【夏の日の想い出・いろはに金平糖】(4)

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数紀はその日0時過ぎに疲れきって男子寮に戻って来ると、エントランスを通り、エレベータに向かおうとした所で、ゆりこ副社長に呼び止められた。
 
(エントランスを通るにはidカードが必要だが、非接触式なので所持しているだけで自動的にドアは開く、エレベータはタッチが必要)
 
「あれ?副社長、どうなさったんですか?」
 
ゆりこ副社長は自己所有のマンションに住んでおり、男子寮にも女子寮にもあまり顔を見せることはない。
 
「こちらに来て」
と言われて付いていくと、虹色にペイントされたドアがある。
 
あれ〜〜?こんな部屋あったっけ?でも何かこのドアの模様は記憶があるぞと思った。
 
中に入るとビニール製のクロスが貼られたベッドがある。白衣を着たお医者さん?が居る。
 
「裸になってそこに横になって」
とお医者さん?が言う。
 
何か健康診断でもするんだっけ?と思い、着ていた女子制服のスカートと上着を脱ぎ、ブラウスを脱ぎ、キャミソールを脱いで、ブラジャーを外し、パンティを脱いでそこに横になった。
 
すると手足に金属製の輪っかが取り付けられ、足は大きく開かれ、更に持ち上げられた。
 
「何するんですか〜〜?」
と数紀が言うと、ゆりこ副社長が
 
「あんたも今度成人式だし、立派な大人の女にならないといけないから、取り敢えず女になるのに邪魔なちんちんを除去するね」
 
「え〜〜〜!?」
 
「今はちんちんがあるから、凄い不自然なおしっこの仕方してるけど、ちんちんが無くなれば、おしっこは身体から真下に落ちていくようになって、おしっこするのが凄く楽になるから」
 
「待って下さい。ボク、ちんちん取るのは嫌です」
「あら、でもおとなの女にちんちんは不要だよ。少女ならちんちん付いてても可愛いけどね」
 
「ぼく女の子になりたくはないですー」
「国民がみんなビーナちゃんのことは女の子だと思ってるから、ちゃんと本当の女になったほうがいいと思うけどなあ」
 
「それにだいたい、ボクまだ成人式じゃないです。今度成人式迎えるのは、詩恩姉です」
 
「あれ?そうだったっけ。ごめんごめん」
「しゃ解放してもらえます?」
「でもあんたどうせその内性転換手術受けるんでしょ?善は急げよ。今夜手術しちゃえばいいよ」
 
「そんなぁ!」
 
と叫んだ所で目が覚めた。
 

ニューイヤーライブが終わった、1月1日の夕方、私たちは今年の震災復興支援イベントの概要を発表した。今年もネットライブ型式で行う。会場は昨年同様(主として)仙台の織姫である。
 
日時:2022年3月5-6日(土日)
会場:仙台市若林公園
主催:08年組
協賛:ラトコーラ、★★レコード、TKR、サマーガールズ出版、§§ミュージック、フェニックストライン、ムーラン
協力:みちのく放送、FM東北、スピカ仙台、各アーティスト事務所
 
形式:ネットライブ・あけぼのテレビ方式
(画像参加5000人+書割り参加5000人+音声参加10000人を抽選)
 
3/05
チケットM
09:30-11:30 常滑真音
 
無料放送
11:30-12:00 AT3
 
※AT3:あけぼのテレビ3人娘(鈴鹿あまめ・夕波もえこ・古屋あらた)
 
チケットF
12:00-12:27 みなみ&甲斐
12:30-12:57 煌&ビーナ
13:00-13:27 ジョナ&水谷
13:30-13:57 七尾ロマン
14:00-14:27 ルビー&パール
14:30-14:57 川内みねか
15:00-15:27 西宮ネオン
15:30-15:57 高崎ひろか
16:00-16:27 品川ありさ
16:30-17:27 白鳥リズム
17:30-18:30 姫路スピカ
 
無料放送
18:30-19:00 ロンド&カペラ&ポルカ
 
チケットQ
19:00-21:00 アクア
 
3/06
チケットL
09:30-11:30 ラピスラズリ
 
無料放送
11:30-12:00 ローザ+リリン
 
チケットE
12:00-12:57 AYA
13:00-13:57 KARION
14:00-14:57 XANFUS
15:00-15:27 Flower Four
15:30-15:57 Olive Lemon
16:00-16:57 桜野レイア with ignis-ex
17:00-17:57 川崎ゆりこ
18:00-18:57 Golden Six
19:00-21:00 Rose+Lily
 

チケットは、M(常滑舞音)、F(§§ミュージック)、Q(アクア)、L(ラピスラズリ)、E(08年組)と5種類販売する。チケットの切り換え時間帯に無料放送が入る。
 
花咲ロンドが
「ついに我々“売れないシスターズ”はお笑い枠になった!」
と言って、それで笑いを取っていた。
 
チケットの売上は、昨年同様、回線費用として1000円(ラジオは500円)だけ引かせてもらって、残りを全額、岩手・宮城・福島の3県に寄付する。
 
出演者は例によって、ギャラ無しで、アゴ・アシ・マクラ(食費・旅費・宿泊費)が自腹である。観客を入れないので会場スタッフは少数で済む。あけぼのテレビ、TKR, 地元放送局に所属するボランティアの社員がやってくれることになっている。彼らには主催者が費用を負担して保険を掛け、万一怪我などした時の補償に当てる。
 
バックで踊る信濃町ガールズや、§§ミュージックの歌手は収入が低いのに可哀想なので、ローズ+リリー、アクア、コスモスの3組で負担する。また、バックバンドのアゴ・アシ・マクラは、各々のフロント・アーティストが負担する。
 

2022年1月3日(月).
 
ΛΛテレビで『少年探偵団V』の放送が始まった。
 
「あの専務、絶対二十面相の変装だと思ったのに〜!」
 
という声が多数あって、小池プロデューサーは予想通りの反応に、してやったり(死語?)であった。
 
推理ドラマというものは、いかにも怪しげな人が実は犯人ではないというのがひとつの基本である!そしてできたら真犯人は味方かと思っていた人なのが理想。推理小説の映画化につまらないものが多いのは、監督や制作者がこういうことを理解しておらず、最初から犯人を怪しげに描いてしまうからである。酷い作品になると悪役専門の俳優に犯人役をさせたりする。
 
また、このドラマに出演していた、太田芳絵・斎藤恵梨香・栗原リアは、いづれも高い評価をされた。
 

1月4日(火).
 
コスモスはさいたま市内の不動産屋さんで、先月完成した社員寮に隣接する土地の売買契約をして即代金を振り込んだ。ここは地目が山林になっているので、顧問弁護士さんに依頼して地目を宅地に変更してもらい、播磨工務店に第2社員寮の建設を依頼した!
 

2022年1月5日(水).
 
