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■夏の日の想い出・花と眠る牛(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-04-11
 
ローズ+リリーとKARIONの黄金週間ダブルツアーは横浜/幕張の翌日は両方とも沖縄那覇であった。
 
その那覇公演が終わった後、私と政子は沖縄で常宿となっている宜野湾市のホテルのスイートルームでたっぷり愛し合った後、ぐっすりと眠った。
 
が、夜中、揺り起こされる。
 
「ね、ね、冬。私を見て」
という政子は裸でベッドのそばに立っているのだが・・・・
 
「何これ?」
と私は呆気にとられて訊いた。
 
「私、性転換して男の娘になっちゃった」
と政子。
 
「男の子じゃなくて男の娘なの?」
「だって私、女の格好で出歩くから」
「それなら、何のためにわざわざ性転換を? って、これ何?」
 
と言って私は政子の股間に生えているものを触る。
 
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「よく出来てるでしょ? 割れ目ちゃんに固定すると走ったくらいでは外れないらしいよ。ちゃーんと袋の中に玉が2個入っているし、玉は本物みたいな大きさ・感触だし、全体的に生暖かいでしょ? 中にアルコールが入っていて循環するようになってるから装着して1時間もすれば体温と同じくらいになるんだよ。右側の玉を押すと勃起して、左側の玉を押すと、ほら射精できる」
 
「う、この液が・・・」
「見た目も触った感じも精液そっくりだよねー。本物の精液を入れてもいいんだってよ。入れる口は装着面にあるから隠れるんだよね」
 
「どこでこんなものを?」
 
「冬はさ、やはり中学か高校の時に既に性転換していたんだよ。それでこの手のものであたかも、まるで付いているかのように装っていたんだと思うな」
「そんな馬鹿な」
 
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「だって私、大学に入ってから男の子と付き合ってセックスもしてみたけど、おちんちんのサイズにしても感触にしても、冬のに触っていた時と全然違うんだもん。やはりあれは偽物だったとしか思えん」
 
「私のは性的に弱かったからだよ。普通の男の子とは違うよ」
「いや、絶対あれは偽物だ」
 

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そう言って政子はベッドに腰掛けると、こう言った。
 
「冬が本当は女の子であったことを示す証拠を3つ手に入れたんだよ」
「へー」
 
「ひとつはこれ。冬の出生証明書のコピー。見て。ちゃんと性別の所、女の方に丸が付けてある」
「それはお医者さんが間違ったんだよ。本当の出生届は書き直して男に丸が付いた出生証明書を付けて提出されているよ」
 
「そういう誰も信じないようなことを言わないでよね。ふたつ目はこれ。またコピーしてもらうの大変だった。データだと私の静電体質で飛んじゃうから、プリントしてもらったんだよ。ほら、5歳くらいの冬のヌード写真。お股の所におちんちんは無いし、割れ目ちゃんまで確認できる」
 
なるほどネタの提供元はうちの母かと納得した。
 
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「それはふざけて、おちんちんを足の間にはさんで隠した所を、お母ちゃんが面白がって撮影したんだよ」
「割れ目ちゃんは?」
 
「おちんちんをはさんで、ぎゅっと引っ張ると、引っ張られて皮膚が伸びて、ちょうど割れ目ちゃんみたいな感じになるんだよ。今度貴昭君と会った時にでも試してご覧よ。彼、小さい頃は女の子になりたいと思ってたと言ってたから、きっと、彼も経験してるよ」
 
「それも無理矢理っぽいけどなあ。そして3点目がこれ。冬が大学1年の時に豊胸手術を受けた時の治療記録。挿入したシリコンバッグのサイズが170ccと書いてあるんだよね」
 
「あれはマーサに見てもらいながらサイズ決めたからね。微妙なサイズになってるよね。最初から入れるサイズ決めてやる場合は50cc単位にすることが多いみたいだけど」
 
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「でも考えてみたら私が見たのは、トライアルバッグを入れて水を注入して、このくらいでどうでしょう?という《仕上がりサイズ》だけなんだよ。脇の下を切り裂く所とかは見てて気分悪くなるかもと言われて、切開してトライアルバッグを入れるまでの所は見てない。つまり私は、豊胸前の冬の生胸を見てないことに気付いたんだよね」
 
