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■夏の日の想い出・花と眠る牛(7)

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「報道にあった方との関係ですが、恋人ということでよろしいのでしょうか?」
 
「はい。正式の結納とかまでは交わしていませんが、お互いに結婚するつもりですし、双方の親にも会って挨拶したりしておりますので、むしろ婚約者ということで構いません」
 
「失礼ですが、タカさんの性的な傾向としては、やはり女性が好きなんですか?」
「はい、ですからレスビアンですね」
「あのぉ、レスビアンということは、御自身は自分の性別を女性と思っておられるのでしょうか?」
「いえ、男だと思っていますが。レスビアンって女の子を好きになるって意味じゃなかったんでしたっけ?」
「男性が女性を好きになるのは普通にストレートだと思いますが」
「あ、そうですか?」
 
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このボケで記者会見場には笑いが起きて、なごやかなムードになってしまった。(もっともレスビアンの人から数件抗議の電話があったらしい)
 
「交際を始められてから何年くらいですか?」
「友だちとしてのつながりは15-16年くらいになるかな。実は年賀状はずっと交換していたんです。お互い独身の気楽さで。でも恋人として意識するようになったのは、2年くらい前からです。友人の結婚式で顔を合わせて話している内にあらためて意気投合しまして」
 
「その15-16年前というのは、どういう経緯でお知り合いになられたのでしょうか?」
 
「ああ。高校時代の同級生なんですよ」
「あのぉ。タカさん、男子校だったのでは?」
「それが何か?」
「でしたら、お相手の方はその頃は男性で、性転換でもなさったのでしょうか?」
 
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このやりとりを別室のモニターで聞いていて、麗さんは
「ひっどーい!」
と怒っていた。ああ、本当に破局しなきゃいいけどと心配になる。
 
「別に性転換はしてないと思いますが」
「でしたら、お相手の方は実は今も男性なんですか?」
「どうでしょう? ふつうに性的な関係は結んでいますが、相手の性別を意識したことはないですね。他の女性とそういう関係を持ったことがないので違いは分かりませんが多分普通の女性ではないかと思いますが」
 
「あのぉ、では女性なのに男子校におられたんですか?」
「いえ、彼女は女子高ですよ」
「同級生とおっしゃいませんでしたっけ?」
「同級生ですけど」
「だったら、タカさんも実は女子高におられたんですか?」
「ああ、そういうのもいいですねー。『僕女子高出身です』なんて本書いちゃおうかな」
 
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「あのぉ、実際のところはどうだったんでしょうか?」
「うちの学校、いわゆる男女併学なんですよ」
 
とタカが説明すると「あぁ!」という声が、会見場のあちこちから漏れる。
 
「同じK高校という名前で男女ともに生徒を募集するのですが、男子の校舎と女子の校舎が分離されているんです。敷地としては隣り合っているのですが、男子の校舎・施設には女子生徒は立入禁止、女子の校舎・施設には男子生徒も含めて、男性は教師など特に許可された人以外は立入禁止でした。生徒会も男子生徒会と女子生徒会が別々に運用されていました」
 
タカは説明を続ける。
 
「ところが、両者の敷地の間に共用施設がありまして、図書館、視聴覚教室、保健室、職員室、などが共用でした。体育館も男子敷地内の体育館・女子敷地内の体育館の他に、共用体育館もありました。但しフローコントロールが徹底していて、視聴覚教室は男子が全員退出した後でしか女子を入れません。図書館は男子用閲覧室と女子用閲覧室が別で、両者の間は司書室を通らないと行くことができません。反対側にある本は図書委員に取ってきてもらいます。保健室も男子用の休憩エリアと女子用の休憩エリアは鍵のかかったドアを通らないと行き来できません」
 
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「それで同級生というのは?」
 
「実は特進クラスだけは、男女混成で補習を行っていたんです」
 
会場がざわめく。
 
「私と彼女は、旧帝大とか国立医学部とかを狙う子が入っている特進IIというクラスだったので、このレベルの生徒は男子の方も女子の方も少ないので、通常の授業は一応各々の男子教室・女子教室で特進Iの生徒に混じってやるものの、0時間目とか7〜8時間目、あるいは土曜や祝日に設定されている受験用の補習授業については共用エリアの特別教室で、一緒に授業をしていたんです。その時知り合ったんですよね」
 