2022年の新人第1号として、美崎ジョナが『岬・別れと出会い』でデビューした。当日はネット記者会見を開き、川崎ゆりこ副社長、TKRの山口さん、作曲者のJM Dreamの2人(歌唱ユニットとしてはOzma Dream)が並んで、Zoomでつながっている記者と、ネットでつながっている一般の人たちに説明をした。
 
美崎ジョナはナチュラルメイクで、女学生っぽいワンピースを着て、マイナス1音源をバックに生歌唱したが、
 
「歌うまいね〜」
「可愛いいし」
と概ね好評だったようである。
 
「古いフォークみたいな雰囲気がありますね」
「私たちは元々フォーク歌手なので」
と作曲者の2人は言っていた。
 
「ジョナちゃんは歌が上手いから、素直に歌で魅せられる曲がいいと思うんですよね」
 

1月6日(木).
 
朝9時すぎ、数台のHonda-Jetで、下記のメンツが中標津(なかしべつ)空港に降り立った。
 
Red 北里ナナ(アクア)、今井葉月
Orange 常滑真音、水谷姉妹、川崎ゆりこ
Silver 水森ビーナ、鹿野カリナ、夕波もえこ、鈴原さくら
 
むろん飛行機を分けるのは万一の場合に備えたものである。§§ミュージックの内規として、アクアと舞音とラピスラズリは絶対に同じ飛行機や列車・船などには乗せてはいけないことになっている(*13)。なお川崎ゆりこはマネージャー役である。
 
ちなみに、Silverの座席は、ビーナ・さくらが向かい合い、カリナ・もえこが向かい合うようにしている。
 
(*13) 1949年5月4日、サッカーの Serie A(セリエ・アー)で4年連続優勝し、そのシーズンも優勝有力であったACトリノの一軍選手18名と監督が搭乗していた、アリタリア航空の FIAT G.212 が墜落。乗客乗員が全員死亡した。ACトリノは次の試合に2軍メンバーを出したが、対戦相手も敢えて2軍選手で試合に臨んだ。そしてチームは5連覇を達成した(が翌年からはさすがに下位に沈む)。
 
この事故以降、スポーツ界では選手の移動は必ず2便以上に分けるという方式が普及した。
 

今年も昨年同様『氷の家』の撮影をする。
 
根室郊外の、昨年も撮影した場所に、昨日氷のブロックを組み立てて“氷の家”を作っている。今日は最低記憶が(零下)4度と暖かく、やや心配したものの、朝から建築会社の人が超音波なども使って確認したところ問題無いと判断された。それであまり気温が上がらない内に撮影することになり、撮影は全員が到着してすぐの10時から始まった。(この日最高気温は(零下)2.5度まで上がった)
 
例によってこの氷の家の中に多数の松芝電機さんの電化製品がセットされており、それをみんなで使っているところを撮影するというものである。
 
「でもボクと舞音とビーナが一緒に集まれるって、めったに無いよね〜」
とナナ(アクア)が言う。
 
「ほんとほんと。1日の例会の時も3人バラバラの場所にいたから、夏に『硝子の家』を撮影した時以来だと思う」
と舞音。
 
「また『硝子の家』の撮影するのかなあ」
「やはり本当のガラスでは強度に問題があるから、ポリカーボネイトで家を組み立てようかという話もあるみたい」
「やはり撮影するのか!」
 
(昨夏のガラスの家は強度問題から、屋根に太陽光パネルを載せられなかった)
 

外気温は(零下)6度くらい(郊外なので気象台の場所より低い)だが、氷の家の中はわりと暖かいし、エアコンも入っているので快適である。9人はソーシャルディスタンスを保って撮影されていた。
 
今回も昨年と同様のフェイクファーのコートを着ている。昨年このCMでみんなが着ていたので話題になり、物凄く売れてヒット商品になったアイテムである。
 
「今回色の割り当てが変わったね〜」
「去年は適当に取ったからなあ」
「少し計画したみたいね」
 
そういう訳で今回みんなが着ている色はこのようになっていた。
 
ナナ:水色(アクア色)、舞音:黒、ビーナ:黄緑、水谷姉:コバルトブルー、水谷妹:セルリアンブルー、カリナ:オレンジ、もえこ:赤、さくら:桜色、葉月:グリーン
 
なおボトムは膝丈スカートとタイツだが、それもコートの色に合わせている(“ナナ”は女の子だから当然スカートを穿く。葉月とビーナも特に疑問を感じずにスカートを穿いている。さくらは当然!スカートを穿く)
 

「でも人数増えたね」
「予算があるのかもね」
「いや、誰か都合がつかなくなった時に急遽代役を入れるより欠員にした方がいいという考え方なんだと思う」
「確かにこのメンツがずっと全員集まれるとは思えない」
「この日程は1年前からリザーブされてたけどね〜」
「当日風邪とか引いてたら参加できないしね」
「それを含めての予備だと思うよ」
 
「ところでこれ男何人、女何人だっけ?」
「全員女の子ということでいいと思うけど」
「異議なし!」
 

2つの長方形コタツ(通常のものより大きめの120cm×90cm)2つに分かれて座り、お互いの距離が取れるようにしている。それでトランプをしたり、テレビを見ながらジュースを飲んだりする。このジュースは、各々フタのついたコップに入った飲料をストローで飲んでいる。ストローはマスクに開けた穴に通している。各々のコップに「みかんジュース」とか「コーラ」とか「野菜ジュース」とか「ポタージュスープ」などと書かれている。
 
その後、2人用の小さなテーブルに移り、オセロをした。今回は9人なので、強すぎるナナをスーパーシードして、残りの8人でノックアウト方式で決勝進出3名を決めた。
 
CMではごく一部しか映っていないが、後日全ての対戦が、あけぼのテレビBチャンネルで流された。
 
プレステージ2回戦以降は物凄い戦いだった。プレイオフの舞音と水谷妹の戦いも全く予断を許さない戦いで、水谷妹が2枚差で勝利した。でも強すぎるナナにはかなわなず、ナナが優勝である。
 
「ナナちゃん、オセロのプロになれる」
「オセロにプロとかあるんだっけ?」
 

ヘアドライヤを使う所(ビーナを含む数人)、洗濯機を使う所(水谷姉)、洗濯物を干す所(水谷妹)、取り込んでアイロンを掛ける所(カリナ)、ロボット掃除機を始動する所(さくら)、ふとん乾燥機を始動する所(葉月)、部屋の和風灯り“Akari Nipponia”を点けたり消したりする所(舞音)、お米を研いで炊飯器に掛ける所(もえこ)、材料を入れてホームベーカリーをスタートさせる所(アクア)。
 
その他、コーヒーメーカーや電子レンジも使ってみせているし、電気ケトルも使っている。ミラーレスカメラで写真を撮り合うシーン(撮影者:さくら・もえこ・カリナ)、オーディオセットでCDを聴くシーン(水谷姉妹:自分たちの出したCDを掛けている:これで売上が伸びた!)。
 
トイレに着衣のまま、座ってみせているシーン(さくら)もあったが(*14), むろんここで排泄はしない。氷なので、全部丸見えである。実際のトイレは近くにある建設会社のトイレを借りている。
 
