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■夏の日の想い出・天下の回り物(16)

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『郷愁協奏曲』で必要なオーケストラに関しては、★★レコードを通して各会場の地元のオーケストラで協力してくれる所がないか探してもらった所、全地区でオーケストラを確保することができた。ほとんどが各地区の大学生のオーケストラである。地区ごとに演奏者を確保するのは2014年のツアーの時「苗場行進曲」で行進してくれる人たちを各地区で確保した時以来である。
 
和楽器に関しては例によって風帆伯母に相談し、必要な人数を揃えてもらえることになった。頼んで数日経って聖見から連絡があった。
 
「うちの月子と星子(ふたりとも中学生)を参加させたいんだけど、公演終了後名古屋に帰宅できるかなぁ」
 
「水曜日とかもあるんですけど?」
「それは休ませる。ただ翌日の木曜日に登校できれば問題無い」
「調べて連絡します」
 
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それで妃美貴が調べてくれたが、帰宅については、早めに上がるようにすれば名古屋まででも、ちゃんと帰れることが分かった。
 
《帰り》
9月09日(日)函館17:35 新函館北斗18:36-23:04東京(泊)東京6:00-7:34名古屋
9月12日(水)千葉19:05 幕張19:32-20:09東京20:30-22:11名古屋
9月17日(祝)宮城17:35 仙台18:57-20:32東京20:50-22:31名古屋
9月19日(水)静岡19:05 静岡20:10-21:07名古屋
9月24日(振)長岡17:35 長岡18:35-20:12東京20:20-22:01名古屋
9月26日(水)高松19:05 高松19:40-20:35岡山21:13-22:50名古屋
9月30日(日)大阪17:35 新大阪18:30-19:20名古屋
10月3日(水)横浜19:05 新横浜19:32-20:54名古屋
10月8日(祝)別府17:35 大分空港20:25-21:30中部
10月10日(水)大村19:05 長崎空港20:15-21:35中部
10月14日(日)東京17:35 東京18:40-20:19名古屋
 
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基本的には和楽器を使う曲を最初の方に集中させればいいようだ。それで函館からの帰り方についても説明すると聖見は「すごーい」と言っていた。
 
「函館で公演やった翌朝名古屋で学校に登校できるのが凄いね。日本列島は小さくなったね!長距離の移動は若いから平気だよ。むしろ面白がると思う」
などと聖見は言っていた。
 
それで聖見の承諾が得られたので、月子・星子の参加が決まった。10月9日問題については、そういう状況なら9日は学校を休ませると聖見は言った。彼女らは中学生ではあっても既に名取りなので、演奏会の都合で学校を休むというのは、時々あることだと言う。
 
そういう訳で↑の10月8日の帰宅便は使用せず別府市内に宿泊する。水曜日公演の行きについては妃美貴の調査ではこのようであった。
 
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《行き》
9月12日(水)千葉 名古屋15:33-17:13東京17:25-18:10幕張
9月19日(水)静岡 名古屋16:29-17:46静岡
9月26日(水)高松 名古屋14:50-16:27岡山16:42-17:37高松
10月3日(水)横浜 名古屋16:42-18:05新横浜
 
高松が厳しい。千葉公演と高松公演については、午前中だけで早退させるかもと聖見は言っていたが、元々は水曜日は丸1日休ませるつもりだったようなので、早引きで済めばいいのかも知れない。
 
10月10日は「10月9日問題」で、9-10日の2日間学校を休むので到達問題も発生しない。
 

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『コーンフレークの花』で入れたいダンサーに関しては《ビキニ姿になれる人》という条件で探してみた所、2017/2018カウントダウンで踊ってくれたローザ+リリンが「私たちでもよければ出ましょうか?いや出たい!」と言っていたので、“彼ら”にお願いすることにした(早まったことをしていなければ“彼女ら”ではないはず)。私たちが10周年なら彼らも10周年である。よくまあこのネタで10年もやってきたものである。
 