「そうだっけ? 高校時代に何にも無い私の胸を見てるでしょ?」
「いや、それも考えてみたけど、一度も見てない」
「そうかな?」
 
「それでさ。美容外科に電話して訊いてみたんだよ。170ccのシリコンバッグってどのくらいサイズアップしますかって」
「うん」
 
「するとそのサイズでは1サイズアップですねと言うんだよね」
「えっと、170ccなら3〜4サイズ行く気がするけど。たしか50ccで1サイズアップだよ」
 
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「病院の人に聞いたんだから間違い無いよ。冬はあの時、豊胸手術後にEカップになっているから1サイズアップしたということは手術前に既にDカップのバストがあったということ」
「それは違うよ。私あの時、手術後にはCカップになってるよ。AAAカップから4サイズアップだよ」
 

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「そういう見え透いた嘘つくと、冬を犯しちゃうぞ」
「犯すって・・・」
 
「このおちんちんを挿入しちゃう」
「ちょっと待って」
 
「ほらほら。気持ち良くしてやるから」
「やめてー!」
 
と言うものの、政子は私を組み敷いてしまう。
 
「ねぇ、ほんとに入れるんなら、せめてコンちゃん付けてよ」
「そうだなあ。冬が今妊娠したら、町添さんが青くなるだろうし。実はこの液の中には貴昭が出した精液を混ぜてるんだよね」
 
「うっそー。ほんとに私妊娠するの嫌だから勘弁して」
「仕方無い。付けてやるか」
 
と言って政子はバッグの中から避妊具を出すと、股間に生えているおちんちんに装着する。
 
「でも冬って妊娠するんだっけ?」
「いや万一のために」
「やはり冬って、子宮と卵巣もあるのね?」
「そんなの無いよー」
 
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「やはり女性疑惑が深まった。でもこのコンちゃん装着するの、ちょっと楽しい気がするな」
「そ、そう?」
「よし、行くぞ」
「いやーん」
 
それで政子は私のヴァギナに強引に、そのおちんちんを挿入して腰を動かし、ピストン運動を始める。
 
「これ、結構疲れるな」
「私、男の子としてHしたことないけど、彼がやってるの見てても大変そうという気はする」
「冬は気持ちいい?」
「割と気持ちいい」
「ずるーい。この後、冬がこれ付けて私にインサートしてよ」
「そんなの貴昭君とすればいいじゃん」
 

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政子は5分くらいピストン運動をした後で
 
「疲れた。もう出しちゃう」
と言って、射精する。
 
「射精しても到達感が無いな」
「作り物なんだから仕方無いよ」
 
「冬は、私と1度だけした時、到達感あった?」
 
私は去勢手術を受ける前夜に、たった1度だけ、男の子として政子とセックスをしている。
 
「政子が凄く幸せそうな顔してたから、私はそれで満足したよ」
「それはそれとして、物理的な到達感は?」
「うーん。それは無かった気がする。むしろ射精しちゃったのを自分でも驚いた」
 
「やはり、冬のおちんちんは偽物だったこと確定だな」
「そうなる訳!?」
 

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政子は私だけ気持ちよくなったのずるいと言って、おちんちんを取り外した上で、クリちゃんを刺激することを要求したので、ぐりぐりとしてあげる。
 
「何時だっけ? 午前3時か。もう寝なきゃね」
と政子は気持ち良さそうな顔をしつつ言う。
 
「うん。充分寝ておかないと、お客さんを満足させられるだけのパフォーマンスはできないよ」
 
明日は午前中に福岡に移動して福岡公演である。但しKARIONが熊本公演なので政子は福岡空港から直接ライブ会場に入るが、私は和泉たちと一緒に福岡空港から熊本にレコード会社の用意したバスで移動する。
 