とにかく松芝電機さんの様々な電化製品を使ってみせている。これらの電気は屋根に乗っている太陽光パネルが生み出しているのだが、政治的配慮?により太陽光パネルとアクアは絶対に一緒に映さないよう気をつけている。
 
最後は今年も個別のテーブルにホットプレートを1人1個ずつ載せて焼肉をするシーンで終わっていた。焼肉は舞音・カリナ・水谷姉妹・夕波もえこといった女子陣が競うように食べていた。空の皿がどんどん積み上げられていくので、さくらが「負けた〜!」と言っていた。
 
「さくらちゃん、しっかり食べないと、おっぱい大きくならないぞ」
「あと1皿食べようかな」
 

(*14) CM放映時、ネットでは
「さくらちゃんって立って、おしっこしたりはしないのかなあ」
という書き込みが多少あったが
「さくらちゃんが立ってするわけない」
「さくらはそもそも立ってできるような服を着ていない」
ということで、議論にもならなかった。
 
「何かのラジオ番組で、立ってしたことはないと言ってたよ」
「やはりそうだよねー」
 
「あの子、トイレはどっち使うの?」
「さくらちゃんが男子トイレ使うわけない」
「まあ入ろうとしても追い出されるよね」
 

一行の内、舞音・水谷姉妹、ゆりこ(Honda-JetOrangeのメンバー)は夜になるのを待って、灯りの点灯・消灯をしている所の撮影をした。そして翌朝熊谷に戻った。
 
夜になるのを待つ間には、1本CMの撮影をしたのだが、これは後述する。(休ませてはもらえない)
 

1月7日(金)はネットライブはお休みで、無料配信番組として、ネット成人式が行われた。
 
今年も各地域の成人式は、色々制限のある形での実施になったり、短時間の開催になり記念写真撮影を省略したりなどといった自治体もあったので、あけぼのテレビでは昨年同様、テレビ成人式を実施することにしたのである。
 
日程は各自治体の成人式にも出られたら出られるように、1月7日(金)になった。出席したのは2001年度(2001年4月2日〜2002年4月1日)生まれの下記のタレントである。
 
アクア
松梨詩恩
桜井真理子 (Flower Sunshine)
海浜ひるがお
佐藤ゆか (vent d'or)
米本愛心 (ColdFly5)
星原琥珀 (アクアの同級生)
雪丘八島 (三つ葉:優羽つながり)
トライン・バブルの3人
Turquoiseの3人(XANFUSの後輩)
宮村尚子 (Phalaenopsis)
 
以上11組15名。
 
昨年は9組11名だったので、少し人数が増えた。全員思い思いの振袖を着てこの番組に出席した。ひるがおは振袖なんて持ってなかったし、成人式のこと自体忘れていた!が花咲ロンドが自分の振袖を貸してあげて出た。
 
有名人ばかりのところに自分が入ってもいいのかなあと不安な表情だったが、会場に、極めて無名な芸能人、ターコイスの3人が居たので安心したようである!(「あれ誰だっけ?」と鈴鹿あまめに尋ねていた!)
 
ターコイスは多分これまで1万枚以上売れたCDが無いし、テレビ番組などに呼ばれたこともほとんど無い。コロナのおかげでライブハウス巡りとかもできないので活動は停滞ぎみである。
 

司会は花咲ロンドが務める。自らも振袖姿である。
 
花ちゃんのピアノ伴奏で品川ありさが国歌を斉唱した。2人とも振袖である。
 
(昨年は司会=花ちゃん、ピアノ=川崎ゆりこ、国歌=高崎ひろか)
 
成人式実行委員長の姫路スピカ(昨年の新成人。やはり振袖姿)が挨拶、コスモス社長(黒留袖)の式辞、そして今年も来賓として出席してくれた東堂千一夜大先生の祝辞があって、新成人代表としてアクアが“決意のことば”を述べた。
 
この後、全国の信濃町ガールズで、今年成人式の子(8名)が振袖姿で、1人5秒ずつ、フリップボードを持ち、何かひとこと言う、というシーンが流れた(日中に撮影した録画)。
 
アクアは、彼女の年収からはあり得ないほど安そうな東京友禅の青い振袖を着ていた。放送開始前に、最も遠慮が無い元同級生の松梨詩恩がアクアに
 
「なんで龍、そんな安物の振袖着てるの?」
と訊くと
 
「これ亡くなったお母ちゃんの遺品なんだよ」
と言った。
 
「そういうことか!」
と、みんな納得していた。
 
「安物と言っても私の振袖より遙かに高そうだけど」
とトラインバブルの小梢が言うと、みんなここは笑っていいのかどうか悩んだ!
 
でも三つ葉の八島(やまと)は
 
「アクアちゃんがきっと超豪華な振袖着てくると思って安心して私これ着てきたのに〜」
と言っていた。彼女はたぶん1000万円クラスと思われる豪華な手描き友禅の振袖を着ていた。
 
なおアクアの振袖がお母さん(長野夕香)の遺品だというのは、花咲ロンドが番組内でも説明していた。説明しないと、視聴者も不審に思うだろう。
 
もっとも小梢も指摘していたが“安物”とは言っても150-160万円くらいはしそうな品である。支香によると、ワンティスでデビューした後に買ったもので、パーティーや時にはデートで着ていたものらしい。そのこともロンドはコメントしていた。
 

記念撮影は、昨年同様、写真家の桜井理佳さんが、15人並んでいるところを撮影してくれた(番組終了後に1人ずつのショットも撮ってくれた。ついでに「あんた写真集出さない?」と勧誘していた!)。桜井さんはアクアの振袖姿に満足そうだった。
 
その後、桜野レイアとignis-ex が登場して、スタンダードナンバーの
『Fly me to the moon』 (words and music by Bart Howard) を演奏した。
 
「月に連れてって。お星様に囲まれて、歌ってみたいの、素敵な春を」
「言い換えれば、私を抱きしめて。言い換えれば、私にキスして」
「私の心を、愛で満たしてね。そして歌って、夢中にさせて」
「言い換えれば、大事にしてね。言い換えれば、あなたが好き」
 
その後は、出席者たちが、ignis-ex の伴奏(レイアはドラムスを打つ)で歌を歌った。歌った順序は下記(芸名50音順!)である。この歌だけでも充分に聴く価値があった。
 
アクア
海浜ひるがお(かいひん・ひるがお)
桜井真理子(さくらい・まりこ)
佐藤ゆか(さとう・ゆか)
雪丘八島(すすぎ・やまと)
ターコイス
トライン・バブル
星原琥珀(ほしはら・こはく)
松梨詩恩(まつり・しおん)
宮村尚子(みやむら・なおこ)
米本愛心(よねもと・あこ)
 
ユニットに所属している人は、そのユニットのメンバーが出て来て一緒に歌った。松梨詩恩は高崎ひろか・水森ビーナと一緒に三姉妹で歌った。最後に歌った愛心はColdFly5のメンバーと一緒に自分たちで伴奏しながら歌った。
 
なお、海浜ひるがおは海浜ひまわり(訪問着を着ている)と一緒に歌ったが、結果的に、ひまわりの歌が数年ぶりにメディアに流れた。またあまりにも上手すぎるアクアの次は歌いにくいところだったが、海浜ひるがおたちが歌ってくれたおかげで、その後の子たちがとても歌いやすくなった!
 