「マリちゃんが妊娠しちゃったから、私も妊娠してる」
 
とマリナは言っていた。確かにお腹が大きかったが、どうやって“妊娠”したかは不明である。なお妊娠していてもダンスしたりするのは問題ないらしい。
 
「赤ちゃんの父親は?」
「有名ミュージシャンだけど名は明かせないの」
 
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「出産予定日は?」
「マリちゃんと同じで」
などと言っていた。
 
彼らは契約上男装で人前に出てはいけないので、もう男物の服は全く無くなってしまったと言っている。親や親戚には「これはただの芸だから自分は女装者でもゲイでもない」と主張しているものの誰も信じてない気がすると言っていた。
 
「いやぁ、まさか10年続くとは思いも寄らなかったから安易に男装禁止の契約しちゃったのよね〜」
などとも言っていた。
 
「女の芸人を含めて女の友だちが増えた」
「男の友だちはほとんどいなくなった」
「選挙に行くたびに揉める」
 
「しかし既に女に対して不感症になっている気がする」
 
「女子トイレにもプールの女子更衣室にも平気で入れるようになってしまった」
「男子更衣室に入ろうとすると『おばちゃん、こっち違う』と言われるし」
 
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「田舎の公演で別の女芸人と相部屋にされたことあるけど、向こうはこちらの性別知っているのに、平気で目の前で着換えていたし、下着姿見てこちらも全然欲情しなかったし」
 
彼らの選任で演奏者の手配は全て完了した。
 

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ツアーが近まってきたある日、和泉がうちのマンションに午前中(つまりマリが寝ている時間帯に)来て言った。
 
「ローズ+リリーのライブ幕間に登場するKARIONだけど」
「うん」
「蘭子は立体映像にしよう」
「あはは」
 
ローズ+リリーとKARIONのライブが同日にある場合、ローズ+リリーのライブの幕間ゲストにKARIONが入ることになっているのである。だから私はその日、KARIONのライブをこなしてからローズ+リリーのライブ会場に移動し、3時間ライブをするのだが、その幕間の本来なら休憩時間の間にもゲストのKARIONの一員として歌うことになっていたのである。
 
つまり全く休めない!
 
「蘭子の歌部分も何とかするから冬は寝てて」
「分かった。任せる」
 
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「KARIONの本公演の方も立体映像にしてしまう手もあるけど」
「それはお客さんに申し訳無いから頑張る」
 
「ふーん」
と和泉は声を出してから言った。
 
「誰が立てた企画か知らないけど、冬を殺そうとしているとしか思えん。冬は過去に2回ダブルツアーをしたけど、27歳は体力の曲がり角を過ぎてるよ」
 
「それ、ある人(実は楠本京華)からも言われた」
 
「冬ももっと断り方を覚えなきゃダメだよ」
「うん」
 

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和泉は楠本京華に電話した。
 
「ローズ+リリーの公演の方のゲストは代替することで冬子の承諾を取りましたので、作戦V1よろしくお願いします」
 
「了解。KARIONのライブそのものを代替する作戦V2は?」
「不発動で。バレないとは思うけど、私も罪悪感を感じますし」
 
「分かりました。1時間寝ただけで5時間寝た効果が出るお薬とかもありますが」
「副作用が怖いからやめときます」
「性転換するお薬もありますけど。男の身体の方が疲労回復は速いですよ」
「冬子の婚約者が困るので」
 

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楠本京華は虚空(丸山アイ)に電話した。
 
「やはりV1で行こうと和泉ちゃんは言ってる。ケイちゃんもKARIONライブにもきちんと出たいと行っている」
 
「じゃV3作戦で」
「やはりそうなるか」
「まだケイに死なれては困るからね」
 
「ローズ+リリーのライブ会場に実際にはKARIONのメンバーは入らない。だからこの作戦はバレないんだよ」
と虚空は言うが
 
「要するに立体映像のテストをしたいのね?」
と京華は言う。
「うん。本番はカウントダウン」
 

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2018年9月7日(金)。私とマリ、スターキッズを含む多数の伴奏者とスタッフが札幌に入った。普段のツアーでは北海道は1ヶ所だが、今回は札幌と函館の2日公演である(土曜が札幌、日曜が函館)。
 
