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■夏の日の想い出・分離(8)

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1部屋に集まってほどなくして孝郎さん自身が石油ストーブを持ってきてくれて点火する。
 
「あ、ストーブでちょっとホッとした」
と美空が言うと
「ホット(hot)だからホッとするんだよね?」
とダジャレ好きな小風が言う。
 
「じゃ私は他の人たちのフォローを」
と海香さん。
「うん。頼む」
と言って孝郎さんが部屋に残り、海香さんは出て行く。
 
「いや泊まりの女性従業員は少ないから、海香も含めて居る女はフル回転になってる。SHINに女装させて手伝わせたいくらいだよ」
と孝郎さん。
 
「女装しなくてもいいなら手伝える所は手伝うけど」
と黒木さん。
 
「うん。頼むかも知れない」
 
「私たちもできる範囲で手伝いますよ」
と和泉。
 
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「うん、申し訳ないけど頼むかも知れない」
 
最初に千里が発言した。
「相沢さん、提案します。取り敢えず自家発電の設備を作りましょうよ」
「うん。俺も思った。すぐに発注するつもり」
「電気さえあればだいぶ違いますよね」
 
「そうそう。それで道路状況なんだけど、テレビ局のクルーからもらった情報によれば、こういうことのようなんだよね」
と孝郎さんは説明した。
 
・八川集落と国道沿いにある大原集落との間の村道は積雪に加えて倒木などもヘリコプターからの観察で確認されており、復旧に数日かかる見込み。
 
・五條から熊野に至る国道168号も数カ所で通行不能箇所が出ていてこちらは必死の除雪作業を進めているので、おそらくお昼頃までには、取り敢えず五條と大原の間は通れるようになる見込み。
 
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「あのぉ、この旅館と八川集落との間の道は?」
と私が訊くと
 
「うん。多分今日中には通れるようになると思う」
と孝郎さんは言った。
 
「え〜〜!?」
 
「でも八川まで行けてもその先の道が通れないんでしょ?」
と和泉が尋ねる。
 
「そうなんだよ。そちらの方が重症。今日明日に通れるようになるということは多分無い」
 
私は青くなった。万一道路が開通してくれなくて移動できず、明日のライブに出られないなどという事態になったら、前代未聞。非難囂々だろう。特にこれは通常のライブではない。多くのボランティアの人に動いてもらっているチャリティライブなのだ。物凄く多くの人に迷惑を掛ける。
 
何か?何か手は無いか??
 
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ほどなく仲居さんが朝御飯も運んできてくれたので、美空が「頂きます!」と大きな声で言って食べ始める。私たちも和んでしまい、みんな朝食を食べ始める。
 
「ご飯、美味しいです。ぶりの照り焼き最高」
と美空はご機嫌である。
 
私もここは取り敢えず食事をした方がいいと思ったので食べ始める。お腹が空いている状態では妙案も浮かばない。
 
その時、千里が言った。
「スノーモービルが使えませんか?確か女将さん自らスノーモービル走らせていると聞いた気がしたのですが」
 
「うん。実は俺もそれを考えた所。蘭子ちゃん、明日の午後に福島県でライブがあるんだろう?」
と孝郎さん。
 
「はい」
 
「だからもう少し雪が小降りになった所で、スノーモービルの上手い奴に蘭子乗せてもらって八川集落まで、状況によっては、更に向こうの大原集落まで送らせようと思う。大原集落から先はたぶん昼頃には車で移動可能になりそうということだから、それで五條まで行けば、そっから先は電車で移動できる」
 
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「良かった」
私はちゃんと行けるルートがあると分かると安心した。
 
「今日中に大阪くらいまで辿り着けばあとは何とかなるよね?」
「うん。最悪明日朝の新幹線で移動すれば新大阪から福島までは4時間半。飛行機ならもう少し早いかな」
 
「今の状況なら明日も飛行機は飛ばないかも」
「まあそれでも新幹線で間に合うなら何とかなるね」
 

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「大原集落から五條まで車でどのくらい時間がかかりますかね?」
「ふだんなら2時間で行くんだけど、雪道だからスピードが出せないと思うし交通規制とかが掛かる可能性あるから5時間見たほうがいいかも」
「そんなに!?」
 