司会の花咲ロンドが締めの言葉を述べて番組は終了した。
 

視聴者の声。
 
「やはりアクアは振袖だったね」
「アクアは女の子だもん。振袖着るのが当然よね」
「だいたいアクアは和服を着る時はこれまでもいつも振袖だったし」
 
ということで、アクアが振袖を着たのは当然とみんな思った。
 
過去に何度かアクアは成人式で振袖を着ると思うか?というネット投票が行われたが、全投票者が「振袖を着るだろう」に投票しており「紋付き羽織袴だろう」という投票はゼロであった。
 

実は番組では、アクアが“自分が振袖を着ていることに疑問を感じないよう”アクアが振袖を着ている問題については触れないようにしよう、とアクア以外の出演者には根回しをしておいた。でも、アクアが母の遺品の振袖を着てきたことで、その件については何も考慮する必要は無くなった。
 
番組の企画が決まった所で、ゆりこはアクアに
 
「振袖持って来てね」
と言い、アクアも
「はーい」
と返事していた。
 
「あまり豪華すぎない奴で」
「分かりましたぁ」
 
それでアクアはその青い振袖を持って来て、番組1時間前に自分でそれを着た(帯だけ結んでもらった)。出演者の中で自分で振袖を着られたのは、アクアと愛心の2人。他は美容師さんに着付けしてもらった。
 
なお、詩恩と一緒に歌を歌うのに出て来た弟(妹?)の水森ビーナは付下げの和服を着たが、彼もそれが女物の和服であることを特に意識しないまま出演していた。
 

成人式の特集番組は、FHテレビでも企画され、これは1月9日の早朝に録画されており、1月10日、成人の日に放映された。つまり録画したのは、あけぼのテレビの生放送があった翌日の早朝である。
 
あけぼのテレビは個人的なコネで参加者を集めたのだが、こちらはテレビ局が持っている芸能人のデータベースから、今年成人式を迎える芸能人をリストアップし、“有名順”に事務所に電話して出演OKを取れた男女各々10人が参加した。
 
この番組に、女子陣では、あけぼのテレビにも出た、アクア・松梨詩恩・星原琥珀・雪丘八島・宮村尚子も出ている、
 
アクアは当然、女子枠である!
 
アクアはこの番組には、アクア自身がCMをしている呉服屋さん制作の振袖を着て出席した。この呉服屋さんの製品の中でも最高クラスのもので、推定700万円くらいの品である。あけぼのテレビで着た普及品の東京友禅とは違いトップアイドルが着ていても不自然ではない品であった。
 
「今日はわりと良いものを着てきている」
と八島(やまと)が言っていた。
 
「ヤマトちゃん、昨日のを着てくれば良かったのに」
「いや目立ち過ぎてたからランク落とした」
「気にすることないのに」
 

アクアは個人的には、一応自治体から成人式の招待状は(住民票がある渋谷区と八王子市。実はNの分がさいたま市からも)来ていたものの、アクアが出席したら大騒動になりそうなので、どちらにも出席しないつもりだった。
 
M:戸籍=さいたま市(支香の旧宅)住民票=代々木
F:戸籍=八王子市(赤羽から移動)住民票=八王子
N:戸籍=川崎市(千里3の旧宅)住民票=さいたま市(千里宅)
 
ところが2ヶ月弱前の11月下旬、渋谷区の区長さんが自ら信濃町の事務所にやってきて、渋谷区の成人式でアクアに歌を歌ってもらえないかと打診したのである。
 
聞いてみると、先日の“村上遺書”の騒動の時、代々木のマンション前に報道陣が詰めかけたという報道が一部のマスコミで流れたことで、区長さんはアクアが代々木に住んでいることを知ったらしい。
 
コスモスが出掛けていて、ゆりこが社長デスクのところに居たが
「あ、いいと思いますよ」
と、全く無責任に返事した!
 
「ただ、あまり予算が無いのですが」
「ああ、それは構いませんよ。本人も新成人なんだから、友情出捐ということで」
「ありがとうございます!」
 
後で、ゆりこからその話を聞いたアクアは
「え〜〜〜!?」
と不快そうに返事した。
 
「だいたいボクが成人式に行ったら、凄い騒動が起きますよ」
「だから当日アクアが式に出ることは秘密で、サプライズ出演ということで」
「うーん・・・」
「できるだけ豪華な振袖着て来てって」
「まあいいですよ」
 
ゆりこはアクアのスケジュールを調整して、1月10日は丸一日空けてくれた。
 
それでアクアは当日、自前の加賀友禅の中ではいちばん高い振袖を着て、目立たないよう、事務所のBMW 225xe iPowerに乗り、和城理紗の運転で会場に入った。会場では裏口側の業者出入口のそばに駐めた。
 
「ほんとに来てくれたんだ!」
と実行委員長さん(23歳)が驚いていた。
 
「あのお、記念写真とか撮っていいですか?」
「いいですよ」
 
それで実行委員さんたちとだけ記念写真を撮った。サインも書いて渡した(あとで区の広報誌に掲載された)。
 

成人式は、ホール後方の映写室から眺めて、成人式の雰囲気だけでも味わった。来てよかったかも知れないとアクアも思った。
 
余興で区の中学校の吹奏楽の演奏が行われた後、アクアがサプライズ登場すると、会場が物凄いどよめきとなった。それで1曲だけ、公開中の映画『白雪物語』の主題歌『白い恋の物語』を歌う。そしてメッセージを述べる。
 
「私も今日成人式を迎えることができました。おとなになると色々大変なこともありますけど、頑張っていきましょう」
 
そのあとステージを退出し、和城理紗の運転する車に飛び乗る(正確にはステージの近くから車内へ和城理紗が転送した)とすぐに脱出した。
 
もちろん、新成人の記念品(ワイヤレス充電器)はしっかりもらってきた。
 

この日の渋谷区での成人式が終わった後、和城理紗は龍虎(アクア)をそのまま八王子の家に連れていった。田代夫妻と海原夫妻と美奈代が待っていて
「お帰り」
と言ってくれる。田代夫妻と支香さんで色々料理を作ってくれていたようである(海原先生が料理などするわけがない)。
 
16時頃、千代田区での成人式を終えた、彩佳・桐絵・宏恵の3人を竜崎由結が彩佳たちに預けているヤリスに乗せて連れてくる。3人の両親も来たいと言っていたのだが、多人数集まっての飲食はよくないということで、遠慮してもらった。
 
「ここ来たの初めてたけど、広いね。家の前を流れている川は何川?」
「ああ。それは水を循環させてるだけ。ボクもそんなのできてるの見てびっくりした。風水的に東側に川があるのがいいんだって」
「へー!」
 
家の裏手に道路?ができるのも時間の問題だなと龍虎は思った。
 
それで16時半頃、龍虎と、田代夫妻・海原夫妻と美奈代、彩佳・桐絵・宏恵の9人で成人式のお祝いをした。海原先生が持ち込んだボルドーのシャトーワイン(美奈代はスプライト)で乾杯した上で、お料理を食べながら歓談した。
 
美奈代(小2)が女子たちのアイドルになっていた。
 
19時頃、田代夫妻・海原夫妻と美奈代が帰る。
 
すると実は邸内に居た!理史と、もうひとりの龍虎が出て来た!
 