この2日間の幕間ゲストはGolden Sixである。メンバーには北海道出身者がひじょうに多いので里帰りのようなものである。
 
私たちは金曜日に入ったが、学生さんは土曜日に入る人もある。それで8日のお昼に市内のホテルで(記者会見の後で)食事を兼ねて打合せをした。“Golden Sixと愉快な仲間たち”も参加してくれる。この2日間のGolden Sixのメンバーは
 
Pf.花野子 Gt.梨乃 B.美空 Dr.留実子 Fl.謎の男の娘 Vn.水野麻里愛
 
である。水野麻里愛は最近ヨーロッパに居ることが多いのだが、たまたま帰国していた所を早速徴用されてしまったらしい。もっとも本人は
 
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「北海道に帰省する旅費が助かった」
などと言っていた。
 
美空と“謎の男の娘”さんはローズ+リリーの公演自体にも出るが、美空は
「私は第2部に出るだけだから平気」
といい、謎の男の娘さんは
「私はスポーツ選手で体力があるから平気」
と言っていた。
 

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田中成美ちゃんは女子高制服夏服を着ている。そういえばこれと同じデザインの女子制服をアクアが着ているのを見たこともあった気がした。彼女が東京北区のC学園の2年生だと言うと、マリがピクッと反応した。
 
「質問。もしかしてアクアと同じ学校ですか?」
「同じクラスですよ〜。同じクラスに松梨詩恩ちゃんもいますよ」
 
「おぉ!!」
 
「アクアはしばしば女子制服で通学しているという噂があるんですが」
「よく着てきてますよ。比率的には出席日数の3分の1くらいかなあ」
 
それはつまりアクアFが登校している日なのだろう。
 
「やはりアクアって女の子になりたいんだよね?」
「女の子になりたいんなら、ずっと女子制服を着ていると思う。あの子、女役が多いから、女の子として行動するのに慣れるためだと言ってますね」
 
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「その写真が見たい」
「校内での撮影は禁止なので」
 
「それで女子制服写真は出回らないのか」
「帰りはたいてい事務所の車でスタジオや放送局に直行だし」
「なるほどー」
 

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その後、空帆が自己紹介し、レイアが自己紹介し、美空の自己紹介で笑いが起きる。その次に自己紹介したのが翼だった。
 
「おはようございます。谷口翼と申します。よろしくお願いします」
 
私は仰天した。
 
「翼ちゃん、男装してきたの?」
 
「えっと・・・私、男ですけど」
「え〜〜〜〜!?」
 
私は風花を見た。
「ドレス着せたらお姫様みたいになりそうとか言ってなかった?」
「うん。彼、美形でしょ?髪も長いし、女装も似合いそう」
と風花。
 
「すみません。女装は勘弁してください。高校時代、随分やらされたけど」
と翼。
 
「ああ、青葉とか立花とかのセクハラね」
と空帆が笑って言っている。
 
「彼の衣裳どうしよう?」
と私が言うと
「もちろん男性用衣裳を用意していますよ」
と風花。
 
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「女性用衣裳が良かったら何とかなると思いますが」
「それは勘弁して下さい」
 
「愛のデュエット、私、ココアちゃんの男装と組ませるつもりだったけど」
「ココアちゃんが女装すればOK」
「なるほどー!」
 
「ココアちゃん、女装行ける?」
「行けます!念のためおっぱいも持って来ていましたから、ちんちん取っておっぱい付けます」
 
「ちんちんって取れるもので、おっぱいって付けられるものなのか」
などと妃美貴が言っている。
 
「そうだ。明日、函館からの帰りのマイクロバスの席を翼ちゃん、女子の方に入れてしまったけど」
「たぶん、生方さんと成美ちゃんの間に移したらOK」
「そうしてもらおう」
 
ということで、私が翼の性別を誤解していて、焦ったのだが、風花はちゃんと男子として処理してくれていたので問題無かった。
 
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「髪が長いのは女の子になりたい訳じゃ無いの?」
「僕髪が薄いので誤魔化してるんです」
「プロペシアが髪には効くらしいよ」
「プロペシアですか」
「但しおっぱいも大きくなる」
「遠慮します」
 
 
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夏の日の想い出・天下の回り物(16)

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