「ここから大原までスノーモービルでどのくらいかかります?」
「あそこまで走ったことがないので分からないけど、たぶん30分くらいで到着する」
 
「だったら放送局の人に頼んで、★★レコードの奈良支店に連絡を取ってもらって、車を1台大原まで持って来てもらえるようにできませんかね?」
と和泉が言う。
 
「うん。頼んでみよう」
と孝郎さんは言ったのだが、千里が発言する。
 
「そもそも私が大阪まで移動するつもりで矢鳴さんに来てもらっているから、矢鳴さんに乗せてもらえばいい」
「あ、そうか!」
 
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「矢鳴さんは今五條市内にいる。さっき一瞬だけ携帯のアンテナが立ったからその瞬間にメール送信して、道路が開通したらこちらに向かってできるだけ近い所まで来てくれるように頼んだ。多分大原まで来てくれると思う」
 
「凄い!」
と私は思わず言った。
 
「車はアテンザを持って来たの?」
「東京から運転してきたら大変だから、新幹線で大阪まで行って、貴司からランドクルーザー・プラドを借りてきてもらっている。雪道にも強いよ。もちろんスタッドレス履いてる」
 
「よく堂々と借りるね!」
「車は以前から私たちお互いに融通しあっているから。関東に貴司が来た時にインプを貸したこともあったよ」
「へー!」
 

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千里は矢鳴さんに再度連絡するといい、携帯を開いてメールを打っている。
 
「千里はスマホにしないの?」
「私、そちらのマリちゃんと同様に静電体質なんだよ」
「ああ。。。」
「スマホとは相性が悪いみたい。ショップで触ったらいきなり落ちた」
「そうそう。マリもそうだっんだよ。それでマリも結局ガラケーに戻してしまった」
 
「私はこりゃダメだと思ったから、最初からスマホには変えてない」
 
千里はメールを打ち終わった後でずっと画面を見ている。
「よし」
と言って送信ボタンを押す。
 
「うん。送れた」
「すごい」
 
「見てると、ずっと圏外なんだけど、たまーに一瞬だけアンテナが立つんだよ。その瞬間に送信すると何とかなるみたい」
 
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「でもそれガラケーだからかも。スマホは全くアンテナ立たないもん」
 
ほどなくして千里の携帯の着メロが鳴る。
 
「矢鳴さん、既に出発しているって。今、もう20kmほど来ているらしい。カーナビには奥八川温泉まで50km 1時間と表示されているらしいけど、まあ大原に到着するのがお昼くらいだろうね。途中途中連絡を入れてくれるって。それとケイはスノーモービルで脱出するから大丈夫という件を町添さんに連絡してもらったから」
 
「ありがとう。助かる!」
 

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そんなことをしているうちに放送局のスタッフが
 
「おはようございますー」
と言って入って来た。どうも泊まり客の様子を中継しているようだ。
 
「これ生中継ですか?」
「はい、そうですよぉ。この放送は奈良##放送を通して全国に生中継しています。おはようございます、KARIONさん」
 
「おはようございます」
「なんか大変な事態になってますね」
「どうも雪だけじゃなくて倒木が凄いみたいで、これここから出られるまで2〜3日掛かりそうですね。電気も使えないし」
 
「ふだん普通に使えているものが使えないと物凄く不自由を感じますね」
 
「でも朝御飯美味しいです。私このご飯の美味しさで満足しています。道路が開通するまで、この宿のご飯を堪能します」
 
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と美空が言うと、場が本当に和む感じである。
 
「まあ出られない間は宿代はタダにしてもらえるみたいだし、アルバム制作で大変だったらか2〜3日休養のつもりで、のんびりさせてもらいますよ」
と私は言った。
 
「そういえば、らんこさん」
「はい?」
「調べてみたら、明日福島県でローズ+リリーのライブがあるみたいですが大丈夫なんですか?」
 
「私はKARIONのらんこですから。私がここに居ても、ローズ+リリーのケイはちゃんと明日、福島市に行って歌うと思いますよ」
と私はカメラに向かって笑顔で答えた。
 

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その後少し話した所で、いったん生中継は終わる。
 
放送局との接続を切った後で帆奈美ちゃんが本気で心配して聞いてくれた。
 
「実際問題としてどうなさるんですか?」
「スノーモービルで八川集落、あるいはその先の大原集落まで運んでもらうことにしています」
 
「なるほど!」
 
「大原まで★★レコードのスタッフの人に車を持ってきてもらっているんですよ。ですからそこから車で五條まで走って、あとは電車と新幹線で移動しますので、明日の午前中までには福島に到着出来るはずです」
 