そして龍虎2人、理史、彩佳・桐絵・宏恵の6人で成人式のお祝い第2弾をしたのである。
 
龍虎2人が振袖姿で並んでいる所の記念写真も撮った。更にうまく載せて、振袖姿のFと紋付き羽織袴の理史(事情後述)の写真、Mと彩佳の振袖同士で並んだ写真も撮った。
 
「龍は私との結婚式ではやはり振袖・ウェディングドレスを着るよね?」
「どうしよう?」
「龍はちんちん無くなっちゃったし、2人の関係はもうレスビアンなんだから、それでいいと思うよ」
「だいたい紋付き羽織袴とか、タキシードとかあまり着たくないでしょ?」
「悩むー」
 
「悩んでいるということ自体、もうウェディングドレス同士の結婚式は確定だな」
 

ちなみに、あけぼのテレビの成人式に出たのはF、FHテレビの番組に出たのは“振袖を着せたNちゃん人形”を着物の中に入れていたF、今日渋谷区の成人式に出て、そのまま第一弾のお祝いに参加したのはMである。
 
第1弾のお祝いの最中はFと理史はイチャイチャしながら待機していた。そろそろという頃に理史を生殺しにして!シャワーを浴びて振袖を着た(理史は龍虎がシャワーを浴びている間に自分で“完了”させたもよう)。Fは理史の前で裸でシャワールームから出て行くとそのまま肌襦袢・長襦袢・振袖と着た。
 
「理史も振袖着る?振袖はたくさんあるよ」
「さすがに僕はそんなの着ない」
「じゃ羽織袴を着てもらおう」
「え〜〜〜!?」
 
それで用意していた紋付き羽織袴を、竜崎由結に着付けさせたのであった。
 

お料理はたくさん用意していたので、みんな振袖ではきつくなり、全員脱いで楽な格好になった。振袖はしわにならないよう、ちゃんと和服用衣紋掛けに掛けておく(明日の朝、龍虎たちと由結で手分けして畳んで和服ケースに収納する予定)。
 
「眠くなった人は勝手に寝てね〜」
「西の対(たい)に名前を書いた札を下げておいたから、そこで寝てね」
「お風呂もトイレも部屋に付属してるから」
「面倒くさいからここで寝てもいい?」
「風邪引いても知らないよー」
 
「質問があります」
「何でしょう?宏恵君」
「私と桐絵の名札は下がってたけど、彩佳の名札が無いのはなぜでしょう?」
「それは龍と一緒に寝るからでーす」
「妊娠しないように気をつけろよ」
「ちゃんと付けさせるから大丈夫だよ」
「女の子・龍ちゃんも妊娠に気をつけてね」
「ちゃんと付けさせるから大丈夫だよ」
 
しかし、ゆりこが今日1日のスケジュールを空けておいてくれたおかげで、龍虎たちは2人ともこの日は充分休むことができたのであった。
 
(Mも彩佳が「全部私がしてあげるから、龍は休んでて」というので、全部お任せして、半分寝ていた。ボク妊娠しないよね?と少し不安になったが!)
 

成人式のニュースを見ていた政子が言った。
 
「だけど日本は式典やるだけだけど、国や地域、また歴史的には結構えげつない成人式もあったみたいだよね」
 
「そういうのは多分持続可能な制度では無かったんだと思う」
「首狩り族とか、誰かの首を狩ってこないと、1人前の男とみなされなかったらしい」
「それは全く持続不能なシステムだ」
「成人になる段階で男の人口が半分になってしまう」
「いや、争って両方死ぬこともあるだろうから、半分未満、もしかしたら3割程度しか成人できなかったかもね」
 
「バンジージャンプとか有名になったけど、あれ多分昔は結構な死者が出てるよね」
「多分ね」
 
「割礼やってたところは多い」
「それは地域や宗教によっては、今でもやってる」
 
「男の割礼はまだ意味が分かるけど、女の割礼は全く意味不明」
「メリットが存在しないよね。むしろ出産時の死亡率を上げているという指摘もされる。だから女性割礼(別名女性器切除FGM)をやめさせようという運動も盛んにおこなわれているし、国によっては禁止する法律を作ったけど、あまり実効があがってない」
 
「男子の割礼って普通はちんちんの皮を切るけど、尿道を切開しちゃう所もあったらしいね」
「うん。ある地域で行われていた。これをすると、おしっこはペニスの付け根の所から出るようになるから、立っておしっこをすることができなくなる」
「精液は?」
「精液も根元から出るから膣内射精ができなくなる」
 
「子供作れないじゃん」
「成人前に子供は作らないといけなかったのかもね」
 

政子は何か妄想しているようだ。絶対変なこと考えているなと思った。
 
「ねね、こういうの思いついた」
「どんな?」
と訊いてあげる。
 
「あのね、あのね。成人式で男の子はちんちんを切除しないといけないの」
「何のために?」
「凄まじい痛みがあるから、その痛みの試練を乗り越えてこそ一人前の男とみなされる」
 
「ちんちん無くなっちゃったら、もう男ではなくなる気がするけど」
「たまたまが残ってたら男なんじゃない?」
「睾丸があって、ペニスが無いというのは、性欲はあるのに自慰できないしセックスもできないから、男は気が狂うと思う」
 
「我慢できないの?」
「我慢できないから、子作りするんだと思うな」
 
「じゃ、成人式では、ちんちんとたまたまの双方を切除した方がいいな」
「だから何のためにそんなことするのさ?」
 
「成人式を終えたら男女ともスカートを穿く。ズボンは少年時代だけ、というのはどうかな。4月からは18歳で成人になるから、高校の卒業式は男女とも全員スカートの制服を着ておこなうということで。そうだ。トイレも学校と子供用以外は、男女分ける必要がなくなるよ。銭湯も男女一緒でいい」
 
「そんなことはない。男女分けてないと、トイレや銭湯でレイプ事件が頻発する」
「たまたまが無くなったら性欲も消えないの?」
「消えない。弱くはなるけどね」
「性欲ってどこにあるの〜〜?」
 
「脳だと思うけど。睾丸に思考能力があるわけない。睾丸は性欲を増幅させる物質を出しているにすぎない。『赤かぶ検事』に睾丸を除去した人がレイプ事件を起こしたという案件の話が出ていたね」
 
