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■夏の日の想い出・ボクたち女の子(9)

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(C) Eriko Kawaguchi 2021-10-01
 
ウェンディの体調も数日で良くなるので、子供たちはウェンディたちを地下のおうちに招待することにする。ウェンディたちの身体のサイズを計り、その身体が通過できる木の穴を探し少し加工して地下の家に通じる穴にする。
 
この穴はセット上では人間が通れるサイズの透明プラスチックのパイプを通している。上から下に行く時は、単純に滑り降りる。“上の地面”から“下の床”までは2メートルほどあるが、速度が出にくいように、プールのスライダーのようにらせん状にして傾斜を緩やかにしている。パイプは、身体の小さな双子用から身体の大きなピーター用まで数本ある。
 
ここを通る子はだいたい30-45kg程度の子なのであまり速度はつかなかったようである。いちばん重いのが七浜宇菜の52kgだが、宇菜は運動神経が良いので多少スピードが付いても平気である。また着地点はクッションカーペットになっている。これを作った時は、放送局の体重の軽い女性ADさんでたくさん実験したらしい。全くご苦労様である。
 
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なお、下から上に行く時は実は吊っている!全員服の内側に身体全体を支えるスーツを着ており、それにピアノ線を掛けてウィンチで吊り上げているのである。
 

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ウェンディーは小さな子供たちが、おとぎ話の類いを全然知らないようだったので、色々な昔話を語ってきかせてあげた。ジョンたちも一緒に聞いている。そんな感じで日々が過ぎていった。ションやマイケルは他の男の子たちと一緒に島の中を冒険に出かけたりしていた。
 

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ある日、ピーターとウェンディは子供たちを連れて人魚の入江に遊びに行った。入江の上をフラミンゴが飛んでいる(CGで書き加えた)。人魚たちとも遊んだが、人魚たちは概して意地悪で海に引きずり込んだりするので、ピーターが注意していた。人魚たちはどうもウェンディが気にいらないようである(嫉妬)。
 
なお、人魚は信濃町ガールズ東北の高校生以上のメンバーが人魚の衣裳をつけて演じている。彼女たちは最寄りの空港から数機のHonda-Jetで連れてきた。
 
そろそろ暗くなるので(セットを収納している大広間の照明を調光する)帰ろうかと言って、みんな浜辺に上がった時。手漕ぎのボートが近づいてくる。みんなが岩陰に隠れてそっと見ていると、ボートの上には人影が3つ見える。どうやら男2人と女1人のようだ。
 
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「誰か分かる?」
とウェンディ(アクア)が小声で訊く。ピーター(七浜宇菜)が
「海賊のスミー(岩本卓也)とスターキー(大林亮平)、それに女の子はピカニニ族の族長の娘、タイガー・リリーだ」
と言う。
 
「何するんだろう?」
「分からない」
 
みんなが見ていると、やがて海賊たちはひとつの岩のそばにボートをつけ、少女を岩に立っている棒に縛り付ける。
 
ここでタイガーリリー(恋珠ルビー)のスタイルだが、ピーターたちと同様に葉っぱ(但し茶色)を集めて作ったように見えるショートワンピースを着て、髪はツインテールにして、白いヘアバンドを巻いている。リンリン・ランラン風!?
 
従来のタイガーリリーでよく行われたような、ヘアバンドに羽根を挿したりするのは避けた。過去には羽根冠を付けた造形などもあったが、羽根冠はインディアンの中でも極めて名誉ある者だけに許される最高のシンボルであり、これを勝手に付けることは、決して許されるものではない。今回はあまりインディアンを強調するのは避けて、羽根を挿すのもやめた。
 
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「あんな所に縛り付けてどうするんだろう?」
「そのまま放置するんだと思う。あの岩は“島流しの岩”(Marooners' Rock)と言って、今は水面に出てるけど、潮が満ちてきたら水面下に沈んでしまうんだよ。だからあの子は溺れ死んでしまう」
 
「まずいじゃん。助けようよ」
「じゃあいつらが離れたら」
と言っていたのだが、海賊たちはどうも少女が溺れるのを確認してから帰るつもりのようで、ボートに乗ったまま待っている。あたりはすっかり暗くなってくる。海賊たちの姿は星明かりでかろうじて認識できる。潮は少しずつ満ちてきて、少女の足首付近まで水が来る。
 

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「行かないよ。どうしよう」
「よし」
 
ピーターはフック船長の声を真似て海賊たちに声を掛けた。
 
「おい、スミー、スターキー」
 
(この声は実際にはピーター役の七浜宇菜ではなく、ウェンディ役のアクアが出している。男の声色で話すアクアをすぐ傍で見て宇菜が「その声の出し方覚えたーい」と言っていた)
 
