広告:メイプル戦記 (第1巻) (白泉社文庫)
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■お気に召すまま2022(16)

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広瀬みづほが「アーデンの森内の空き地」と書かれた板を持っている(原作第5幕第3場)。
 
タッチストーンとオードリーが手をつないでやってくる。
 
「喜べオードリー。明日は俺たちの結婚式だぞ」
「嬉しい!」奧さんになるというのは淫らなことじゃないよね。あれ?そこに公爵様の従者が3人」
 
3人の従者(*80)が左手から来る。3人はダブレットにショートスカートを穿き、タイツを履いている。
 
従者の1人ショコラ(山鹿クロム)が言う。
「よいところでお会いしました。道化様」
 
タッチストーンも彼らを歓迎する。
「こちらも歓迎だ。まあ座って座って。そして歌を歌ってくれ」
 
従者の1人ビスクィ(三陸セレン)が言う。
「どうぞ、おふたり真ん中にお座り下さい。私たちが周囲を取り囲んで歌います」
 
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従者の1人マカロン(鈴原さくら)が
「よし歌おう」
と言って、3人は伴奏付きで歌い始めた。
 
楽器はショコラ(山鹿クロム)がタンバリン(*81)、ビスクィ(三陸セレン)がリラ(*82) 、マカロン(鈴原さくら)がファイフ(*83)を演奏している。マカロンは笛を吹くのに口が塞がっているので、歌っているのはショコラとビスクィの2人である。
 

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(*80) 原作では従者(ページ)は2人だが「タッチストーンとオードリーを囲む」ということから3人に改変した。なおこの歌は合いの手が入るので最低2人以上のボーカルが必要である。3人は今回の役名にちなんで“金平糖”という臨時ユニットを組むことになった。英語の“コンフェクショナリー”のもじりである。
 
(*81) タンバリンはBC1700年頃から存在する。
 
(*82) リラ(イタリア語でリラLira、ドイツ語でライアLeier、英語ではライアLyre, フランス語でリールLyre)、つまり竪琴は神話時代からある楽器である。
 
↑フランス語と英語は綴りは同じだが発音が違う。英語とドイツ語は発音は近いがスペルが違う。ただしドイツ語でも英語と同じスペルで書くこともある。
 
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(*83) ファイフ(fife)、つまり横笛は15世紀からヨーロッパでも見られるようになり、16世紀には一般的な楽器のひとつとなった(それ以前ヨーロッパでは笛といったら縦笛だった)。この3人は舞音のバックを務めるキャット・シスターズのメンバーなので全員ファイフは吹ける。普段はプラスチック製のもの(平均律)で吹いているが、今回は映画のために制作された特製の木製ファイフ(ピタゴラス音律)を吹いている。
 

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『それは彼女と彼でした (It was a lover and his lass)』(シェイクスピア作詞・葵照子訳詞・醍醐春海作曲)(*84)
 
「それは彼女と彼でした」
「(さぁ)ヘイ!(さぁ)ホー!(さあ)ヘイ・ノニーノ!」
「とうきび畑を通り抜け」
「春の季節には鐘が鳴る」
「小鳥も歌う(さあ)リン(はい)リンリン」
「恋人たちは春が好き」
 
「ライ麦畑も通り抜け」(*85)
「(さぁ)ヘイ!(さぁ)ホー!(さあ)ヘイ・ノニーノ!」
「寝転がっておしゃべりしよう」
「春の季節には鐘が鳴る」
「小鳥も歌う(さあ)リン(はい)リンリン」
「恋人たちは春が好き」
 
「祝いの歌も始まるよ」
「(さぁ)ヘイ!(さぁ)ホー!(さあ)ヘイ・ノニーノ!」
「人生って花なんだ」
「春の季節には鐘が鳴る」
「小鳥も歌う(さあ)リン(はい)リンリン」
「恋人たちは春が好き」
 
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「だから今がその時さ」
「(さぁ)ヘイ!(さぁ)ホー!(さあ)ヘイ・ノニーノ!」
「みんなで愛の祝福を」
「春の季節には鐘が鳴る」
「小鳥も歌う(さあ)リン(はい)リンリン」
「恋人たちは春が好き」
 

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(*84) この歌にはシェイクスピアと同時代の Thomas Morley (c.1557-1602) が付けたリュート伴奏のメロディーも存在するらしいが、この映画では使用しない。醍醐春海が曲を付けてタンバリン・リラ・ファイフ伴奏に編曲したものを使用した。実際の音源はスタジオ録音である。
 
元のタイトルは "It was a lover and his lass" で直訳すれば「それは恋する男と娘でした」になるが、敢えて「それは彼女と彼でした」と男女の順序を逆転させたのは、字数の関係である。「彼と彼女でした」では音数が落ち着かない。
 
(*85) スコットランド民謡「麦畑」でもコメントしたが、ライ麦はとても背が高い。つまりライ麦畑の中で“何をしていても”外からは見えない!
 