「立つの?」
「雨宮先生は立つみたいだけど」
「あの人は変態だからなあ」
 

ビーナは元日だけ休めて、女子寮内にある、天羽家で“天羽さん”(と彼は呼ぶ:ひろか・詩恩の母、天羽亜矢子のこと)および2人の姉と一緒にのんびりしたお正月を過ごすことができた。しかし2日以降は、朝から夜遅くまで休む間もなく、テレビ局・キャンペーン・イベント出演・雑誌などの取材と駆け回った。
 
1月6日は北海道の根室でアクアや舞音などと一緒に松芝電機さんのCM撮影をしたが、むろん日帰りである!夕方からテレビ局に入って別の仕事をしている(アクアも同様。舞音は根室で夜まで撮影し7日朝帰京した)。
 
1月7日(金)は夕方から、あけぼのテレビでネット成人式に出る詩恩の付き添いで出た後、詩恩から
「今日は私の成人式のお祝いするから来てよ」
 
と言われて、一緒に女子寮に行き、本宅4階の天羽家に行って、天羽亜矢子お手製のちらし寿司を食べた(すし太郎だけど)。そしてその日はそのまま天羽家にリザーブされている、自分の部屋に泊まった。
 
「あれ?これボクの布団だ」
「うん。ひまわりちゃんに頼んでここに持って来てもらった」
「ふーん」
 
でも寝慣れている布団はよく熟睡できた。翌1月8日は、やはり持ってきてある衣裳ケースに入っている下着に交換し、ついでにそこから替えの下着と服を旅行バッグ(これもこちらに来ていた)に詰める。いつものように学校の制服(もちろん女子制服)を着る。
 
§§ミュージックでは、中学生・高校生のタレントは、基本的にお仕事に行く時は自分の学校の制服を着るのがルールである。
 
青野マネージャーが女子寮まで迎えに来るので、彼女の運転する車で熊谷に移動する。
 
「今度からは女子寮に迎えに来ればいいのね?」
「いえ。今夜は詩恩姉の成人式のお祝いしてそのままこちらに泊まっただけですよ。11日からはまた男子寮にお願いします」
「あれ?そうだっけ?」
 
Honda-JetSilver(ビーナ優先機)に乗って大阪に行く。そして向こうで放送局の番組に出たり、CMの撮影に出たり、キャンペーンに出たりした。
 
向こうでは青野さんとツインに泊まる。仕事を始めて初期の頃は、女性である青野さんと同室でいいのかなあとか思ったが、ビーナは女性に対して不感症なので、その内、気にしなくなった。彼女が着替える時は後ろ向いているが「相変わらず純情ね」などと言われる。
 
1月10日は20時で解放してもらえた。上品な時間に終わったなあと思う。
 
でもマネージャーの青野さんは、もう少し打合せがあるらしく
「悪いけど1人で帰って」
と言われた。SCCと提携している★★情報サービス(ケイや雨宮先生などが設立したドライバー会社)の車(正確には★★情報サービスと更に提携している関西のハイヤー&運転代行会社の車)で伊丹空港に送ってもらった。
 
伊丹空港の離陸可能時刻ギリギリ、20:55頃にHonda-JetSilverは離陸。約40分の飛行で、21:40頃に熊谷の郷愁飛行場に着陸した。
 
SCCのドライバーさんに来ていてもらっていたので乗り込み、
 
「遅い時間に恐れ入りますが、用賀の男子寮まで」
と言った。
 
するとドライバーさんは驚いたような顔をして
 
「こんな夜遅く、男子寮に何か御用ですか?」
と尋ねる。
 
「そこに住んでいるので」
「ああ。あそこは4階は女子寮だったんでしたね」
と言って、運転手さんは運んでくれた。
 
性別誤解されるのは日常茶飯事なので気にしない。
 
「女子寮があふれてたから一時的に男子寮の一部も使ってたけど、女子寮の2号棟ができたから、そこに暫定的に住んでいた寮生たちは順次、移動させるとかも言ってましたね」
 
「あ、そうなんですか?」
「まだ移動の日程は聞いておられません?3月までには全員女子寮に移動になるという話でしたけど」
 
雅水ちゃん(直江アキラ)や徳世ちゃん(長浜夢夜)に春南ちゃん(鈴原さくら)とかは女子寮に入れるべきだよなあ、とビーナは思っていた。
 

ビーナは車中ではひたすら寝ていた。用賀に到着したのは23:20頃である。
 
「着きましたよ」
と言われ、運転手さんに御礼を言って降りる。
 
ところがエントランスのドアが開かない!?
 

あれ〜。idカードの磁気が弱くなったかな、などと思う。
 
(idカードはICチップを使用しており、磁気ストライプなどは無い!)
 
夜遅く申し訳ないと思ったが、ピンポンを鳴らす。寮母の門脇さんの
「はい」
という声が聞こえる。
 
「夜遅くすみません。寮生の柴田ですが、idカードが壊れたのか、エントランスが開かないのですが」
 
「あら、あなた女子寮に引っ越したでしょ?だからこちらには入れないわよ」
「ボクが・・・引っ越した・・・んですか?」
「だって、荷物は一昨日だったか、業者さんが来て移動してたし、もう向こうに住んでいるんだろうと思ってたのに」
 
「ボクは土曜から大阪で仕事してたんですが」
「じゃとにかく女子寮まで送ってあげるよ」
 
と言って、門脇さんは遅いのに自分の車を出してビーナを女子寮まで送ってくれた。
 

「聞いてびっくりしたけど、あなた、お正月の間に性転換手術を受けたんでしょ?傷は痛まない?」
 
「性転換手術とか受けてませんよ〜」
 
「あら、だったら、ちんちん切っただけ?あれって、うちのマユ(大崎忍)が言ってたけど、ヴァギナ作る手術は回復に時間かかるけど、ちんちん切るだけなら1ヶ月くらいで痛みは取れるらしいね」
 
なんか、自分の知らない所で、とんでもない話が進行してるようだぞとビーナは思う。
 
疲れてるだろうから寝てなさいと言われたので、ビーナは遠慮無く寝ていた。やがて五反野の女子寮に到着。(警備員さんの居る)門を門脇さんの顔パスで通過した後、女子寮入口の詰め所にいる警備員さんに声を掛けた。
 
「ああ、水森ビーナちゃんなら自分のidカードで通れるはずですよ」
と警備員さんが言うので、ビーナは半信半疑で、ゲートの傍に寄る。するとゲートは開いた。
 
(このゲートはタッチの必要もない。1m程度以内に近づけば開く仕様)。
 
「無事通れたね。じゃ、あまり無理しないでね」
と言って門脇さんは帰って行った。
 
ビーナは困惑しながらも、女子寮本宅のエレベータで自分のidカードをタッチし、4階のボタンを押す。4階は私邸なので、天羽亜矢子・高崎ひろか・松梨詩恩・水森ビーナの4人と、保守上の目的で副寮母の花ちゃんだけが、このボタンを押せる(物理的に女子寮内にあっても論理的には寮外なので、女子寮長のロンドは押せない)。ただ、今まで数紀はこのエレベータに乗る以前に女子寮のゲートを通れなかった(実際には警備員さんに声を掛けたら通してもらえた:セレンやクロムと同様の扱い)。しかし今日は、ゲートが開いた。
 
