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■夏の日の想い出・星導きし恋人(2)

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5月の連休明け、峰川旅世は、1ヶ月ぶりに、ある場所での拘束(?)生活から解放され、娘イリヤのスカイラインに再び乗車し、首都圏に舞い戻った。1ヶ月の間に、取り敢えず手足も首!も切断されていないし、焼き印も押されていない。手枷や足枷も付けられていない。
 
車はあるビルの駐車場に入って駐車する。
 
「ここは?」
「主人の命令である。今日からここで働きなさい」
「あ、はい」
 
それでイリヤは奴隷!を連れてビルの中に入った。むろんイリヤも奴隷も三層の不織布マスクを付けている。校長室に入る。
 
「こんにちは、峰川です」
「こんにちは、ようこそ高梨学園へ。お待ちしておりました。校長の高岩です」
と品のいい女性がにこやかに挨拶し、イリヤたちとエア握手した。向こうもマスクを付けているから年齢がよく分からないが50歳前後のような気がした。
 
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ソファを勧められるので、ビジネススーツ姿のイリヤと、比較的フォーマルなドレス姿の旅世が座る。事務の20代男性!がコーヒーとお菓子を出してくれる。
 
「それでは、今日からこちらの“峰川旅子”をお願いします」
 
「はい。こちらこそよろしくお願いします。3月に高校を定年退職なさったんですね」
 
「そうです。高校と中学の1級教諭免許(現在の専修免許相当)を所持しています。数学が本来の専門ですが、理科も科目追加しているので教えることができます。免許はありませんが、英語や古典も専門の教員並みの知識を持っています。毎年センター試験、今年からは大学入学共通テストになりましたが、解いていますが、全教科ほぼ全問正解しているみたいですね」
とイリヤが奴隷!に代わって説明する。
 
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「それは頼もしい。大手と違って、うちのような予備校では、複数のジャンルを教えられる先生は大いに助かるんですよ。授業のスケジュールが組みやすいですし、そもそも関連する分野の話まで授業ですることができて、生徒が物事を連関して理解することができるんですよね」
 
「やはり解析学とニュートン物理学は凄く繋がっているし、そもそも物理の問題の多くが三角関数と一次代数方程式にベクトル演算で解けるし、漢文と英語って意外に考え方が近いし、地学と地理とかも深く関わり合ってますよね」
 
とイリヤ。
 
「そうなんですよ。そのあたりが片方しか分からない先生だと生徒も知識が分断してしまうんです」
と校長先生は言っている。
 
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旅世はとても不安だったので尋ねてみた。
 
「あのぉ、私の性別のことは聞いておられますでしょうか」
「ええ。聞いてますよ。性別なんて個人的なことですから問題ありません。それにうちは男女同給ですし」
 
「分かりました」
「結婚なさっているので法的な性別は変更できないのだそうですね」
「確かにそうです」
「お名前についても、給与振り込み先だけ戸籍上の名前で、普段の仕事は通称でよいと思います」
 
「ありがとうございます」
 
どうもイリヤが全部説明して了承を取ってくれているようだ。もっとも結構勝手な説明をしているみたいだぞと旅世は思った。でも奴隷としては御主人様のいいなりである!
 

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今日、体調が悪くて欠勤になっている先生の代替講師を手配しなけれぱと思っていたということで、旅世はこの日早速、予備校の教壇に立つことになった。
 
「今日はバネの力学のお話の予定だったんですが、先生大丈夫ですよね?」
 
「ええ。バネだったら問題ありません」
と女声で答えながら、バネ定数、XY成分への分解、x = r cos(a) / y = r sin(a), 重力とのバランス、などといった項目を脳内で高速スキャンする。
 
「でもこの格好でいいのでしょうか?」
とドレスを着ている旅世は不安になるが、
 
「ジャージとかは困りますし、イブニングドレスとかも困りますが、その程度の服でしたら問題無いですよ」
と校長から言われて、そのまま教室に連れられていく。
 
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大学院卒業以来36年間教壇に立っていたものの、女性の格好で教壇に立つのは初めてである。
 
校長に続いて入っていく。
 
感染対策で、入口の所で手をアルコール消毒する。教室のドアは自動ドアである。教室の窓は全開されている。生徒たちは“千鳥”状に着席している。つまり定員の半分で運用しているようだ。
 
校長先生が教壇に立って生徒たちに説明する。
 
「今日は加藤先生が病気でお休みなので、代わりに峰川旅子先生に物理の授業をお願いします」
 
旅世が教壇に立つ。
 
「紹介して頂いた、峰川旅子です。数学と理科が専門ですが、英語や国語を教えることもあるかも知れません。よろしくお願いします」
と(女声で)告げた。
 
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「ランゼ先生よろしくー」
という声が教室の中からする。見ると昨年度まで自分が教えていた女子生徒・春川まゆみである。“ランゼ”は名前の“旅世”の“旅”からドイツ語のReise(ライゼ)になっていたのが、長い年月?の内に“ランゼ”に変化したものである。女性名っぽいので、もう20年くらい前から勤めていた学校の生徒たちの間で受け継がれていたニックネームである。
 
「春川さん、なんでここにいるの?」
と旅世は尋ねた。
 
「私、大学全滅しちゃった。1年浪人することになったから、先生よろしく」
「ありゃあ全滅か。だったら1年でちゃんと合格できるように頑張りなさい」
と言って旅世は
 
「授業を始めます。テキストの67ページを開いて」
と言い、この予備校での最初の授業を始めた。
 
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最初は少し緊張したものの2〜3分もすると、普段の調子になる。女声での授業は高校でも結構やっていたから、喉の負担なども感じない。むしろ“改造”されたおかげか、男声より楽に出せる気がする。
 