「その話、放送しちゃいけませんよね?」
「すみません。それは勘弁してください」
「分かりました」
 
「でも私たちがスノーモービルで脱出する所とか念のため撮影しておいてもいいですよ。放送はしないと約束して頂ければ」
 
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と私はとっても婉曲的な言い方をした。
 
「ぜひ撮影させて下さい!放送しませんから」
と帆奈美は笑顔で言った。
 

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放送局のスタッフが他の部屋に移動してから小風が心配するように言った。
 
「だけど醍醐さんも秋田に行かないといけないんじゃないの?」
 
「私は選手じゃないから、最悪間に合わなくてもごめんなさいで済むよ」
と千里。
 
「スノーモービルって定員は何人なんですか?」
と和泉が孝郎さんに訊く。
 
「1人乗りと2人乗りがあるから、うちのスタッフに2人乗りを運転させて後ろに蘭子を乗せようと思ってた」
と孝郎さん。
 
「しかし醍醐さんも出ないといけないのなら、2往復させようかなあ」
と孝郎さんは少し考えるようにしていたのだが、美空がこんなことを言い出す。
 
「だったら、千里が運転して、後ろに蘭子乗っけていけばいい」
 
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「ほほぉ!」
 
「千里、スノーモービルを運転したことは?」
と和泉が訊く。
 
「何度もある。雨宮先生にこき使われているから」
「あぁ」
 
「だったら本当に醍醐さんが運転してもいいよ。スノーモービルは八川ならうちの親の家に置いていけばいいし、大原なら友だちがいるから、そこに置いていけばいい」
 
「うーん。じゃ、そうさせてもらおうかな」
と千里も言う。
 
「まあどっちみち雪がもう少し小降りになってからでないと、ベテランでも遭難する」
 
「じゃ空模様を待ちましょう」
 

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9時頃、放送局スタッフから得られた天候の状況、復旧作業の状況をなんとプリントごっこで印刷した紙を仲居さんが配っていった。字は海香さんの手書きっぽいなと思った。
 
「電気が使えないので館内放送が使えなくて。それでコピー機も電気が無いと使えないもので」
 
「よくプリントゴッコなんて残ってましたね!」
「ランプが5個だけ残っていたんですよ。5回だけは使えるので取り敢えずまた夕方くらいには、状況報告のレポートをお配りします。
 

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10時頃、お客様も少し落ち着いておられるようなのでということで、社長室に集まって孝郎さんの弟さんの百日祭を始める。ここは弟さんが執務のために使っていた部屋だが、現在孝郎さんは従業員用の大部屋の方に机を置いて執務しており、ここは使っていないらしい。この百日祭が終わった所で模様換えして応接室にするという話であった。
 
千里は神職さんから「あなた残っているのなら手伝ってよ」と言われて鼠色の巫女服に着替えてお手伝いをしている。
 
「その巫女服は初めて見た」
「葬祭用だよ。海香さんが巫女役を務めてくれる予定で神職さんが持ってきたのを私が使うことになった」
「なるほどー」
 
出席しているのは、女将、相沢兄妹とその両親、板長さん、仲居頭さんのほか数人のベテランっぽいスタッフさんたちである。私たちもその末席に並ばせてもらった。そんなに広い部屋では無いので、結構ぎゅうぎゅうになる。
 
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祭壇が作られている。
 
巫女姿の千里が大幣を振って参列者のお清めをする。
 
神職さんが献饌をしてから祭詞を奏上する。一同はじっとそれを聞いている。千里が龍笛を吹く。葬祭用の曲なのだろうが、物悲しい悲哀を帯びた旋律である。私は後でこの曲の譜面を千里に教えてもらおうと思った。
 
やがて祭詞の奏上と龍笛の演奏が終わる。遺族を代表して後継社長の孝郎さんが玉串を捧げ、その後神職のお話があって百日祭は終了した。
 
30分ほどの儀式であった。
 
 
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夏の日の想い出・分離(8)

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