エレベータを降りて、恐る恐る玄関のピンポンを押そうとしたら、その前に玄関のドアは開いた。
 
「お帰り、数ちゃん。今日中に帰宅できたのね」
と天羽亜矢子は優しくビーナに言った。
 
そういう訳で、ビーナはこの日から、女子寮内の天羽家に住むことになったのである。
 

新年のネットライブで、連休明けの1月11日(火)はラピスラズリが登場した。会場は地元の火牛アリーナで、仙台でやったボニアート・アサド同様、里帰り公演となった。かほく市役所(=旧・宇ノ気町役場)のロビーで、時に許可を得てパブリックビューイングが行われ、知り合いが多数来て歓声があがっていた。
 
ゲストには、お隣の福井県出身で、来月デビュー予定の∞∞プロの新人・青空香鳴(あおぞら・かなり)が歌った。
 
「うまいねー」
と東雲はるこが感心したように言うほど歌の上手い子だった。香鳴という名前は鳥のカナリアに由来するらしい。
「カナリアの名前に恥じない、凄い上手い人で、私たちも負けそうです」
と町田朱美は笑顔で拍手して彼女を称賛した。
 

1月12日(水).
 
ネットライブに常滑舞音が登場した。会場は仙台の牽牛を使用した。出演者は舞音・水谷姉妹のみ Honda-JetOrangeで運び、それ以外の出演者を調布からDo228 (定員19)で運んでいる(§§ミュージックの所有機の中で調布を使えるのはこの機だけ)。
 
この日は、CAT Sisers として、紅白にも出た、水谷姉妹・知多めぐみ・宮地ライカ・恋珠ルビー・花貝パールに加え、“サロン”常連の豊科リエナ・箱崎マイコ・三陸セレン・山鹿クロムも加わって、11人でひたすらコスプレしまくるライブとなった。
 
七福神・勢揃いのコスプレもあった。
 
弁天 舞音
恵比寿 パール
大黒 ルビー
毘沙門 水谷姉
布袋 水谷妹
福禄寿 セレン
寿老人 クロム
吉祥天 リエナ
ダルマ ライカ
福助 めぐみ
鍾馗 マイコ
 
なんか7人より多い気がするのは、きっと気のせい。
 
2時間のライブの間に舞音は20種類のコスプレをして、CAT sisters のコスプレを入れると全部で231種類(よく数えたものだ)の衣裳が登場したらしい。
 
もはやライブというよりコスプレショーだが、視聴者は大いに楽しんだようである。
 
なおオープニングはアマビエで、ラストは黒招き猫であった。
 
なおゲストタイムは立山煌が登場して1月26日発売予定の『山に登りましょう、娘さん』を歌ったが、彼も富山県のゆるキャラ“立山くん”のコスプレをしていた!(これも加えて231種類らしい)。おかげで顔がよく分からなかった!!
 

2022年1月12日(水).
 
北里ナナの9枚目のシングル『金銀ハート/恋愛は心のパズルなの』が発売された。いつものように『少年探偵団V』の劇中歌で、北里ナナ自身がドラマの中で歌唱している。1月3日の放送で『金銀ハート』は、村正貴金属工業の記念パーティーのシーンで流れていたので、本当はもう少し早く発売したかったものの、§§ミュージック歌手の発売日が立て込んでいて発売日が選べなかったのである。
 
(12/22 アクア 12/29 常滑舞音 1/5 美崎ジョナ)
 

1月12日(水).
 
この日の夕方、私は若葉から電話を受けた。
 
「冬、飛行機届いたから、取り敢えず熊谷に置いといたね」
と若葉は言った。
 
「飛行機?届いた?」
「CRJ200よ。年末に言ってたじゃん」
「あ、そういえば言ってたね」
 
あれは・・・やはりジョークでは無かったのか。若葉の前で信濃町ガールズの男子メンバーを性転換しちゃおうかなとかジョークを言えば、翌日には全員手術を受けさせられてそうだ(クロムやセレンは泣いて喜ぶだろうけど、きららとかはぐすんぐすんと泣きそうだ)。
 
「安かったから5個買っちゃったのよ。冬が3個で私が2個にする?冬が2個で私が3個にする?どちらでもいいよ」
 
5個〜〜〜!?
 
しかし若葉は飛行機を1個・2個と数えるんだな。
 
「あのぉ、お値段は?」
「5個まとめて、たった8億円だったのよ。凄い安いでしょ?」
「そ、そうだね」
 
「新品だと確か1個50億円くらいだったと思うんだけど、少し古い機体だからね。売主は、売れるように徹底的にオーバーホールしてくれてたからすぐ飛ばせるよ。JA番号は既に取られているから、国土交通省に所有者変更だけ届ければいいから」
 
「はぁ・・・」
 
「冬3個にする?2個にする?」
 
1個という選択は無いのか!?
 
「じゃ2個で」
「OK。所有者は§§ホールディングでいい?」
「あ、ごめん。私個人の名義でいい?」
「OKOK。じゃ今日明日には登録しておくね。パイロットは見込みで3人雇っておいたから今6人体制だけど、今居る人たちのコネであと3〜4人雇いたいかな」
 
「ああ、それがいいかもね」
 
ということで、私個人所有のCRJ200が2機、運用に入ることになってしまったのである!
 
私が個人で買うことにしたのは、先日§§ホールディングでホンダジェットを1機買ったばかりで、会社に負担を掛けるのは申し訳なかったからである。
 
私は取り敢えず3億2千万+消費税をムーランの口座に振り込んだ。
 
そしてコスモスに何と説明しようかと私は悩んだ。
 

1月13日(木).
 
ネットライブのラストとして、アクアが登場した。会場は小浜のミューズシアターである。
 
アクアはいつものように、前半は豪華なドレスで北里ナナの歌を歌い、後半は王子様風の衣裳にしてアクア自身のヒット曲を歌った。
 
例によって「後半はいらん」と言われた!
 
