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■女子中学生・ミニスカストーリー(22)

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前日、8月29日(日).
 
千里B(に扮した千里V)が約1ヶ月間続けて来た“修行”が満行となった。
 
「ここまで修めたら、この精霊たちをコントロールできるはずだよ」
と宮司さんは言った。
 
(この日は星子はお休みにしてVが自分でQ神社に出仕している)
 
宮司さんは解説する。
「村山さんの周囲を巡回している精霊は十二天将と呼ばれるものだ。かの安倍晴明(あべのせいめい)も駆使したと言われる精霊。これはこのような名前が付いている」
と位って宮司さんは名前を書き出す。
 
前一・騰蛇(とうだ)火・巳の方位
前二・朱雀(すざく)火・午の方位
前三・六合(りくごう)木・卯の方位
前四・勾陳(こうちん)土・辰の方位
前五・青龍(せいりゅう)木・寅の方位
天一貴人(てんいちきじん)土・丑の方位(*17)
後一ろ天后(てんこう)水・亥の方位
後二・大陰(たいいん)金・酉の方位
後三・玄武(げんぶ)水・子の方位
後四・大裳(たいじょう)土・未の方位
後五・白虎(びゃっこ)金・申の方位
後六・天空(てんくう)土・戌の方位
 
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「各々の五行(ごぎょう)と十二方位が割り当てられている。これらの精霊に君は、例えば人にメッセージを伝えるお使いとか、監視とか、道案内をさせたり、時には自分の代理とかをさせることができる。自分の代理というのは安倍晴明はよくさせていたらしいけど、やり方は現代には伝わっていない」
 
と宮司さんは言う。
 
(*17) 天一貴人は確かに“土行”に属するが、他の天将と異なり、五行に基づく各属性ではなく“上”に配されることに注意が必要である。つまり貴人は土神ではなく上神である。貴人は他の天将たちより一段上に立って全体の管理をしている。きーちゃんが千里Yに説明したように“事務局長”という表現が比較的近い。
 

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Q神社の平井宮司は千里(Bを装ったV)に説明する。
 
「例えば青龍に、香取巫女長に『新聞を持って来て』というのを伝えたいとするね。その場合、このように唱えればいい」
 
と言って宮司さんは呪文を書いたものを渡すので、千里は唱えた。
 
「子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥(ねうしとらうたつみうまひつじさるとりいぬい)の寅(とら)、青龍(せいりゅう)よ、香取巫女長に『新聞を持ちて参られよ』と伝うべし」
 
すると自分の周囲を飛んでいた精霊?のひとつが飛んで行ったような気がした。5分もしないうちに、香取巫女長が新聞を持ってくる。
 
「なんか新聞を持って来てと言われたような気がしたから持って来た」
と言っている。
 
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「すごーい!」
と千里は感動した。
 

「でもこの精霊たち、ずっと私の周囲を飛んでるんですか?」
と千里は訊く。
 
「それは天空の力を使えば隠せるはず」
と言って宮司は古い和綴じの本を確認しながら、呪文を書いた。千里が唱える。
 
「子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥(ねうしとらうたつみうまひつじさるとりいぬい)の戌(いぬ)、天空(てんくう)よ、そなたたち十二天将の姿を隠蔽せよ」
 
すると、飛び回っている精霊たちの姿が消えたので
「すごーい!」
と思った。
 
(本当は千里本人の力でシールドくらいできるのだが、思いつかなかったし、Gも教えなかったので、Vは結局この天空アイコンの力で精霊たちを隠すことができた)
 
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十二天将アイコンに対する対処
 
G:7/31に全部捕獲してお守り袋に入れた
R:7/31-8/12ひとりずつ本体を呼び出しては、アイコンは捕獲。
Y:7/31にシールドしちゃった♪
V:8/29に天空アイコンの力で隠蔽
B:8/28はA大神が一時的に隠していたが、29にVが隠蔽したので完全に消えた。
星子:Gが“偽アイコン”を周回させていたが、8/29にVが隠蔽したので取り外した。
 

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「この本コピーしていいから少し研究してみて」
「はい、お借りします!」
 
それでVは本を借りてW町の自宅に持ち帰った。しかし
 
「ああ、その本なら、うちにもあるよ」
と言って、Gが本棚から安倍有世著『十二天将使役極意』(*18)を取り出すので、なにげにこの家の本棚は凄いとVは思った。
 
「コピーなんか取らなくても読んで覚えればいいよ。30分で通読できるから」
 
と言いながら、“千里”は小学生時代にこの本読んでるのにVちゃん忘れたんだろうなあなどと思っている。
 
「この本の字が私には読めない」
と、そのVは言っている。
 
草書で書かれてるからねとGは思う。草書で書いた原稿を木版印刷したものである。この家にあるものも、Q神社から借りて来たものも天保年間に出版されたもののようだ。当時は一種の占いブームが起きていたので、そのブームの中で出版されたものかも。本当に安倍有世の著作なのかは分からないが、文体は確かに室町時代っぽい。
 
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文体が古いから、この本は文字を楷書に書き直しても、慣れてない人には読みにくいかも?安倍晴明が(本当に)著した『占事略决』本体(この本にも引用されている)みたいな平安時代の文章よりは読みやすいけど。
 
