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■女子中学生・冬の旅(13)

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(C) Eriko Kawaguchi 2023-01-13
 
2月13日(日・大安・みつ).
 
P神社で長年巫女を務めてきた、梨花さんが結婚することになり、P神社で挙式をおこなった。
 
神職2人・巫女さん11人体制!でおこなう。たぶん1994年にこの神社が復活して以来、最大の体制である。この神社の最初の巫女さんの結婚式だからこその待遇だ。今回の式の費用は宮司がほとんどを出している。ちなみに神職と巫女と合わせて13人になるが"13"という数字は、易では“天火同人”で結婚にとても良い卦である。
 
祭主はむろん翻田常弥宮司だが、祭員として孫で三重の皇學館3年生の和弥(花絵の弟)が参加する。
 
長年梨花を支えてきたものの現在は札幌で女子大生をしている乃愛(20)が帰省してきて、今回の巫女のリーダーを務める。彼女と花絵(23)で三三九度をおこなう。
 
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中3の広海は受験なので欠席する(でも友人として結婚式に出席した!)
 
高2の純代、旭川から駆け付けてきてくれた守恵(20)、それにセナが巫女舞を奉納し、恵香が龍笛を吹いて千里が太鼓を打ち、梨花と同期だった元巫女の亜耶(梨花の1つ年下)が箏を弾く。更に旭川A神社から呼んだ美遙さん・典代さんが篳篥(ひちりき)と笙(しょう)(*20) を吹く。この2人は2年前の浅美さん(この神社の元巫女)の結婚式の時にも来てくれた。
 

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多人数の演奏になるので、A神社の2人には前日に来てもらい、5人で一緒に練習したのだが、途中で
 
「この人数の演奏には“指揮者”が必要」
 
ということになる。それで急遽A神社からもう1人ベテランの木村治子さんという40代の巫女さんに来てもらい、その人に鞨鼓(かっこ)(*20) を打ってもらうことになった。みんなこの鞨鼓の音に合わせて演奏するのである。
 
結果的に、笙・篳篥・龍笛・箏・太鼓・鞨鼓と楽器が6つも入る大合奏になった。
 
前日の練習は木村さんが到着したあと3時間掛けたが
「この時間でちゃんと合わせられるのは、みんなさすが」
と木村さんは褒めていた。
 
(この時、木村さんは千里の“龍笛”を聴いていない。木村さんがそれを聴くのは約1年半後になる。もっとも別の千里だが!)
 
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巫女舞のメンツは純代・守恵は早くに決まっていたが、3人目のセナは花嫁の梨花さん自身の指名である。
 
「ぼくでいいんですか〜?」
「君は女の子だもん。何も問題無い」
 
大神が頷いていた。
 
他に、沙苗・蓮菜・小町が、控室に居る参列者にお茶やお菓子を出す作業をした。この3人まで入れると14人の巫女が参加していたことになる。
 
巫女舞:純代・守恵・セナ
三三九度:乃愛・花絵
音楽:治子・美遙・典代・恵香・千里・亜耶
補助:沙苗・蓮菜・小町
 
これ以外にも実は美那と玲羅が神社の受付と巫女控室でお留守番をしていた。結果的に16人もの巫女がこの小さな神社に居たことになる。
 

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狩衣を着けた和弥が先導して新郎新婦の親族・親友など合計40名ほどを拝殿にあげる。この中に広海が居る。
 
拝殿にあげる前に千里が大幣(おおぬさ)で参列者のお祓いをした。また例によって変なの憑けてる人がいたので粉砕しておいた!千里としてはサービスで祓ってあげている訳ではく単に「神聖な拝殿に変なのは侵入禁止!」と思っているだけである。
 
大神が例によって呆れるような顔をしていた。
 

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ちなみに北国では、拝殿は関東関西などのような吹抜ではなくちゃんと壁がある室内である。北陸や北海道で吹き抜けにしたら拝殿の除雪が必要だし、祭礼で凍死しかねない。むろんこの日は火力の強いストーブを5個も置いていて、かなり暖かい。
 
千里はこの暖かい拝殿に入る前の拝殿下、渡り廊下の端で雑霊を祓ってしまった。
 
雅楽の演奏に合わせて、乃愛と花絵が先導し、新郎・新婦が入場してくる。新郎は羽織袴、新婦は白無垢に綿帽子をかぶっていた。そして純代が先導して衣冠姿の祭主・翻田常弥宮司が入ってくる。
 
雅楽の演奏が流れる中、祭主が祝詞を奏上する。和弥はそばに控えていて、拝礼や拍手は祭主と一緒に行う。
 
この祝詞が物凄く長かった。千里がこれまで聴いた中で、最高の長さだと思った。
 
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三三九度が行われる。
 
花絵が提子(ひさげ)を持ち、乃愛が銚子(ちょうし)を持つ(*15).
 
和弥が素焼きの杯(*16) を3つ重ねた三方(*17) を持って来る。新郎の前に掲げるので、新郎はいちばん上に載っている小杯を取り、これに乃愛が3度に分けて銚子でお酒を注ぐ。この時、最初は少しだけ、2度目はたくさん注いで3度目は少しだけ注ぐのが古来の作法である(*18).
 