「アクアはもう女の子になったんだから、自分が女だという意識をしっかり持つべき」
 
ゲストタイムには、薬王みなみが登場して2月発売予定の曲を歌ったが
 
「今年デビューの3人の中で最高にうまい子だ」
という評価をする人が多かった。
 
演出的には美崎ジョナは正統派ポップス歌手、薬王みなみはアイドル歌手的な路線で、曲もそういう曲をアサインされているのだが、歌唱力は結構差があるように感じられたようである。
 
「みなみちゃんは、アクア、東雲はるこ、常滑舞音の次に上手い」
と評価する人もあった。
 
「舞音ちゃんの歌が最近凄く進化したと思ってたけど、こんな新人が入ってきたら、頑張るわけだ」
と内情をきれいに推察している人もあった。
 
実際には、常滑真音・薬王みなみ・七尾ロマンの3人が抜きつ抜かれつ激しい争いをしている状況だと思う。この3人は仲も良く、お互いによく話し、また自分の歌唱を他の2人に聴いてもらって素直に批評を聞いたりもしているようである。ライバル同士で仲良く出来るのは、派閥的な行動を嫌うコスモスの強い意志もあるが、舞音の寛容的で穏やかな人柄で成立しているのだと思う。
 
彼女たちは「いかにアクアを抜いて自分たちがトップになるか」という悪巧み?をしているようである!
 

2022年1月15-16日(土日).
 
今年の大学入試共通テストが実施された。これを、町田朱美の姉・翠や、信濃町ガールズを3月いっぱいで退団予定の太田芳絵などが受験した。
 
太田芳絵こと、本名・諸田望美は豊島区のT大学で共通テストを受けた。信濃町ガールズを退団することを決めて秋からかなり勉強してきていたのだが、正直、問題は「さっぱり分からん!」という感じだった。
 
かろうじて国語の現代文は何とか考えながら解いたものの、古文も漢文もまるで宇宙人の書いた文章を見るようだ。英語は問題文を見ても何を書いてあるのか全然分からないし、発音の問題とか見当も付かない。アクアさん、夏休みに外人の俳優さん?と英語?で話してるの見たけど、忙しいのによく英語を勉強する時間とか取れるよなあ、とあらためてアクアを尊敬する。
 
16日に試験が終わってから、会場近くにある巣鴨の商店街を何気なく散歩していたら、
「おはようございます」
という声があるので振り向く。
 
「信濃町ガールズの太田芳絵さんですよね。私、信濃町ガールズ関東所属の隅田可愛(すみだ・かわい)と申します」
「あ、おはようございます。お疲れ様」
と芳絵も笑顔になる。
 
「こちらはお仕事ですか?」
「ううん。ちょっとプライベート」
「こないだの少年探偵団見ましたけど、格好良かったですね」
「そう?ありがとう」
「クリスマスの時の、くるみ割り人形も格好良かったですし、やはりああいう格好いい路線なんですか?」
 
あれ?そういえばそういう役が続いた気がする、と芳絵は思った。
 
「うーん。たまたまじゃないかなあ」
「私今度の昇格試験受けるつもりなんですよ」
「わあ、それは頑張ってね」
「全国200人の信濃町ガールズの中でも頂点の本部生はほんの20名くらい(*16)だもん。凄く憧れるんですよね」
 
「そういえばそうかな」
 
「200人の信濃町ガールズ自体も、結構ハードル高いですけどね。私の友だち入団試験に3回落ちたけど、また頑張ると言って、4月の試験も受けるらしいです。私は幸運にも1回で合格したけど」
 
「君も優秀じゃん。頑張ってね」
「はい。ありがとうございます。そうだ。サインとかもらえませんよね?お守りにしたくて」
「いいよ!」
 
それで、芳絵は、彼女が持っていた画用紙に、サインペンで“いつかサインを求められた時のために”練習していたサインを書き、日付と“隅田可愛さん江”という宛名を書いた。
 
太田芳絵が誰かに渡した、初めてのサインである!
 

(*16) 現時点での信濃町ガールズ本部生は下記23名。
 
信濃町ミューズ 10名
19歳(1)三田雪代
高3(1)太田芳絵
高2(3)斎藤恵梨香、大仙イリヤ、夢島きらら
高1(5)直江ヒカル、今川容子、青木由衣子、左蔵真未、山本コリン
 
信濃町ガールズ 13名
中3(4)鹿野カリナ、箱崎マイコ、松島ふうか、花園裕紀
中2(5)直江アキラ、豊科リエナ、石条ぼたん、山鹿クロム、三陸セレン
中1(4)宮地ライカ、知多めぐみ、長浜夢夜、鈴原さくら
 

隅田さんを笑顔で見送りながら、芳絵は考えていた。
 
芳絵は地方ガールズを経ていない。だから“狭き門”を経て地方ガールズに入った、200人のガールズたちの“頂点”などという意識は全く無かった。
 
今まで自分は上ばかり見ていた。でも自分を見上げている若い子たちがたくさんいるというのを初めて意識した。
 
思えば2年半前、自分は自信に満ちあふれていた。自分は歌が上手いという自信があった。2019年にロックギャルコンテストに応募し、都区西部予選、東京都予選でいづれも圧倒的トップで通過して本選に進出した。
 
ところがここで彼女は自信を粉砕された。凄まじい歌唱力で優勝した月乃さん(月乃岬=東雲はるこ)、それに充分対抗していた雪渡さん(雪渡知香=七尾ロマン)に比べて、自分の歌は明らかに劣っていた。
 
振られたエントリー番号から推測して多分優勝候補のひとりと思っていた坂井さん(坂井光子=斎藤恵梨香)は生バンドをバックに歌った経験が無かったようで、曲の出だしが分からずに失敗してしまったものの、最終的に自分が4位になったこと自体が信じられないほど、凄い人たちばかりだった(坂井さんは10位。なお3位は落合茜=町田朱美)。
 
取り敢えず上位入賞したので、レッスンを受けながら2〜3年後のデビューを目指そうということになって信濃町ガールズに入ったが周囲が凄い人たちばかりでどんどん自信を失っていった。翌年は前年2位だった雪渡さんが優勝。同点優勝になった新里さん(新里好永=恋珠ルビー)はパンチの利いた歌で、雪渡さんなどとは違った魅力を持っていた。3位・4位に入った2人も明らかに自分より上手かったが、その3位・4位の人が男の娘と知って更に仰天した。
 
私、男の娘にも高音で負けてるよぉ。
 
更に2021年には、鈴鹿あまめ・花貝パール・美崎ジョナ・立山きらめき・夕波もえこ・薬王みなみ・鈴原さくら、など更に凄い人たちが次から次へと入ってきた。彼女らは2019年のオーディションに出てたら優勝争いしていたレベルだと思った。これだけ優秀な人たちが揃っていれば、自分がデビューできるチャンスは、まず無いと思った。
 
そんな時に親から、もう諦めて大学進学して、就職してOLになったら?と言われたのである。
 
そうだよね。自分には歌手なんて無理かなあと思った。
 

その日、芳絵は寮に戻ってから2日間の試験の答案を自己採点した。あまりにも酷い点数に我ながら呆れる。
 
この点数で入れる大学なんて存在しないのでは?と思って大学をサーチしてみたが、一応存在する!でも聞いたことのない名前の大学ばかり並んでいる。
 
そして不安がよぎる。
 
私、今の高校でも、全然授業に付いていけてないのに、大学に行って講義が理解できるような気がしない。私、大学生とかできるのだろうか。
 
 
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【夏の日の想い出・いろはに金平糖】(4)