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■夏の日の想い出・星導きし恋人(7)

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羽鳥セシルは昨年秋からバイクの講習を受けていて、2月25日の誕生日が過ぎたらすぐに卒業試験を受けて免許を取得するつもりだったのだが、延期になっていた。それは仕事があまりにも忙しかったからである!
 
5月の連休明けになってから、やっと試験を受けられ、翌日には免許試験場でペーパーテストも受けて、無事自動二輪の運転免許証を取得した。
 
そして翌日、市原市のサーキットに連れて行かれた!
 
「バイクのCM撮影するからこれに乗って」
「はい」
 
それでよく分からないまま、渡されたバイクスーツに身を包み、ヘルメット・バイクブーツ・バイクグローブもつけて、ホンダの250ccバイクに跨がった。まだ免許取り立てなので不安はあったもののサーキットを3週くらいした所から少し慣れてきた。
 
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撮影者も最初は固定カメラで撮っていたが、その内、並走する四輪車からもかなり撮影された。
 
走行の撮影は3時間ほどで終わり、その後ヘルメットを外し、バイクに寄り添っている所を撮影。それから海ほたるに移動して、アクアブリッジなどを背景に撮影。更に神奈川県側に渡って川崎市郊外で常滑真音と合流する。
 
「おはようございます」
「おはようございます」
と挨拶を交わす。
 
舞音はスクーターのCMを撮影していたようで、250ccバイクに寄り添うセシル、スクーターの傍の舞音と並んで撮影する。またセシルのバイクと舞音のスクーターで一緒に走る所も撮影した。
 
この日はこれでほぽ1日潰れた。でも舞音は午前中別の仕事をしてきたと言っていたので、どうもセシル以上に忙しいことになっているようである。
 
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ちなみに「多分来月また撮るから、練習してて」と言われて、今日撮影に使ったのと同シリーズの250ccバイクを預けられた!(厳しい運転制限を課されているアクアや舞音とは違い、どうもセシルの扱いは適当っぽい)
 

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常滑真音が学生服のCMをした学生服メーカーなのだが、舞音が結構なサイズの胸を学生服に収めているのを見て
「あれはどのサイズですか?」
という問い合わせが殺到した。
 
それでこのメーカーでは、新たに“女子用男子制服”“男子用女子制服”を販売することにした。当面はネットオーダーのみで、店舗には置かない(店舗でも注文は受け付ける:受け取りは店舗でも配送でも可)。女子制服・および独自の制服を制定している学校の男子制服は、学校名を指定してもらえば、その学校仕様のものを制作する。過去何十年も全国の学校の制服を制作してきているので、全国ほぼ全ての学校の制服仕様がデータベース化されている。
 
“女子用男子制服”は、女子の大きなバストが入る上着と、女子のウェスト・ヒップ比率に合わせたズボンで、上着のみ、ズボンのみも販売する。これは実はズボンが物凄く売れて、やはり女子のズボン需要はかなりあることを改めて認識させられた。
 
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“男子用女子制服”はサイズの大きな女子制服上着と、男子のウェスト・ヒップ比率に合わせたスカートである。むろん上着だけ、スカートだけも販売する。こちらは上着がかなり売れ、元々標準的なサイズの製品では入らない女子が相当いるのではないかと想像された。ほんとうは3Lサイズなのに、そんなサイズは無いとか言われて我慢してLを着ているような子たちである。
 
どうも、これらは女装男子・男装女子以上に“普通の子たち”の中にもこの手の需要が元々あったことをメーカーに認識させることとなった。
 
なお、いづれも注文するには生徒手帳身分証明書欄(あるいは合格通知|小学生は現在通っている学校の通知表表紙などで可)のコピーまたは写真が必要である。但し、身分証明書で男子になっている人が女子制服を注文したり、女子になっている人が男子制服を注文するのは自由である。身分証明書を要求するのは、痴漢対策である。
 
