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■女子中学生・冬の旅(10)

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お昼を食べた後、13時に落合さんはやってきた。
 
まずは千里と公世で対戦するのを見てもらうが
 
「村山さんも見る度にレベルアップしてるけど、工藤さんの成長ぶりも凄いね」
と褒めてくれた。その後、まずは公世が個人的に指導してもらうので、千里は少し離れた所で、真剣の素振りをしていた。
 
「その刀は天野道場で振ってるのとは違うみたいな気がする」
「天野道場に置いてるけど、みんながいる時は出してない。本物の真剣だよ」
「ひゃー」
 
天野道場でみんなに振らせている“真剣”は本当は鉄に比重が近い亜鉛製のいわゆる“模造刀”で、元々は居合いの練習などに使用するものである。更に安全のため、刃先にゴムが付けられている。しかし千里が今振っているのは、本物の真剣である。
 
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「後で貸すから振ってみなよ」
「うん」
「絶対に清香とかには貸せないけどね」
「あ、それは分かる。何とかに刃物だ」
「ね?」
 
それで千里はずっと素振りをしていた。
 

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交替する。
 
公世に真剣を貸すが
「模造刀とは持った感触からして違う」
と彼は言っていた。
 
公世が真剣で素振りしている間に千里が落合さんの指導を受ける。
 
「君と対戦する時は、モードを切り替えないといけない」
と落合さんは言っていた。
 
落合さんは恐らく7-8割の本気度で掛かってくる。それを逃げずに受け止めてから反撃する。こちらも相手を殺さない程度の本気で打ち込んで行く。落合さんは基本的に逃げる!受け止めたら怪我をしかねない:少なくとも竹刀は確実に折れる。実はそれで昨年は落合さんの竹刀を3本折っている。竹刀代はきーちゃんが補償してくれている(落合さんも千里からは受け取らないだろう)。
 
素振りをしながらこちらを見ていた公世が
「すげー」
と思わず声を挙げていた。
 
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10分くらい対戦してから、色々コメントをもらう。指摘された点についてイメージトレーニングで自分の動きを想像してからまた対戦する。10分ほどやってから、また検討する。この繰り返しだが、物凄く勉強になる。
 
1時間半指導を受けて15分休むというのを千里と2回、公世と2回して、18時に練習を終了する。コリンが買ってきた甘いケーキと、きーちゃんが入れてくれたフォションの紅茶を飲み、18時半頃
「ありがとうございました」
と行って、落合さんを送り出した。
 
千里も瑞江に迎えに来てもらって、きーちゃんの家を辞した。
 

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「ちょっとおばあちゃんちに寄ってくから付き合って」
「うん」
 
それで2人で天子のアパートに移動したが、途中でお寿司屋さんに寄り、予約していたお寿司を受け取ってからアパートに行った。
 
「明けましておめでとう」
と千里(千里R)が言うと、天子は
「おめでとう。。。って、あんた1月2日にも16日にも来たじゃん?」
 
「うっそー!?」
 

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千里は公世を天子に紹介する。
 
「こちら、剣道部のクラブメイトで、工藤公世ちゃん」
「初めまして、工藤です」
と公世が挨拶する。
 
「あら、可愛い声ね。私は目が見えないからお顔は分からないけど、素敵なお嬢さんみたい」
と天子は言った。
 
“お嬢さん”と言われて、公世は困ったような顔をしていた。
 

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それで瑞江がお吸い物を作ってみんなに配り、千里が買って来たお寿司を摘まむ。この場に居るのは、天子・瑞江・千里・公世・コリンの5人である。
 
千里は8人前買って着ているので
「たくさんあるからどんどん好きなの食べてね」
 
と言った。公世も
 
「たくさん身体動かしてお腹空いたし、頂きまーす」
と言って食べていた。
 
しばらくして、公世が言った。
「天子さんって、目が見えないように見えない」
 
「天子さんはね、目が見えなくてもスーパーで普通に買物できるし、お肉のパックを必要な分量ちゃんと買ってこれる人」
「凄い!」
 
「目が見えないから運転免許取れないけど、実は車の運転ができる」
「うっそー!?」
 
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「私、見えなくても“分かる”のよね」
「さすが、村山さんのおばあちゃんだ」
と公世が言うと
 
「その見解に大賛成」
と瑞江が言っていた。
 

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「残っても女2人では持てあますから、食欲のある人が食べて」
と瑞江が言うので、公世は遠慮無く食べて、お寿司はきれいに無くなった。
 
それで少し休憩してから、20時すぎ、瑞江が彼女のRX-8に千里と公世を乗せ、留萌まで送ってもらった。
 
ここで助手席に千里が乗り、公世を後部座席に乗せた。コリンは千里が体内に吸収した。
 
「朝日さん、お手数掛けてすみません」
と公世は言うが
 
「ううん。私はドライブできて楽しいから」
と瑞江は答える。
 
「リアシート狭くてごめんね」
「全然問題無い」
 
「横になっててもいいからね」
「そうするかも」
 
実は公世が横になれるように、彼を後ろに乗せた。
 
実際公世は深川付近で眠ってしまったので、コリンに言って毛布を掛けてあげた。
 
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22時前には公世の家に送り届ける。その後車は小春の家に行き、ここで全員降りる。千里とコリンはコリンの部屋、瑞江は納戸に布団を敷いてその夜は寝た。この時間、村山家には既に千里Yが帰宅しているので、Rとしても、こちらで寝る方が気楽である。
 
