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■お気に召すまま2022(15)

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広瀬みづほが「アーデンの森近く、村外れ」と書かれた板を持っている(原作第5幕第1場)
 
オードリー(坂出モナ)がヤギの世話をしている。タッチストーン(Martin Grotzer)が彼女とおしゃべりしている。
 
「昨日の牧師さんでも良かったのに。あの変なお爺さんは文句言ってたけど」
「いや、オリバー・マーテクストは外れだったと思う。でもちゃんと結婚できるようにするからさ」
 
そこへコリン(藤原中臣)がやってくる。
 
「タッチストーンさん。御主人とお嬢様(ギャニミードとエイリーナ)がお探しですよ」
「分かった。行く。オードリー、君もおいで」
「でもヤギの世話が・・・」
 
と言っていたら、またウィリアム(花園裕紀)が画面右手から通り掛かる。
 
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「ビル!」
とオードリーが声を掛ける。
 
「何だい?オーディー」
 
「しばらくヤギを見ててくれない?」
「またなの〜〜?」
「じゃ、よろしくねー」
 
「ね、オーディー、結婚したの?」
「昨日の結婚式はキャンセルになっちゃったけど、数日中には結婚するよ」
「そっかー。ぼくもオーディーのこと好きだったのに」
「私もビルのこと、友だちとしては好きよ」
 
「分かった。君の結婚に神様の祝福があるように」
「ありがと。じゃヤギをよろしくー」
 
と言って、オードリーはタッチストーン・コリンと一緒に画面左手に立ち去る。
 
(この場面も前出の場面と同様、四国で撮影された)
 

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広瀬みづほが「翌日。公爵の洞窟の中」と書かれた板を持っている
(原作第5幕第2場)
 
オーランドは腕に包帯をして手を吊っており、ベッドに腰掛けている。そのそばの椅子にオリバーは座っている。
 
「そんなことってあるのかい?兄さん。だってまだ1度会っただけなんだろう?」
とオーランドは驚いて言う。
 
「好きになった。それで結婚してくれと言ったら彼女は同意した」
とオリバーは言う。
 
「あるのさ。この世にはこういうことが。俺はエイリーナと結婚する。確かにあれは身分の低い田舎娘だが、そんなことはどうでもいい。俺はドゥボアの名を捨てるから、お前が次のドゥボアになれ(*77)。俺はあの娘と一緒に一生ここで農耕と羊飼いをして暮らすつもりだ。そのことをお前に同意して欲しい」
 
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(*77) あのぉ、次男さんの立場は?(シェイクスピアも忘れてるのでは??)
 

ギャニミード(ロザリンド)が画面右側(上手)から出てくる。
 
「兄さんの気持ちは分かった。結婚式には公爵様たちも招待しよう。取り敢えずエイリーナの身支度を手伝ってやりなよ」
とオーランドは言った。
 
「(男声で)ごきげんよう、お兄様」
とギャニミード(ロザリンド)が挨拶する。するとオリバーは微笑んで
 
「ごきげんよう、“お姉様”」
と言ってから画面右手(上手)に退場する。
 

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ギャニミード(ロザリンド)は言った。
 
「(女声で)ああ、愛しのオーランド。あなたが心臓に包帯を巻いているのを見たら私は辛い気持ちになるわ」
 
この場面、建前的にはギャニミード演じるロザリンドが言っているように見せて実はロザリンド本人の言葉でもある。現実とお芝居が入り乱れている。
 
「僕が包帯を巻いているのは腕だけど」
とオーランド。
 
「(女声で)ライオンの爪が心臓に刺さったのかと思った」
 
「僕の心臓に刺さったのは“ある女性”の視線だ」
 
「(男声で)ぼくが血の付いたハンカチを見せられて気絶する演技を上手にしたことは聞いたかい?」
 
「聞いた。それよりもっと驚くべきことも聞いたけど(*78)」
とオーランド。
 
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(*78) 原文 greater wonders. つまり驚いたことは“複数”である。
 

ギャニミード(ロザリンド)は言う。
 
「(男声で)全くそんな話聞いたこともない。牡羊が2頭喧嘩してたとか、シーザーが『来た見た勝った』(*79) と自慢げに言ったとかならまだ分かるけど、君のお兄さんとぼくの妹は、会うとすぐ見つめ合い、見詰め合うとすぐ恋しいと思い、恋しいと思うとすぐ溜息をつき、溜息をつくとすぐ溜息の理由を尋ね、尋ねたらすぐ解決方法を探し、2人は結婚への階段を一気に駆け上がってしまった。もう棍棒を使っても引き離せない」
 
「2人は明日結婚式をあげる。公爵様に出席をお願いした。でも僕は辛いよ。兄が結婚するところを見ているだけだなんて」
 
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「なぜ明日ぼくがロザリンドの役をしないと思うの?」
「もう想像するだけでは辛くなった」
 
(つまり“ギャニミード演じるロザリンド”ではなくロザリンド本人に結婚式には出てほしいと言っている)
 

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(*79) このジュリアス・シーザー(Julius Caesar ラテン語読み:ユリウス・カエサル)のことばは、この劇のでの原文は 'I came, saw, and overcame:' だが、 実際に彼が言ったのはラテン語なので、Veni, vidi, vici.
 