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また生地のランクが特上・普通・廉価と3種類あり、廉価版は高校生のお小遣いでも買えるように価格を抑えた。親に協力してもらえない子たちに配慮したものである。
 

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その日、私と千里、コスモス、(やっと捉まった)雨宮先生の4人は♪♪ハウスの白河夜船社長を自宅に訪ねた。
 
「実は、アクアのことで、内密にお話がありまして」
「いよいよ、彼女が女の子であることを発表するんですか?」
 
「いや、そんな発表はありません」
 
「そうですか?世間ではアクアの20歳の誕生日に実は性別は女であった、あるいは女になったということを発表するのでは?それと同時に昨年カナダで撮影しておいたヌード写真集を発売するのではないかと、かなり噂されていますよ」
 
千里もコスモスも雨宮先生も苦笑している。きっとどこかでそういう噂を耳にしていたのだろう。
 
「ちなみに、ファンの間では
 
『元から女の子であった』
『男の子だったけど手術して女の子になった』
『半陰陽だったけど女で確定させた』
『男の子だったけど自然に性別が女に変化した』
『病気治療の為に男性器を除去したので女の子になることにした』
 
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など幾つかのパターンの発表内容予測がされているみたいですね。元から女の子だったにしては身体の発達が遅いから、半陰陽説が一番強いみたいですが」
 
「アクアは一貫して男の子なんですけどね」
 
「それだけはあり得ないです。彼女はどう見ても女の子じゃないですか。だいたいもうすぐ20歳なのに、女の子のような声のままというのが、全てを証明していますよ。水着写真とかも、女の子でなければあり得ないボディラインだし」
 
「あれはフェイクバストなんですけどねー」
 
「フェイクではあのボディパーツの比率も説明できないです。彼女の身体にはは確かに女性の二次性徴が現れています。それにアクアちゃんの傍に寄ると甘い香りがするんです。あれは10代後半から20代くらいの女子に特有の香りです。あの香りでも彼女が女の子であることは間違いないです。今みたいに男の子であるかのように装い続けるのはよくないです。ちゃんと女の子であることを公表しましょうよ。それであの子の人気が落ちることはないですよ」
 
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と白河社長はアクアのことを気遣うように主張する。
 
まあ確かにほとんどの人がアクアは女の子と思っている現状では「アクアは女の子」ということにしても、人気には影響無い気もする。以前私たちが考えでいたアクアに関するシナリオ↓の(4)のケースになりつつあるる
 
(1)声変わりが来る→激減
(2)去勢していると告白→壊滅的
(3)女の子になりたいと告白→10分の1くらいに落ちる
(4)女の子になっちゃったと発表→半減程度で済むかも!?
 
現在多くの人はアクアは病気のせい(あるいは病気治療のため)女の子になったのだと考えているようで、ファンの数は2015年のデビュー当初の“女の子と見まがう美少年”として注目された頃よりかえって増えている。また男女両性に愛されているのが他の男子アイドルにも女子アイドルにもない特徴である。
 
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「私がアクアちゃんと親しい人から密かに聞いたのでは、病気治療のために男性器も除去して、ホルモン的にいったん完全な女の子になる必要があったから一時的に女の子にしたけど、本人がもう男の子に戻らなくてもいいと言ったから、あらためて女性器も形成して戸籍上の性別も変更したというものですが。先日見せていたパスポートはまだ性別を訂正する前に作ったものだったんでしょ?」
 
その親しい人って誰だ??
 