「あれ?船長ですかい?」
とスミーが答える。
 
「娘はどうした?」
「ご命令通り、島流しの岩の木に縛り付けました。溺れるのを見届けてから帰ります」
「話が付いた。その子は逃がしてやれ」
「え〜?そうなんですか?」
 
海賊たちは、きっとピカニニ族側と何かと交換で解放するように話が付いたのだろうと考え、少女の縄を解く。少女は海に飛び込んで泳いで離れていった。
 
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(ここでタイガーリリーを演じている恋珠ルビーは吹き替え無しで泳いでいる。彼女は水泳は大得意である。服を着て泳ぐのも何の問題もなくこなした。実際問題として今回は水泳が得意であるということから、この役にはルビーを起用している。水泳の得意な女優さんというのは結構限られる。ちなみにこの入江のセットの水深は1.5mくらいである。この深さにしたのは、少し先に出てくる演技のためである)
 

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「これで解決したね」
とアクアと宇菜・・・じゃなくてピーターとウェンディが手を取り合っていたらそこに別の声がある。
 
「首尾はどうだ?」
「ああ、船長、娘は言われた通り、逃がしてやりました」
「逃がしただと?」
「はい、船長が逃がせとおっしゃったので」
「俺がそんなこと言うわけない」
「え〜〜〜?」
 
結局ピーターがフック船長の声を真似てタイガーリリーを解放させたことはバレてしまい、ピーター(宇菜)とフック(アクア)は“島流しの岩”の上で闘うことになる。
 
ここは十六夜(いざよい)の月が昇ってきた設定でその月明かりでふたりの姿が見える。
 
このフックの造形だが、青い帽子をかぶり、太い付け眉・長いカイゼル髭を付けて、青いロングコートを着ている。これを見ただけですぐアクアと分かった人は少なかった。
 
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赤ではなく青い帽子とコートにしたのはディズニー版とあまり似すぎないようにという配慮である。そして右手はかぎ爪(フック:フック船長の語源)になっており、左手にサーベル(*4)(*5)を持っている。
 
つまり宇菜は剣を右手に持っているが、アクアは左手で剣を持っている。アクアは一応右利きではあるが、小さい頃からピアノやヴァイオリンを習っているので左手の力も充分強い。それで左手に剣を持ってしっかり宇菜と剣を交えるので、美高監督も感心したし、宇菜も「龍ちゃん凄い」と後から言っていた。
 

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(*4)フックは原作では右手が鈎なのだが、ディズニーの1953年の映画は左手を鈎にした(理由は不明)。そのため、ディズニーを真似して左手を鈎にした作品も多く作られた。ピーターとフックが闘ってピーターが手を斬り落としたのならそれは利き手の右手であるのが自然である。剣を持ってない側の手を切り落とすのは不自然だし無意味。剣を持つ手ならこちらに伸ばしてきているからそれを斬り落とすのはあり得る。
 
(*5)サーベル(sabre)は片刃の剣である。英語読みするとセーバーで、宇宙SFなどでおなじみライト・セーバー light sabre とは、光で作ったサーベル。レイピア (rapier) が“刺す”ものであるのに対してサーベルは“斬る”ものであって、戦場など向きである。この物語でもピーターがフックの手をサーベルで斬り落としたことになっている。
 
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なお、舞音がタロットの撮影で使用していたバスタード(bastard)は両刃の剣である。サーベルは片手持ち、日本刀は両手持ちだが、バスタードは19世紀以降はhand and a half とも呼ばれるようになった。その名の通り、両手で持ったり片手で持ったりする。なお bustard は鳥の“野雁”。
 
ところでPerfumeの『ビタミン・ドロップ』の歌詞で「バスタード掛けた」と聞こえる部分があり、加速するとか、そういう意味で使っているのだろうかと私は長らく思っていたのだが、歌詞をよくよく確認したら「パスワード掛けた」だった!
 

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少し闘っている内に、ピーターは自分がフックより上の岩に立っていることに気付く。フックの立っている所は水面があがってきていて動きにくい。それで
 
「フック、これでは僕が有利すぎる。こちらに上がってこい」
と言って左手を差し伸べた。
 
するとフックはピーターが差し伸べた手をかじった!
 
