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■お気に召すまま2022(19)

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(*100) ハイメン役の歌音が着た花柄のドレスは、白いドレスに(当時存在した絵具のみを使用して)手描きで花模様を多数描いたものである。タッチストーン・オードリーの衣裳の次に手間が掛かっている。しかしこれは金属箔を貼り付けた衣裳と違って耐久性があるので1着しか作らなかった。
 
撮影後は“お気に召すまま村”に展示された。
 

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今回ハイメンの役を務めたのは、昨年の『ピーターパン』で中性の聖職者リトルホーンを演じた槇原歌音である。彼(たぶん“まだ”彼女ではない)は2020年夏のアクア映画『ヒカルの碁・プロ試験編』に女子!受験生役で出たのをアクアのマネージャー山村に見初められ、2021年9月撮影(2022年1月放送)の『ピーターパン』で上述リトルホーン役を演じた。
 
その中性的な雰囲気がハイメンにピッタリだとして川崎ゆりこの推薦で今回の映画にも出ることになった。彼にとっては初めてのセリフがある役である。普段は石川県内のローカル劇団で“少女役”をしていて、地元では女性ファンが多いらしいと山村は言っていた。古屋あらたは彼のファンだと言っていた。撮影の時にお互いにサイン色紙を交換していた。
 
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彼は声変わりはしているが、女声も出せるので、この映画では女声でセリフを言っている、でも国内でも国外でも、ほとんどの人が中性的な女優さんなのだろうと思ったようである。
 
槇原歌音は現在中学3年生らしいが、山村に見初められたようなので、彼が高校卒業する頃まで果たして男の子のままで居られるか、ケイは甚だ心配している。川崎ゆりこは彼に「信濃町ガールズ(本部生)に入らない?」と誘ったが
「ぼく音痴ですー」
と言っていた。それに彼が所属する劇団は人数が少ないので今彼が抜ける訳にはいかないようである。でも信濃町ガールズ北陸の会員証を渡したのでレッスンには劇団活動とぶつからない範囲で出てみると言っていた。
 
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(*101) ヴィオール (viole) またはヴィオラ・ダ・ガンバ (viola da gamba) は、チェロに似た楽器で、ヴァイオリン族と親戚関係にあるヴィオール族の弦楽器である。古くはヴァイオリンサイズの楽器からコントラバスサイズの楽器までファミリーを成していたのだが、多くはヴァイオリン族のほうに主流が移ってしまい現代ではコントラバス以外は使われなくなった。
 
つまり実は現代のコントラバスは、ヴィオール族の唯一の生き残りである。
 
今回この楽器を演奏した生方芳雄は最初ヴァイオリン奏者にアサインされていたのだが「お揃いのドレスを着てね」と伊藤ソナタから言われ「僕ヴィオールを弾く」と言って逃げて、今回はダブレット姿でヴィオールを演奏した。ヴァイオリンは伊藤ソナタが友人の桂城由佳菜を誘った。
 
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(*102) 今回使用したヴァイオリンは、昨年『ロミオとジュリエット』の撮影にも使用されたlのと同じアマティ作ヴァイオリンのレプリカで、♪♪音大が所有しているものを借りた。レプリカとはいえ、かなり良い出来の楽器で、お値段も相当したものらしい。
 
(*103) バロックフルートは今回の映画に合わせて国内のフルート製作所に依頼して作ってもらったものでピタゴラス音階になっている。材質は10年乾燥させたローズウッドである。サマーガールズ出版が制作費を出し、映画の制作委員会に貸し出す形にした。
 

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(*104) リーガル (regal) はルネサンス期に使用された小型のオルガンである。ヘンリー8世やエリザベス1世の時代にリーガルによって演奏された楽曲の譜面なども残っている。
 
パイプオルガンを小型にしたものとして昨年の『ロミオとジュリエット』では“部屋に作り付け”するポジティヴ・オルガンが登場したのだが、今回は森の中の結婚式ということで、それよりもっと小型で移動可能なリーガル(regal)の登場となった。
 
同時期に使用された楽器としてはリーガルより更に小さなポータティヴ・オルガン(オルガネット organetto)というのもあった。元々はフルー管(flue pipe) を使用したものをポータティヴ・オルガン、リード管 (reed pipe) を使用したものをリーガルと呼んだ。しかし後に両者は混同されるようになった。
 
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ポータティヴ・オルガンはパイプオルガンのミニチュアという感じで、パイプが多数立っているので見た目は格好良い。しかし鍵盤はダイアトニック2オクターブ程度。つまりドレミファソラシド(せいぜい+シ♭)のみで半音が出せない。現代のトイピアノやピアニカに近いが、口で息を吹き込んで鳴らすのではなく鞴(ふいご)が付いていて、左手で鞴を動かしながら右手で鍵盤を弾いていた。
 
リーガルはパイプが筐体内に納められていて見た目はチェンバロに近い。鍵盤は“ほぼ”クロマティック(12音)4オクターブあり、本格的な楽曲の演奏が可能である。ただし一番下のオクターブは、ベース用で“ショートオクターブ”になっている。
 
リーガルは楽器の上に2つの大きな鞴(ふいご)が載っている。多くの場合、鞴操作者(Kalkant) が付いていて、演奏者は鍵盤に専念し両手で演奏していた。しかし中には鞴を現代の足踏みオルガンのように足で操作できるようにして1人で演奏できるタイプもあった。今回の映画で使用したのもこのタイプである。昨年ポジティヴ・オルガンを制作してくれた千葉の楽器メーカーの特製品である。これの制作費はフェニックス・トラインが出して制作委員会に貸し出している。
 