「だったらコピー取っても無意味という気がする」
「そんな気はしたけど借りて来た」
 
この本はRも内容を覚えていたので、例の呪文も覚えていた。YVBは忘れていた。なお小学生時代の千里は草書の読み書きができたが、今それができるのはGとRだけで、YVBはできない。子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥を“訓読み”ではなく“音読み”したのはRの“勘”である。安倍有世の本には特に読み方までは記載されていなかった。H大神はわざわざこの本の呪文を使って!“訓読み”したらアイコン自体を使役し、“音読み”したら本体を召喚するように設定していたのだが、美鳳が「多分教えなくても使いこなす」と想像した通り、千里はすぐ使いこなした。
 
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(*18) 安倍有世(1327-1405)は実在の人物で安倍晴明の14代目の子孫にあたる。安倍家の中興の祖であり、一時勢いが衰えていた安倍家を再び盛り立てた人物である。ただしこの本は架空のものである。
 

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同じく8月29日(日).
 
旭川の天野家。千里Rは昨夜遅くここに入り、そのまま泊まったのだが、この日は朝6時に朝食を一緒に取った後、例によって、まずはフルートの練習をした。越智さんは今日は15時頃来るらしいので、それから3時間くらい稽古を付けてもらう予定である。
 

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8月29日(日)午前10時頃。
 
真広は旭川の、貴子の家を訪問した。
 
札幌8:00(スーパーホワイトアロー3号)9:20旭川
 
「あら、真広ちゃん、お久〜。可愛い服着てるね。とうとう女の子になりたくなった?」
と貴子が言うと
 
「その件なんだけど、ちょっと確認したいんだけど」
という真広の顔が恐い!!
 
貴子とお茶を飲んでいた女子中生が
「席外してますね」
と言ってフルートを持ち、席を立とうとしたが
 
「千里はここに居て」
と貴子は言った。それで千里は
 
「私は彫像と思って下さい」
と言って、テーブルから離れたソファにティーカップとフルートを持ったまま移動した。
 

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真広は千里を見て、貴子さんの眷属か何かかなと思い、貴子に用件を話す。
 
「ぼく、そして初広兄が突然性転換しちゃったんだけど」
と真広が言うと、貴子は目をパチクリさせて
 
「どういうこと?」
と訊く。
 
「これ貴子さんのせいではないの?」
「真広ちゃん、性転換しちゃったの?」
「これ見て」
と言って、真広は服を脱いでヌードになってしまう。
 
「よく決断したね。真広ちゃんは女の子になる素質があると思ってたよ。でも性転換手術痛かったでしょ?」
 
「ぼくは朝起きたらこういう身体になってた」
「へ?」
「初広兄は彼女とデート中に、つい1時間ほど前までは確かに男の身体だったのに、いつの間にか女の身体になってしまっていた」
「どういうこと?」
 
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「こちらが訊きたいんだけど、これ貴子さんがしたんじゃないの?」
 
貴子は少し考えるようにしてから言った。
 
「お兄ちゃんはいいとして、真広ちゃんは女の子になりたがってるみたいだから、その内、女の子に変えてあげようと思ってた。でも私まだ何もしてないよ」
 
「ほんとに?」
「私そういうのでわざわざ嘘つかないよ」
 
真広は腕を組んで裸のまま椅子に座った。豊かなバストが組んだ腕の上に乗っている。千里がガウンを掛けてあげる。真広は「ありがとう」と小さく言った。
 
「貴子さんのせいじゃなかったのか」
「それに私、女の子に変えるにしても、予告無しで変えることは(めったに)無いよ」
 
千里が発言する。
「貴子さんは、可愛い男の娘を見たら、女の子に変えてあげたい気分になるみたいだけど、本人の同意を取ってから性転換するか、性転換した後で『女の子の身体素敵でしょ』とか言って、事後承諾取ったりするよ。性転換してそのまま放置ということは無いよ」
 
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「確かにそうかも」
と真広も言う。
 
「でも、だったら貴子さんにお願いがあるんだけど」
「なあに?」
「ぼくを男の子に戻してもらえない?たぶん貴子さんならできるよね?」
 

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貴子は考えた。そして言った。
 
「戻すのはいつでも戻してあげられるけど、なぜ男の娘に戻りたいの?だって元々女の子になりたかったんでしょ?」
 
「このままでは跡継ぎが居なくなってしまうからだよ」
「は?」
 
真広は説明した。
 
自分たちは男3人の兄弟だった。だから父としては跡継ぎは安泰と思っていたと思う。ところが、末弟の古広は物心ついた頃から、女性指向があり、小学校にはいつもスカートを穿いて通っていた。中学に入る時に大揉めに揉めたけど、古広は自分はセーラー服で通学すると言って譲らず、両親や教師と激論した末にセーラー服での通学を認めさせてしまった。だから古広は事実上女の子になってしまったので、跡継ぎ候補からは離脱した。
 
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自分も小さい頃から女の子になりたいと思っていたけど、古広みたいにスカートで通学する勇気は無かった。それに息子が2人も女になってしまったら、父親もショックすぎるだろうし、自分は恋愛に関してはバイだから、女の子と結婚しても夫婦生活は維持できる自信があった。だから仮面男子をしていこうと思っていた。
 
ところがここで兄の初広にもどうも女性傾向があるようだということに気付いた。もしかしたら初広はその内、性転換手術とかしちゃうかも知れない。そうなると自分しか跡継ぎがいなくなるので、自分は絶対に女になるわけにはいかないと思うようになった。
 

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