「じゃ、数少ない恋愛チャンスなんですね」
 
「ええ。でも特進のトップクラスに来る生徒ばかりですから恋愛をしようなんて子はいませんでした。お互いに性別は忘れて付き合ってましたね。だからこそ、卒業後もずっと年賀状の交換をしていたのですが」
 
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「なるほど、それで分かりました」
「で、御結婚の日程は決まっていますか?」
 
「お互いの仕事の都合などもありますが、今年中くらいには式を挙げたいねと言っています」
 
「彼女はタカさんの女装については何と言っておられますか?」
「あ、可愛いと言ってくれています」
 
それをモニターで見た麗さんは「私は皮肉で言ってるんだけど」と言う。そばて氷川さんが「まあまあ。お仕事ですから許してあげてくださいよ」と言った。
 
「タカさん、女装で彼女と会ったりしますか?」
「ああ。何度か会ったことありますよ」
「何か言われました?」
「あ、いっそ性転換したらとか言われました」
「おお、彼女公認ですか?タカさん、実際に性転換したいと思ったことは?」
「そうですね。たまに女の子になってみたい気がすることはありますが」
 
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麗さんは「本当に性転換とか言い出したら、さすがに振る」などと言っている。いや、それは振るとかの問題ではない気もするが。
 
その後、タカは交際上のエピソードを訊かれて色々しゃべっていたが、それを見た麗さんは「ちょっとー!そんなことまでしゃべっちゃうなんて!」と言っていた。私は夫婦円満の御守りとか買って来てあげようか?と本気で考えた。
 

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そのタカの熱愛記者会見をした日の夕方。神戸から戻ってきた夢美と私は加藤課長と、夢美の新譜の件で打ち合わせた。
 
夢美のCDを作ろうという話は昨年末の武芸館3日連続ライブの打ち上げの席で政子が加藤さんに「夢美ちゃんのCD出してあげてください!」と言い、加藤さんがノリで「いいよ」と答えて、話がまとまっていたのだが、その詳細についてここ数ヶ月詰めて来た。
 
「ではCDは黒い装丁の《ヴィヴァルディ『四季』パイプオルガン:川原夢美》というのと、白い装丁の《Rose+Lily Karaoke Auswahl エレクトーン:夢美》という2枚同時発売で」
 
「ええ。これが装丁のデザインです」
と言って、私は知人のデザイナーに作ってもらったCDのジャケットおよびレーベルをプリントしたものを加藤課長に見せる。
 
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「しばしばポピュラーを弾く楽器演奏者の中には技術が低い人がいるのですがクラシックを弾かせてもちゃんと玄人の耳に受け入れられるレベルの技術を持っていることをヴィヴァルディで見せたいんですよね」
と私は言う。
 
「そういう素材として『四季』は良いと思う。クラシックに親しんでいない人にも知名度が高いし、あまり眠らずに聴ける曲だよね」
と加藤さん。
 
「楽曲の完成度も高いんですよ。親しみやすい曲にはクラシック曲としての出来で見ると少し劣るものが多いんですが、『四季』はよく出来ています」
 
「録音は来週だったね」
「はい。15日に札幌きららホールで録音してきます。まあ、ホールの日程の都合で制作時期もここまでずれてしまったんですけどね。エレクトーンのローズ+リリーの方は既に全曲収録が終わっています。これはまだ暫定マスタリング音源ですが」
と言って、CDを加藤課長に渡す。
 
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「Karaoke Auswahl というタイトルは良いと思う。歌が入っていないことが分かりやすい」
「もし売れたら、この後、KARION, XANFUS, 篠田その歌、松原珠妃、ワンティス、ドリームボーイズ、あたりで。ここまではアーティスト本人およびその事務所に内諾を頂いています」
 
加藤課長は少し考えていたが
「第2弾は松原珠妃、第3弾はしまうらら、で行こう。しまうららさんはケイちゃん、許可取れるでしょ?」
「はい、取れると思います」
 
「歌が入ってないというのを強調して誤買を防ぐのにKaraokeという表示は有効なんだけど、Karaokeと書くことで30代以上の層が目に留めると思うんだよね。だったら、少し年齢層の高いファンを持つ人を取り上げた方が売れると思う」
 