注がれたお酒を新郎が3度に分けて飲む。杯を和弥がいったん受け取り、新婦に渡す。乃愛が3度に分けてお酒を注ぐ。新婦が3度に分けて飲む。杯をいったん和弥が受け取り、再度新郎に渡す。乃愛が3度に分けてお酒を注ぐ。新婦が3度に分けて飲む。杯を和弥が受け取り、台の下に置く(*19).
 
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和弥が三方を新婦の前に掲げるので今度は新婦が中杯を取る。この中杯は新婦→新郎→新婦とリレーされて、小杯と同様にお酒が注がれそれを飲む。
 
中杯まで終わった所で、花絵が持つ提子(ひさげ)から、乃愛の持つ銚子(ちょうし)にお酒が追加される(*15).
 
和弥が三方を新郎の前に掲げるので新郎が大杯を取る。大杯は新郎→新婦→新郎とリレーされて、小杯・中杯と同様にお酒が注がれそれを飲む。
 
使用した日本酒は市内の神居酒造の特上品“純米大吟醸酒コタンピル”である。素焼きの大中小の杯は桐の箱に入れ挙式の日付を記入して新郎新婦に記念品として渡される(*16).
 

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三三九度の後は、木村さんの鞨鼓、千里の太鼓、亜耶の箏、恵香の龍笛、美遙さんの篳篥(ひちりき)、典代さんの笙(しょう)(*20) の合奏が行われる中、純代・守恵・セナによる巫女舞が奉納された。純代が要(かなめ)の位置で舞う。
 
この後、指輪交換・誓詞奏上が行われ、親族堅めの儀が行われた。親族の持つ素焼きの杯にお酒を注ぐのは、乃愛と花絵が行う。この杯も結婚式の記念品となる。未成年などお酒が飲めない参列者(白い花を付けている)にはサイダーを注いだ。
 
最後に新郎新婦による玉串奉奠(たまくじ・ほうてん)が行われ、祭主のお話があって、式は終了する。
 
純代の先導で祭主が退場、乃愛と花絵が先導して新郎新婦が退場し、最後に和弥が促して参列者が拝殿から退出する。千里と守恵で参列者に記念品や撤饌を渡した。親族控室にはセナが案内した。
 
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市内の写真館の人の手で記念写真が撮影され、その後、一同は祝賀会をおこなう市内のレストランにバス2台で移動した。花絵が旭川から来た3人によくよくお礼を言って、謝礼を渡して送り出す。
 
(巫女16人の記念写真は、式が始まる前に和弥の手で撮影されている)
 
乃愛・亜耶・守恵・花絵は友人として祝賀会にも出席するので巫女衣装を脱いでドレスに着替えていた。宮司と和弥も出席するのでドレス・・・ではなくスーツに着替える(和弥のドレス姿は見てみたい気もするが宮司のドレスはやめてほしい)。神社は千里に!任せて宮司や乃愛たちは一緒にレストランに向かった。
 
純代・恵香・沙苗・セナ・美那も帰宅したので、宮司さんたちが戻るまでは、千里と蓮菜、玲羅、小町、それに宮司の奧さんの林田菊子さんとでお留守番をした。
 
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「なんか急に静かになったね」
「このくらいの人数が普段の体勢ですね」
 

(*15) 銚子(ちょうし)は長い注ぎ口が付いているので「長柄銚子」ともいう。お酒を杯に注ぐための道具である。提子(ひさげ)はお酒を持ち運び、また銚子に追加するための道具で注ぎ口は短い。銚子にお酒を追加するのに使われることから「くわえ」「加え銚子」とも呼ばれる。
 
三三九度では大の杯に行く前にお酒の追加が行われる。
 
銚子や提子の素材は、白木のもの、漆塗りのもの、更に蒔絵の施されたもの、また錫製・白銅製などの金属製のものもある。真鍮に金メッキを施したものも見られる。
 
現代では徳利(とくり/とっくり)のことを“お銚子”とも呼ぶが、これは杯に酒を注ぐという機能が、銚子と同じだからで、明治時代に生まれた俗称である。従って、時代劇で「おやじ、お銚子もう1本」と言っていたら誤り。江戸時代にはそういう用法は無かった。
 
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(*16) 三三九度に使用する杯の素材は神社によりまちまちである。素焼きの杯、釉薬を使用した陶磁器、漆塗りの杯(多くは木乾製)、樹脂製の杯、また錫製、白銅製、銀製、真鍮に金メッキの杯などが見られるが、他にもあるかも知れない。一般に記念にもらえる所が多いが、もえらない所もあるらしい。記念に欲しい場合、予約の際に確認しておいたほうが良いかも。
 
もらった杯は、筆者個人としては、普段お酒を飲むのに使って良いと思うが、神棚に飾っておけという人もある(邪魔になると思う)。筆者がもらった杯は特に大事な記念品の類いを納めたガラス戸付きの棚に置いている。
 