それに自分は男の格好でも女の格好でも別に調子は変わらない。ついでに、男の身体でも女の身体でも大差無い気がする、と旅世は思った。
 

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小浜でのアクアの写真撮影が10日(月)23時すぎに終わった後(*1)、私は助手さんたちの撤収作業を手伝ってあげていたのだが、山村マネージャーが走って来て
 
(*1)コスモスと鳥山の深夜の会議から22時間ほど経っている。
 
「会長、すぐ来て下さい」
 
と言う。何だろう?と思ったら、山村はアクアと私を“黒いインプレッサ”に乗せて、藍小浜まで連れて行った。
 
「桜井さんの付き添いは醍醐先生にお願いしました」
「あ、うん」
 
アクアが泊まっている特別室に入る。
 
「ちょっと変なことが起きますけど、細かいことは詮索しないで下さい」
「うん?」
 
と答えたら、突然周囲の様子が変わる。キョロキョロしていたら、
「こちらへ」
というので部屋の外に出る。
 
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「ここは?」
「信濃町の§§ミュージックの倉庫です」
 
私は一瞬考えたが・・・いいことにした! なんかこの程度のことは日常茶飯事のような気もする。
 

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事務所に入って行く。
 
「あれ?撮影が早く終わったの?」
と川崎ゆりこが驚いているが、コスモスは平然としている。
 
「駆け付けてきてくれて助かった。説明するから座って」
というので、アクア・私・山村はソファに座る。
 
コスモス、ゆりこ、それにΛΛテレビの鳥山プロデューサーがいる。
 
「じゃ状況を説明するね」
とコスモスは言った。
 

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5日(水) ラピスラズリが大阪の番組に出る。
6-7(木金) ラピスラズリが京都でCM撮影
8日(土)夕方 熊谷に戻る。感染者発生の報告。ラピス隔離。PCR検査は陰性。
9日(日)シンデレラ撮影開始予定だった。
22時頃 コスモス事務所に戻る
24時頃 鳥山来社
10日(月) アクアは水着撮影。23時頃終了
23:30 コスモスが山村に連絡し至急帰京するように言う。山村はHonda-Jetを夜間に飛ばすつもりだったが、千里の判断で転送で東京に戻ることにする。
24時 アクア(F)・ケイ・山村が事務所に戻る。
 

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「実は昨日からラピスラズリ主演で『シンデレラ』の撮影をする筈だったんだけど」
「はい」
「ラピスラズリが出演した番組でコロナ感染者が2名出て、番組の出演者とスタッフが全員濃厚接触者として2週間の隔離になった」
「わっ」
 
写真集の撮影に精神的な影響を与えないため、コスモスは撮影が終わるまで連絡しなかったのである。
 
「全員PCR検査して、最初に見つかった2人以外に4人も感染者が判明している。幸いにもラピスラズリも倉橋マネージャーも陰性だった。でも隔離期間中は活動ができない」
 
アクア(F)は凄く嫌な予感がした。
 
「放送日程は動かせない。ラピスが2週間後まで使えないから代役を起用する必要がある。でもラピスラズリ以上に人気のある人でないとスポンサーは納得しない。制作を中止すれば数千万円の損害が出る」
 
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まさか・・・
 

「それで申し訳ないけど、アクア、東雲はるこの代わりにシンデレラをやってくれない?」
 
やはり!
 
「ちなみにシンデレラの姉は花咲ロンドがすることになった」
 
ボクはいいけど・・・とアクアFは悩む。
 
「私、女役だけのオファーはお断りしてるんですけど」
 
「基本的ににはそうだけど、今回は緊急事態だからさ」
とコスモス社長が言う。
 
アクアも考える。こういう場合は、他の事務所に迷惑をかけないよう、同じ事務所の中で代役を出して解決すべきだ。しかし人気のあるラピスに代われるとしたら自分か常滑真音しかいないだろう。でも舞音はまだドラマなどに出たことがない。演技力は未知数だ。となると結局自分がやるしかない。
 
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しかしその時、アクアはあることに気が付く。
 
「私、今週末にライブがあるんですけど」
「うん。だからその日1日だけはアクア抜きで葉月を代理に使って撮影する」
 
ひぇー!?
 
でもボク、ライブの前にはたくさん練習したいよぉ。
 

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「それとね、アクア君が女役だけの仕事は受けないと言うから、急遽シナリオを書き換えて、シンデレラは男の子だったことにしたから」
と鳥山さんが言う。
 
「男の子じゃ王子と結婚できないじゃないですか!」
とアクアFは言った。
 
まさか同性愛なのか?しかしどっちみち男同士では世継ぎを作れないぞ。まさか性転換させられたりして。「我が国には良い医者がいる」とか言われて!?
 
「こういうストーリーにしたんだよ。今日1日でシナリオ書き換えた」
と鳥山さんは説明した。
 

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「ある所に貿易商人が居て、美人の女性と結婚した。やがて可愛い女の子が生まれた。夫婦はその子にシンデレラ(Cinderella)という名前を付けた」
「やはり女なんですか?」
「まあ聞いてて」
「はい」
 
「商人は跡継ぎの男の子が欲しかったが、その後子供は生まれなかった。そして奥さんは病気で亡くなってしまう」
 
「商人は愛する妻を亡くして泣いたが、跡継ぎも欲しかったなあと思った。するとシンデレラがある日、父のところに来て言った」
 
『私が跡継ぎになるよ。商売の仕方とか、航海のこととか教えて』
『女の子にそんなこと教えられないよ』
『だったら、ボク今日から男になる』
と言って、シンデレラは長い髪をバッサリ切った。
 
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『おい』
『お父さん、ボクに男の服をくれない?』
『分かった』
 

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