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歌を聴いてタッチストーンは言った。
 
「お前らまだ声変わりしてないの?」
「声変わりはしましたけど」
「まるで女みたいな声だ」
「すんませーん」
 
「お前ら実は金玉無いだろ? (You haven't balls, have you?)」
「あると思いますけど (I think I have)」
「あるんじゃないかなぁ (I guess I have)」
「あるかも知れない (I suppose I have)」
 
「いや絶対無い。お前ら、結婚式では女の服を着て歌え」(*86)
「そんなぁ」
 
「さあ行こう、オードリー」
 
それで全員退場する。
 

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(*86) 原作では「お前ら歌が下手だ」とタッチストーンは文句を付ける。ここは音痴な人に出てもらおうという意見もあったが、音痴な歌をサウンドトラックには収録出来ない!ということから、充分歌のうまい人の登用となった、その代わり、お前ら男の格好してるけど実は女だろうと指摘されることにした。
 
日本でも海外でも。この3人はそもそもスカートを穿いているので女性キャラクターと取った人がほとんどだったようである。でもこの時代に女性がショートスカートを穿くことはない。女性はロングスカートであり、ショートスカートは男性の服である。
 
男性キャラクターと思った人でも、実際には若い女優さんまたは女性歌手の男装だろうと思ったようである。だいたいクレジットも
 
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Chrome Yamaga
Selen Sanriku
Sakura Suzuhara
 
で、充分女性名に見える。特にさくらは女性名にしか見えない!
 
そういう訳で宗教界からのクレームは全く出なかった。この場面をカットするかは各国版の任意としたが、“尺”(*87) の短縮以外の目的でカットした国は無かった。
 

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(*87) 映画の長さのことを業界用語で“尺”と言う。
 
昔は映画はフィルムで撮影され上映されていたので、元々はそのロールフィルムの長さのことを言ったものである。
 
映画の黎明期には音声も無かったし、撮影も上映もフィルムは手回しだったので“だいたい”1秒間に16コマくらいの速度だった。初期には様々なサイズのフィルムが乱立していたが、やがてフレームが18mm×35mm で、1フィートに16フレーム設定する方法が標準となった。1 ft (304.8mm) ÷16 = 19.05 なのでフレーム間に1mm程度の間隔がある。そして「1秒で1フィート」というのが分かりやすかったのである。このフィルムは横幅が35mmなので、“35mmフィルム”と呼ばれた。
 
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やがてトーキー(音声付き映画)が発明されるとコマ送りの速度が乱れると音のピッチまで変わって困るのでコマ送りはモーターによる自動となった。この時、コマ送りの速度は秒速1.5フィート、つまり 24 frame/sec に改訂され、このフレーム速度が現代まで続いている。(テレビは 30 frame/sec)
 
日本では1フィート304.8mm が1尺 303.03mm に近いので、フィートのことを俗に尺と言った。それでフィルムの長さ=上映時間も“尺”と呼んだのである。この言葉は撮影・上映がビデオテープになり、デジタルになっても、そのまま使用されている。
 
フィルム時代は長い映画は1本のロールフィルムに収まらないので数本のロールで構成されており、ロールの末尾付近に映画館での上映時に次のフィルムを掛けた映写機をスタートさせる合図の記号が丸数字で入っていた。つまり長い映画の上映には2台の映写機が必要であった。たまに技師が失敗して空白の画面が出ていた。
 
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またフィルム時代はフィルムのコピーを作るのが大変なので、人気映画は田舎の映画館にはなかなか回ってこなかった。また上映期間が終ったらフィルムは次に上映する映画館に送らなければならないので、上映期間の延長も許されなかった。デジタル時代になってこういう問題が解決したので、撮影がアナログでも上映はデジタルという時代が結構あった。もっとも映画館自体、田舎からは消えた!
 

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広瀬みづほが「田園地帯のどこか」と書かれた板を持っている(原作に無い場面)(*88)
 
マーガレット(栗原リア)が不安そうな顔で羊の群れを導いていたら1匹の羊が群れから放れようとした。
「あーん、だめー!そっちに行ったら。こっちおいで」
とマーガレットは言うが、羊は言うことを聞かない。そのうち別の羊も群れを離れてさっきの羊とは反対の方角に行こうとする。
「だめー、戻って!」
と言うが、も言うことを聞かない。その内3匹目の羊が群れを離れようとする。
 
「みんな戻ってぇ」
と言うが、羊たちは全然言うことを聞かない。
 
羊たちに完全になめられている。
 
えーん。どうしよう?と思っていたら、ウィリアム(花園裕紀)が通り掛かる。ウィリアムはすぐ状況を把握した。
 
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「おい、こっち来い」
と言って、群れを離れようとしていた羊たちを杖で軽く叩き、全部群れに戻した。
 
「ありがとう!どうしようと思った」
 
「君、根本的に羊飼いの仕事ができてない気がする」
「ごめんなさい」
 
「君が少し慣れるまで僕が教えてあげるよ」
「本当ですか?」
「今日の夕方羊を連れ戻したらオーナーさんに話してあげるよ。しばらく僕が付いてて指導しますからって。こんなんじゃきっとオーナーさんも不安がってるよ」
 
「ありがとうございます!」
 

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(*88) このシーンは四国でヤギ牧場の撮影をした時、近隣の羊牧場で撮影した。
 
 
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