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「確かにそうかも知れないですね。だったらスノーベルとかも行けます?」
と夢美は私を見ながら訊く。
 
「んー。じゃ、今度ゆき先生とこに夢美を連れてくよ。夢美の演奏を見たらすぐ許可出してくれると思う」
 
「うん。お願い。でもカラオケなら高速のPAとかコンビニにたくさん置いてもらったりするのも効果的だったりして」
と夢美。
 
「ああ。そういう手はあるね」
と加藤さんも頷いていた。
 

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翌日。5月8日。私を含めたKARIONの4人は、予め電話で話したいことがあると言うのを畠山社長に伝えた上で、一緒に∴∴ミュージックに出向いた。取り敢えず会議室に入る。今年春入った事務の子、冴子ちゃんがコーヒーを持って来てくれた。
 
「えっと、何だろう。まさか辞めたいなんて言わないでよね?」
と畠山さんは戸惑ったような笑顔である。
 
それで美空がKARIONを始める前にインディーズのユニットをしていて、そのCDが売れ続けていたので、KARION開始後もその分の印税を受け取っていたこと、またそのユニットに参加した最後の録音を実は∴∴ミュージックとの契約書が発効する直前の2007年12月15日におこなっていたことを告白。
 
「今まで言ってなくて、申し訳ありませんでした」
と謝罪した。
 
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「それ、お姉さんのバントじゃなくてなんだ?」
「はい。それとは別口です」
 
畠山さんは少し考えていた。
 
「印税を受け取っていた分は全然問題無い。録音についても発効前であれば契約上は問題無いけど、一言でいいから言っておいて欲しかったね」
 
「申し訳ありませんでした」
「でもどんなユニットだったの?」
 
「女の子ばかり十数人のユニットで。実は私の従姉がその中心人物のひとりでCDの音源作る日にボーカルの頭数が足りないと言われて、ちょっと歌って。ベースも上手かったよね、ちょっと弾いて、という感じで引き込まれて」
 
「ああ、それはよくあるパターンだ」
 
「で、それから1年ほど参加してたんです。KARIONというユニット始めるからこちらは抜けさせてと言って。で、そちらはいつから契約始まるの?と訊かれたので、12月17日からと言ったら、じゃ、今日まではいいよね、と言われて」
 
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「うーん。その論理は僕も蘭子の歌唱の問題で使ったことあるから非難できん」
と言って社長は笑っている。
 
「で、もう他には無いよね?」
「ありません。ごめんなさいです」
 

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「でも印税っていくらくらいもらったの?」
「きちんと計算してないですけど、多分全部合わせて50万円くらいだと思います。ごめんなさい。税金払ってない」
 
50万円と聞いて、私も和泉もびっくりしたが顔には出さない。しかし小風は
「えー!? そんなにあったんだ?」
と驚いたように言ってしまった。
 
「かなりあるね。税金は美空ちゃんの場合はそのくらいは誤差の範囲という気もする。しかし、結構売れたんだね?」
 
と畠山さんも言う。美空は昨年少なくみても1200万円は納税しているはずだ。
 
「私が入る前に作ったCDが1枚、私が入ってから抜けるまでに3枚、私が抜けた後で2枚。合計6枚作って。最初のはどちらかというとデモ作品だったので売れてませんが、後から作った5枚はそれぞれ3000-4000枚売れてます。インディーズなので取り分が大きいんです」
 
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「あれ合計で3000枚じゃなくて、それぞれが3000枚だったんだ!」
と和泉も驚いて声に出した。
 
「そんなに売れてるインディーズユニットがいたら、僕はスカウトしたい」
と畠山さんは言っている。
 
「えっと、実は私が入った最初のCDを制作したのはこちらの三島さんなんですけど」
「えーーー!?」
 
「三島さんが関わったのはその1回だけで、後はほぼ自主制作に近かったのですが。そもそも私がこちらの事務所と関わるようになったのが、その時に三島さんと知り合ったからで」
 
「ちょっと待って」
と言って畠山さんは三島さんを呼んで来る。
 
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