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■お気に召すまま2022(6)

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河村監督の「カット!」という声が掛かり、俳優たちが緊張を解いて声を掛けあう。河村監督とカメラを回していた美高鏡子も笑顔で何か話している。
 
(この場面は矢本かえでが撮影している)
 
「フレデリック邸での撮影をする間、30分ほど休憩します」
と坂口さん(大和映像映像課長・兼・あけぼのテレビ専務)から声がある。
 
(多忙な大曽根部長はさすがに常時現場に付いていられないので、通常は阪口さんが現場を見ている)
 
ストロー付きのドリンクが出演者たちに配られて、みんな一息つく。みんなマスクを付けるが、そのマスクに空けた穴!からドリンクを飲んでいる。特製マスクである。
 
「だけどヒロシ君、ほんとリュートがうまいね。前から弾いてたの?」
 
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「いやこのお話があってから、立川市の某音楽大学まで毎週1回通って習ったんですよ。ケイさんからは『ギター弾ける人ならすぐ弾けるよ』と言われて、ぼくもそのつもりだったけど全然違うから、大変なことを引き受けてしまった、と後悔しましたけどね」
 
「へー。3ヶ月程度練習しただけには見えない」
「やはり元々の音楽センスがいいんだろうねー。万能プレイヤーだもんね」
「これでレパートリーがまたひとつ増えたじゃん」
「確かにこの楽器ちょっと面白いなと思ってます。この撮影が終わったら、これぼくが買い取る話をしてるんですよ」
「買い取りというより、もらえないの?」
「うん。ぼくが後でケイちゃんに話付けてあげるよ」
「すんませーん」
 
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場面が変わる。広瀬みづほが「フレデリック邸」と書かれた板を持っている(原作第3幕第1場)。
 
フレデリック(光山明剛)とルボー(木取道雄)が居る所にオリバー (Christof Hennig) が入ってくる。
 
「公爵様。申し訳ございません。弟を捕らえようとしっかり準備しているのですが、弟のやつ、あのレスリングの試合の後、1度も家に戻ってこないのです」
とオリバーは言う。
 
「おいおい。ふざけたことを言うんじゃない。そんなことを言って、実はどこか別宅にかくまっているのではないのか?そしてそこに、うちの娘もいるのでは?」
とフレデリックは追及する。
 
「めっそうもございません。本当に私は知らないのですよ」
とオリバー。
 
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「俺が情け深い領主だったことをありがたく思え。気の短い男なら、お前を弟の代わりに今すぐ処刑するところだ。いいか1年だけ時間をやる。あらゆる手を尽くして、草の根を分けても(*24) 弟を探し出し、娘を取り戻せ。弟の生死は問わん。さもないと、お前の土地・財産も、お前が自分の物だと思っているものも全て没収してお前を追放する。お前の嫌疑が弟の口により晴れるまではな(*25)」
 
「ああ。私の心情が分かって頂けたら。私はあの弟を一度たりとも愛したことはありません。そんな私が弟をかくまったりするはず無いのに」
 
とオリバーが言うと、フレデリックは物凄く不快な顔をした。
 
「なんだと?なんて悪徳な奴だ。おい、こいつを叩き出せ。そしてこいつの土地も邸も差し押さえろ」
 
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「え〜〜!?そんなぁ」
 

(*24) 原文は「Finde out thy brother wheresoere he is, Seeke him with Candle」
 
現代英語に直せば "Find out your brother wherever he is. Seek him with Candle"
 
「ロウソクを灯して探せ」というのが「徹底的に探せ」という意味の慣用句。
 
ずっと森の場面が続いている所に、フレデリック邸での短い場面が挿入される。エリザベス朝の時代には、大道具というものが無く、演技だけでシチュエーションを観客に想像してもらっていたのでこういう短い場面転換が可能だった。
 
しかし大道具を使用する現代演劇では、回り舞台のような仕組みでも無いと、こういう場面転換が困難なので、現代の多くの舞台公演ではこの場面は省略されている。しかし省略されると、なぜオリバーが森にいたのか分からなくなってしまう。幕を下ろして、幕の前で演技する流儀もある。
 
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(*25) オーランドの生死は問わないと言っておきながら、オーランドの口からオリバーが関わっていなかったことが証明されるまでと言っているのは矛盾している気がする。捕縛の時にオーランドを殺してしまえば証言できなくなる。
 

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広瀬みづほが「アーデンの森近く、村の外れ」と書かれた板を持っている(原作に無い場面)(*26)
 
オードリー(坂出モナ)が多数のヤギのお世話をしている。異様な鳴き声に気付いて行ってみると、高い岩の上に子ヤギが1頭上っている。
 
「なんでそんな所まで登ったの?こちらにおいで」
とオードリーが言うものの、どうも自分で降りきれないようである。
 
オードリーが困っていると、そこに菱模様の服を着たタッチストーンが通り掛かる。
 
「娘、どうした?」
と彼はオードリーに声を掛けた。
 
「あの子が岩の上に上ってしまって。でも自分で降りきれないみたいで」
とオードリー。
 
「面倒くさい。鉄砲で撃って殺して焼肉にしよう」
「ヤギのオーナーから叱られます!」
「全く面倒くさいな。俺にまかせろ」
と言うとタッチストーンは岩に昇り、ヤギの居る下の段からヤギを抱えて自分がいる段におろす。更に自分が下まで降りて、そこでまたヤギを抱えて板に降ろしてやった。子ヤギは喜んで母ヤギの所に走って行った。
 
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「ありがとうございます!」
とオードリーが言う。
 
「あいつはオスかねメスかね」
「取っちゃったから中性ですね」
「簡単に言うなぁ」
 
「種ヤギにするオス以外は取っちゃいますから。取らないと荒っぽくて私の手には負えません」
「確かに面倒な奴は取っちゃうに限る ('d better cast whoever bothers me)」
「私を大役に取ってくれた人に感謝です (I thank the person who cast me as the great roll)」
 