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(*17) お正月の鏡餅を載せるのと同様の台であるが、3方向に穴が空いているので三方(さんぼう)という。お寺でも同様のものを使用するが、仏法僧に掛けて三宝と書かれる。読みも「さんぽう」である。神社は濁点、お寺は半濁点。
 
元々は現代でも宴会の時などに使用する膳(銘々膳)と同じ物で、単なる食事を載せる台である。
 
日本では江戸時代から明治まではひとりひとりの前に膳(銘々膳)を置くのが主流だった。明治時代に西洋人がテーブルで食事するのを見て、西洋のテーブルの脚を短く切った“ちゃぶ台”が一般家庭で広まっていく。特に関東大震災を契機に倒れにくいちゃぶ台は膳に代わって主流となった。
 
食事の後で食器を洗う習慣は、ちゃぶ台が使われるようになり、大皿が使われ、また食器が共用されるようになってから生まれたものである。それ以前は個人の食器が決まっていて、ずっと自分の膳に載せられたままだったから特に洗うことも無かった。食事の後ごはん茶碗にお茶を注いで飲んで終わりである。
 
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1960年代以降は農村改良運動の結果、農村ではテーブルと椅子で食事する家庭が増え、その文化が都会に波及。マンションにはダイニングキッチンが設けられるようになる。一方1980年代以降は家具調コタツが普及し、居間で食事する家庭でもこれがちゃぶ台に取って代わったので、昔風の折畳み脚のちゃぶ台はあまり見られなくなっていった。
 

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(*18) ここで乃愛がしたように“鼠馬鼠”といって、少し注ぎ、沢山注いでから、また少し注ぐのが、古式の作法である。陰陽陰という組み合わせで、理にかなっている。しかし近年は少し・少し・沢山と3度目をメインにする神社が多いようだ。
 
小中大杯に注ぐ量を仮に15.30,45 ml とした場合、新郎は15+15+30+45+45=150ml, 新婦は15+30+30+45=120ml のお酒を飲むことになる。古くは新婦から飲み始めたらしいが、新郎が先に飲むようになったのは女性が多く飲むのは辛いからだと思う。
 
1度目と2度目は注ぐ振りだけで3度目に本当に注ぐというのは最近生まれた便法と思われる。
 

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(*19) 三三九度は最近は最近、下記のような略式の三三六度?、超略式の三三三度!をする所もあるがP神社はきちんと正式の三三九度をする。
 
●三三六度
小杯に3度で注ぐ→新郎が3度で飲み干す。
小杯に3度で注ぐ→新婦が3度で飲み干す。
(新郎の2度目が略されている)
 
中杯に3度で注ぐ→新婦が3度で飲み干す。
中杯に3度で注ぐ→新郎が3度で飲み干す。
(新婦の2度目が略されている)
 
大杯に3度で注ぐ→新郎が3度で飲み干す。
大杯に3度で注ぐ→新婦が3度で飲み干す。
(新郎の2度目が略されている)
 
●三三三度
小杯に3度で注ぐ→新郎が一口飲む→新婦が一口飲む→新郎が飲み干す。
中杯に3度で注ぐ→新婦が一口飲む→新郎が一口飲む→新婦が飲み干す。
大杯に3度で注ぐ→新郎が一口飲む→新婦が一口飲む→新郎が飲み干す。
 
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●三三三度(別流儀:杯を“交わして”ない気がする)
小杯に3度で注ぐ→新郎が3度で飲み干す。
中杯に3度で注ぐ→新婦が3度で飲み干す。
大杯に3度で注ぐ→新郎が3度で飲み干す。
 

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(*20) 篳篥(ひちりき)はタブルリードの縦笛で、構造的にはオーボエとルーツを同じくする楽器である。オーボエ同様、習得は結構大変。基本的に主旋律を担当する。これに対して龍笛は一般に副旋律を担当する。
 
笙(しょう)は、17本の長さの異なる竹を縦に立てて束ねた形をしており、その構造はバグパイプなどと似ている。基本的に和音を担当する。習得にはかなりの練習を必要とする。上手く吹ける人は少ない。
 
おなじ“しょう”と呼ばれる楽器でも、子守唄に出てくる“デンデン太鼓にしょうの笛”の“しょう”は漢字では“簫”と書き、これはリコーダーに似た楽器である。子供が簡単に吹きこなせるので、お土産に欲しがるのである。(パンフルート型の“簫”も存在する。そちらのほうが古い)
 
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篳篥・龍笛・笙を“三管”といって、雅楽の音律を構成する。雅楽ではこれとリズムセクション“三鼓”(羯鼓・鉦鼓・太鼓)、更に“両弦”(琵琶・箏)で基本構成になる。かつては弦楽器としては和琴(わごん)も入っていたのだが、現代では弾ける人がほとんど居ない(“とりかへばや物語”の時代でも伝承者が少ないと書かれている)。楽器そのものも現代ではほとんど存在しないと思われる。
 
雅楽の合奏では、本文でも述べたが、羯鼓(かっこ)奏者が指揮者の役割を果たすので、概して経歴が長いか身分が上でリズム感の良い奏者が担当する。
 

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