玖美子も言ってたけど、牧野先生も公世もスキーが上手いから助かったんだと思う。スキーの下手な人だと転んだりして雪崩に追いつかれていた」
とコリンは言う。
 
「色々な意味で運が良かったよ」
と小春。
 
「でも教頭先生、公世はハグして牧野先生とは握手だったね」
とコリンは言った。
 
「そりゃ同性ならハグしていいけど、異性だと遠慮があるてしょ」
「やはり、公世ちゃんは女子だよね」
 
「へー。それは私見てないけど、あの子、高校は女子制服で通うと思うよ」
と千里Rは楽しそうな顔で言っていた。
 
そんな話をしてからRは
「疲れたから寝る」
と言って寝てしまう。千里はそのまま月曜日の朝まで2日半眠り続けた。
 
↓ ↑ Bottom Top

なお、小春・コリン・小糸は、千里が眠ってしまった後、あらためてお肉を追加してスキ焼きを食べた。
 

あの時、千里Gがしたのはこういうことである。
 
最初にGは千里との関わりが深く感応しやすい公世を滑降コースの中間付近まで瞬間移動させた。
 
続けて牧野先生も移動しようとしたが、先生とはあまり親しくないので同調ができず移動できない。仕方ないのでGは危険だと思ったが、自ら公世の居た位置に瞬間移動し、まさに雪崩に巻き込まれる寸前の牧野先生の手袋を外して直接手を握り、一緒に公世の場所に移動した。そして公世に「すぐ降りて」と声を掛け、自分はW町の自宅に戻った。
 
片方が千里と親しい人物だったから助けられた。2人とも親しくない人物ならそもそもそこに正確に到達することもできなかったので助けようが無かった。
 
↓ ↑ Bottom Top

2人を移動したのは滑降コースの途中でそこから下までは200mほど。2人のスキーの腕なら10-15秒ほどで滑り降りられると思った。これに対して全層雪崩の速度は遅いので下まで到達するには20-25秒掛かると思った。それでここからなら逃げ切れると判断した。それでも危なくなったら再度移動させるつもりだった。
 
無事避難した後、Rが消えたので、そのまま千里が居ないと雪崩に巻き込まれた?などと思われては困るのでYを同じ場所に出現させた(これはGでもできる)。
 
そしてA大神に頼んで、消滅したRを小春の家に転送してもらい、Gが自分で小春、続けてコリンを小春の家に転送した。
 
Rを小春の家に転送してもらったのは、あまりに消耗が激しかったので、眠る前に栄養補給すべきだと判断したからである。
 
↓ ↑ Bottom Top

ついでに自分の家の冷蔵庫にある牛肉を全部小春の家の冷蔵庫に放り込んだ!
 

↓ ↑ Bottom Top

前頁次頁目次

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 
女子中学生・冬の旅(17)

広告:國崎出雲の事情-11-少年サンデーコミックス-ひらかわ-あや