BC47年のゼラの戦いの勝利をローマに報せたことば。
 

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「ではもう空(から)の会話はやめましょう。ぼくは実は魔術師と知り合いなんだよ。とても立派な人で、邪悪なこととは関わらない。その魔術師に頼んで明日、奇蹟を起こしてあげる。明日、君の前に生(なま)のロザリンドを連れてきてあげるから、君もロザリンドと結婚しなよ。彼女を愛しているのならね」
 
「へー。魔術ね〜」
「ぼくの命を賭けても必ずロザリンドは連れてくるから」
「分かった。それに期待しよう」
 

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そこにシルヴィアス(鈴本信彦)とフィービー(七浜宇菜)が入ってくる。
 
「(女声で)やれやれ。ぼくのことを好きになっちゃった子と、その子を好きな子だ」
とロザリンドは独り言のようにオーランドに言う。
 
フィービーがギャニミードに文句を言う。
「あなたひどいじゃない。あなた宛ての手紙をこの子に見せるなんて」
 
「(男声で)君は不愉快かもしれないが、ぼくは全く気にしない。意地悪で無礼なように見えたとしてもね。君にはそこに忠実な羊飼いが付いているじゃないか。君のことを尊敬している羊飼いが。彼を見なさい。そして彼を愛しなさい」
とギャニミード(ロザリンド)は言う。
 
フィービーが言う。
「シルヴィアス、この若い人に愛とは何か語ってやってよ」
 
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シルヴィアスは言った。
「愛は溜息と涙でできている。そして僕が君にそうなんだ。フィービー」
 
「そして私はギャニミード様にそうなの」
とフィービー。
 
「そして僕はロザリンドにそうだ」
とオーランド。
 
「そしてぼくはどんな女性にも、そうでない」
とギャニミード(ロザリンド)。
 

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「愛とは信頼と奉仕だ。そして僕が君にそうなんだ。フィービー」
とシルヴィアス。
 
「そして私はギャニミード様にそうなの」
とフィービー。
 
「そして僕はロザリンドにそうだ」
とオーランド。
 
「そしてぼくはどんな女性にも、そうでない」
とギャニミード(ロザリンド)。
 
「愛とは幻想で、激情で、願望で、憧れで義務で敬意で、慎ましさで忍耐で焦燥で、純粋で試練で敬意。そして僕が君にそうなんだ。フィービー」
とシルヴィアス。
 
「そして私はギャニミード様にそうなの」
とフィービー。
 
「そして僕はロザリンドにそうだ」
とオーランド。
 
「そしてぼくはどんな女性にも、そうでない」
とギャニミード(ロザリンド)。
 
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「それなら何故あなたは私の愛を拒否なさるんですか?」
とフィービー。
「それなら何故君は僕の愛を拒否するの?」
とシルヴィアス。
「それなら何故君は僕の愛を拒否するの?」
とオーランド。
 
「ちょっと待て。一体各々誰に『なぜ愛を拒否するのか』と言ってるの?」
とギャニミード(ロザリンド)。
 
「ここに居なくて聞いてないことになっている女性に」
とオーランド。
 
ギャニミード(ロザリンド)は言う。
「(男声で)もうこんな狼が月に向かって遠吠えするような大合唱はやめてくれ」
 
「(シルヴィアスに向かって)君にはできるだけ協力しよう」
「(フィービーに向かって)もしぼくにそれが可能なら君を愛しよう」
「(みんなに)明日みんなここに再度集まってくれ」
 
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「(フィービーに再度)もしぼくが女と結婚可能で明日結婚するなら君と結婚しよう」
「(オーランドに)もしぼくが男を満足させられて、明日あなたが結婚するなら、ぼくはあなたが満たされるようにしよう」
「(シルヴィアスに)君が喜ぶもので君が満足されて、明日君が結婚するなら、ぼくは君を満足させよう」
 
「(オーランドに)あなたがロザリンドを愛するから、あなたはロザリンドと結ばれる」
「(シルヴィアスに)君がフィービーを愛するから、君はフィービーと結ばれる」
 

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「(みんなに)ぼくは女を愛さないからどんな女とも結ばれない。じゃ今日はこれで。みんな明日はちゃんと来てくれ」
とギャニミード(ロザリンド)は言った。
 
「命に掛けても必ず来ます」
とシルヴィアス。
 
「私も必ず来る」
とフィービー。
 
「僕も」
とオーランド。
 

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