瑞江は翌日旭川に戻った。
 

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1月下旬、P神社で勉強会に集まっている女子たちの間で「バレンタインをどうするか?」というのが熱い話題になっていた。勉強会をしているグループは千里たち世代、小学5-6年生のグループ、小学2-4年生のグループと3つあり各々が丸テーブルを使っているのだが、3テーブルともバレンタインの話題で盛り上がっていた。
 
小学5-6年生のグループはチョコを手作りしようなどと言っていた。千里は自分たちも小学生の頃は手作りをしたなと思っていた。その後、千里たちの年代の子は「チョコは買った方が良い」という方向に来ている。
 
「蓮菜と千里は渡す人が決まっているからいいね」
などと恵香が言っている。
 
「私別に誰にも渡す予定無いけど」
と蓮菜。
「私特に渡すあては無いけど」
と千里(千里Y)。
 
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「あぁ普段からつながりがあれば特別に渡す必要もないのかな」
などと美那は言っていた。
 
セナがいちばんドキドキしていたようであった。
 

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一方貴司は、
「今年は千里、どんなチョコくれるかなあ」
などとワクワクしていた。
 
彼は自分の思い人(千里B)が休眠中であるとは全く知らない!
 

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1月29日(土).
 
千里、清香、公世の3人は、S中岩永先生の車で札幌に出た。
 
札幌市内の“中学生剣道札幌鍛錬会”という大会に招待されたのである。
 
この大会は札幌および周辺の中学生男女の大会(個人戦のみ)であるが、毎年、道大会の上位になった人は、札幌や周辺から外れる地区在住でも男女2名以内が招待されることになっている。むろん招待されるのは1-2年生だから、道大会の上位が3年生で占められていた場合は、招待者無しになる場合もある。実は昨年がそうだったらしい。
 
今年は女子では千里と清香、男子では公世と、もうひとり函館の桐生君(道大会BEST8)が招かれ2年ぶりに招待者を入れた大会になった。男子のもうひとり、北海道代表にもなった西田君は3年生なので出場しない。
 
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3人は、岩永先生、桐生君と彼を引率してきた先生も入れて6人で、北海道剣道連盟の会長さん(凄く眼光の鋭い人だった)、この大会の主催者さんと会議室でお話しした。千里・清香・公世は、昨年の栃木県での全国大会での様子も色々と語った。
 
たいがい話してから、会長さんが
「今年の大会の招待者は、男子1名と女子3名?」
と訊いた。
 
清香が噴き出す。
 
主催者さんが
「いえ。男子も2名なのですが、到着が遅れてるのかな」
と言った。
 
岩永先生がやっと気付いて
「すみません。こちらの工藤が男子の招待者なのですが」
と言う。
 
「え?だってあなた女子ですよね?」
「え?あなた女子マネージャーさんじゃないの?」
 
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それで岩永先生は公世に剣道連盟の登録証と生徒手帳を提示させて、公世は男子であると説明した。
 

「もしかして男の子になりたい女の子?」
「そうだったんですか。失礼しました。昨年京都で少し揉めたケースがあり、女子でも男子の大会に出場したいという選手については、女子としての登録証は返却する条件で男子としての登録証を発行し、男子の大会に出ることを認める裁定が降りているんですよ」
 
「ああ、そうだったの?」
「でも女子の登録証を返却したら女子の大会には出られないわけだ」
「そりゃ女子の大会に出たり男子の大会に出たりふらふらされては困りますから」
「それなりの覚悟が必要だよね。君凄いね」
 
ということで、公世は男装?女子と思われてしまったようであった。
 
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「でも君、登録は男子でも医学的に女子なら、ちゃんと女子トイレ使ってね」
「それは心配ないでしょう。さすがに女子の身体では男子トイレは使えませんし」
「あ、そうですよね」
 
千里は可笑しさをこらえて
「大丈夫です。私が付き添ってちゃんと一緒に女子トイレに行きますから」
と答えておいた。
 
桐生君が憧れるような目で公世を見ていたが(一目惚れされたんだったりして)公世は困ったような顔をしていた。
 

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札幌地区の一般的な大会なので、参加者は男子が212名、女子も168名居る。男女とも、1回戦→2回戦→3回戦→4回戦→5回戦→準々決勝→準決勝→決勝という流れになる。招待者は5回戦からの参加である。つまり一般参加で14人勝ち上がり、スーパーシードされた招待者2名を加えて5回戦をし、準々決勝進出者を決める。
 
大勢で試合をするので、初日は1回戦から4回戦までやって終わりである。
 
招待者4人は、この日は試合が無いので、主催者さんに案内されて男女の有望な人の試合を見学させてもらった。
 

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