「ラピスラズリの町田朱美ちゃんなんかも同様に病気治療で男性器を除去したから女の子になることにしたと聞きましたが、彼女はまだ男っぽさは残るものの、女の子として何とか適応しているみたいですね」
 
その話は本当は東雲はるこの話なのだが、彼女がデリケートな性格なので、親友の朱美が、はるこが好奇の目にさらされないよう、自分が性別を変更したかのような噂が流れているのをわざと放置している。それで私たちも朱美の心意気を尊重して、この問題についてはノーコメントを貫いている。
 
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私たちは話を元に戻す。
 
「実は8月20日の彼の誕生日に発表するのは、彼の両親の名前なんですよ」
「両親ですか。そういえば“彼女”が小さい頃に両親とも亡くなられたんだそうですね」
 
「それが実はワンティスの高岡猛獅と長野夕香なんですよ」
「何ですとぉ!?」
 
この衝撃的な事実で、アクアの性別問題はいったん棚上げされた。
 

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雨宮先生が当時の状況を説明した。
 
高岡と夕香はデビュー前から交際していた。事務所の社長からメンバーは恋愛を禁止されていたが、この2人だけは前々からの交際であったことから黙認されていた。そして2人は密かに結婚した。そして理由は不明だが、2人は婚姻届けを出していなかった。そして夕香が2001年8月20日に龍虎を出産したものの、その出生届さえも出されていなかった。龍虎はツアー・ミュージシャンだった志水英世とその妻で元歌手の照代の夫婦に預けられて育てられた。
 
2003年12月27日に高岡夫妻が亡くなった時、志水夫妻は龍虎を葬儀の場に連れていき、今後の龍虎の扱いについて遺族と話し合いたいと思った。ところが事務所社長に追い払われてしまい、話も聞いてもらえなかった。志水夫妻は自分たちで龍虎を育てる決意をした。
 
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その龍虎が幼稚園の年中さんだった2006年の夏、原因不明の貧血症状で頻繁に倒れた。志水夫妻は医者に見せたが原因はよく分からないようだった。龍虎はそれから2年間に渡って、断続的に入退院を繰り返し、色々な病院を渡り歩いた。ここで龍虎に戸籍が無く、当然に保険証も無いため、医療費はひじょうにかさんだ。
 
そんな中、2007年7月に志水英世が事故で亡くなった。物凄い医療費が掛かる病気の子供を抱え、夫の死で収入も激減し、途方にくれた照代は昔のミュージシャン仲間のツテを辿り、長野夕香の妹である支香に泣きついた。支香は志水照代の話を信じてくれた。
 
「待って下さい。支香ちゃんはその子のこと知らなかったの?」
「夕香ちゃんが子供を産んだことは、夕香ちゃんと親しかった三宅も、妹の支香や母の松枝さんさえも知らなかったんだよ」
と雨宮は説明した。
 
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「なんでそんなに秘匿する?」
「事務所の社長も死んでしまったし、もう謎だね」
 
支香は自分だけでは手に余るので上島雷太に相談した。上島も驚愕したが、取り敢えず医療費は全部自分が見ると言った。そしてまずは龍虎の戸籍を作ることから始めた。
 
1歳頃に作られた龍虎のホロスコープが残っていて、そこに2001年8月20日14:21 町田市と記載されていた。また、龍虎の出生時の体重が2525gであることも分かっていた。これは高岡猛獅が志水夫妻への送金用に作った銀行口座の暗証番号が2525で、これはこの子の出生時の体重だと夕香が話していたからである。
 
上島が雇った弁護士は、龍虎、支香、夕香と支香の母・松枝の遺伝子鑑定をして、確かに龍虎が“松枝の直系子孫であり、支香の子孫ではない”という鑑定結果を得た。松枝の子供は夕香・支香の2人しかいないから、これで龍虎が夕香の子供であることが科学的に確定する。
 
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高岡猛獅の父・越春は、これまで何人も猛獅の隠し子を自称する人に欺されて、疑い深くなっており、上島たちの話を聞いてくれなかった。それで祖父であるはずの人の協力は得られなかったものの、猛獅の従兄弟・鶴道さんが協力してくれたお陰で、龍虎と鶴道さんは同じ祖先の男系子孫である(そして鶴道さんの子孫ではない)ことが確定した。猛獅が一人っ子であり、鶴道さんにも男の兄弟が居ないので、理論的には猛獅の子供であるとしか考えられないことになる。
 