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昨年のポジティヴ・オルガンはミーントーンに調律したら、アクアが歌いにくいと言っていた(他の人は特に感じなかったらしい。アクアは音感が良すぎる)ので、今回ピタゴラス音階で制作してもらった。この時代には平均律がまだ無い。
 

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ハイメンは唱える。
 
「ハイメン!天に喜びあれ!地上のものごとが収まると共に」
 
「平和よあれ!糸のもつれはほぐれた。この世にも不思議なできごとに結末を付けるべき時である。ここに並ぶ8人の者たちは、各々手に手を取り合って、婚姻の神ハイメンにより結ばれるべし」(*106)
 
画面左側から、フィービーとシルヴィアス、ロザリンドとオーランド、シーリアとオリバー、オードリーとタッチストーンが手を取り合って並ぶ。
 
「真実が中身を伴うのであれば、そなたたちとそなたたちは何があっても別れることは無い。そなたたちとそなたたちは、心と心をひとつにし、寄り添っていけば、他の異性に目移りすることも無い。冬に木枯らしが吹こうとも、そなたたちとそなたたちは揺らぐことは無い」
 
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「我らが婚礼の歌を歌う間、お互いに疑問があれば尋ね合うがよい。そうすればお互いの不安も消え、婚儀は成立して全てが収まるだろう」
 
3人の小姓(山鹿クロム・三陸セレン・鈴原さくら)が楽人たちの演奏に合わせて歌う(*105).
 
『婚礼は大ジュノーの栄誉』(シェイクスピア作詞・葵照子訳詞・琴沢幸穂作曲)
 
「婚礼は大ジュノーの栄誉。食卓と寝所(しんじょ)の聖なる結合」
「ハイメンによりて街に人が満つ。婚姻こそ称うべし」
「称えよ、称えよ、高く称え、ハイメン、街成す神」
 

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(*105) 原作ではハイメンと従者が一緒に歌う。しかしハイメン役の槇原歌音が絶望的に歌が下手なので、従者たちだけで歌うことにした。
 

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(*106) つまりこの婚礼はハイメンが取り仕切ったのである。結婚の神様が仕切ったのであれば全く問題が無いだろう。実態的には公爵前婚とも取れる。
 
英国では国教会の成立により、他のプロテスタント国と同様、結婚式は宗教儀式ではなく民間行事と変化したので、これ以降必ずしも司祭や牧師の主宰を必要としなくなっていた。
 
半世紀後のピューリタン革命の後は、判事婚という選択も可能になる。
 
オリバー・マーテクストにタッチストーンは「女は物ではないから誰かからもらう筋合いは無い」と発言しているし、シェイクスピアは新しい婚姻の形を模索していたのかもしれない。
 
なぜここに唐突にハイメンが登場するのか、原作は何も説明していない。ただ多くの『お気に召すまま』の舞台では、コリン役の年長の(男性)俳優さんが仮面をつけて顔を出さずにハイメン役を演じることが多い。それでこの結婚式は実際には年長者であるコリンが牧師として結婚式を取り仕切ったのだろうと多くの観客が想像したであろう。プロテスタント的な、万人司祭の考え方である。
 
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筋書き的には一昨日、ロザリンドがタッチストーンと結婚式について話し合った場で、コリンにハイメン役を依頼したという可能性も考えられる。オリバーは昨日シーリアの婚礼準備にロザリンド家に来ているから、その場で“ハイメン前婚”をしたいと言い、了承してもらったものと思われる。シルヴィアスはフィービーと結婚さえできれば多分形式はどうでもよい。
 
またここに若いハイメンが登場したのは、コリンが知り合いの青年に依頼したという可能性も考えられる、ひょっとしたら(コリンもそうだが)curate (牧師補)くらいの資格は持っていたかも。
 

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この後、ハイメンは各々のカップルに結婚の意思を確認する。
 
「オーランドよ、そなたはこれなるロザリンドを妻とし、健やかなる時も病める時も、豊かなる時も貧しき時も、一生愛し合い助け合い、慈しみ合うことを誓いますか」
「誓います」
「ロザリンドよ、そなたはこれなるオーランドを夫とし、健やかなる時も病める時も、豊かなる時も貧しき時も、一生愛し合い助け合い、慈しみ合うことを誓いますか」
「誓います」
「オーランドとロザリンドの婚姻が成立したことをここに宣言します」
 
出席者たちの拍手がある。
 
オリバーとシーリア、シルヴィアスとフィービー、最後にタッチストーンとオードリーも同様に意思確認が行われた(*107).
 
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語り手「結婚式が終わった後は、村人たちも招待して盛大な祝宴が夜遅くまで続いたのでした」
 
楽人たちはこの映画の主題歌『お気に召すまま』の伴奏を演奏する。ここではオードリー役の坂出モナが歌い(*108) 3人の従者がそれにコーラスを入れる。信濃町ガールズたちは華やかな踊りを踊る。
 
村人が多数集まって来ているような映像が映るが実はこの部分はCGである!(CGが使用されたのはこの村人たちと、冒頭のレスリングの観客のみ)
 

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(*107) シーリアたち以下3組の結婚同意の場面は、日独英仏米を含めてほとんどの国の版でカットされた!ただし映画公開直後に発売された DVD/BD では全て収録された。長い映画が大好きなインドでは全部上映された。
 

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(*108) ここはサブ主人公であるフィービー役の七浜宇菜が歌う予定だった。しかし楽譜を渡された宇菜は
 
「私の歌を映画で公開したら世界中で死人が出ます」
 
と言ったので、オードリー役の坂出モナが代わることにした。モナは元WindFly20のメインボーカルであり、とっても歌がうまい。七浜宇菜は過去にCDを出したこともあるのだが
 
「ごめんなさい。あれはソフトで音程を合わせ付けたんです」
と言っていた。
 

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