「でもあんたひとりでヤギの番をしてるの?」
「はい。私お父ちゃんもお母ちゃんも居ないから、トーマスさんの家に雇われてヤギの世話をしているんです」
 
「ふーん。父も母も居ないというのは、君は木の股から生まれたのかい?」
「そんなことはありません!母は一昨年亡くなりました。父はどういう人か知りません」
「へー。若いのに苦労してるね」
「でもトーマスさん親切だから。元々は母がヤギの世話をしていて、私はその手伝いをしていたんですけどね。他に乳搾りにチーズ作りとか、畑の種播きとかの作業もお手伝いしますけど」
 
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「あんたよく見たら可愛い顔してるじゃん。名前教えてよ」
「私はオードリーですけど、可愛いなんて言われたことないです」
「それは見る目のある人が居ない。俺はタッチストーンだ。俺を殴ると殴った奴のほうが手が痛くなるからタッチストーン」
 
「へー。私は聖オードリーの祭日に生まれたからオードリーなんだって」
「ほほお。6月23日生まれか」
「よく知ってるね!」
 

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「で君何歳?」
「知らなーい」
「君は自分の生まれ年は知らないが生まれた日は知ってるのか!」
 
「お母ちゃんが毎年その日にお祝いしてくれてたから。タッチストーンさんは聖ストーンの祭日に生まれたの?」
「聖ストーンというのは知らないなあ」
「なんか聖人ってたくさん居るから覚えきれない」
「まあ全部覚えてる人は少ないだろうな」
 
「やはりそういうもんなんだ。でも聖オードリーの祭日は知ってたんだ?」
「まあ死んだ妹がその誕生日だったから」
「妹さん亡くなったの?」
「まあ人は死ぬものだ」
 
「そうだよねー。昨日まで元気してた人が今日は死んでたりする」
「まあ死んじゃったものは仕方ないから、生きてる者だけで何とかするしかない」
「おじさんいいこと言うね」
「“おじさん”は勘弁してよ」
 
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「じゃ何て呼べばいいの?」
「“愛しのマイスイート(Lovely my sweet)”と呼べばいい」
「ふーん。甘いのがいいなら“私の甘いイモ(My sweet potatoe)”とでも呼ぼうか」
 
「いや、本気で俺、お前のことが気に入った。また来ていいかい?」
「だいたい昼間はこの辺でヤギを遊ばせてるよ」
「ついでに一度俺と結婚してみない(Dost thou marry me)?」
「にっこりさせてもらうのは結構好きだけど(I like that thou makest me merry)」
 
「おまえほんとに気に入った」
 
語り手「それで結局この日タッチストーンはロザリンドから頼まれた用事はすっかり忘れて、夕方までオードリーとおしゃべりし、ヤギをおうちに帰すまで付き合ったのでした」
 
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(*26) このシーンは四国にあるヤギを飼っている牧場で撮影した。今回の映画で唯一の屋外ロケである。
 
モナとグローツァー、監督以下撮影スタッフがG650で四国まで日帰りで往復し撮影してきた。2人は英語台詞で撮影と同時に録音し、後日スタジオで他の言語の台詞をアフレコしている。実は多少アドリブが入っているが、モナはそれに応じて英語でちゃんと返していたので後で褒められていた。でもその部分の訳で、翻訳の人が悩んでいた!
 
「でもモナちゃん英語うまいんだね」
「私数学や化学は赤点ギリギリでしたけど英語だけは90点でしたよ」
「すごいね」
「私、お父さんがオーストレイリア人だから」
「そうだったんだ!」
「嘘です」
 
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ヤギはおとなだとメスが70kg くらい、オスが100kgくらいだが、撮影に使った子ヤギは20kgくらいであった。グローツァーが抱えきれなかった時のために吹き替え役のプロレスラーさんを連れて行ったが、クローツァーは
「このくらいなら平気」
と言って自分で抱えた。
 
実は子ヤギを岩の上にあげるのはこの吹き替え役さんがした。
 
このヤギは“アクア映画の撮影に使われたヤギ”としてその後ずっと展示されているらしい。
 

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場面が変わる。広瀬みづほが「アーデンの森のどこか」と書かれた板を持っている(原作第3幕第2場)。
 
オーランドが出て来て、独白する。
 
「ここにも我が歌を掲げよう。愛の証(あかし)として」
と言って、オーランドは紙とペン・インク壺を出し、紙に詩を書く。
 
「三重に冠した夜の女王(月の女神のこと(*27) )はその純潔な目で女狩人の名前がある青白い球体(月のこと)から私の生き様を全て見つめている」
 
「ああ、ロザリンド。ここにある木々は全て僕の本だ。そこに僕の思いを貼り付けよう。この森で物を見る全ての目が、この森のどこででも僕の詩を見られるように、たくさんの木々に僕の詩を取り付けよう」
 
そしてオーランドは紙を紐で木の枝に掛け、どこかに走り去る。
 
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(*27) 月の女神 (Rome:ルナLuna /Greek:セレネ Selene), それとしばしば同一視される女狩人 (Rome:ディアナDiana/Greek:アルテミスArtemis), そして冥界の女王 (Rome:プロセルピナProserpina/Greek:ペルセフォネPersephone) を重ね合わせて "thrice crowned" と言っている。なおディアナDiana は英語読みするとダイアナである。
 
またアルテミス(Artemis) の別名はポイベー Phoibe でこれは英語ではフィービー Phoebe となり、この物語の田園舞台でのヒロインの名前になる。むろんオーランドはこの物語のフィービーのことを知らない。
 

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