弁護士は、更に2001年8月20日に2525gで生まれた男児というのをヒントに町田市内の病院を1軒1軒訪ね歩き、ついに、夕香が龍虎を出産した病院を突き止めた。病院の院長先生も、助産師さんも、夕香の写真を見て、確かにこの人だということを証言してくれた。
 
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これらの資料を基に、弁護士は裁判所に訴えを起こし、龍虎が長野夕香の子供であることを認定してくれるよう求めた。裁判所はこれを認め、龍虎は(死亡している)夕香の子供として入籍された。これでやっと龍虎は戸籍を獲得した。叔母である支香が未成年後見人となり、彼女の健康保険の被扶養者となって、医療費が高額に掛かる問題も解決した。
 
なお戸籍を作る際、提出した資料から、龍虎が猛獅の子供であることは明確ではあったものの、越春の感情に配慮し、猛獅との親子認定は越春が同意した時点で龍虎の戸籍に記載するということになった。(裁判所の再度の審判は不要で、越春の同意書提出のみで良い)
 

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上島は龍虎の病気についても、似た症状の病気が無いかかなり調べた。その結果、群馬県渋川市の医師が論文を書いていた病気が、龍虎の症例に似ていると気付いてくれたお医者さんがあり、上島と支香は龍虎を連れてその医師を訪ねた。その結果やはりその病気であることが分かった。
 
原因は極めて発見しにくい場所にある腫瘍で、それを摘出し、薬物療法をすれば治癒するだろうと言われた。この手術前日に龍虎は村山千里(醍醐春海)たち、旭川N高校女子バスケット部のメンバーと知り合い、自分たちも明日の試合頑張るから、龍虎も明日の手術頑張れという約束をすることになる。
 
「手術頑張らないとちんちん切られて女の子にされちゃうぞ」
「ボク頑張る」
 
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などという会話をした。(この付近は映画にもなった)
 
手術は開いてみると腫瘍がMRIで把握していたものより実際は大きく、生命維持に必要な部分と複雑に絡んでいて、困難な手術となった。一時は龍虎の心臓が停まる事態となる。しかし「龍ちゃん、ちんちん」という看護婦さんの呼びかけで心臓は再度動き出し、無事手術は成功。龍虎は生還した。
 
一方、千里たちN高校は、優勝候補のチーム相手に残り18秒で4点ビハインドという絶望的な状況だった。24秒ルールの時間内なので相手はシュートもせずにボールを回しているだけで勝てる。しかしそこで千里の絶妙なパスカットからのトリックプレイが決まり、スリーポイントを入れて更にバスケットカウント・ワンスローで一気に4点獲得。延長線に持ち込んで奇跡の大逆転勝利を得た。
 
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それ以降、龍虎とN高校女子バスケ部の当時のメンバーとの交流は続いている。
 

さて、龍虎の手術が成功し、数ヶ月以内に退院できるという見込みになった時点で困った問題が起きた。
 
長野支香は仕事が忙しくツアーなどに掛かると何週間も帰宅できないことがある。志水照代は、実家でおばあさんが倒れて福井に帰らなければならない状況だった。
 
龍虎が入院している間はいいのだが、退院した時、彼の面倒を見られる人がいないのである。照代が福井に連れて行き診察の度に渋川に連れてくることも考えたが、病み上がりの龍虎には体力的に辛い。
 
その時、田代夫妻と知り合ったのである。田代妻がちょうど龍虎と同じフロアに入院していて、龍虎は彼女と仲よくなっていた。話を聞いた田代夫妻が龍虎に私たちの子供にならない?と誘った。田代夫妻は子供がなく、また今後も医学的に子供はできないということだった。それで自分達がこの子を育てたいと言ってきたのである。それで龍虎は田代夫妻の里子になることになった。養育費は上島が毎月送金したのだが、実際には田代夫妻は自分たちの収入だけで龍虎を育て、上島からの支援は、龍虎が習うようになったピアノやバレエのレッスン費用や楽器購入費などだけに使わせてもらった。
 
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