(このシーン、フック役のアクアはピーター役の宇菜の手を咥えてはいるが、さすがにかじってはいない)
 

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このかじられたのに驚いたピーターはバランスを崩し、その隙にフックが右手の鈎でピーターの腹をひっかく。それでピーターは倒れてしまう。
 
フックが
「ふん。とどめた」
と言ってサーベルでピーターを刺そうとした時
 
チックタックという音が聞こえてくる。たちまちフックが青くなる。
 
「逃げるぞ!」
と言ってボートに飛び乗ると、スミーたちと一緒に慌てて向こうの方に去って行った。その後を大きなクロコダイルが“チックタック”という音を立てながら追いかけていった。
 
このクロコダイルは以前時計を飲み込んでしまったため、その時計の音がいつもしている。また以前フックがピーターと闘った時にフックは右手の手首から先を切り落とされ、その切り落とされた手をこの鰐が食べてしまったため、鰐はフックに味をしめ、フックを全部食べようといつもフックを狙っているのである。
 
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クロコダイルは鰐の精巧なフィギュアを水に浮くように改造し、細い透明の紐をボートの端に!付けている。だからボートの後を追いかけていく。チックタックという音を立てる部品は内部にビニール袋に入れて貼り付けてある。
 

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ちなみに、ここでアクアの“位置”だが
 
ウェンディと岩陰で見ている場面:宇菜(ピーター)とアクア(ウェンディ)が並んでいる。
 
ピーターとフックが闘う場面:岩の上で宇菜(ピーター)とアクア(フック)が闘う。岩陰にいるのはウェンディの衣裳を着けた葉月(暗いので顔まで見えない)。
 
フックが去った後:宇菜(ピーター)をアクア(ウェンディ)が介抱する
 
というように演じているので、ここは2度撮影して編集、といったことをする必要が無かった。アクアは「着替えてきます」と言って控室に行ったが、実際には、ウェンディの衣裳を着けたのはMでフックの衣裳を着けたのはFなのでアクアは実は着替えてない!
 

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岩にピーターが取り残されている。
 
「ピーター!」
と岸からウェンディが声を掛けるが反応が無い。
 
「どうしよう?ピーターが死んじゃったら」
とウェンディが狼狽していたら、人魚のメルリン(花貝パール)が寄ってくる。
 
「私たちにまかせて」
 
それでメルリンは島流しの岩まで泳いでいくと、他の人魚とも協力して、何とかピーターを自分の身体の上に載せる。そして泳いで岸まで来た。ウェンディーとジョン、身体の大きなスライトリーでピーターの身体を岸にあげた。
 
「メルリンちゃんありがとう」
「結構ひどく怪我してる。でも丈夫な子だから何日か寝せておくと治ると思うよ」
 
「ありがとう!」
 
それでウェンディはジョンや子供たちに指示して担架を作り、それにピーターを乗せて、ウェンディ・ジョン・スライトリー・トゥートルズの4人で持って家まで運んだ。
 
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このシーンでは、花貝パールは本当に体重52kgの七浜宇菜を自分の身体に載せて泳いでいる。水の中で軽くなるとはいえ、身長168cm 54kgと身体も大きく、水泳大得意のパールでなければできない演技だった。
 
ここでパールは人魚の姿は腰付近のみで足が自由に動く衣裳を着けている。また、この演技があるのでこのセットの水深は1.5mにしている。ピーターを載せると身体が結構沈み込むので、1m程度の水深では足が下にぶつかる可能性があり危険だった、
 

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幸いにもピーターの傷は数日で治り、ピーターはピカニニ族に招かれた。タイガーリリーの父(鞍持健治:特別出演)から勇者の証の、緑のヘアバンドをもらい“グレイトホーク”(*6)という名前までもらう、そして今後仲良くしていこうと言われる。
 
鞍持さんや他のピカニニ族の男性の衣裳は、ロングコートのような服で、色合いはタイガーリリー同様に茶色系統である。ピカニニ族の女性たちはタイガーリリーと同様に茶色系統のワンピースである。ワンピースの丈は短い人と長い人がいるが、タイガーリリーに尋ねると、未婚女性はショート、既婚女性または結婚する意志の無い女性はロングという話だった。但し既婚や非婚でも、狩りをしたり、戦いに出る時は動きやすいショートを着るらしい。男性は短髪にヘアバンド、女性はツインテールやポニーテールにヘアバンドをしている。ツインテールかポニーテールかは本人の好みらしい。
 
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(ピカニニ族を演じているのは○○プロの俳優・タレント・モデルさんたち)
 
ヘアバンドの色が、族長やタイガーリリーは白で、他の人の多くは赤や黒である。
 
(*6)ピーターがもらった称号は、原作では"The great white father"(偉大な白人の父), 1953 Disney映画では "Flying Eagle"(飛ぶ鷲)である。今回はどちらとも異なる名称で Great Hawk(偉大な鷹)とした。
 

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夏の日の想い出・ボクたち女の子(9)

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