「子牛も眠る草三つ時って今くらいだっけ?」
「草木も眠る丑三つ時では?」
「あ、ちょっと間違い」
 
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「だいたい2時から2時半くらいだよ。丑の刻というのが1時から3時までの2時間で、三つというのは、その2時間を4分割した内の3つ目」
 
「こういう時間帯って凄く創作意欲が湧くんだよね」
「まあ妄想とかもしやすいよね」
「冬はこのくらいの時間帯に曲を思いついたりしない?」
「うん。私もだいたい夜間にフレーズを思いついたりするよ」
「私、今何か思いつきそうだけど眠いから、冬それを書き留めて」
「はいはい」
と言って私は左手でバッグの中から紙とボールペンを取り出し、左手にボールペンを持った。
 
「あれ、冬、左手でも書けるんだっけ?」
「書けないことはない。でも右手は今マーサのを刺激するのにふさがってるから」
「うん。そちらはやめないでよね」
 
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と言ってから政子は思いついた詩の言葉を呟き始めた。私は少し意識を戻してそれを書き留めた。『諜報大作戦』というちょっと危ない詩であった。
 

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翌日朝は結局7時頃まで寝ていた。
 
「マーサ、起きなきゃ」
と言って揺り起こす。しかし政子は
 
「もう一杯、お代わり」
などと寝言で言っている。
「マーサ、マーサ、起きて」
と言って無理矢理起こした。
 
「あ・・・」
「やっと目が覚めた?」
「今、トンカツの味噌汁、お代わりを食べる所だったのに!」
 
トンカツの味噌汁って、どういう味噌汁だ!??
 
「朝御飯に行こう。顔洗っておいでよ。8時にはホテル出るよ」
 
政子は大きく伸びをして起き上がったが
「食べ損なったから、今度トンカツ作ってよ」
などと言っている。
 
「トンカツくらい、いつでも作ってあげるよ」
 
と言いながら、私は部屋の入口の所に差し入れてある新聞を取り、政子が顔を洗っている間に開いて記事を眺めていた。
 
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が、途中で固まってしまう。
 
「冬、どうしたの?」
と洗面所から戻ってきた政子が訊く。
 
「ね、これ誰に見える?」
と私は、その新聞の全面広告のページを政子に見せる。
 
「ゆみちゃん!?」
 
そこにはAYAのゆみのヌード写真が載っていて、右下にSaintes-Maries-de-la-Merという文字だけが書かれていて、他には何も情報が無い。
 
「これテレビドラマか何かの宣伝?」
「恐らく、写真集出したんだと思う」
「すごーい。もしかしてヌード写真集?」
「だろうね。こんな写真を広告に出すなんて」
 
「でもこの『海の聖マリア』ってどういう意味?海の近くで撮影したのかな?」
 
フランス語の得意な政子なので、Saintes-Maries-de-la-Merを翻訳的に読んでしまう。
 
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「フランスの都市の名前だよ。知らない? キリストが昇天した後でマグダラのマリアや、マリア・サロメとかがフランスにやってきて、キリストの教えを広めたという伝説」
「ああ、そんな話があったね」
「その上陸地なんだよ。ここは」
 
「へー。ゆみちゃんをマリア様に例えて湘南の海かどこかで撮影したのかと思った」
「AYAは予算あるから実際にフランスのサント・マリ・ドゥラ・メールに行って撮影したんだと思うよ」
 
「いいなあ。私もフランスかモロッコあたりで写真撮ってヌード写真集出したーい」
「フランスからモロッコが出てくるのは文化圏的に分かるけど、モロッコはイスラム圏になるからヌード写真の撮影は無理だと思う」
 
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「あ、タヒチとかもいいな」
「そこもフランス文化圏だね。タヒチは開放的だから撮影できそう。でも、そもそもお父さんが許してくれるならね?」
 
「ああ、絶対許してくれなさそう!」
「だろうね」
と言って私は苦笑した。
 

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夏の日の想い出・花と眠る牛(1)

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